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風になろう——カミラ

 あたしは今草原の中にある街道をバイクで走っている。風景を一気に置き去りに駆けていく。馬じゃないのにこんな速さで、しかもバイクに掛けられた【プロテクト】か風圧を遮り微風に変えていて快適な走行だ


 思ってた以上に気持ちがいい。誰かと一緒に走るのも楽しいかもしれない。今の所私かオーナーしか乗れないけど。オーナーはどこから運転方法を覚えてきたんだろう


「おい、エロ魔王、勇者である俺にもあれを作れ」

「誰がエロ魔王だ。誰が」


 さっきつけられたエロ魔王があだ名として定着してしまった模様でオーナーはぶすっと、みんなはニヤニヤ、ニーナだけがオロオロと慰めようとしてるけど結局沈黙した


「自覚ないのですか?先ほどからニーナさんの胸やコナーさんの太ももをチラチラと見てるではありませんか。バレてないとでも思ってるのですか?」

「あら、オーナー。お好きになさってよろしいのですよ」

「ぽっ」


 ニーナ、口で言っちゃうの?


「ふふふふふふふふふふ……恵さんに言われたくなければ……」

「…………」


 脅しをかけてくる姫巫女様に対しじっくりと見るオーナー。完全に女として計測してるよね。それも見方によっては恵にチクられちゃうよ


「なっなんですか?まさか……」

「……………………………………………へっ」


 長い観察のあと鼻で笑うオーナーに姫巫女様が青筋を浮かべる。まぁ姫巫女様ってローブで体型がわかりにくいけどあまり出るとこ出てない感じだし色気もない。オーナーの反応も仕方ないんじゃない?


「こっ!このっ!えエロ魔王、魔神の前に討伐してさしあげます!!」

「コナー、姫巫女様はダイエットするから晩御飯はいらないってさ」

「ひ、卑怯な……」


 快適に走るあたしの横で【シールド】の魔法の絨毯で並走するオーナー一行。ルナード様もオーナーのいじりポイントを理解したからかオーナーとの接し方が良くなった気がする。まだまだ偉そうだけどね。姫巫女様は本当にダイエットした方がいいんじゃない?食べ過ぎなの知ってるんだからね


「君も好きなんだねぇ。やっぱ女の子っていいよねぇ」

「ユディス、お前もう黙っておけ、キャラぶれが酷い。それではセルディアスとかわらん」

「がーん」


 そういえば勇者は四人だったもんね。ずっと戻ってこないし忘れてたよ。


「しかしあれを作れとなると新しい技術や高価な素材を大量に使ってますからね。素材を代替品に変えてもすくなくとも金貨四千枚くらいいただきますよ?」

「よ……、くっ。カミラ、後で乗らせろ」

「えー。ぶつけないでよ?」


 まぁぶつけてもルナード様が飛んでいくだけだろうけどね。それにしても高いね。代替品で四千枚かぁ……これいくらなんだろ?怖いから知りたくないけどさ


「あ、ちなみに正式品はガレージかカミラからかなり離れる、もしくは俺かカミラの指示で大爆発する仕組み入れるから流出の恐れはないし安心していいぞ」

「安心できるかっ!何その物騒な仕組み!?自爆してどうするのっ!」

「ん?じゃあ自爆スイッチを。自爆はやっぱマシンの醍醐味ってか美学だよな。巨大じゃないのが残念だけど」

「自爆から離れてよ……」


 ま、まあ指示さえしなければ爆発しないんだし、気にしたら負けだよね。大丈夫大丈夫……


「あ、リザードマンがいますよ」


 オーナーのしょうもない美学に呆れながら走っているとニーナがリザードマンを指差し知らせてくる


「本当だ。どうするのオーナー?ニーナが射つ?あたしがやる?」


 既にニーナは五体ほどのゴブリンやコボルト、キラーアントなどをオーナーから渡された新型ボウガンを使い倒している。一射目をオーナーが射つと魔物が爆散してしまったのでオーナーは所持禁止になった。その後ずっとニーナが所持し、見つけ次第ニーナの試し撃ちをしていた。


 爆散ゴブリンに合掌である。その時近くにいたルナード様を血肉塗れにしてしまったのを謝った。それがルナード様を調子づかせてしまったらしい。これ以上謝ると調子に乗るのがいやだからそれ以降ルナード様はずっと魔法の絨毯に座らされている

 

「そうだな。リザから揚げも食べたいしなるべく綺麗に倒してくれ」

「了解。いくよ新しい相棒」


 あたしはスロットルを全開に開け草原に入る。龍革が草をすり潰しても滑らずに進めるので気にせずリザードマンに特攻する


「ヒャッホゥ」

「ギ?」


 小さな丘を利用してバイクで飛ぶと馬の腹辺りに当たる部分に軽く足でノックする。こうすると刃が取り付けられた尾翼が広がり横にいる相手にも攻撃ができる。


 前に体重をかけリザードマンの横を通るように調整する


「はい、すぱーんってね」


 見たこともない物体に驚いたままのリザードマンの首を尾翼で跳ね飛ばすとそのまま着地。ブレーキをかけリザードマンの足に投げ縄をして確保するとオーナー達の所に戻る


「うん。これいいね。魔力の消費も大したことないしね」

「ミスリルをふんだんに使って魔力電導率をあげてるからな。カミラでも一日中走れば前線基地の半分辺りにまで行けるかもな」

「馬の様に休憩も餌もいらない移動用魔道具ですか……あれで後ろに掴まって走ってもらえれば」

「おい!カミラ!そろそろ代われ」

「もー。仕方ないなぁ」


 ブレーキをかけバイク横に立つ。低空飛行だったからか止まるまで待たず飛び降りるルナード様。めちゃくちゃ乗りたかったんだね。見たことない笑顔になってる


「オーナー、レクチャーしてあげてよ」

「誰がエロ魔王なんぞに。こんなもの簡単に乗りこなしてエェェェェェェェ…………」


 ハンドルを握り飛び乗るけどアクセルを思い切り開けてしまいウィリー状態ですっ飛んで行った


「…………自爆スイッチついてなくて良かった」

「きたねえ花火だって言ってみたかったな」

「オーナー、それは不謹慎ですよ」


 あたしはルナード様の代わりに魔法の絨毯に乗り込む。ルナード様を追いかけバイクの跡を追いかける


 ルナード様の叫び声に反応していたらしい魔物が轢かれて息絶えていた。練習台がいなくなっちゃうじゃん


「あー、ルナードの魔力であれだけスピード出してたらもうすぐ動けないんじゃないか?【プロテクト】も消えるだろうしさ」

「あ、ちょうど止まりましたね」


 草原のど真ん中でゆるゆると進んでいたバイクがドサッと音を立てて倒れた。もっと早くブレーキをかければよかったのに説明聞かないから。全く世話のかかる人だな


「魔力すくなっ!姫巫女様、何を基準に勇者選んでるんですか?」

「え……あの……さぁ?」

「え?姫巫女様が選んでるんじゃ?」

「確かに姫巫女が選んでいますが私が選んだのではありませんから。選んでるのはしゅせ……第一姫巫女です」


 今首席って言おうとした?


「ってか姫巫女様はどうやって姫巫女に?」

「え、……………しけ、試練、そうっ試練です。王の血筋を持つ全ての子女を試練に掛けて選び出す尊い試練なのですっ!」

「ふーん。割と俗っぽい選別方法ですね。」


 うん。試験なんだ。完全に成績で選んでるよね。そんなんなら零華様や店長、瑠衣様だって行ける気がするよ。恵は……うーん似合わないな。あの子あれでおっちょこちょいなとこあるしバトルだとやり過ぎるしね。ダメな気がするよ。姫巫女様はもうちょっと隠す努力しようね


「それよりルナード様助けに行こうよ。」

「わかったわかった。ついでに昼飯にしよう。いい時間だろ」

「んーだとしたらあっちの方がいいと思います。小川があったはずですから」


 ディアナが言う。確かにあったな。何度か狩りに来てるのかもしれない


「ああ、ロマの村から流れる川ですね。王都からまあまあ離れてるし薬草もそこそこ拾えそうですしいいと思います」



 気絶したルナード様を乗せ川に向かい上流を目指す。地面が砂利道になり少し離れたところで小川を発見する。開けたところでシートを敷きお弁当を開く。しばらくしてルナード様が起きた。ぼーっとしてるのが可愛いかもしれない。言ったら怒りそうだから言わないけどさ



「懐かしい……気がする。もっと上流でオークを倒したっけ。まだ五人で行動してた時だな」

「え?あれですか?たしかどっかの商人の若旦那が依頼してたやつ。あれオーナー達の仕事だったんですね」


 ディアナは王都を拠点に近隣の町や村で依頼を受けていたらしくオーナーが受けたらしい依頼も知っていた。二カ月くらい前らしいけど……あたしはその頃にはもっと北の方の侯爵領で依頼を受けて罠に嵌められ奴隷落ちしていたなぁ


「ああ、うん。ロレンスさんに助けられてな。腕を見込まれて処理した」

「あの後オークの首無し死体を巡って喧嘩起きてましたよ。ちゃんと持って帰らないとダメじゃないですか」

「あの時は帰りしに魔力が尽きて気絶してしまってなぁ……今思うともったいなかったな。豚肉」


 豚肉かいっ!ってかその頃から普通に戦ってたんだね。でもどうやって戦ってたんだろ?オーナー達が異世界人で一般人だったってのは聞いてるけどよく戦えたね?だって紋章持ってから二カ月ほどでしょ?


「その時は素人でしょ?よく倒せたね」

「紋章にはヘルプ機能があるんだよ。その紋章に合わせた戦い方とかを……記憶に書き込むって言うのかな。教えてくれるんだ。その時の魔力とか身体能力とかでどこまで教えてくれるか決まるみたいだけどな。自分に適さないのは教えてくれないから必要なら自分で研鑽するしかない」

「なるほど、だからオーナーはよく体を鍛えたり魔力を限界まで使ってたりするのですか」

「ま、そんなとこ。自分で編み出したりしたら能力以上のも使えるが反動には気をつけないとダメだからその辺は身の丈にあった魔法とか技を覚えた方がいいと思うな。神獣モードからの【アクセス】の方が新魔法より効率とかもいいしさ。自分の状態を把握するのも大事だ。」

「あ、レッドトレント。撃ちますね」


 オーナーの説明の横でニーナが狙撃した。説明聞いてた?


「ふむ、ニーナは【ライトニング】は使える?」

「あ、はい。二、三回なら」

「じゃあそれを撃たずにひたすら大きく作ってくれるか?密度は激薄でいい。できたら目を瞑って自分に使う感覚で放ってみて」


 言われた通りに【ライトニング】を自分に向けて使うニーナ。特に効果もなく霧散していったけど…


「次は【ライトニング】が消える前にニーナに引き寄せてくれ。こう……自分を磁石のように、引き付けるように」

「はい」

「何をしているのですか?」


 ニーナにレクチャー中のオーナーに姫巫女様が質問する。


「ん?索敵系の魔法を教えてます。ニーナは近づかれる前に倒さないと危ないから。目で見るよりずっと確実ですし」


 そう説明するとニーナがオーナーの言った手順で【ライトニング】を発動。再び魔力が霧散していくんだけど今度は散った雷の魔力がニーナに引きつけられていく


「あ、できました。なんかいっぱいいました。これすごいですね。一瞬しか見てる時間がないですが木の陰とか枝に止まってる鳥もわかりますよ」

「ん。慣れれば常に使える様になる。【ソナー】って名付けてる。今後は魔力を増やす訓練と【ソナー】を使える様にして行こう」

「はいっ!」


 嬉しそうに返事をするニーナ。オーナーと同じ属性も悪くないかも。ちょっとニーナが羨ましいね


 そんな二人に唖然とするミラトリアスの人達。ユニエール様も初めの頃は同じリアクションしてたっけ。オーナーと新しい魔法を作るようになって落ち着いたけど、普通は新しい魔法なんてそうポンポンとできないよね。やっぱりオーナーはおかしい


「そっ!そんな簡単に新しい魔法を!?しかも詠唱も無く!」

「新しくはないかな。俺ずっと使ってますし。あと詠唱は確実に使うための手段なだけで絶対いるわけじゃないですし」

「オーナー、手の内を明かしてはダメじゃないですか。」


 コナーがあっさりとバラすオーナーに注意する。


「まあ危ない魔法じゃないし姫巫女様も勇者も覚えられないし大丈夫じゃないか?」

「まぁ……」

「それに詠唱しようと違うの発動させればいいしね【ライトニング】」


 【ライトニング】と言ったオーナー。なのに出てきたのは【ファイアボール】だ


「え?今【ライトニング】って……え?」

「騙されたでしょ?口では【ライトニング】といいつつ頭では【ファイアボール】のイメージをする。まぁかなり訓練がいるしとっさにはできませんけどね。」

「い、意味がわからない。それに何の意味が?」

「姫巫女様?今から【ファイアボール】を撃ちます。どう防御します?」


 オーナーの言葉に理解する私達。ミラトリアスで初めに理解したのはルナード様だ


「なるほど。セリス様は【ウォーター】を使って相殺、撃墜しようとするが実際は【ライトニング】。相殺はできず自身の【ウォーター】で被害も増えるというわけか」


 そうだね。まぁ実際は一瞬の戸惑いくらいで済むだろうけどさ。


「そんなところ。ふむ、ルナードは頭の回転が割と早いな。プライドが高すぎるのを気をつけて魔法の訓練をしっかりしたら強くなりそうだな。剣より魔法派なんじゃないのか?」


 あ、それわかる。ルナード様って剣の威力が割と軽いんだよね。そっか資質が違えばそうなるか


「む……確かに剣は伸び悩んでいるが……魔法の訓練は好きじゃない……」

「あー、だから魔力量が少ないんだな。」

「くっ……」

「ルナード、お前零華と同じ訓練をしてみろよ。魔法と剣を使うんじゃなくて魔法剣を使える様にすればいい。」

「魔法剣……それも悪くないか」

「ライト君、僕には何かないのかい?」


 ユディス様が馴れ馴れしくオーナーに話しかける。どれがこの人の素なのか分からないな。もしかしたらワザとやってる?


「うーん……勇者ってチームなのか?冒険者みたいな?それによって変わるけど。ルナードとウォルトは前衛だろうから後衛か支援になるのが理想的だな。回復の姫巫女様もいるしチーム的にはまあまあいい組み合わせだ」

「そっか。じゃあ支援でいこうかな」


 そう言って決まりはするもののオーナーは雷属性でユディス様は土属性だ。今のところ情報が少ないので考えるのは暇な時にって事に決まった


「あの……何故私までチームに入ってるのですか?これでも自由は少ない方なのですが……」

「まぁ勇者といるんだから慈善活動のついでにって事で。仕事なんて第一姫巫女にでも押し付けたらいいんじゃないですか?」


 適当な事を言うオーナーの横でニーナが人知れずまた狙撃していた。倒したのはハイリザードだ。撃った後ふらついたから魔力が尽きかけかな


「あ、魔力切れた?充電充電」


 ふらついたのに気づいていたオーナーがニーナの肩に手を置き雷属性の魔力を流す


「ぅんっ!あっ!はぅ……あ、いや……入ってくる」

「ちょっとライト殿何を!」

「ん〜。同じ属性なら魔力も分けれるんじゃないかって思いまして」


 嬌声をあげるニーナ。前屈みになる勇者と怒るセリス様。ずっと黙っていたカレンは真っ赤に、ディアナはどこいった?


「……オーナー。違う属性でもできるか試すべきです。さしあたって魔力なら私も尽きかけています」


 コナー……。離れたところで行方不明だったディアナを傀儡にしておどらすのはやめなよ。無理やり魔力を使ってるだけじゃん。ニーナにリードされそうで焦ったかな?


『ライト様、楽しんでおられるところ申し訳ありませんがルクレツィア様が出発前に会っておきたいと仰られております』


 ネームレスの一人から連絡が入ったみたいだ。少し前までなら嫌な顔してたのに今は真剣な顔をしている


「了解。今日の昼過ぎにはいけると伝えてくれ」

『かしこまりました。ルクレツィア様には先ほどのニーナ様との情事を伝えておきますね

「ぅんっ!あっ!はぅ……あ、いや……入ってくる」でしたか』


 うん、セリフだけ聞いたら完全にヤってるよね


「伝える内容がちがう!情事でもない!」

『ではルナマリア様にライト様は攻めだと……今から昼過ぎまでしないとイけないと。恐ろしく遅漏……』

「やめぃ!!」

『流石はエロ魔王ですね……ではよろしくお願いします』


 あ、それもう伝わってるんだね。英雄なんて影も形もなくなっちゃったね


「なんか、お疲れ様です」

「……普通の魔王の方が良かった」

「……はぁはぁ……す、すごかった……」




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