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ニーナを招こう——カミラ

 次の日オーナーは、屋敷の執務室の机について納品書とにらめっこしていた。昨日の晩から延々と増え続けて既にルナマリア様の机並みになっている。納品書だけだというのが救いだと思う


 こうなったのは戦争に行かない冒険者が多かったから。オーナーから出された依頼をこぞって受けたらしく追加発注されていた荷運びの依頼により夜間にも荷物運び込まれていた。


 もちろん荷受までオーナーやフルー達が対応をするわけじゃない。物資の確認にフルー達が手を取られてしまうと順次送られてくるアイテムの管理ができなくなるのでするのは従業員達だ。だからと言って書類はオーナーかコナーの仕事だ。コナーは今いないからオーナーが処理している


 みんな経験のない仕事になんとか手をかけたけどそれでも人手の足りない私達は何台かの馬車と人を借りる為に商人ギルドに声をかけた。そうでもしないと管理ができない。商人ギルド側も例の税金変更を聞いて協力してくれている。まぁ馬車馬と人の食費、人件費は取られてるけどこれは仕方ないとコナーも納得済みだ。金さえ払えれば裏切る心配はないから安心でもある。まぁオーナーが握手の時に【ハートリード】をすれば問題なし。工房や屋敷には警備を立てたり立ち入り禁止にしたりもしてるからまぁ大丈夫でしょう


 それから投石機。投石機も予定では四台だったけどオーナーの知り合いの宮大工が頑張ってくれて五台目に行けそうな感じらしい。ルナマリア様が城壁の修理をほっぽってそっちに人手を割くよう言ったのが火をつけたらしくさっさと作りきって直そうとしているそうだ。そこにさらなる発注。大工さん達も無理はしないで欲しいけど助かるよね。今は出費より勝率が欲しい


 当たり前だけど食料の収集はうまくいっていない。そりゃそうだろうな〜。すでに買い占められたりして次に入ってくる食材は値段が上がっていくんだから。隣国からの輸入でもやむを得ないと聞いた。ただオーナーは屋敷にあった要らない宝石などを持ち出しては転移魔法?でどっかに行った。朝から行って昼には帰ってきたけどどうしたのだろう?


「ん……ちょっとな。」


 そういうオーナーに店長、瑠衣様、コナーが詰め寄るとこの数時間で米300キロ、野菜を各種、鶏肉、牛肉、獣肉を各100キロ。調味料が大量に香辛料もそこそこ。カチカチに凍った小麦粉でできた麺……うどんが山ほど。パスタにいんすたんとらーめん?ってのを買ってきていた。飲料水も同じくだ。おっ?なにこれ?おろな◯んしー?元気はつらつ?


「どうしたの?これ?」

「ん。反社会勢力に買わせてきた。」

「足はつかない?」

「顔は隠したし記憶も消してある。何人か怪我をしたけど問題ないだろ」

「なにしてるの……」

「戦後に食糧は必要だ。命には代えれないぞ。残った金はWHOに寄付しといた。問題はない。むしろそいつらの社会的株が上がっていいんじゃないか?」


 あとは医者だけどこれも上手く行ってない。医術をかじった事のある人間が少なすぎるからだ。回復魔法にばかり頼って発達しなかったんだろうなとオーナーが言っていた。事実外傷についてはともかく内臓関係の話を聞いた時コナーも私も全くついていけなかった。風邪の時に飲む草の根くらいしか知らないよ。


 このままでもまずいけど戦争中は応急手当てができる程度に記憶転写すればいいとオーナーに言う。


 あ、外から廊下を走る音が聞こえる


「ライト、大変だぜ。」


 なんだろ?と思ったら鋼介様が入ってきた。続いて零華様が入ってくる。


「従業員のみんなだけど、料理できる奴が少ねえ。まさか食材を前線に持って行ってそのまま食えとかいわねぇよな?」


 鋼介様は誰が何をできるかを確認に行ってたっけ。で料理できる人がいないと?冒険者なら簡単な料理くらいできると思ってたからな。ディアナに聞いたら遠い目をしてたっけ?


「うん?肉や魚くらい向こうで焼けばいいだろ?」


「貴族はお抱えのコックがいるからいいだろうけど一般兵の士気が下がるのはいただけないってルナマリアが言ってたわよ。ちゃんと料理して食べるのとは段違いらしいからなんとかしてって昨日言われたの」


 零華様まで言うんだから聞いておいた方がいいかもね。確かに何日も同じ食事だと飽きるし嫌にもなるかも。貴族は良いもの食べてるのを見たらテンション下がるかもしれないな。


 じゃあどうするんだろう?なにかアイデアがあるんだろうか?


「ちょっと王都まで行って避難してない女の人にきてもらうように依頼だしてきて。まだ城下には住民も残ってたしさ」


「輜重隊ってやつか?でも女の人ばかりじゃ危ないしなぁ。」


 ウチでも何人かは調理係に行ってもらうけどなぁ……全然足りないよね


「ライトさん。お客さんですよ」


 瑠衣様が呼びに来た。うん、いつも通りのおチビさんだ。コルが来てから目立たなくなってきたけど胸がない分一番おチビなのは間違いない。けど今は瑠衣様の事より客。このタイミングで来るって言えば冒険者、商人、ギルド長くらいだけど…


「誰だ?」


「ルナマリアですよ。」


「なんじゃそら?なんで女王が来てんだよ。どこにいるんだ?」


「今工房でコルとフルーと会ってますよ」


 どうやら薬や毒もそうだけど魔法付与の武器が気になるみたいでコルの部屋にいるらしい。ちなみにオーナーが昨日言っていた魔法陣付きのアイテムはメダルを作ったところで終わっている。あとは店長が作った魔法陣の彫り込みと染料、実験が残っている。オーナーほどじゃなくても店長も万能なのは知ってる。今日明日にでも完成すると思う。


 うん。やっぱりみんな化け物だね。あたしも少しでも近づけるように頑張ろう。奴隷だからじゃない。この居心地のいい場所に根付きたいからね


「ルナマリアに会ってくるから、問題解決を頼むよ」


「了解」


 執務室から出て工房にむかう。窓から玄関を見ると確かにルナマリア様のようだ。国印の入った豪華な馬車が止まっている。周りには十名の騎士と五人のメイドがいた。リアンちゃんはいなかったから一緒に入ってきてるのかもしれない。


 途中で執事長と合流しお茶の用意を頼んでから工房の扉をひらく。コルとルナマリア様、ウチの従業員、それとやっぱりリアンちゃんがいた。あと兵士


「急だな。何かあったのか?」


「ちょっと息抜きがしたくてね。前回とは違う派閥の貴族が来たのよ。今回はなんとか追い返したけどね」


 と疲れた顔をしているルナマリア。一回ボコボコにでもしたほうがいいんじゃない?力貸しますよ?それにしてもいい加減にしてほしいよね


「いろいろ動いてくれているみたいで助かるわ。今もコルの話を聞いてお礼言わなきゃと思ってたの」


「いや、まだそれほどの事は出来てないんだけど。」


「なに言ってるの?筆頭貴族以上に貢献してるわよ。」


 まあ私達は自分達だけで兵隊は持ってないから出兵しても自分達の食費だけで済むし。


 ちなみにオーナーは大臣の持ってた戦力は治安維持をできる程度だけ残してルナマリア様とラドニー様に譲ったそうな。正直大臣とつるんでたと思うと怖くて使えなかったんだと。


「まあ、そういうことにしておくよ。それよりお茶を用意してもらってるからダイニングに行こう。」


「ええ、今日はチーズケーキが食べたいわ」


 はいはい。ちゃんと用意してありますよ。好きですねぇ


「コル、一旦休憩してみんなを呼んできてくれ。」


「はーい。ついでにリキュールでも出してくれると嬉しいな。みんな、休憩ね」


 手ぬぐいで手を拭きながら立ち上がると隣の部屋にフルーを呼びに向かって行った






「だからどうやって運ぼうかと困ってます」


 零華様に任せた食料の運搬方法だけどまだいい案は出ていなかった。それをルナマリア様に相談している。ちなみにこの場にはユニエール様もいる為【アイテムボックス】は話に出さない事になってる。まぁオーナーの【アイテムボックス】に詰めていってもいいけどデルクリウスを倒した後、もしくは神獣モードが解除された後、強制的に眠ってしまう為除外されたんだよね。何時間戦いになるかわからない、つまりいつ起きるかわからないもん。あてにしちゃいけない。それに誰か一人の負担になるのはよくないしさ


「そうねぇ、でも難しいわよ。正直パンとスープ、干し肉は基本で当たり前だもの。変えようって意見はでるけど進まないのよね。」


 ルナマリア様がチーズケーキを切り分け口に運んで行く。一口食べる度に幸せそうな顔をしている。ウチで作れたらホールでプレゼントしよう。店長にレシピもらわなきゃね


「それもそうだけど調理できる人間がいないと変えられないと思います。」


 店長が言った。ルナマリア様の言ったものは本当に切って分けるだけだからね。確かに手間はかからないけど嬉しくは無いな


「みんなも自炊してるだろ?何か無いか?調理も難しくなくて上手くてコストの低い人気が出そうなものは」


 とみんなに聞いた時メイドさんが執事長になにかを耳打ちした。何かな?


「ライト様。お客様なのですがニーナ様という女性が来られています。」


 ニーナ?まだ避難してなかったのか。流石に宿の手伝いは終わっていいくらいなのに


「今日はお帰り頂きますか?」


 女王様が来てるのにないがしろにはできないよね。でもニーナも遠くから来てるからなぁ。オーナーも悩んでる。


 ロマの村はこの領地からは王都を挟んだ向こう側だし。何しに来たはともかく会いもせずに返すのは悪い気がするね


「仕方ない。応接室で待っててもらってくれ」


「わかりました。」


 執事長はそう言ってお辞儀をして部屋から出て行った。この後会うって言っても時間かかりそうだしな。メイドさんに言ってケーキセットを持って行って貰った。遠慮せず食べるように伝言も忘れない


「どちら様?」


「以前魔物に襲われてた所を助けた人です。」


「ライト君に好意を持ってる人でもあります」


 零華様が余計な事を言ってるけど無視している。だけど無視できたのはオーナーだけでその他全員の表情が変わった。瑠衣様、鋼介様、シオン様はニヤニヤ。店長、リアンちゃんは無表情に。恵は驚いたような顔をした。なかでも変化があったのはルナマリア様、クオン様、コル、フルーだ。四人は何か考えてるようで目配せしている。コナーも密かに魔力で影を動かしてフルーに繋いだ。ユニエール様とアルフレッド陛下一同は特に利はないと出て行く。


「ふーん…それは会っておいたほうがいいわね」とルナマリア様


「そうだね」とコル


「そうですね」、フルーだ


「それが宜しいかと」何でリアンちゃんまで?


「私も同行します」クオン様も?


 それなら来てもらった方が早いだろうとコナーがオーナーに話しメイドさんへ指示して執事長を追って貰った。


「ライトさん知ってたんですか?」


「知らない訳ないわよねぇ。温泉で裸で迫られて鼻血出して倒れた人がいたくらいだし」


「なっ!それを今言うかよ」


「ライトさん…」


 恵はもう涙を浮かべてる。大丈夫、何もなかったからっぽいから。そもそも付き合う前だったんだからセーフじゃないの?


「信じてくれ」


——「ニーナ様がおつきになられました。」


 部屋の外から執事長の声がして皆が姿勢を正した。え?なんだ?この集団面接的なのは?


「入ってくれ」


 扉がゆっくり開きまず執事長が部屋に入り扉を大きく開いた。その後ろには普段時と同じようなベストとシャツ、スカート、ブーツ。いつもと違うのはリュックを担いでいる事だ。ちょっと薄汚れててメイドさんが顔をしかめた。それくらい許してあげて欲しい


「と、突然の来訪に時間を作っていただきあ、ありがとうございます」


 ニーナが開口一番他人行儀な事を言ったけどオーナーは反応できない。全女達がオーナーの反応見てたし


「ニーナさんね。まぁこちらへどうぞ」


 ルナマリア様がリーダーとなりニーナを迎えいれた。気づくニーナ。冷や汗を流し初めている


「へ、陛下‼︎これはご機嫌うるましゅうございまふ」


 めちゃくちゃ噛んでるニーナをコルが椅子に連れて行った。ニーナの座る席はルナマリアの対面だ。


 あれ?さっきと座ってる場所が違わないか?ニーナを囲むように左右にフルー、コルが座り、対面にクオン様、ルナマリア様、その後ろにリアンちゃんが、ニーナの後ろにはコナーが距離をあけて立っている。隣には瑠衣様がテーブルに突っ伏してた。


「瑠衣ちゃん?」


 よく見ると強制的に動かされケーキに顔を突っ込んでるみたいだ。恵が心配そうに見てる。


 私は助けないよ。ニーナが無礼をしないようにしておかないといろいろ……ね


「えっとニーナさん、それで何しにいらっしゃったのかしら?ライトはあまり暇ではありませんのよ」


 おっとぉ!待って待ってルナマリア様、めっちゃ棘ある!もうちょっと言い方あるじゃないですか?姫でしょ!?そもそも今はお茶してたじゃない!!


「ふぇ‼︎あ、あのやっぱりおじまだたですか?すみません。帰ります。」


 噛んでる噛んでる。落ち着きなさいって


「邪魔なんかじゃないよ。ライトとの事をじっくり聞きたいからねぇ〜」


 なんだよコル。その何かあっただろ的な言い回しは


「ライトに温泉で迫った時の話しとか聞きたいですね」


 フルー、初対面の相手になに聞く気だよ


「ズルイ」


 何が!クオン様は全く関係ないでしょ!


 あ〜、話が進まない。


「ニーナ、来てくれてありがとう。急な再会だな。何かあったのか?」


「あ、ライトさ…様」


「様はいらないよ。もっとリラックスしてくれていいから」


「は、はい。あのギルドの依頼を見まして私でも役に立てないかと思いまして薬草などの草花なら私にも集められるので…」


「怪我に効く薬がわかるってこと?」


「ある程度ならですが…」


 お?これはアレが頼める流れじゃないか?オーナーと目が合うとわかってるってって視線で返事された。


「なら一つ頼みがあるんだ。」


「頼み…ですか?」


「一つはフルーの助手を頼みたい。彼女は薬学のプロフェッショナルだけど彼女は魔法の道具を作るから薬関係がどうにも人手が足りない。そこでニーナに彼女を手伝って欲しい。調合と効能を学んでくれないか?それからニーナには後発の補給隊に参加して学んだ知識で負傷者の手当てをする看護師をして欲しい。もちろん負けてれば来ずに逃げてくれればいい。勝ってれば看護師だ。報酬もだすよ。どうだ?」


 さらに現代医学も記憶転写してもいいな。とどんどんとやる事を増やしていくオーナー。ちなみにあたしは空手、柔道、プロレスなど対人技術を仕込まれた。知識だけなので後は訓練あるのみだ。コナーは経営に関する知識、ユーリカは調理関係だ。


 各従業員にも家事、護身術、馬術、野営の仕方などあって得するものばかり。これだけでもきた甲斐があると思うよ


 それにしても結構凄い布陣ができてきてるんじゃないのかな?コレ?


「勝つと信じています。お力になれて嬉しいです。」


「そうか。ありがとう。執事長、彼女にも部屋を頼む。」


 服は零華のを貸してあげるようにして今着てるのはすぐに洗濯行きだ。メイドさんが泣く前に清潔にしよう。そういえばこのリュックはなんだ?泥が付いてるけど?


「これは一足先に詰んできた薬草です。せめてこれだけでも渡せたらと思いまして。えっと…フルーさん?コレを使っていただけますか?」


「え、ええ。もちろん使わせてもらいます」


 そういえば周りの女達は静かだな。アレだけトゲトゲしてたのに受け入れ体勢だ。よくわからんけど仲良くしてくれるならそれはそれでいい


「な、なら私にも部屋を…」


 ルナマリア様が言ってきたけど、そんな事は出来ませんよ。使用人達を困らすんじゃありません。そもそも女王がこんなところにいていい状況じゃないでしょ。オーナーがオブラートに包んだ言い方で遠回しになんとか説得したけど結局拗ねた


 あ、ニーナはなんとオーナーと同じ【雷属性】だった。威力も魔力もかなり低めなので同じことはできないだろうけど。


 まぁその後の騒ぎと言えばうるさくて仕方ないものになりあたし、コナー、ユーリカ、店長、零華様を除く全員がオーナーの【スタンバレット】で沈黙する事になった


 フルーとコルは【霧】と【衝撃】だった。


 【霧】は水と風の複合、【衝撃】は風と火の複合の紋章らしい。無属性魔法はニーナが【クイック】。フルーは初めから使えた【クイック】と新しく【タフネス】。コルが【ストレングス】【タフネス】。うーむ、もしかして種族によっては二種得やすいのかもしれないな


 まとめると

 ニーナ 雷 【クイック】

 フルー 霧 【クイック】【タフネス】

 コル 衝撃 【ストレングス】【タフネス】だ。残念ながら【シールド】を得る人はいなかった。食材の運搬は馬車を使うしかなさそうだな。


 





「あ、食材と言えば結局調理方法考えなかったな。どうするかな?」

「やっぱ外で食うならカレーだろ」

「「「「「それだ‼︎」」」」」———ガクっ


「いや、復活してまで言わないでよ」

「いや、普通に豚汁とかにするし」

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