短期労働者雇用×三(無償)——コナー
結局全てのハムを消費しつくしました。それを解散の合図とばかりに帰っていくルクレツィア様。代金は先に戻られたリアン様が用意されているそうです。ライト様と私とカミラは商品の受け渡しに倉庫へ向かいます。ユーリカはユーリカで話のネタにされるみたいで残されています
「それで?二人の夜について教えてもらいましょうか?」
部屋の扉を開けると、ルナマリア様が恵に言った。どうやら恵は逃さないようです。危ないからとライト様に注意されたのに【月】の紋章を使って恵の手を取り二人でプカプカと部屋に浮かんでおられました。恵も無重力では身動きがとれないからかジタバタと空中でもがくだけで逃げる事も出来ないようです
「そうそう、ライトが言ってたロレンスって行商人……港町で見つけたわ。戦争が近いから終わってから来るように言ったから会うのは当分先になるわね」
「それでいい」
それだけで部屋を後にする。恵の「薄情者〜〜」という叫びを無視して扉を閉めます
廊下を進み地下室への階段を目指します。バルクティンの遺体やドラゴンの頭などがあったフロアですね。
ライト様について廊下を歩きます。横を歩けば?というライト様の言葉に嬉しくも断ります。私は奴隷ですからね。
後ろを歩きながら周りの様子を見ると出兵まで時間がないからなのか、城内もピリピリとした空気に包まれています。行き交う兵士や騎士、侍女様達が忙しなく動いておられました。
ライト様の知り合いらしいメイド様からラドニー様が既に前線を張っているのを始めて聞けました。メイド様の名前は知らないそうです。それ、知り合いなのですか?
まぁともかく、ラドニー様の事なのでデルクリウスの居場所を聞いた瞬間に動かれたのでしょう。ルナマリア様がフォローしてくれるのを見越しての先行でしょう。事実少しでも早く動くべきですからね
今現在、ルナマリア様が心底信頼できる人間は……守るだけの力はないけどリアン様くらいでしょうか。イリア様はルクレツィア様にかかりきりになるでしょうし……
「やっぱり無理してますね。ルナマリア様」
「仕方ないさ。王なんだから。俺達が居てもいなくても変わらない。ま、手伝うことは出来るがな」
「そうですね。ウチで収集、収穫予定の食料、資材だけで全体の17%。もう少し伸ばしたいところですね。」
「肉だけならなぁ……今度俺もカミラと一緒に狩りに行ってみるかな?」
「おっ?オーナー直々とは。競争しましょうか?どっちが多く狩れるか?」
カミラは紋章を得たから調子に乗っているようですね。ライト様の【ソナー】と【パラライズ】があれば獲物を無駄に傷つける事もなく狩れるのですよ?負けの確定した競争はやめておきなさい
「いいけどさ。野菜系の魔物っていないのかな?」
「ポテチーノと言う芋種の魔物は知っておられますか?南部の僻地でよく見かけると聞いたことがありますが」
「芋か。うん。食べたいな。帰ったら地図をみて考えようかな」
「もちろん我々も招待していただけますね?」
部屋の前を通り過ぎようとすると横から声がかかった。黒髪の女性がジロリとこちらを見ていた。セリス様だ。後ろにはウォルト様
「待っていてもなかなか来ないと思えば奴隷を侍らして城を闊歩とはお偉くなったものですね」
さっきハムを笑顔で食べていた人とは思えない鋭い目でライト様を見ています。一言二言交わしさっさと勇者様がいる部屋に入ります。こんな廊下の真ん中で話し込む気はありません
セリス様について部屋に入ると件のルナード様、ユディス様、メイド様が二人。そしてウォルト様
「ひぃっ!!ごめんなさい!許してください!やめて!くるなっ!」
ライト様を見るなり叫び部屋の隅に行かれるルナード様。ライト様が与えたらしい心的外傷をぶり返したようです。
「はぁ……男が近づくとこうなるのです。このような状態ではミラトリアスへ帰すわけにもいきません。さっさとお治しなさい」
「消した瞬間の言葉には気をつけさせてくださいね。次はもっと酷くしますよ?」
「なんとか私が止めよう。ライト殿、頼む」
ウォルト様は幾分か疲れた顔でライト様に頭を下げました。ルナード様の件は完全にミラトリアス側の失態なのでウォルト様が代表してライト様にお願いしておりました。ユディス様と共にルナード様が逃げられないように両腕を押さえ込まれます
しかしライト様はどんな記憶を埋め込んだのでしょうか?大の大人が嫌がる程のイメージとはいったい?
「んじゃ、消しますよ〜〜。はい、消えた」
ルナード様の後頭部に手を添えるとパチリと小さな音が聞こえ、すぐに手を離すライト様。私の横に立って様子を伺っています
「もう終わったのですか?オーナー?」
「ああ。あの日の決闘騒ぎの記憶をなかった事にしているからな。一応大丈夫だろ」
そう言ってルナード様の背中を見下ろす。確か恵を娼婦扱いしてライト様の逆鱗に触れてしまったのでしたね。
そしてライト様も一歩も引かず【アクセス】というまだライト様しか使えない魔法でルナード様と戦おうとされていたのをルクレツィア様がお止めになられたはず。魔力が感じられるようになった今ライト様と勇者様の差がはっきりとわかります。もし戦っていたらルナード様は確実に死んでいましたね。ルクレツィア様に感謝して欲しいところです
そんなことを考えているとゆっくりと立ち上がったルナード様。その様子にウォルト様もユディス様も手を掴んだまま成り行きを見守ります
「くそっ!離せ!貴様ら!よくもミラトリアスが筆頭勇者である俺に恥をかかせたな!?我がレサリウス子爵家が黙っておらんぞ!!」
振り向いたと思いきやライト様に指を突きつけるルナード様。やはりダメだったようですね。傲慢さをあふれんばかりに放出しています。というより子爵だったのですね?それでよくラドニー侯爵様を馬鹿に出来たものですね
「ん?」
誰の事?とばかりに指の延長線である自分の背後を見るライト様。あからさますぎですよ。ルナード様の指が怒りに震え周りの人達が呆れておられますよ
「ぷっ。オーナーそれ面白い!」
「貴様!!主人共々馬鹿にしおって!!」
カミラが吹き出してしまいました。確かにそんな行動にでるとは思いませんでしたが笑ってはダメじゃないですか。ルナード様がお怒りになられてしまいましたよ
調子に乗ってライト様がカミラにも指を指すと同じように後ろを向く。指されていた指を握り拳に変えられ先ほどより大きくプルプルと震えだしました。もう一回やるともっと大きく震えるのでしょうか?
「落ち着けルナード。さっき狼狽えていたのも忘れているのか?せっかく元に戻してもらったのに」
「うるさい!何故勇者たる俺がこのような目に……姫巫女様もなんとか言ってやってください!」
ウォルト様がなんとか宥めようと声をかけておられますが聞く耳持たぬと言った感じで喚き散らしておられます。対応を求められたセリス様も小さくため息をつきながらライト様に顔を向けた
「ライト殿、ハム……じゃなかった。ルナードと仲良くするように」
「ハムならありませんよ。全部食べられました……次は四日後です。しかし仲良く……ねぇ?」
次からは有料にしましょうね?ドラゴンの肉などそう手に入るものでもないのですから。あれだけ勢いよく食べるのですから多少値上げしても購入してくださるでしょうしね。
「できるか!何を馴れ合っているのです!我らに楯突くなど言語道断!!痛い目に遭わせなければわからぬ輩なのだ!!」
「ふぅん……つまり引く気は無いんだな?」
「貴様らが頭を床につければな」
依然変わらないまま見下すような瞳でライト様とカミラを射抜く。まぁ二人ともしれっと流しているのでルナード様の怒りは増すばかりですね
「姫巫女様構いませんか?」
ライト様の言葉には実力行使でオッケーか?と言う意味合いが含まれていました。
「構いませんが……しかし勇者であるルナード相手に勝てるつもりですか?あの時は不意打ちだったでしょう?負けたら腹いせにハムを作らないなど言わないでくださいよ?」
「くくく……そうだ!不意打ちでなければ貴様になど負けるはずがない」
「そうか……まだ夢を見ているんだな。覚ませてやれ。カミラ。あと姫巫女様、ハムハム言い過ぎ」
言われて気づいたからか小さく咳き込むと後ろに下がってしまわれました。これ以上言うと製造中止になりそうですものね。
姫巫女様達はそもそもフェアリーテールには出禁を言い渡されているのでライト様の屋敷にいる間にライト様との溝を埋めなくてはいけないと思いますよ。そこからラドニー侯爵様にとりなしてお許しをいただかないと。
「なっ!バカにしているのか!」
「まあな……じゃなかった。そういうつもりはない。カミラが負けたら土下座でもなんでもしてやるさ。カミラの実力を見るついでだ」
「オーナー……あたしまだ手加減できるかわからないよ?」
紋章でのちゃんとした戦闘をしろと言われて少し困惑気味になるカミラ。
「大丈夫。姫巫女様がいるからさ。好きにやってみればいい」
「どこまでも馬鹿にしおって!さっき言った言葉を忘れるな!」
「じゃあカミラが勝てば今日以降のウチへの宿泊費と食費をもらおう。これは姫巫女様の分の穴埋めじゃなくただの賭けだ。姫巫女様もその辺間違えないようにしてくださいよ」
言外にルナード様に払わせたくなければ屋敷から出て行ってもいいんだよ?という意味に気づき途端にえっとなるセリス様。姫巫女様は現在戦後のご祈祷費の一割減を約束してらっしゃいますからね。ルナード様にはルナード様への約束を取り付けます。これで姫巫女様がルナード様に気を使ってミラトリアス一行が屋敷から居なくなるも、お金を払うも此方には得になるでしょう。王都もそろそろ宿が空いてきてもおかしくないと思うので野宿の心配はいりませんよ
セリス様は宿泊費と食事との間でお悩みになっておられる様子。宿泊費はともかく食費がおかしいのも理解している様子。まぁ子爵家の方だそうなので宿泊費くらい大丈夫でしょう…………このままだとそうですね。金貨20枚程になるでしょうか
「ふん……たかが食費など知れている。大した金額ではあるまい。狡い男だな」
「じゃあそれで。場所は中庭に出るより外壁通路の方が近いな。勝負は何でもありの致命打を取れば勝ち。当たり前だけど殺したら負け」
窓を開け外壁通路に向かって【シールド】の橋を造るライト様。さっさと歩いて出て行く。私も後についていきます。ミラトリアス陣も少し遅れてついてきました。【シールド】の応用に初めて触れるルナード様は警戒していましたが他のメンバーが普通に進むのを見て安心したのか強気な顔を取り戻されていました
「ふん。どこであろうと私が負けるわけがない!」
「じゃあちょっくら胸を借りるつもりで行くね」
「獣人奴隷風情が……」
外壁通路で向かい合う二人。ロングソードを持つルナード様
「カミラ、武器は何がいい?」
「んじゃ、ショートソードで。」
後ろを向いて【アイテムボックス】を見せないようにしながらショートソードを取り出すライト様。ウェポンフィッシュから取り外した物なので鍔がない物ですね
「カミラ」
ご自分の手袋をカミラに渡しつけさせる。鍔どころか握りもないただの棒ですからね。あと紋章隠しの為でもありますし
「オーナーありがと!よし準備オッケー。行くよ。」
「ふん!レサリウス子爵家が長男ルナード・ベルガディア・フォン・レサリウス、行くぞ」
「えっと……フェアリーテール仕入れ担当カミラ!よろしく!」
互いに剣先を向けあい突っ込む二人。しかしカミラの名乗りはしまりませんね。
魔力を展開して身体を強化したカミラは先手必勝とばかりにライト様のような鋭い突き
獣人特有の身体能力をさらに底上げしている為あっさりとルナード様との距離を潰していきます
「なっ!くそっ!」
カミラの動きに焦ったルナード様は剣を身体に寄せ防御。カミラの突きを払い体当たりで突き飛ばすとルナード様。吹っ飛ばされるカミラとその場で膝をつくルナード様。吹っ飛ばされる瞬間に膝蹴りをお腹に打ち込んだんだそうです
「ほっと。」
地面に転がった反動を利用して飛び起きるカミラ。剣を二・三度振るとその場で跳ね身体を動かし始めました。対するルナード様も起き上がりました
「えへへ。恵が言ってたオーナーの技を再現しようとしたけどダメだね〜。」
「でもなかなか良かったな。ハイリザードマンくらいなら一撃だな。でもカミラは一撃の重い攻撃より速さで撹乱するようなヒットアンドアウェイがあってると思うぞ」
「オーナー。それがあたしの基本のスタイルだよ」
そういうと身体を解すかのようにその場で跳ねるカミラ。
「じゃあさっそく【熱】の紋章を使ってみるよ!」
全身に魔力を展開するカミラ。
「うりゃあ!」
掛け声とともにカミラの体から熱波が吹き荒れました。同時に露出している肌が少し赤くなっているのは何かしらの効果でしょうか?瞳の中が燃えているようにも見えます
「よっしゃ!なんか適当にやってみるもんだね!!」
剣を振ったり走り回ったりすると先ほどよりも更に能力が向上したようすがわかりました。いかに獣人とはいえ女性が片手剣をあれほどブンブンと振り回せるはずがありませんからね。
「うん。【灼体転身】とでも名付けておくか。それからカミラ。魔力が後半分ほどしかないぞ。気をつけろよ?」
「うわっ!ほんとっ?それじゃ行くよ」
カミラが動くとカミラ自体は早いのにそこに残るカミラのような何か。ゆらりとカミラの後を追いかけようとして消える。ギョッとする皆さんと気持ち悪そうにみるカミラ。思案顔のライト様
「蜃気楼か」
カミラの発する熱が空気を焼き急激な温度差で蜃気楼が起こったのだという。魔力というのは本当に不思議な事が起こせるのですね。
「同時展開か。【幻影偶像】とでも名付けようか。魔力の使い過ぎもこれのせいだな」
「うわっ!これ面白い!」
「ふざけるなっ!!この犬畜生が!!【ストレングス】!!」
「むっ……」
ルナード様の蔑みの言葉にカミラの表情が少し険しくなりました。先ほどのような試すような動きは消え完全に攻める気になったようです。動きに緩急をつけて蜃気楼の幻影を残して惑わせたり敢えて幻影の中に戻って姿を眩ませたり。対人戦などではかなり役に立ちそうですね。しかも間違えて幻影を切ると熱波を受けてしまうような仕様。
ルナード様は汗だくになりながらカミラを追いかけては幻影を切っています。【ストレングス】を使って強化されたようですが僅かな魔力を使ってしまい逆に披露が増したようです。五体程の幻影を切って維持できる魔力が無くなったのか集中力が切れたのかあっさりと【ストレングス】が解けてしまいました
「くそっ!くそっ!卑怯な!」
強化が解けた事に気付いてないのかできないのか。疲労困憊でカミラの幻影を切りかかり再び熱波の餌食になっていました
「くっ!ルナードがこんな……。【アクアヴェー——】」
「姫巫女様、助太刀は無用ですよ?」
私は魔力を操作して自分の影を伸ばして姫巫女様の脚に巻きつかせます。初めて使ったのですが案外うまくいくものですね。尻尾と同じような感覚と言った感じでしょうかね。影が身体を這い回る感触に魔法を中断せざるを得ないようです
「あ、あなたも……」
「姫巫女様?御容赦を」
「まあ【アクアヴェール】使って幻影を消してもカミラが優位ですがね」
【アクアヴェール】は水系の魔法。周囲を冷やして幻影を消そうとしたのでしょうが妨害はいけません。なのでルナード様にはこのまま頑張ってもらいましょう
視線を向け直すと先ほどと変わらず幻影に惑わされているルナード様。疲れ、魔力の消耗、暑さによって【ミラージュアイドル】がなくても幻を見そうです
「くそがぁ!!!」
幻影の中にいるカミラと切り結びましたが先に幻影を切ってしまい熱波で鈍った剣をカミラに片手でガードされていました。ロングソードをショートソードが片手で、です
カミラはそのまま空いた手でルナード様の胸倉を掴み強引に反対の地面に投げつけると態勢を整える前にルナード様の喉元に剣を突きつけます
「はい。あたしの勝ち」
「クソが……何故だ!何故獣人如きに勇者である俺が負ける。」
負けて尚カミラを射殺さんとばかりに睨むルナード様。
「あたしは仕事の時常にコボルトとかホブゴブリンとかと戦ってる。みんなが安全に狩りができるようにね。傲慢に踏ん反り返って剣をマトモに振れないルナード様とは違うの。剣を合わせて分かったけどそれじゃあウチのガーラ君と同レベルかそれ以下くらいだよ。」
まぁ彼は毎日訓練してますので持久力的に勝ってしまうのではないでしょうか
「いい武器を持つのはいい。でも武器に振り回されちゃダメだよ?まぁウェポンフィッシュの剣なんて使ってるあたしが言っても説得力ないけどさ」
「…………次は負けん」
「分かった。仕事時間外なら受けれる時は受けるよ」
ふむ、振り上げた拳は降ろされたようですね。いささかやり過ぎのような気もしなくはないですが
ルナード様から離れ此方に歩いてくるカミラ。ウェポンフィッシュの剣と手袋をライト様にお返ししています
「こんなとこかな。」
「うん。俺の強化状態での訓練にちょうどいいな」
「きょ、強化ね。【アクセス】でも神獣モードでもないんだ……ま、いっか。あーお腹すいた」
まだお昼には早いですよ。あ、ライト様が【アイテムボックス】から出来たてのから揚げを取り出してカミラに渡しました。便利なのはいいですが収支に繋がる物をポンポン上げないでくださいよ
「ありがと〜〜。オーナー」
「ほれ。ルナードも食べれば?」
身体を起こしてウォルト様から渡された水を飲んでいたルナード様。一息ついたからか少し、ほんの少しだけ険が取れた気がします
「ふん。これがから揚げか。……から揚げ?何か忘れているような……」
「忘れてるくらいだから大した事じゃないんじゃないか?ほら、二人も食べれば?」
頭を傾げるルナード様を丸め込み、食べたそうにから揚げを見ていたウォルト様、ユディス様に勧めて場を流そうとするライト様
「で、姫巫女様?どうするか決まりました?」
「えっ……それは……」
「姫巫女様、料金程度私が支払いましょう。カミラと行ったな。魔物退治には私も連れて行け。」
ん?これはお得かもしれませんね。ルナード様が支払い、カミラについていくと言う事はコボルトを狩れると言うことですね。ついでに宿泊、食事料金は少しだけ高く設定しておきましょうか。
「我らもどちらか一人は同行したい。姫巫女様の護衛もあるから全員は無理だが」
はい。労働力三人分をありがとうございます。ウォルト様もやっとウチに貢献するような動きになって肩の荷が降りたんじゃないかと思います。
姫巫女様もルナード様が自分から払うと言ったことで罪悪感が消えた模様。これはまだまだウチの料理を堪能する気ですね
「そういえばセルディアスはどこへ行ったのです?」
「あいつなら教会の使者から呼び出されて教会に行ってるはずです」
ずっと見ないと思っていたら四人目の勇者様はすれ違いになっていたのですね?
「ライト様、いつになっても来られないので見に来てみれば……早く倉庫の方へお願いします」
いつの間にか近くに立っていたリアン様。ちょっとだけ怒っておられる様子。柔らかな金髪を揺らしながらライト様の前に立つ。リアン様は背が高くないのでライト様と並ぶと妹のように見えなくもないですね
「悪かったよ。リアン。ほらあーん」
から揚げをつまみ上げリアン様の口の前に。おずおずとから揚げに近づき少しだけ顔を赤くしてパクリと食べました。可愛らしい方ですね。
「こんな……美味し……事で……ああ、幸せ」
「何気に初めてだったか。リアンには世話になってるからな。包みごとあげよう。冷めないウチに食べるようにしてくれよ」
ポンとリアン様に包みごとから揚げを贈呈するライト様。メイド様達にも分けてあげてくださいね。宣伝効果に期待です
「じゃあちょっと倉庫に行ってくるよ。コナーとカミラは執務室に行っててくれ。終わったら合流するし帰ろう」
「わかりました。いくらリアン様が可愛らしい方だからって二人きりの倉庫で襲わないようにしてください。恵に報告しますよ?」
「コナー君、君とは一回腹を割って話し合いをする必要があるのかもしれないな」
うふふ。ムキになるライト様も十分可愛らしいですよ。
「冗談です。では先に戻らせていただきますね」
「私達もまだ滞在するので待たせていただきますよ。出来るだけ早く戻るようにしてください。」
「はいはい。それじゃあな」
ライト様の離れていく背中を見送ってからルナマリア様の執務室へ向かいます。
「それでは参りましょうか」
「え、コナー嬢は奴隷のはずですよね?自由に歩きまわって問題ないのですか?」
「やぁ!コナーちゃん、カミラちゃんっと姫巫女様!ご機嫌麗しゅう!じゃあ二人ともまた今度な」
私達を見つけて挨拶に来てくれた外壁の警備に勤める兵士様です。あまりに気さくに話しかけてくるものだからセリス様も唖然。セリス様を見つけて慌てて持ち場へ帰って行かれました
「あの方はフェアリーテールの常連様でして。それに私達は二階までならある程度自由に行動してよいと言われております」
一応ライト様の奴隷である事は大体の方が知っておられるし実はルクレツィア様から妖精騎士団のバッチ(銀製。本物は金でできてます)をいただいているので見習い扱いのような感じで受け入れられています。
「そうそう。だから刺客がきてもこちらの裁量でやっつけちゃっても大丈夫なんですよ」
「カミラ、調子に乗らない。ライト様から怪我の類いは気をつけるように言われてるでしょう?」
そもそも城内には騎士様も兵士様も、ネームレス様もいるのでルクレツィア様やルナマリア様を害するなど不可能に近いでしょう。
「【ミラージュアイドル】があれば平気だもんね〜」
「そういうのを調子に乗ると言うのです。……とまあ、こんな感じですね。だから問題ありません。では先導しますがよろしいですか?」
カミラとのおしゃべりを止め、姫巫女様に前を歩く許可を得ましょう。許可を貰ってから移動しないと。こちらの方が気をつけなくてはいけません
「主人が主人で異常なら、奴隷も奴隷で異常と言うことですか……もういいです。行きましょう」
「それにしてもウォルトよ。お前の持ってるその包みはなんだ?」
「む、これはライト殿が討伐したというトライヘッドの雷の牙だ。先ほどいい奴だからとか言われて貰った。」
よく聞くと本当に何であげたんでしょう?いい奴だからって理由で済むような物じゃないんですが
「っていうかオーナーがいい人だよね〜。全く奴隷扱いしないし。設備、装備とかほぼ自由だし」
「それがライト様の器量なのでしょう。」
「カミラよ。俺はどうだろうか?」
「え?貰えないと思うけど?恵の事娼婦扱いしちゃったんでしょ?オーナー根に持ってるんじゃない?身内には激甘だけど外には辛口だし」
「…………やってしまった」




