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マイナス金貨120枚—コナー

 目が覚めました。ベッドを降り窓を開け朝日を浴びます。私の朝は早く宵と夜明けが入れ替わる時間に起きる事が多い。早く起きて暗くなれば寝る。そうすれば夜中の灯りの燃料費も浮かせる事ができますからね


「しかし……まだ眠いですね」


 私、コナー・オルブライト……いえ、今はただのコナーは奴隷です。エルゲニアの英雄であるキヤマ・ライト様が始めたお店の従業員として購入されました。


 私と共に購入されたカミラとユーリカを買ったのが英雄、侯爵、皇太后などと誰が信じますか?ただお店をする為だけにです


 労働条件も異常です。三食休憩付き、お小遣いあり、一月に六回のお休み。服も寝具も言えば揃えてくれるなんて他の奴隷が聞けば羨ましがるのは必然でしょう


 初めて会った時は妹で現店長である忍様と共に店舗の方にお越しになり、から揚げとマヨネーズを教えていただいたのでしたね。ライト様は侯爵様と仲良く争いながらから揚げを食べようと夢中でした。まぁユーリカの購入者である王妃様が食べられてショックを受けておられたのは英雄というより男の子と感じたのが大きかったです。初めて会った時の格好がトップレスマントだったのでチラチラと見ているのが可愛らしく感じたのは内緒です。


 その時に色々と口外できない内容を伝えられたのには重荷に感じもしましたが今更ですね。今では店のオーナーで主人で英雄でお慕いする男性、それが私とライト様の関係ですね。最後の項目はお知りではありませんが……


 それにライト様には恋人である恵様、今はまだ非公式ではありますがエルゲニア女王陛下のルナマリア様がおられますので正妻、側室ではなく愛人や妾にさせていただければ……といい所を見せたい所で


 なのでまずは身なりからしっかりしないといけませんね。自分のポーチから櫛を取り出しまずは髪から。横目でユーリカとカミラを見ながら手早く梳きます。これから部屋を出るのに誰に見られるかわかりませんから。


 二人には悪いですが先にお風呂に入りましょう。今日は女王陛下から呼び出しがかかっていたはず。サロンで集まっている時にネームレス様がトランシーバーを持ってきておられたので間違いないでしょう。私も皇太后ルクレツィア様に挨拶に城に行くので綺麗にしておかなければ


 ルクレツィア様は現在魔神デルクリウスの石化の呪い?によって蝕まれています。完全に石化するまではまだ半月ちょっとの余裕。私達はライト様の移動法があるのでギリギリまで修行や準備に時間がかける事ができますので実質あと半月。少し余裕を見て14日というところでしょうか。ライト様や恵様以外の騎士団の方々は焦っているようですがライト様がのんびりしているせいか何処か間の伸びた日を過ごしています。本人は至って真面目だと言っておられますが……まぁいいです。私は私の仕事をするだけです。あとライト様にはそれとなく王妃ではなく皇太后だと伝えておかなければいけませんね。主人に恥をかかせる訳にはいきませんからね


 用意できた食料、魔物の素材 (ライト様、零華様が許可してくれたもの)現在のこちらの状況など新しく報告することも多い。今のうちに軽く纏めておきましょうか


 お風呂の準備と着替えを用意しその移動中に歩きながらメモを取る。まずはライト様が持って帰ってきたヘルグリズリー、オーガロード、サイクロプス、ウェポンフィッシュ。それから零華様が倒したアーマードスタンプボア。ライト様が倒したどの魔物もAランク以上。ブラックドラゴンについては恐らくSランクでしょう。ブラックドラゴンは今回は手元に置いておくそうですが


 本当、ユニエール様が規格外とよくおっしゃるようになりましたが本当にそうだと身を持って理解しましたね。昨日も恵がSランクの魔物であるタイラントシルバーファングという虎型の巨大な魔物と普通に仲良くなってるのには肝を冷やしました。あの後タイラントシルバーファングのタマはこの領土を守るように言われ近くの森に住むようになりました。倒すのも仲良くなるのも普通は異常な事なのをお二人はわかっているのでしょうか?……お腹の毛くらい剃らせてもらえないでしょうか?Sランクの魔物なのでそれだけでもちょっとした収入になるのですが。恵に頼んでみましょうかね


 さて、先ほども言いましたが私は奴隷。お屋敷のお風呂を使わせてもらうわけにはいきません。ライト様は構わないと言うでしょうがそこはちゃんと線引きをさせてもらいました。なので私が入るのは先日大量購入……大量に雇った獣人従業員30名が住む場所にある露天風呂。


 お屋敷の玄関を抜け鋼介様が作った長屋がある場所を目指します


「おはようございます」

「おはようございます」


 長屋で火の番をしている熊獣人の男性ガーラ、羊獣人の女性……女の子ポーラ。


 熊獣人のガーラは私よりも濃い茶色の体毛に顔以外が覆われているらしい(服の下は不明。)様相をしている。熊獣人なので体格はやはりいい。歴戦の戦士とまではいかないけどどっしりとした重量感がある。本人はもっと鍛えなければと悩んでいるようですが


 こんな戦力になりそうな彼でもこの先の戦争に参加出来ない為貴族から用無しとされていました。これもデルクリウスの呪いと言うのでしょうか?争いに参加するなと命令され十全な戦闘行為が出来なくなってしまった為です。まぁ実際の所、この命令は争いに参加するなと言うだけで狩りにはいける所を見るとかなりあやふやな呪いと言えます。


 なのでそのあやふやさの穴をついて戦争だと思わず大規模な狩りだと思い込む事で戦う事が可能と知った彼は自由時間には必ず鍛えている姿を見るようになりました。昨日ライト様とお話ししてウェポンフィッシュのポールアックスかハルバートを渡すことが決まっています。今夜にでも渡されるでしょう。他の従業員達も参加する者については体格や武器と相談して授与される事になっています。そうすると防具を作る手段がないのが悔やまれますね。ブラックドラゴンの鱗や皮で作った防具ならかなり身を守れるのに残念です。


 何処かに物作りの得意な奴隷はいないでしょうか?


 無い物ねだりをやめて隣にいる女の子に目をやります。ポーラは乳白色の髪、巻いた角を持った可愛らしい女の子です。年の頃は13くらいでしょうか?本人が知らない為それくらいとしか言いようがないのです。


 巻いた角がなければ普通の人間と変わらない姿ですが獣人は獣人。この国……世界では市民でなければ粗雑に扱われ、酷い物ではポーラのような小さな子供でもあっさりと攫われ奴隷として売られてしまいます。ユーリカもそうでしたね……親御さんと会えればいいのですが……


 ポーラは容姿が優れている為、性奴隷用に育てられていたそうですが、ちょっとドジなのかお皿や調度品を壊してまわって困っていた所に今回のデルクリウスの騒ぎ。貴族の方も獣人を手放すついでにポーラもくれてやるといった感じで引き取らされました。まぁうちでも壊されたりは困るのでどうしようかと思っていたら実は演技だったと言うのが真実。貴族の方は騙されて損だけしてしまったようです。その演技力で店の看板娘でもしてもらいましょう


「……何か問題でも?」

「お手伝いしましょうか?」

「いえ……お城の方に用事があるのでお風呂に入ってから行かないとと思いまして」

「む、それは大事。すぐに沸かさせましょう」

「いいよ。私がやるから〜〜」


 二人に捕まり説明していると後ろから恵が頭を抑えながらやってきました。昨日着たまま寝たのか昨日と同じ服で歩いてきます


「めっ!恵様!おはようございます!」

「おはようございます!」

「あ、おはようございます。頭痛いから大っきい声はやめてね。じゃ、頑張ってね」


 完全に二日酔いですね。いつもは艶のある髪も何処か萎れ気味で服もくたくた。これが未来の一国の王妃候補とは誰にも紹介できませんね。それでも二人は主人の恋人である恵を見て居住まいを正しました。恵もちゃんとして欲しいものです


 二人を置いて長屋を通過。露天風呂まではもう少しです


「今日の九時半にルナマリアの御前に〜だって。黒髪さんが言ってたよ」

「知ってます。昨日のうちに連絡が来ましたよ。恵は寝てたから後にされたのでしょう」


 あふ、と大きなあくびをする恵


「そっか。あとでルナマリアに【キュア】を使ってもらおっと」

「こら、ライト様の恋人がそんな感じでどうしますか。頭が痛くてもなんでもないないようにしないと」

「うぅ……きびしいよぅ」


 アルコールを飲んだ直後ならライト様が酒精を分解してくださるのですが吸収してしまうと解毒の【キュア】を使わないと頭痛や吐き気は治りません。それを見越しての発言でしょうが頼りきりはよくありませんよ


 露天風呂の仕切りを越えて脱衣所へ。ぱばっと脱ぎ、籠に入れてお風呂に入ろうとするともたもたと脱いでいる恵をババっと脱がします


「おっ?ネームレスみたい」

「ふふふ。じゃあ行きましょう」


 二人で浴場に入るとまだ温めてない為水なのに浸かっている黒髪の女性が……セリス様です。セリス・リア・フェンネリア様が私達が入ってきたのに気づいて静かに振り向かれました。


「あ、姫巫女様。おはようございます」

「おはようございます」

「これは……おはようございます。ユーリカ嬢には気を落とさぬようお伝え下さい」


 あの高飛車な……いえ傲慢……いえ偉そうにしている姫巫女様が他人を思いやるとは思いませんでした。流石に恋愛事では調子には乗れない様子


「わかりました。お気遣い感謝します。ユーリカも姫巫女様のお気持ちに少しは楽になることでしょう」


 頷く姫巫女様。パチャリと肩に水をかけた


「えっと……今日エルゲニア城へ行くのでお湯に浸かりたいのですが温めても?」

「ええ。構いません。私も行きたいので同行させていただきますよ。ルナードとセルディアスの様子も見に行かなければいけませんので」

「そうですか。ライトさんには私が言っておきますね?九時にはサロンにいて下さい」


 右手を風呂に突っ込みながら了承する恵。


「わかりました。ユディスとウォルトも連れて行くので伝えておいてください」

「はい」

「んー。てことは八人か……ま、ライトさんなら大したことないしいいよね」


 なんならタマに連れてってもらえばいいんじゃないですか?10人くらい余裕でしょ?


「しかし本当にあなた達は不思議ですね。普通もっと焦ったりするものではないのですか?」


 お湯になったので体を流しながらタオルを泡立てる


「ほら、恵」

「はーい。本当ならそうなんでしょうけど。あ、姫巫女様、ライトさんの全力がどれほどのものか知らないでしょ?」

「はい。実際の戦闘は見てませんからね。魔力が高くて強化魔法が使えるなら勇者に斡旋したいものです。うちのセルディアスには敵わないでしょうが……」


 それならバルクティンもその方に戦ってもらえば良かったのに……とは言いません。姫巫女様は物差しをお持ちでないようですからね。そこはスルーしておきましょう。


 私達の様子を見て反論がこないのに気をよくしたようで、教会の話を始めてしまいましたが割愛させてもらいます。ごめんなさいね。姫巫女様




▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼


「んー。じゃそろそろ行くか」


 読んでいた本をパタリと閉じテーブルの上に置くといつも通りのあまりやる気の感じない声をだして座っていたソファから立ち上がるライト様


 その言葉に従って立ち上がる恵。何をしていたかと言うと夏休みの宿題だと言ってましたが……うーん。何を書いているのか全く読めません。今日から読める様になると言っていたのはどういう事なのでしょうか?言葉を覚えろと言うことなのでしょうか?


 手早く一箇所に固めて積み上げると近くにいたメイドの方に部屋に戻しておいてとお願いしています


「じゃ行きましょうか。三人も大丈夫?」

「うん」

「はい」

「ええ。問題ありません」


 装備品、食料品、従業員の様子と予定をチェックし各従業員に指示を出して来たので大丈夫でしょう。


「姫巫女様。よろしいですか?」

「………………。はい。こちらも終わりました。ユディス、ウォルト。行きますよ」

「はい」

「問題ありません」


 恵と同じく何か書物をしていたセリス様も自前の鞄に書類を詰め込みウォルト様に手渡されていました。立ち上がり扉の方へ向かいます。ライト様、恵、セリス様、勇者様方が先に退室されていきます。その際ちらっと私の方を見るユディス様。何かおかしな所があったのでしょうか?気をつけているのですがどこかダメだったのでしょうか?


 悩みながら後ろを歩き計八人でサロンをでて玄関に行く。


 今日もまた訓練に励む騎士団の方々がシルバール国のシオン様、クオン様に指導され禅を組んでいるのが見えました。いえ、鋼介様はおらず、零華様は沢山の武器を近くに並べて自作であろう雪だるまに向かって斬りつけています。


 ……ストレスの解消でしょうか?ライト様の記憶操作【ハートリード】でユーリカの告白を知ってしまった記憶を消去してもらったそうですが何かモヤモヤするらしく鬼気迫る勢いで雪だるまを破壊しておられました


 私達に気づいた皆様が振り向く。屋敷の壁際にはシルバール国国主ユニエール・ベルド・シルファニア女王陛下。その奥にはまだ少年とも言える年の王、アルフレッド・ベルド・トラファール国王陛下が。


 ユニエール様は薄く長いピンクの髪を揺らしながらこちらに歩いて来てライト様と何かをお話しされ始めました。複合魔法ユニオンマジックの実験がしたいから何時に帰るか確認をとっているようですね。ライト様も忙しい?のに次々と新しい能力を開発しておられます。ユニエール様も規格外と仰るのが身にしみてますよ


 少し生意気気で頭脳派金髪少年王アルフレッド様にはトラファールで私達のお店、フェアリーテールを作った際の利権や従業員の待遇などを話していました。でも結局めんどくさくなったライト様が店長に丸投げしていました。アルフレッド様は店長を気に入っているので結構な好条件で纏まるでしょう


「で、兄さん。どこか行くんだよね?」

「ちょっとルナマリア……女王陛下に会ってくる。昼過ぎには帰るよ」

「一緒に行ってきます」

「ん、わかったよ。今日は修行が激しそうだからカロリー高めの作るね。お腹すかせておいたほうがいいよ?」


 店長がみんなを代表して答えました。カロリー?今日の昼ごはんのことでしょうか?いったい店長はいくつレシピを持っているのでしょうか?


「うむ。いまから期待しておるぞ。」

「食後のスイーツは何かしら?」

「んー。最近かなり砂糖使ってますからね〜。どうしようかな……あ、兄さん。姫巫女様に失礼がないようにしてよ」

「はいはいっと。それじゃあちょっと行ってくるから。あ、そうだ」


 何かを思い出したライト様。屋敷の陰に向かって歩き出すとみんなから見えない位置に入り「四番」と言った


「うん。これだけいればまた金には困らなくなるだろ。」


 あ、これはまた面倒な匂いがしますね


「ブラックシーフバードとかいう鳥を取ってあったの忘れてたから下処理しといてくれよな。金目の物は帰ったらコナーにお願いするよ。近日中に換金しておいて欲しい。」

「わかりました。お任せください」

「ブラックシーフバードって……もう何も言いません。ええ、言いませんとも」


 呆れた表情でため息をついてから、もう嫌とばかりに遠い目をするユニエール様。ライト様はカラスとペリカンを混ぜただけの鳥だろと仰ってますがブラックシーフバードは金目の物なら身につけていても強引に持っていくだけの力があるのですが……。だからきっと金目の物が入っている嘴の下にある袋には持ち主の一部ごと入っているかもしれません


 そんな腕や指から装飾品を抜くような作業をまだ少女と変わらない年の店長にさせる訳にはいきません。近くにいた従業員にその旨を伝え、何人かを解体作業に回すよう指示します。これでよし


「食えそうなら照り焼きがいいな。頼んだぞ。【シールド】」


 毎度のごとく移動用にされている防御魔法を地面と水平に作り上げるライト様。真っ先に乗り込んだのは恵でした


 ここは自分の場所だと言わんばかりに進行方向の左側に座り込みました。え、助手席?何の助手をするのでしょう?


「じ…人生の助手……かな?」

「ヒューヒュー!見せつけてんじゃないよ〜!さっさとハネムーンでもどこでも行ってこーい!っぎゃっ!」


 瑠衣様が茶化すように言うとライト様に【パラライズ】をかけた小さな【シールド】をおでこに撃ち込まれ悲鳴をあげて麻痺しました。いつもの事なので誰も心配しません


「じゃ、零華、黒髪。後のことは任せた」

「御意」

「はいはい」


 二人の返事を受けて【シールド】に乗り込むライト様。続いてセリス様、ウォルト様、ユディス様が乗られました。私達三人も後ろに乗り込みます


「では出発」


 音もなく上昇するとあっさりと屋敷よりも高い位置へ。足元が透明なので軽く恐怖を覚えますね。ライト様もユニエール様もよく城の見張り台くらいの高さにいて平気なものです。零華様が低空飛行なのがどこか安心させてくれますね。ユニエール様も大概規格外だと思いますよ?





「あ、そうだ。姫巫女様。」


 しばらくしてライト様か何かを思い出したように固まっているセリス様に話しかけた。ただ呆然として地上を見下ろしているのはどうかと。だって一度乗っておられましたよね。


「なんでしょうか?」


 ライト様の声に我に返ったセリス様は警戒した瞳をむけます。ライト様もさすがにここから飛べなんて言いませんよ


「ルナードのトラウマを消しますから城の応接室に連れて来てもらえません?」


 ああ、それですか。詳しくは言えませんが48回は殺し、1回は男性機能を不能になる記憶を植え付けたそうです。その為勇者であるルナード様は金髪だった髪を白くし宿に引きこもってしまっているようです。残り1回は不明です。男性機能不能を促進させるものだとだけ聞けましたが無理に聞く気はありません。世の中聞かないほうがいい事もあるでしょう


「むぅ……貴方がやったことでしょう?貴方が出向いてはいかがで?」

「うーん。昼には帰りたいから間に合えばいきますね。そもそもルナードが原因だから放っておいても俺は構わないのですしね」

「姫巫女様、私が迎えに行きますのでどうか……ライト殿、お頼み申す」

「ん。ウォルトはいい奴だな。これやるよ」


 そう言って懐から取り出したのは全長40㎝ほどのトライヘッドの牙。あれは雷を吐く頭を持つトライヘッドの牙ですね。結構大きいのに今あげなくてもいいのでは?というかあげるのですか?あと懐から何を出してるんですか?【アイテムボックス】の魔法がばれますよ?


「む、こんな高価な物を?いいのか?」

「ルナードは本当にウォルトに感謝しないとな。ウォルトはラドニー殿との時も止めてたし人柄の良さにプレゼントだ。」


 あれだけで金貨120枚はくだらないのになんでもないように手渡すライト様。太っ腹で男らしいのですが財布を預かる身——お金の管理がめんどくさくなったそうです——としては相談して欲しいですね


「私には何かないのですか?普通彼らの主である私にまず寄贈するものですよ?」

「ん?んー?姫巫女様にあげれるものかぁ……コナー。手持ちのリストにいい物あるかな?」

「少しお待ちを。………ん?いつの間にこんな物を?」


 リストに目を通して見つけたもの。スタンプボアのハム……ですか


「これは?」

「あっ!それオーナーに言われて昨日作った奴だ。眠い中頑張ったんだよね〜〜」


 カミラがリストを覗いて来て声を上げた。そういえば昨日カミラは深夜ごろに部屋に来たのでしたね


「なぜ内緒にしていたのですか?」

「うっ……ラドニー殿用に持って行こうと思って作ってもらった。ユニエール様とかアルフレッド陛下に知られたら絶対食べるしさ。酒のアテとかご飯にも出せるし」

「ではそれをいただきましょう」


 え〜っ、と嫌な顔をするライト様。しぶしぶ懐に手を入れ紐で括られたハムを取り出すとカミラに投げるライト様。結構なスピードが出てるのにちゃんとキャッチするカミラも凄い


「カミラ。切ってくれ」

「はい。そりゃ」


 乗っている【シールド】の一部がせり上がってきた。まな板にしろって事のようなのでそれに従いハムを切り分けていくカミラ。ウェポンフィッシュのナイフですか。よく切れますね


「ごめんラドニー殿。先に食べます。ってわけでちょっと分厚いめで頼むよ」

「はーい。」


 切り分けられたハムを一人一枚ずつ取る。ライト様が食べる際ラドニー様に謝罪していた。ふむ、カミラに聞いて作ってみましょうか


 そんな予定を立てながらハムを食べる。ほどよい塩気に肉その物の旨味が引き立てられていますね。しかも脂の度合いもよく何枚でもいける逸品に仕上がっています


「忍が前に手作りしてるのを思い出してな。いや、美味いなコレ」

「カミラ、もう一枚ちょうだい?」

「私にも」


 あっさりと二本目に突入し初めは五本あったハムの塊もあと二本になりました。なんだかんだで王都も見えています。時間が過ぎるのは早いものですね


「くっ……あとは陛下とラドニー殿の分。もうこれ以上は勘弁して下さい」


 残った二つを隠すように片付けるライト様。セリス様って意外と食べるのですね


「ふふん。明日は違う物をお願いします」


 当然のように強請るとさすがにむっとしたのかライト様の表情が変わった


「部屋も貸してるし食事も提供してるのにまだ要求するんですか?ってかいつまでいる気ですか?ちょっと困るのですが?」


「えっ?」

「えっ?」

「………」


 無銭飲食とただ宿をしている自覚は無かったのですね。唯一ウォルト様だけが小さく首を振っていました。気づいていたんですね?


「だってユニエール様もアルフレッド陛下もエルゲニアに協力してくれてるし、ちゃんと対価はいただいてますからね。こちらからも技術やレシピを渡して引き出してます。戦争の準備中なんだから一人分でも浮かせたいのわかりますよね?」

「あ、王都の知り合いの宿なら安く泊めてくれると思いますよ」


 恵がセリス様に追い打ちをかけるとセリス様は顔色を変えた。手に持っていた最後のハムをジッと見つめておられます


「ま、まさかミラトリアスの姫である私を追い出す気では……」


 プライドより食事を気にしましたね?確かにここでしか食べれないものは多いですが迷うところではありませんよ?


「いや、さすがにそれは……ユーリカの事も一応助けてもらったし」

「ふふん……では文句は無いと言うことですね。」

「いや、戦争後の祈祷を最低一割の割引お願いしますね。国庫のダメージを減らさないといけませんからね」

「い、一割も?」

「いやなら宿の紹介状を書きますよ?ちなみに今日までで一割ですからね」

「くぅ……分かりました」








「…………ルナマリア?」

「なんでしょうか?お母様?」

「私の分が無くなりました……」

「なんの話ですか?」

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