百合エール様とユーリカの告白——恵
…………あ。起きました。ライトさんのベッドですね。確か昨夜は【パラライズ】をかけられて麻痺したまま眠りについたんでしたっけ。
まだまだ重い瞼を開きながら体を起こします。……ねむ
「奥方様おはようございます。あ、コナー、髪梳かし終えたなら櫛貸してよ」
私の欠伸に気づいたカミラさんが挨拶してくる。横では髪を丹念に梳かしていたらしいコナーさんが毛先を朝日に透かしながら見ていた。カミラさんが挨拶したから私が起きた事に気づいたようだった
「おはようございます。まだ尻尾がまだなので嫌です。惚れた男性の前くらいしっかりしないと。知られてないからこそ身なりからです。カミラはそういう人が居なくて楽そうですね」
根元の方から尻尾の毛を梳くコナーさん。昨日の【パラライズ】で枝毛とかできてないといいね。
私もまだ寝たい体の要求を無視して床に足をつける。ユーリカはまだ寝たままだった
「言っとくけど私だってオーナーの事好きだよ?ハンバーグくらいに。」
食べ物と同じって……。まぁ人それぞれだからいいけどさ。腕を上げて伸ばし背中を大きく反る。うっ!麻痺したポーズの時間が長かったからか体が堅い。
「ふぅ。おはようございます。」
「オーナーも起きてますよ。下が。ぷぷっ!」
「カミラ、朝から下ネタとは……しかしご立派です。……とにかくシーツくらい被せておきましょうか」
何気に顔を赤くしているコナーさん。お姉さんっぽいのに恥ずかしそうにしてる顔は可愛い。
もしかしたら昨日もそうだったのかもしれない。あ、コナーさんが本気だったら今頃ライトさんは大人の階段を無自覚に登ってしまってたのかも……危ない危ない
「えっと……とりあえずみんな着替えよっか?」
下着姿のままフリフリと尻尾を揺らすコナーさん。尻尾はショーツのゴムがあるはずの部分の一部がボタンで留められるようになっていて、そこに尻尾を通しているみたい。獣人用のパンツらしいです。ちなみに赤でした。昨日は暗くて分からなかったけど結構派手だね。似合ってるけど
胸は…………まぁ同じくらい。ただ私より背が高くてモデルのような体型なので敗北感を感じる。こっちの世界じゃ非戦闘の女奴隷は見た目の女っぽさが値段を決めるらしく、胸やお尻が大きい方が高く、小さい方が安い。もちろん可愛さや種族、犬獣人なら犬種までが査定されるそうです。査定前は金貨25枚だったというコナーさん。獣人奴隷に17枚増はまあまあという評価だそうです。私なら100枚はつけますけどね。奴隷商の人は目を洗って出直せって言いたいです
さて、私の着替えですがライトさんの足元に置いてありました。ライトさんもまだ寝てるし着替えちゃおう。最近着付けが多かったけどメイドさんに脱がされるのって未だに全然なれないんだよね。小恥ずかしというか何というか……
パジャマのズボンを脱ぎ、上も脱ぎ上下セットの白の下着ピンクのリボン付き(6千円!高校生にはお高いです)姿になります。コナーさんも下着姿だから恥ずかしくないもん
——ガチャ!バン!
「おはようございます!英雄!さぁ聞かせ……て」
「おはようございます。ユニエール様」
ライトさんの部屋に飛び込んで来たのはユニエール様だった。メイクも衣装も完璧の完全武装でした。どこかにお出かけですか?
「……まさか英雄がこんな色魔だとは思いもしませんでした。もっと好青年だと思っていたのにこんな色狂いとは…………いや、これはこれで狙い易いから構わないのですが釈然としませんね。しかも朝からこんな……」
完全に誤解されてる。いや誤解じゃない部分——シーツが盛り上がってるところ。キャッ——を見て言ってるから合ってるけど。ライトさんはまだ童貞です!!ん?なんか間違えた?
「あの……着替えてもいいですか?」
「ええ……ってなにそのブラ!ちょっと見せて!」
一瞬だった。両手を水の玉で囲われ、背後に水の壁ができたと思ったら次の瞬間凍りつき風魔法で後ろに弾かれ壁に当たる。そして両手の水が凍り腕を左右に広げた状態で磔にされてしまった
「これは……素晴らしい……欲しい!これが欲しい。はぁはぁ……ください。これ!」
壁と背中の隙間から両手をまわしブラを取ろうとする駄目女王様
朝から何するんですか!
引き剥がそうと両手に魔力を込める。ん?かなり強力な魔法だ。ビクともしない
そうこうする間にブラが外されてしまった。肩紐が持っていかれるのを阻止してくれているけどさっ!本当になにしてくれてるのっ!いくら女王様でもやっちゃダメな事もあるんだよ!
「バル「人の恋人に何百合ろうとしてるんですか?俺より先に手をださせませんよ」
ん?えっ?ライトさん?起きた?百合?ゆりぃ!?
「ゆ、ユニエール様っ!女です!私女ですよ!じゃない。私女の人!違う!そういう趣味はないんですぅ!!たすけてぇ!!ライトさん、助けて!」
ジタバタと身体を横に動かし磔を解こうと頑張りますが上手くいきません。手をこちらに伸ばしながら胸に触れるユニエール様
「違います!違うんです!私はただ……」
「何があったの!?」
駆け込んでくるみんな。外から幾つかゴンって嫌な音がしたけど何?っていうかそれどころじゃない
「ゆ、ユニエール様が私にエッチな事をしようと……」
「ち、違うんです!信じてください!ただこのブラが欲し、見たくて……」
力無く指さし位置は胸でした。だって肩紐がズレて隠せなくなったんだもん!誰か助けてぇ!!あ、ライトさんの分厚い【シールド】が胸を覆ってくれました。ふぅ……
「恵のブラがじゃなくて中身が?やっぱりユニエール様って」
瑠衣ちゃんが後ずさりながらユニエール様を警戒する。警戒より先に助けてよ
「違うもんっ!私はただ……うぇ、うっ、うえぇぇん!!」
泣きたいのは私だもん!誰か磔から外してよぉ!!
「とにかくみんな部屋から出ろ!あと女だからって恵の胸を見るな!俺のだ!」
「そういやオーナーいたんでしたね」
カミラさん。ここそのオーナーの部屋ですよ
「見苦しい所をお見せして申し訳ありません。あとユニエール様はちゃんと男性の婚約者がおられるのでその辺りはご容赦を」
シオンがリビングに集まった私達に向かって説明をしてくれた。ちなみに姫巫女様はいたらしいけど寝ていたらしくきていない
問題のユリエール様…じゃなかった。ユニエール様はクオンの膝に頭を埋めてシクシクと泣いている。
「ユニエール様、大丈夫です。信じてますから」
宥める忍ちゃんだけど身体が強張ってるのが隠せていない。それでもユニエール様は嬉しかった様で今度は忍ちゃんに飛びかかって行った
「止めてください。人の妹を怪しい道に引っ張らないでくださいよ」
飛び込んで来たユニエール様から忍ちゃんを後ろに引き下げたのでハグは失敗だ
「うるさいです、色魔英雄。なんですか!昨日全員の裸を見て恵とコナー嬢達にその獣欲をぶつけたクセに。朝でもあんな……」
えっ?えっ?っと戸惑うクオン。クオンもだよと教えるとみんなを見渡したので全員が頷く、理解すると真っ赤になって後ろに倒れていった。また気絶したみたい
「しらばくれてもダメです。ええ、ダメですとも!昨日三人を抱いたのでしょう!!?」
「えっ?そうなの?ってか今朝の状況はなんだったんだ?恵?」
「…………」
言えない。まさか私が言葉知らずだったせいでライトさんの身体が保健体育の教材にされていたなんて
「コナーもいたんだよな?」
「ええ、立派な物でした」
「うん。オーナーいいモノ持ってるね」
おぅふ!言っちゃうの?そこ言っちゃうんだ⁉︎
「ちょっ……え?えー?」
「大方部屋にあった成人本を見てムラっとしてやったんでしょう⁉︎」
「俺、寝てたよなぁ?なっ?」
「オーナーは起きてましたよ?下だけ。ぷぷっ」
頭にハテナマークを大量に浮かせたまま青くなって私を見てきた。えーっと……どうしよう?
「とーにーかーく。教えてったら教えてください」
「ああ!静かにしてください!来い!黒髪!したのか?してないのか?」
昨日の黒髪ネームレスさんが仮面無しでやって来た。かっ!可愛い。白い陶器のような滑らかな肌に大きくて勝ち気な目。すらっとした鼻に小さな口。純粋な美少女でした。お嬢様って感じなのになんでネームレスみたいな裏方仕事してるの?
「しておりませんよ。ご安心ください。ただ……ゴホゴホ……ではこれで」
「その濁した部分を……」
「ライト様、世の中今知らない方が良い事は多々あります。私を信じて今は我慢していただけませんか?」
両膝をついてお願いポーズでライトさんを見上げる黒髪ネームレスさん。涙まで浮かべてる。自分の武器をわかってますね
「どうしても知りたければ……三人の乙女の秘密を無理矢理に暴くしかありません……では」
話は終わりとばかりに離れていく黒髪ネームレスさん。乙女の秘密と言われ私達に【ハートリード】を使うか悩みだしたライトさん。今だとばかりに部屋から出るネームレスさん。寸前に手を顔に持っていきホッペを千切った?千切ったぁ⁉︎
「ライトさん!ちぎっ!ちぎった!ホッペ」
「恵様、ネームレス様は仮面をつけてない時はマスクをしておられるのです。精巧な物で見分けがつかない物だそうです。ユニエール様がいた為仮面ではなくマスクで姿を現したのでしょう」
ライトさんに話しかけるとコナーさんが代わりに解説してくれた。
はあ〜!すごいなぁ!怪盗◯ッド並みの変装だなぁ!
「よし、とにかくしてない!してないったらしてない。ユニエール様?今度色魔英雄って言ったら分かってますよね?」
はい、出禁になるんですよね?ライトさんに釘を刺されて苦い顔になった。女王でもプリンには勝てないんですね?
「くっ……仕方ない。素直にお願いするしかないようですね?」
「え?ダメですよ?」
「なんですとぉ⁉︎」
あっさりと断られるユニエール様。ルナマリアを受け入れたと同時に王妃様の企みをある程度理解して結構強気なライトさん。いや、自分が同盟の要だからって強気すぎるでしょ?
「だって移動方法とか新魔法まで披露してるんです。リターンを要求しますよ?」
「ではクオンをあげます」
即答で自分の妹を差し出す姉のシオン
「決めるのはやっ!ってかクオンを苛めるの止めない?あと物みたいにあげるとか嫌だからな。」
「ではクオンのしょじ——」
「シオン?一回お空に行ってみようか?」
目にも止まらぬ速さでクオンを攫って庭に出ると金の両手で後ろから脇に手を入れ放り投げた
「ほーら、高い高い!」
ちょっ!ライトさん高すぎですって。ああ……シオンがあんなに小さく
「【シールド】」
降りてくるシオンに向かって長い蛇の様な【シールド】を作り上げるライトさん。コレってジェットコースターじゃ?
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「っと、ほい、おかえり」
コースターの出口で待ち構えシオンをキャッチするライトさん。怖かったのはジェットコースターか高い高いか……両腕を胸の前にだしたまま固まっていた。
「クオンでダメならシオンなら……」
「ユニエール様、やめましょうね?【シールド】の絨毯のコツでも教えますから練習でもしましょう。その間にご要望のプリンでも用意してくれるでしょう。デルクリウスを倒さないとプリンも食べられなくなるので訓練に時間を取らないといけない事をわかってください」
っていうか冷蔵庫にあるもんね。プリンで釣りましたね?
「零華達も訓練しておけよ?常に魔力を動かしてるだけでも訓練になるからな。」
「はいはい。とりあえず色魔英雄の鼻血で汚れた露天風呂の様子を見たらね。」
ぐっと唸るライトさん。完全に誤解だった為零華さんはライトさんの困った状況に楽しげだった。ライトさんもからかってるのがわかってる分怒りにくいみたい
「瑠衣ちゃんと忍ちゃんは午前中は訓練して、私はお昼からするから。夕方は全員でね。恵ちゃんは一応今日は休んでコナーさんの手伝いをして?王都で買い出しとかあるしさ」
「そろそろ入って良いか?いい加減廊下で待つのは飽きたぞ?」
カチャっと小さく扉を開いて覗き込む陛下。子供には早い内容の話なので少しだけ退出して貰ってました。あ、廊下には鋼介さん、勇者さん、護衛(男)がおでこを真っ赤にして気絶していました。私の悲鳴で駆けつけてきたのにライトさんの【シールド】で頭を強打してしまったそうです。ゴンってその音だったんですね
「あ、どうぞ。」
忍ちゃんが答えるとにこやかに入ってくる陛下。微笑ましいけど、忍ちゃんの見る目は弟を見る目なんじゃないかな?黙ってるけどさ
「シノブは今日は訓練か?我も見てて良いか?」
「見るのは訓練じゃなくてシノブでしょう?アルフレッド陛下?」
「なっなななな何をっ!?」
「デルクリウス討伐まで時間がありません。やり残す事がない様にしないと」
時間がない……やり残す事……未練……
頭の中をネームレスさんが言った言葉が繰り返されます。もちろん買い出しも大事だけど訓練した方がいいんじゃないかな?
「あのっ!奥方様!あた、私もコナー姉と一緒に行ってもいいでしょうか?」
急に声をかけてきたのは今まで話に入ってこなかったユーリカだった。急にどうしたのかな?まぁいっか。
「ん、いいよ。どこかでお茶でもしよっか?」
訓練は夕方からやればいいよね
「では私達は買い出しに。カミラ、あなたは早速人手を使って狩りに行ってください。時間は日が沈む前まででお願いします。索敵に兎獣人の方を連れて行くのを忘れないように」
熊と狼、犬獣人をメインにチームを組んでもらっているそうです。コナーさんは指揮官でカミラさんは隊長みたいですね
「近隣の町や村には私の手の者をまわしましょう。お館様は安心して訓練をしてください」
こちらは執事長です。ライトさんが食料の備蓄を城に渡すという指示、まぁ王家から公布されるから同じなんだけど少しでも早い内にやっておこうって決めたから動いてくれるようです
「ありがとう。じゃあコナー、恵をよろしくな」
「お任せくださいな」
柔らかな笑顔を向けるコナーさん。ライトさんは数秒間停止してしまいましたがすぐにユニエール様と訓練するみんなに声をかけて出て行きました。ライトさんって意外と気が多い人なんじゃ……?
「じゃああたしも頑張ってこよ〜っと」
どこに持ってきていたのかはわからないけど今の格好は完全な冒険者だった。ブーツもベストも手袋も完備だ。武器はショートソードと小弓。疲れにくく手慣れた物をライトさんがあげたそうです
「今日、頑張ったらあのサイクロプスかドラゴンの素材で装備作ってもらおっかなぁ?作ってもらえたらこれからもバシバシ捕まえちゃうんだけどなぁ」
カミラさんはライトさんが負けるとは一筋も思っていないみたいだった。楽天的っていうか信頼してるのかはわからないけどポジティブな所は見習わないとね。まぁ装備については値段の割が合わないと思うけど
「また借金奴隷に逆もどりしたいのですか?あのサイクロプスだけでもカミラを百人買えるくらいですよ?」
「へへーんだ。アレは死んでるから三千枚から増えないけど私は生きてるからそれ以上稼げるもんねー。オーナーにお願いしよーっと。あ、コナーは仕入れチームの武器もお願いね〜。素手は無理だよーってね」
「あ、それくらい私だすよ。お金ライトさんが出すから減らないんだよね」
「ありがとうございます。奥方様。お願いしますね。出かける前には購入リストあげときますので」
カミラさんも出て行った。獣人さんのチームを作るって言ってたし寮の方かな。私達も遅くならないように動かなきゃね。メイドさんに活動用の服を選んでもらい着替える。
「あれ?コナーさんもユーリカも昨日と同じ服?」
「私達はまだこれしか持っておりませんので」
「ぜ、全然オーナーに返済できていませんので。お小遣いなんでないです。屋根があって三食食べれるだけ幸せですから。ですよね?コナー姉?」
「そうね。オーナーに感謝しましょう」
頼れるお姉さんしてるね。ユーリカも信頼してるのが見てとれる
「よーし。今日は奮発して三人の服を私が買っちゃうぞ?」
王都でしなきゃいけないことができたね
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はい、やってきました!王都です!
「おじさん!これ全部ください!」
絶賛買い物中です。パンツもブラも三着ずつ。服も三着、上着も一着、靴を二足(コナーさんはハイヒールも一つ追加で買いました)。安いアクセサリーも幾つか買いました。あと新しい従業員の分もです。衣服の値段は食糧とは違い以前のままです。武器は少し上がっていましたが安物なのでそれほど上がっていませんでした。まぁ一割増くらいでしょうか
ただ私達も買ったしお店も売れるから嬉しいはずなのにお店の人は顔を引きつっています。それというもののコナーさんが大量買いに割引要求したりおまけできませんかと言ったからです。商人には必須スキルなんでしょうか?ロレンスさんもしていたし。
「ふぅ……まあまあいい買い物ができましたね。本当はもう少しいきたいところでしたが」
アレで本気じゃないんだ⁉︎ちょっとヒートアップしたからか耳がぴーんと立ってます。楽しかったんですね?
「恵様の資金なので削れる所は削らないと。新しい従業員には申し訳ないですからね」
一か月経たないとは言っても古株の三人なんだからいいのに。
「みんなにはオーナーと店長が半分ずつ出されてるのでそちらの分も頑張りましたけどね」
メモを取り出し書き込むコナーさん。いくら使ったかを細かく記載しているようだった。お金の管理をしっかりしてくれているみたい
「では、これは速達でライト様の屋敷に送っておいてください。」
浮いた分のお金でさらに速達の手続きをしてから店を出ます。大通りに面した店なので人通りが多いです。ただし初めて来た時と同じ様に兵隊さんばかりですが。王都中を駆け回り必要な物資を集めているようです。もちろん王都だけじゃなく周辺の都市でも同じことになっているでしょうが
「ふぅ……お昼ですか。結構時間をかけてしまいましたね。そろそろお腹も空いたでしょうからごはんにしましょうか……ユーリカも何か聞きたい事があるんでしょう?」
「う、うん。」
そうだろうね。そうじゃないとあんなに強引に会話に入ってこないよね?
「では妖精の止まり木亭に行きましょう。ニーナの様子も見たいので」
何それって聞くと宿屋の主人さんが私達が泊まったり誕生日会を開いたりするから主人さんが私達が贔屓にしていると世間に打ち出した結果そういう名前をつけたんだそうな。男性客だけじゃなく、スイーツ系も宿屋に卸し始めたので女性客も増えたそうです。まぁ最近は行ってないですけどね
「うん。分かったよ」
中央通りを歩いて進む。裏路地を見ると以前より増えた気がする浮浪者達。奴隷商にすら目をつけられない彼らはどうなっていくんでしょう?なんでライトさんは彼らに手を差し伸べないのでしょうか?
「ダメですよ?」
彼らを見ているとコナーさんが注意してきた。何故だろうと考えていると解説してくれました。
まず彼らは奴隷と違い生きる意志がない。もし本当に生きたいなら奴隷になろうと自分を売るはずです。働くのが嫌だ、疲れたくない、どうしようもないなどの想いから自分でああやってるのです。
つまりニートですね。働きたくないでござるよって人だよね?
コナーさんは生きる為なら戦闘奴隷にされ戦えと言われれば剣を取りますが彼らにはそれすらないのですと言って視線を彼らから切った
「まぁオーナーも手をつけようとしてましたが、身元不明では敵の間者だったりするのでオーナーも困ってるようでしたよ。」
「ふーん」
「あ、テーブル空いてるみたいなんで座りましょう」
あ、いつの間にか着いてた。ユーリカが中の様子を見てくれたようであっさりと座れたのはラッキーだった。手荷物をテーブルに置いてとりあえず椅子に座る
「ペリノ、よろしいですか?」
忙しく店内を走り回る犬獣人の男の子に声をかけるコナーさん。開店日は店の余り物をごはんにしているそうですが閉店後、休日はこちらに食べにきたりもするそうです。よかった、節約ばかりしてるんじゃないかで心配してたんですよ。
適当に注文して暫し待ちます
「さて、ユーリカ?何を聞きたいんですか?」
「えっ!あっ?その……」
「もしかして私がいると聞きにくい?もしそうなら席を外すけど?」
「いえっ!その〜。昨日の夜の……ことなんですけどっ!」
「うん……って昨日の?っていうとライトさんの部屋の?起きてたの?」
「は、はい。……いやあの……あんな喋っていたら起きちゃいますよ。それでですね……」
膝の上に置かれた手が震えだした。何だろう?そんな大変な事なのかな?
「コナー姉が奥方様に教えていた事を教えてもらえないかって……あのゴーストになるんですよね。童貞の男の人が死ぬと」
「昨日の?ってあの……夜伽ってやつ?」
人の耳があるからユーリカに耳打ちして話す。こんな話昼間からするのってどうなの?
「昨日の話を聞いていたんですね?ええ、そうだと言われています。しかしオーナーは大丈夫ですよ?恵様か陛下か……お二人が無理なら私がする事になるでしょう」
コナーさんが言ったのはライトさんと添い遂げる優先順位……か。やっぱり私が優先されてるんだな。でも話からするとユーリカもライトさんが好きなのかな?
「ううん……私、オーナーに恩があるのにこう言うのごめんなさいって思うんですけど私…………」
ぐっ、と何かを堪えるように顔を上げ口を開いた
「鋼介様が好きなんですっ!!!」
「ええええええええええええええええ!!!!!!」
「やっぱりか……」
「ち、ちなみにどの辺りが?」
「だって優しいし…………かっこいいじゃないですか?」
「かっこ……いい?」
「皆さんは鋼介様が一人で私達にしてくれた事を知っていますか?内装の三割くらいは鋼介様が用意してくれたものですし、店で使ってる銀の器だって鋼介様が見つけて来て作ってくれた物なんです。ライト様は知っておられるのですが黙ってくれてるんだと鋼介様は言っておられました。そういうのは言わずになんでもないようにやるのがいい男なんだってにこやかに言っておられました。そう言われると確かにとか思っちゃったんです。」
それからもルナマリアの記念パーティーの時にトイレに行く途中にあった鋼介さんに可愛いと褒められたとか、私が寝てる内に三人がこちらに来る道の魔物を狩っておいたりしてくれてたとか嬉しそうに話した
そう言えばシオンが途中でふらっと出て行きましたって言ってたっけ。
話終えるとむふーっと満足気に息を吐いたユーリカ。運ばれてきたジュースをグイッと飲み干して喉を潤した。次に体がしっかりしてるとかギュッてされたいとかちょっとバカっぽいのが可愛いとか、片想いにあるような惚気を聞かされました。
再び喉が渇いたのかコップを煽りましたが落ちてきたのは雫だけ。それを見ていたコナーさんが自分のコップをユーリカに渡しました。ユーリカは飲んで良いのかコナーさんの顔を窺いニコリと微笑むコナーさんにオッケーが出たのを確認し、半分だけ飲みました
「まぁ私も人の事を言えませんから否定はしませんけど夜伽について聞きたいという事は鋼介様とするって事でいいのですか?」
「うん……きっとこれ好きって事だと思うから。」
「それを悩んでいたのですか?ここ二・三日元気がないと思ったら」
「だって魔神だよ?絶対死なないなんて分からないじゃない!しかも死んだらゴーストになるとか…………可哀想だよ。だからせめて満足させて送り出したいの」
ここにも悩んでる娘がいた。でも全く一緒なのにユーリカはもう覚悟をしてるみたいで、それを羨みながらも踏み出せない自分に歯噛みする
「わかりました。ただ教えるにも教材がないので恵様が良ければ今夜にでももう一度」
ライトさんを教材にって事?またライトさんが見られちゃうの?コナーさんがまた見本だけで済ますって信じちゃっていいのかな?
「…………返事はギリギリまで待ってもらっていい?」
「は、はい。出発前日までなら……」
「しかし鋼介様には零華様という想い人が……」
「でも……零華様は鋼介様とするかは分からないじゃないですか!?せめてするならいいです。しないのに……そこまで好きじゃないのならユーリカが鋼介様の横にいたっていいじゃないですか!?」
震えながら涙を浮かべるユーリカ。そこまで鋼介さんの事が?
「そうですね……ただユーリカはライト様の奴隷だという事を忘れてはいけません。ライト様にお伺いを立てましょう」
「うん、話は聞いた。」
「うわぁっ!居たんですか!」
後ろから聞こえたライトさんの声に驚いた。
なんで?ユニエール様と訓練してたんじゃ?え?ユニエール様だけは【シールド】の移動法をマスターした?
「ユーリカの好きにしたらいい。本当は奴隷である必要はないんだ。奴隷扱いをする気はない。」
「あ、ありがとうございます。オーナー!」
「でもまだ忍の店で働いてくれると嬉しいよ」
ライトさんがお願いすると涙を溜まっていた涙をゴシゴシと腕て拭いた。そんなに強くするから赤くなってるじゃない
「それは……はい。精一杯頑張ります」
「それはそうとコナー君、君にちょっと聞きたい事があるんだが?」
「あらあら……乙女の秘密を聞くおつもりなのですか?」
二の腕を掴んで店の隅に行くライトさん。連れられるコナーさんは困った顔(偽)をしていた。
ここだけ見るとコナーさんに振られたライトさんが寄りを戻そうと強引に迫っているように見えます
「お待たせしま……あら、皆さん今日はご来店ありがとうございます」
テーブルにお皿を置きながら私達に気づいた。一通り見てライトさんがコナーさんと話しているのを少し寂しそうに見ていた
「ニーナ、大丈夫?」
「はい、店長がちょっと階段から転げただけなので今日、明日まででしょう」
「そう……何かあればすぐにウチに来てね」
「ありがとうございます。あ……はーい!では」
話してる途中に他のお客さんに呼ばれ離れて行く。こんな時勢でもお客さんはいるんだもん、頑張ってね
「うぅん。ここのスープは結構いけるわね」
なんでスープを勝手に飲んでるんですか?ユリエ……ユニエール様は?
「それで?ユーリカ嬢はコースケ殿に?」
「は、はいっ!あのっ!その……はい。」
そう言えばリアンから薬を渡されてたっけ?イリアさんからも色々と貰ったからそれを渡してあげたほうがいいのかな?
「オーナーからも好きにしていいって言われたので、そのぉ……コナー姉からちょっと勉強してからにしたいと」
「なるほど。どうやらコースケ殿のゴーストは狩らなくてよさそうですね。ライト殿で印象が薄いですが彼もかなり強い部類の人間ですからゴーストにならないなら問題なさそうですね」
ユーリカに笑顔を向けていたユニエール様が目をスッと細めて私を見た。話の流れから貴女は何してるのって感じがヒシヒシと伝わってくる
「なんなら私が相手をしても構わないのですよ?国一つの為なら彼も許してくれるでしょうから……」
「ユニエール様、必要ありませんよ。」
コナーさんが帰ってきた。ライトさんはいない。奥の窓が開いてるのが気になった
「ライト様の為なら身体を張れる女は沢山おりますので」
「コナー嬢、貴女もその一人って事ね?……恵?ユーリカ嬢の話を聞くだけじゃなくて自分もどうするか早い内に決めなさい。するしない、覚悟ができたかできないか。周りの人間にだって同じ迷いを持つ者だってきっといるでしょう。無理なら無理と他の者の気持ちを決める為の時間として配慮なさい」
そう言って店から出て行った。私は動けず話せず、まばたきもできずにユニエール様の言葉に呑まれていた。これってそんなに重要な事なんだと今更ながらに思い知らされた
「……まだ時間はあります。ご自分の気持ちを大事にして下さい」
コナーさんが私の背中に手を置いて話しかけてきたけど……もうどうしたらいいのかわからないよ
「帰りましょうか……」




