表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/87

ライ○セイバーは慎重に扱おう——ライト

―――――――――――――――――――――――――――



 目覚めた俺が見たのは、どこかの部屋の天井、窓、そして隣で椅子に座っていた恵と忍だった


「何時か分かるか?」


 恵が水を渡してくると一口飲んで口を潤す。忍がスマホを取り出して確認する。あ、そりゃそうか。持ってるよな。俺は何故か腕時計なんて選んでたけどさ。まぁ買い取って貰えたしいいけどさ


「大体10時くらいかな。町に戻った時9時くらいだったから」


 はっきりした時間を言わないのは正しいか分からないからだ。教会のベルで時間合わせするとなると一時間単位でしか鳴らないからまだしていない為だ。


 スマホで50分を示しているのに教会で今が◯時丁度と言われるのもちょっとめんどくさい。だから合わせてないし合わせる気もないらしい。そのズレの為の曖昧さだそうだ


「ここはロレンスさんの泊まってる宿です。すみません、勝手にお金使いました」


 寝ていたから仕方ないし、皆の分もまとめて持っていたから当たり前の事だ。零華の持っていた小銭じゃ泊まれないだろうしな


「あと勝手に飯も食ったぜ」


 窓際のテーブルに座りながら食後のお茶……じゃなく水を飲んでいた鋼介が言った。コップをテーブルに置き立ち上がろうとしていると部屋の扉が叩かれた。鍵はかかっていないな。ちゃんと戸締まりはしておけよ


 忍は扉を開け来客を確認すると中に招き入れた。入って来たのはロレンスさんだ。簡単な挨拶をするとベッドの横に立つが俺は動かない。まぁ寝たまんまですみませんと言って許してもらおう。実際体がダルいのだから仕方ないよな


 ここはロレンスさんが泊まっている宿だからいるのはわかる。でも何をしに来たのだろう。エリザさんは一緒じゃないのだろうか?


 考えていると皮袋を手渡してくる。受けとると皮袋の中からジャラッと音がしたので袋を開くと金貨が入っていた。俺はロレンスさんを見ると苦笑いをしていた。


「まさか言ったその日に仕事を終えるなんて」


「あぁ、もう確認してくれたんですね」


 ロレンスさんのセリフと渡された皮袋の意味がわかった。後、オークの頭が渡されたのかもな。棍棒の換金分も入っているらしい。何枚かの銀貨も一緒に入っているのが見えた


「忍、ブレザーのポケットに入ってる物を渡してくれ。」


 忍はブレザーのポケットに手を入れ小さな小箱を取り出す。箱を見たロレンスさんはびっくりしている。っていうかこれが目的で俺達に依頼したんでしょうよ


「あぁ良かった。もう駄目かと… 君達が奴を退治したことを知った輩が先に取ってしまうんじゃないかと…」


 後で聞くとロレンスさんに会った時、回りに沢山の人が退治成功の知らせを聞いてざわついていたらしい。中には馬車の荷を狙っていた奴もいたんだろうな。あの場で回収できた荷物はその回収者の物になるんだろうから。


 ここでロレンスさんのさすが商人と言うところだけど、既に回収チームを派遣しているそうだ。頭を受け取りすぐさまどこかの建物に向かいすぐに手配してきたらしい。その10分後に現場に向かう2台の馬車が門を出て行ったんだと


「あの馬車はね。父が走らしていてね。奴にやられてしまったんだ。だから実は仇撃ちも依頼に入っていたんだよ。」


 場がしんみりし、さすがに鋼介も喋れない。さすがに話が暗いと空気読むのな


「逃がせて貰った私もコレに気付かずに逃げた。まあそのおかげで助かったのかもしれない。魔物は強かったろう?だから無理に討伐とは言わなかったわけだが」


 忍の手に握られた箱を両手で抱えるように受け取った


「中身は何ですか?」



やっと口を開いた鋼介の一言目は空気の読めてない一言だった。やっぱり鋼介は鋼介だ


 ロレンスさんは鋼介の言葉に箱のフタを取ると中に入っていた装飾入りの箱を取りだし、金の止め具を外しフタを開けた。中には金のブローチがある。中央で赤く光るルビーが印象的で細かいデザインが刻まれたそれは芸術品だと言えそうだ


「名のある工芸師に作ってもらったんだ。エリザにプレゼントしたくてね」


 一呼吸おき、俺を見る


「皆さん、ありがとう。父の仇を取ってくれて」


 その後は今回の冒険の話をしたり、俺や鋼介の体調を気にかけてくれた


「さて、今日はこれで帰るが、私の力に慣れることなら出来る限りの事はしよう。では」


 小箱を手に掲げ部屋を出ていった


「よし、とりあえず5日間の宿代は手に入れたし。つぎに必要なのは服と移動手段だ。明日揃えよう。」


 俺はベッドから出ると夕食らしい食べ物に手をのばした


 今だに少し避けられてる俺はもちろん鋼介と一緒に部屋の隅で食べてるさ。



はぁ……気絶したままの方がよかったかも……




 翌朝、俺達はロレンスさんを訪ねた。彼なら服と移動手段の購入について聞いても適格に教えて貰えそうだからだ


 まずは馬…馬車だ


 さすがに車はなかった。免許もなければ運転技術もない。だから車は必要ないしいいけどさ。


 貸し馬屋へいく。借りるわけじゃない。一緒に販売もしているみたいだからだ。店に入って見ると馬、馬、馬。馬房に一頭ずつ整列している


 ロレンスさんに質問して良さげな馬を見つけてもらう。鋼介が髪の毛を食まれるのを見ながら質問していると馬にも色々いることがわかった。


 馬車用の馬や雪国仕様の長毛種や軍隊が好んで使うという軍馬がいる。もちろん馬車馬を選んだ。当たり前だよな。一人ずつ馬を持つ必要ないし、二頭で引く屋根付きの馬車を買った。


 買ったけど…買ったはいいけど馬は動かせない。乗ったこともない。近くで見たのもロレンスさんの馬車馬をみたのが初めてだった。


 ロレンスさんに正直に言うと馬車を買った店に俺と忍に教えてくれるよう話を着けてくれた。別に全員でも良かったが後でみんなに教えればいいしな。


 今は店にキープしてもらい明日引き取りにくる事にして次は服を買いに行こう。正直【女の買い物】になりそうな気がしたが一応大体を決めていたらしく、それぞれ色違いなだけで済んだ。昨日二人が喋っていたのはこれのようだな。年長者の零華も賛成していた。気を使ってくれたのかしれない。今度余裕があれば自由にしてくれ。鋼介なら荷物持ちに丁度いいから連れて行くといい


 で、ここではロレンスさんは幾つか買うから安くして欲しいと交渉してくれた

結果相場の6割で買えてしまった。商人ってすごいな。こんな人に初めて会った時交渉なんていう危険な事しようとか……後悔するところだったかもしれない


 凄腕商人様お陰でまだまだお金には余裕がある。報酬の2分の1以下になったけど当分は困らない。多少贅沢しても問題ないくらいだ


「ロレンスさん。ありがとうございます。助かりました」


「いや、商人の腕の見せ処さ。私も今後は贔屓にしてもらえるからね。いい商売だった」


 他にも旅に必要物を購入することになった。食器、服、薬、などなどを買いに走る。薬は胃薬とか解毒剤のような物でゲームの定番の傷薬やポーションは売っていない。あれば地球の病院で高値が付きそうなのに


「君たちはこれからどうするんだい?行く宛はあるのかい?」


 正直に目的を話す事にする。さすがに地球…夢から来た人間と言うのは避けたけど、当たり障りのない部分を話すことにした。話をするうちにだんだん困ったような顔になるロレンスさんだったが、今回の仕事を思いだし止めはせず無事を祈ってくれた


 ちなみにエリザさんには怒られた。ただし全然怖くないどころかちょっと和むレベルだ。スマホがあればカメラに収めておきたかった。本人は本気で心配してくれているようだったので、謝っておく


 明日は仕事、明後日は違う町に出発らしいロレンスさん達は、「またいつか」と別れを告げ、俺達も世話になった商人に握手を交わし別れた。本当に世話になった人達だ。安全を祈ろう



 部屋に戻ると俺達はさっき買ってきた服に身を包んだ。俺と鋼介は戦いやすいように動けるズボンとまあまあ仕立てのいいシャツに皮のベルトと靴。恵達は女物のシャツに毛と麻が合わさったベストとスカート に皮の靴。移動時用のズボンも併せて購入している


「あとみんな手袋を着けて下さいね」


紋章を隠す為の皮の手袋と女性用の薄いシルクの手袋もあった。俺の場合剣を握るし助かる



 着替えを済まし佇まいを直すと一端の貴族や騎士に見えなくもない…と言われた。別に嬉しくはない。だって普通の高校生なんだからさ。ま、これで制服じゃない分怪訝な目で見られることはないだろう


「ライト君、お願いがあるの。」


 零華は神妙な面持ちで言った


 なんだ?まさかどっか行けか?そんなに息子が成長した姿を見たのがショックだったのだろうか?直接は見てないはずだけど……


「午後からは少し訓練をしてみたいの。昨日は結局援護どころか足手まといだったから、ライト君は倒れちゃうし、鋼も腕が痣だらけになったし」


 ホッ、違うか…過敏になってるな。それにしても訓練か。まだ実際に使えてるわけじゃないから訓練することに不満はない。是非やっておくべきだろうな


「俺も無意識に使ったからみんなで訓練しなくちゃな」


 部屋を借り移動手段も武器だってある。あとは実力が伴えば立派な冒険者だ。特に自分たちは紋章の力もある特別な部類に入る人間だ。この先に戦うであろう魔物の長とも互角以上である必要があると考えていた


「よし、昼からは紋章術を訓練しようぜ」


 鋼介は直接持ったり握ったりは出来ないものの触れたり軽い作業ならできるとふんだらしい。


「最初は一緒にやるが、サボるなよ」



 前置きをしてから昼食をとる。訓練に備えて結構な量だ。しっかり食べることにした。町の井戸で買ったばかりの水筒に水だけ入れると昨日の戦闘場所より川下で特訓することに決め、早速昨日の要領で石を拾って投げた


 ただ投げるのではなく、紋章を浮き上がらせてから使うことで石に雷の力を込めることから出来たらしい。まだあの時のような威力は出てないけど即席にしては上々だ


 川原にある大きな岩に向かって投げると術の力を乗せた石が穴を穿つ。力を調節し、二三個投げる。さらに調子に乗って次々投げる。そのたび岩は穴があいていく


 最後には崩れてしまった…結構大きい岩だったのに……やり過ぎたな


 次に剣に手をかけ石に力を込めた要領を活かし、剣に魔力を乗せ維持してみる。っていうか紋章ONのまま体の延長というイメージしただけ


 すると柄、鍔、刀身がぼんやりと光り出した。明るい場所なのでわかりにくいけど夜は明るそうだ。魔物を呼びそうで怖いな。


 さらに光が強くなるようにイメージすると出力が上がり、柄や鍔から発光しないようにイメージすると刀身のみが先ほどより少し強く輝き出した


「スゲー!!!SFの世界じゃん。それともビーム◯ーベル?いやプログ◯ッシブ◯イフ?」


 どっちかっていうとライトセイ…いや、ただの魔法剣くらいにしといてくれ。訴えられたらたまらん


 鋼介が何が面白いのかそれを貸して欲しいと言ってくるので地面に刺し許可してやった。一応実験も兼ねている


 鋼介は手を伸ばし柄に触れたとたん派手に感電した


 うむ…手を離しても持続してるか。応用への手応えを感じるな。能力に評価をつけていると鋼介が愚痴を言ってきたが知らん。


「おっ」


 少し眠くなるのを感じたので休憩する。近接型なら通常仕様だから魔力は少ない方なのかもしれないな。これも要チェックだな


 全員が見える所に腰をおろし様子をみよう。腰をおろした俺は近いこともあり飛び道具の武器である弓の零華に教える事にした


 そういえば弓は特別製だったけど矢は既成の物だった。他にどんな矢があるかは知らないけどけちったな。神のくせに。


 まぁ今のところはろくに当たらないから射たないしいいか。練習用とでも思えばいい


零華の近くに座り込みコーチング。投石の要領を教え、射たせてみる。コーチと言っても要領だけだけどな


「えいっ」


 ―ヒュルル―カッ


 矢は力弱く川原に飛び込んでいく。矢は石の間に引っ掛かっていたので拾い上げると矢の先に氷が付いている。零華の紋章が働いた証拠だ。大した説明はしていないのに上手くやれるのは流石零華と言うべきなのかもしれない


ただ零華は喜んでいたが、最初にすることは真っ直ぐ飛ばすことだと教える。


「美術部には難しい注文するわね」



小言を言われてしまったがこれじゃあフレンドリーファイアが起こってしまう。零華は練習あるのみと木のある所まで離れていった。そういう努力家な所は尊敬できる。個人で特訓し始めたので他のメンバーに行こう


 次に来たのは忍のところだ。風の紋章らしいけど、漫画なら鎌鼬とかか?果ては竜巻や真空波とかやらせてみたい


とりあえず風を吹かさせてみた。

うん。微風だ。なんというか力が入ってない気がする


「体の中から絞り出す感じだ。はじめは手から出す感じに集中してみろ」


「わかった」


それで出たのはまあまあ強い風だ。範囲は広い。大きな風だとどう頑張っても強の扇風機程度だった。なので密度を狭めてみると石が吹き飛ばされるほどのものになった


「調節が課題になりそうだな」


 恵だが、初めに紋章を持ってたからか、今はそこそこ使いこなしている。問題なさそうだ。ちゃんとファイアボールになって飛んで行っている。たまに焼けた石が飛び跳ねて逃げているのは愛嬌か。放っておいて問題なさそうだな


 最後に鋼介だが、土属性なんて正直よくわからなかったので、とりあえず紋章を光らさせた。


「よくわからない。」


「なんじゃそら?」


 腕を組み悩んでいると鋼介が歩いて来ようとしている。一歩目を下ろした瞬間地震が起こった。震度で言えば3程度


 驚いたみんなが訓練を中断してキョロキョロしている


「…」


「…やっぱ、俺かな?」


 鋼介の紋章は今のところ地震を起こすくらいしかわからない。みんなは紋章術を訓練しているが鋼介は腕が使えない。あまり訓練にならないか……発動すれば下手するとさっきより大きな地震を起こしかねないので座ったままで紋章を使うことにさせた


「くっそ~!手~早く治れよ~!つまんねー!」


ぶつくさ言いながら石に手を置くと石から手が生えた。いや、形を変えた……だ


 めきめきと作られていく指の石はバランスを失い砕けた。本人はイラつきながらも無意識に手を想像していたらしい。鋼介は形がある分、分かりやすい成長がみられそうだな。ヤル気になればいいが……



 皆が訓練している中、俺は途中で抜け紋章を全開にダッシュ。走り心地いいな。景色が流れていくってこういうのを言うんだろうな


 少し遠出—街道に出て町迄を往復—をして体力や身体能力の増加についての検証をすることにした。太い木の枝に手を掛け逆上がり。普通ならこの時点で出来ないのだけど、あっさりできてしまった。

 昨続いて近くの木に飛び移る。多少恐怖感はあるけどこれも難なく成功させる。


「…………ふ」


調子に乗った俺は忍者のように次から次へと枝に乗り移って行くと気がつけば街の入り口に着く。


 休むついでに街の噂に耳を傾けよう。早速近くにいた行商人と街の人が話しているのが聞こえてくる。どうやらオークを退治したことがすでに街中に広まっているようだ。誰がやったかは詳しくは広まってないみたいだけど女三人がいる冒険者だとバレていた。どうやらロレンスさんが役所かどこかに報告した際三人も一緒に行っていたらしい。それを見た人が噂の元のようだな。


 他にも冒険者風の男達がいたけど結構物騒な事を言っていた。女を引き込み、狙っていたオークの分を身体で楽しませてもらおうなんて聞こえた。悪いがそんな事はさせる気もないしさせない。後冒険者は引退するんだな。


 小さな小さな石に魔力を込め各自の股間を狙い放つと大通りでのたうち回った。そんなんじゃオークの餌だったぞ。潰れていない事を祈ってやりつつその場を離れて肉の串焼きっぽい物を買って食べた。


 やっぱり今はオークの噂か冒険者の噂しかないらしい。


 情報収集を終え街の入り口に向かうと川原の馬車に馬車や人が向かっては帰ってくる。ロレンスさんの雇った人かな?首のないオークが乗っていた馬車もあったし、オークに襲われた被害者の遺体もあった。遺体は教会にいくらしい


 馬車の邪魔にならないように街道の端を進むと荷物を持つ人、馬車の修理木材を持つ人、街道の道が安全になった事を知らせる看板をたてている人までいた。かなりの急ピッチ作業だ。もしかしたら他の街からの流通がなかったのかもしれないな


 そろそろ戻るか。十分休憩を取れたし肉も食べた。いい時間だ。日が暮れかけ、町の中には火が灯り始めているので四人を迎えに向かった

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ