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精いっぱいの選択——恵

 食卓に付き、増えたみんなと夕食を共にしその後団欒を過ごしていました。シルバールのユニエール様、シオン、クオン。トラファールのアルフレッド陛下と護衛の人。みんないい人ばかりです。アルフレッド陛下は王様だけど年下なので様とは言い辛かったので陛下にしました。


 何故ここにいるかというと、私が眠った日デルクリウスという牛の魔神が出てきてお城をめちゃくちゃにしていったためライトさんの屋敷にとどまっていると聞けました


 王妃様やセドリアさん、その他大勢の人達がデルクリウスによってじょじょに石化する魔法をかけられてしまった。一応全身石化してしまった人も生きてはいるらしいです。が、デルクリウスが言うには20日間、1日過ぎたから後19日の猶予があるみたいな事を言っていましたが敵の言うことなど信じません。まぁ王妃様が妊娠中で赤ちゃんがデルクリウスの魔法に耐えられるか不明な為14日後に決戦予定になっています。あと二週間ちょっとの辛抱ですよ。頑張って欲しいです


「それにしても何があったのです?寝る前と今では魔力の量が全然違うではありませんか?」

「えと……はい。寝てたらこんなに増えてて驚きました。成長期だからかな?」

「いやいや……」

「むぅ……」


 まぁ、恐らくバルクティンの所為、おかげだと思いますけどね。さっきからライトさんに【ハートリード】で誤魔化すように言われてたので落ち着いて返します。


 それよりも隣に座るライトさんの指がこそばくて仕方ありません。わざとでしょうか?


「何いちゃついてんのよ。人が心配してたってのに。早く起きないからライトさん、いろんな女が言い寄ってきてるんだから」

「えっ!ライトさん……」

「違うんだ……ネームレスが……ネームレスが怖い……ネームレスが悪いんだ。そうネームレスは王妃の手先……」


 ちょっと涙を浮かべながらいやいやと子供に戻ったようなライトさん。私が寝てる間に何があったんだろう?


「知らないでほしい……いや、知るなら恵だけが……ネームレスを全員捕まえて記憶を……いや、脅す?いっそ星割りくらいやれば忘れてくれるんじゃないか?そうだ。割ろう。星を。割って見せたら自分から消してくださいと言ってくるか?いや、その前に出力が足りないか?デルクリウスの力を奪えば……よし殺そう。デルクリウスを殺そう。あいつどこにいるんだろうか?」


 あれ?本当にこの人ライトさんなの?こんな物騒な人だったっけ?


「ライトさん?」

「はっ……やばい。変な事を考えてしまった」

「あの?ライトさんがどんな目にあったかは分かりませんけど辛いなら私、せめて聞くくらいはできます」


 自分の中で小さく決意する。何があったかは知らないけど好きな人が辛い時支えてあげれるようにならなきゃ


「そうか……ありがとう、恵。やっぱり恵は最高だよ。デルクリウスを倒したらけ——」

「ライト様、先ほどは寝ていらしたので報告しなかったのですがまた姫巫女様がこちらに向かっておられます。コナー嬢も獣人奴隷30名と共に向かっておられます。こちらは深夜ほどになるそうで一晩の野宿も視野に入れておられるようです」

「——。……分かった」


 メイドさんに部屋を用意しておくように言うライトさん。今ライトさんの言葉を切ったのがネームレスっていう忍者みたいな部隊の人だそうです。屋敷のあちこちにある気配はその人達のようですね。今屋敷にいるのは四人ですね。ライトさんの【サーチ】ほどじゃないけどなんとなく分かるんですよね


「はぁ……姫巫女様、何日泊まる気だろうか?同盟組みそうな感じでもないし帰ってくれないかな?」


 姫巫女様?あの勇者を連れてた女の人?


「まぁそう言ってやるな。英雄。あやつはあやつで事情があるのだろう。」

「自分で買い付けに行ったのには少し引きましたけどね」

「姫巫女があんな物買ってたらなんで?ってなるのに気づかないんでしょうか?送り先だって無いの気づかないもんですか?」


 呆れた顔で陛下達とライトさんが首を振る。食卓に置かれていた米はまだここにいる人と姫巫女様だけしかしらないそうで、姫巫女様から情報漏洩したら出禁な上に罰金物にしようと三人が話し合っていました


「それよりも部屋をどうするかな?とりあえず近くの村から毛布だけでも借りるか?」

「それならコナー嬢の機転で薄手ではありますが王都で大手の布を購入されています。屋根さえあれば問題ないでしょう」

「わかった。鋼介、悪いけど地面を均してきてくれ。あと柱と屋根分の板を薄く作ってきてくれ」

「ウチからも何人かだそう。シルバールは教師をしているがウチはまだ何もしていない。ここで良いところのひとつでも見せておきたいんでな」


 アルフレッド陛下がそんな事を言って護衛の人に指示を出しました。陛下の狙いは忍ちゃんのお店『フェアリーテール』の支店。お米がいたく気に入ったそうで是非支店を優先して作ってほしいのだとか。あとは忍ちゃんに良いところを見せたいのも理由だとライトさんが教えてくれました。忍ちゃん、可愛いもんね


「さて、現場監督がおらんと始まらん。我も行くとしよう」


 護衛さんに遅れて部屋を出て行くアルフレッド陛下。ユニエール様にニヤッと笑いかけたのが面白かった。まぁユニエール様は悔しそうにされていたけどね。二人ともお店を気に入っているので競争っぽくなってる。喧嘩しないといいけど


「あの……だったらシルバールはスイーツ、トラファールはおかずメインでやればいいんじゃないでしょうか?後からメニュー増やせばいいんだし、まずは受け入れられやすい方から始めてはどうですか?」

「あ、それは思いつきませんでしたね。流石は英雄の恋人」

「あ、ありがとうございます」

「ところで恵の宗派は聖教会なのですか?」


 何?急な話題転換だなぁ。でもなんで宗教なんつ聞いてきたんだろう?ウチは……仏教なのかな?クリスチャンじゃないし。うーん


「えっと……」

「俺達は無宗教です。政治と同じでそういうのも避けていますので」


 ライトさんがそう言って助け船を出してくれました。でもどういう質問の意味なんでしょうか?


「すみません英雄。少しだけ席を外していただけますか?ちょっと込み入った話をするので」

「わかりました。外の様子を見に行きますので何かあれば忍に連絡させてください」


 立ち上がり部屋を出て行くライトさん。メイドさんに全員分のお茶を用意してもらうように言って去って行きました


「さてと、恵?世界において男は魔物と戦う。もちろん女も戦いますが男の方が圧倒的に多い。みんなもわかりますね?」


 頷くと他のみんなも頷いた。自警団も冒険者も兵士も当たり前に男性が多い。女性なんて数パーセント、一割に行くか行かないくらいしかいない


「で、結婚している女は家を守ることが仕事。それもわかりますね?」

「はい。でもそれが無宗教と何の関わりが?」

「しかし女にはもっと重要な役割があるのはわかりますね?いまルクレツィア王妃がそれに直面しています」


 私の質問には答えず話を続けるユニエール様。その質問はわかる


「赤ちゃんを産む……」

「はい。後継ぎですね。しかし男性はいつ魔物との戦いで死ぬかは分からない。結婚していない女性でも夫となるかもしれない男性が死んでしまうかもしれない。つまり男性の絶対数が少ない。そこで男性には一夫多妻制が許されています。まぁもちろんダメな国もあります。姫巫女殿のミラトリアスなどがそうですね。」

「あの……?」


 何が言いたいんだろう。頭良くないから回りくどい言い方だとよく分からないんですよね


「恵はライト殿が多数の妻を持つ事を認められますか?例えばそこにいる零華や瑠衣、シオンやクオン、コナー嬢が側室や妾になったとして認められますか?」

「そ、そんな事……」

「これは仮定ですがありえない可能性ではありません。」


 いいですか?と前置きし持っていたカップをお皿に置いた。


 ライトさんは初めて魔神を倒した男。そしてデルクリウスをも倒すとする。そうして起こる事は何か。それはエルゲニアを対象にした連合国戦だ。魔神を倒した戦力を保持する国として危険視される。


 なるほど、核爆弾持ってるのと同じ感じなんだ


 そこでエルゲニアが取る行動は大まかに、①私達を全員殺害、②エルゲニアから国外追放、③同盟となる


 ①②については逃げるしかないから特に考える必要がないからパスだね。ルナマリアの事だし①②なら②しか選ばないはず。①だと結局魔神に攻められたらアウトだしね


 問題は③だよね。同盟なんだからいいじゃないっていうのは第三者の見方だ。何をもって同盟とするか。それは血の繋がり、家族だ。それがこの世界にとって何よりも固い絆


 そしてユニエール様のさっきの話。つまり国家間の同盟にはライトさんとの婚姻が持ち出されるということだそうだ……零華さんが私の代わりに話を理解してくれていた


「なるほど……だからライト君との交流権って訳ですか」

「ええ……こう言ってはなんですがセドリア殿がこの場にいなくて助かりました。彼なら店を選ぶなどあり得ませんからね。」

「なるほどね。でもユニエール様?実は④があるのを説明しないのはずるいと思いますよ。」


 え?そんなのあるんだ?


「国外追放じゃなくライト君が自分から国を出て未開地なりで恵ちゃんとだけ結婚するって道が。やっぱり同盟はされないけどエルゲニアが人質にされたり攻撃される事もないですからね。私達は政治に関わる気は無かったのは周知の事ですからね。米は微妙だけどレシピ……食べ物など勝手に広まる物なんだからそれを政策とか言われたら笑っちゃいますけど」

「………………………。セドリア殿だけではなかったようですね。」

「あるいはミラトリアスに行くを⑤にしようかと思いましたが悪印象の為除外しました」


 はあ〜、零華さんすごいなぁ。


「しかしその場合でも未開地に魔神を倒せる戦力があるという事実は変わりませんよ?まさか国家群から逃げられるとは思ってないでしょう?それに……分かっているのでしょう?あの方の気持ちを」

「………………そうですね。結局はライト君と恵ちゃんが決める事です。受け入れれば同盟へ、無理なら④になる、ですかね」

「あの……どういう?」

「恵さん、兄さんを厩舎裏に行くように言いました。今の話をすれば全て理解できるはずです」


 忍ちゃんがそんな事を言い出したので全員の目が集まり行かないとは言えない雰囲気になりました。質問も受け付けないみたいだ


「わかったよ」


 私は立ち上がり部屋を出る。メイドさんに行き先を告げ一人で厩舎の裏へ向かう


「さて、どうなるやら」

「ユニエール様、あなた王妃様の?」

「なんのことかしら?私は普通にウチが第三になるのを狙っているだけですよ」


 そんなやりとりを遠ざかりながら聞いていた。第三?王妃様?


「恵様、ライト様が厩舎裏にお着きになられました」


 気配無く私の後ろに立つ仮面のメイドさん。この人がネームレスって人達ね


「わかりました」





 外に出ると少し離れた位置で鋼介さんが地面を均しているのが見えました。その近くでは力仕事をするトラファール騎士さん。アルフレッド陛下の指示の下テキパキと動いています


 私は彼らに近づくこと無く屋敷に沿って厩舎へ。


「恵」

「ライトさん……」


厩舎に背中を預けて身体を休めていたライトさんがこちらに気づき話しかけてきました


「ネームレス。一時解散しろ」


 ライトさんがそういうと近くにいた気配が遠ざかっていきました。


「…………。あ〜、話はネームレスから聞いた。」


 気まずそうに身体を起こすライトさん。ネームレスさんは聞いていたのか……


「あの……どういうことなんでしょうか?」

「あの……さ。まず聞きたいんだけど王妃の狙いは気づいているか?」


 確かルナマリア共々よろしくねって言われてたっけ。あの時娘と仲良くしてねっていいお母さんだなって思ったっけ。


「はい。ルナマリアと仲良くしろって事ですよね?」


 ライトさんが眉間を押さえて顔を振った。あれ?なんか違った?


「……まぁ、間違ってないけど友人って意味じゃないんだ。はっきり言うと俺の嫁として仲良くしろって事なんだ……」

「えっ?」

「王妃は恵を正妻に、ルナマリアを第二王妃に仕立て上げるつもりなんだ。そうしておいて俺の側室として他の王女なりを受け入れさせて同盟をする。王妃は国を守れ、同盟国を手に入れ、娘に結婚相手を用意できる」

「え?でもそれじゃ……え?ルナマリアは女王で……んっ?どうなって?」


 だってルナマリアは女王だしライトさんに嫁いじゃうと王様いなくなっちゃわない?


「推察していたネームレスに【ハートリード】して得た情報だけど、元々王妃は俺をエルゲニアに婿入りさせる気は無かったんだと思う。あの王妃、本当に抜け目がないよ。俺がデルクリウスに勝てば三大国の合意の下俺に領土を与えるつもりらしい。そこにルナマリアを嫁がせる気なんだ。王位は当分ルナマリアが持ち赤ちゃんが産まれ三年ほど経てば赤ちゃんに、政治は王妃、もしくは公爵家が摂政をとって補佐するだろう。失敗して俺達含めルナマリア、王妃が死んでも公爵家が王位を継ぎ、しかも食糧問題を解決した米を軸に周辺国に有利に同盟をさせられるだろうからな。ネームレスづてに伝わってるようだ」


 ライトさんがいろんな事を話出したから頭がショートしそう。なんでこんなことに……


「そんな……王妃様が?」

「あの人は王妃だ。国の為に利用できるならするだろう。でも俺達はここの人間じゃない。思惑に乗る必要はない。それにルナマリアには……付き合うことは無いと言った。ルナマリアから好意を向けられていて辛かったが、どうしようもないからな」

「えっ?ルナマリアが?ライトさんに?」


 そうだったの?ルナマリアがライトさんを好き?そんな感じ分からなかったな


「え?知らなかったか?」

「逆だと……ライトさんがルナマリアの事良いなって思ってるんだと思ってました」

「いやいや……おかしいだろ、それ。俺、恵と付き合ってんだけど」

「だってルナマリアが誰かと踊ってた時ちょっと怒ってたじゃないですか?それに……ルナマリアの……はだか見たって……それで気になってたんじゃ?」

「まぁ……見たっていや見たんだけどさ。ってちょっと待てってば。俺が好きなのは恵だって。」

「それは信じてます。あの……私……でも同盟が……戦争に……」


 ユニエール様の言った言葉。私達が選ぶ未来で確実に何かが変わってしまう


「確かにルナマリアのことは気に入っていたし好意もあったのも認める。でも助けようと思ったのは失わせない為だ。俺達が失いたくない物があるようにルナマリアにも失って欲しくなかったんだ。」


 真っ直ぐと私を見つめ話すライトさん。嘘は言ってないと思う。残酷なくらい正直だ


「その中に俺が入っていた。でも俺はルナマリアの手を離した。俺の手はもう塞がっているから。……ルナマリアに同盟を勧めておいてこんな事になるとはな。俺が同盟の邪魔者になるとは思わなかった」

「…………」

「すまない。俺は最低だな。二人を困らせてばかりだ」


 背中を向けため息をつく。夜の空に散っていった。沈黙が二人の間に流れた。


 私も何も言えずただただ立ち尽くすしかできませんでした。なんて言ったらいいか分かりませんから


 こんな時もう一人の当事者であるルナマリアはどう考えているんだろう?ライトさんが好きならこの状況を喜んでいるのかな?それとも……?


「あの……ですね。今からルナマリアに会えないでしょうか?」

「今から?すぐに行けば就寝前には行けるかもしれないけど……」





 魔法の絨毯じゃなく、ゲートで一回ライトさんの家を経由していけばすぐです


「執務室から行こう」


 ライトさんの部屋からさらに執務室へ。窓を開けて魔法の絨毯でバルコニーから部屋へ


 静かに扉を押すと鍵がかかっていないようで簡単に開いた。ゆっくりと開きカーテンを掻き分け部屋に入り込む。薄暗く、もう寝ようかという頃合いの部屋。ベッド近くにある灯とテーブルにある灯だけが部屋を形作っている。そしてテーブルにはまだ寝間着に着替える前のルナマリアがトランシーバーを持って椅子についていた。明らかに待ち構えていたみたいだ


 ことりとテーブルにトランシーバーを置くと立ち上がり近づいてくるルナマリア。私も歩き距離を縮める。ライトさんは動かずに窓際にとどまっていた。


「………待ってたわ。恵、無事でなによりよ。身体は大丈夫?」

「うん。正直前よりも魔力が多くて調子もいいくらいだよ」

「起きたら連絡するように言ったけどその日のうちに、しかもこんな時間に来るなんて。お寝坊さんね」

「ライトさんに似たかもしれないね。」


 当たり障りのない会話。いつまでもこんな会話していたかったな


「で、今の状況は聞いたかしら?」

「うん。デルクリウスが来たんだよね。狙いはライトさんとルナマリア、王妃様が石化状態なんだよね?大丈夫なの?」

「ええ、今は落ち着いているわ。でも貴女はそれを聞きに来た訳じゃないんでしょう?」


 トランシーバーの片割れはライトさんの部屋に置いてある。きっとネームレスの人達がルナマリアに連絡したんだろう。私達の状況も分かってるんだ。


「うん。」


 お互い何を言いたいのか、聞きたいのかわかっている。でも何から切り出せばいいのかわからない。二人で見合い動かずにいると先に動き出したのはルナマリアだった


「はっきり言っておくわ。私は身を引くつもりよ。私はライトと同じくらい貴女も気に入ってるから。二人が困るくらいならそれくらいすっぱりと諦められるわ」


 カーテンが風で少し揺れた。照明の炎が揺らめき悲しそうな表情のルナマリアを照らした。私はそんなルナマリアにどんな表情を向けているんだろう?怒ってる?悲しんでる?わからない


「お母様がいろいろ掻き回してしまったようでごめんなさい。正直、こんな風にみんなと楽しくするのが幸せで……心地よかったの」


 すん、と鼻を鳴らした音が聞こえた


「でもこれからは……ちゃんと距離を……置く……から……」


 少しずつ目に涙が溜まっていくルナマリア。ぜんぜん諦められてないじゃない。そんな辛い顔しないでよ。我慢すればいいってものじゃないでしょ⁉︎


「あのね、ルナマリア。私こそはっきり言っておくからよく聞いて!。私はライトさんと絶対結婚する。うん。するわ。絶対する!でもそれは全ての魔神を倒してからだし、私達は向こうで結婚する!必ずその未来に行くよ!だってライトさんの事好きだもん!!」


 私の言葉に固まったルナマリア。目に溜まった涙も溢れること無く私の言動に注目して止まっていた。私は炎のように燃え盛る感情のままルナマリアを見据える


「私はライトさんと付き合ってる!だからって他の人は我慢してなんて言わない。その人にはその人の気持ちがあるから好きなら好きと言えばいい。でも何もせず諦める恋心なら初めから持たなければいい!……そう思う」


 はぁはぁ、と息をする。一気に気持ちを吐き出したから息が切れてしまった。その分感情の熱が冷めてきた。でもここで失速するのはダメだ。私にもルナマリアにとっても。


 ルナマリアもうつむいてしまったけど、もう少し、もう少しだけ聞いて


 頑張って頭と心を回転させる。うん、うまくはいかないかもしれないけど、問題を先送りにするだけかもしれないけど、私が選ぶ答えはこれだ。ライトさんもルナマリアも失いたくないから


「でもね、ルナマリア。私はルナマリアの事も大事なの。もちろんライトさん程とは言えないけど大切だから幸せになってほしいの。友達だから。だから……ね?まだ貴女がライトさんを好きなら私は受け入れるよ。」


 私はうつむいたルナマリアの後ろに回り込みギュッと抱きしめる。暗くて気づかなかったけど震えていたんだ。私達がいなくなるかもしれない可能性に怖がっていたんだね


「恵……でも」

「言っとくけど好きなら構わないって言ってるだけ。今のところライトさんを共有する気はないよ。自分で願うのなら私からライトさんの時間を奪ってみればいい。自分の恋心を信じるなら……ね」

「ごめんね。ありがとう」


 抱きしめた私の手に触れるルナマリア。手に水が落ちた気がした。今まで留まっていた涙だ。その涙が嬉しいものなら私も嬉しいよ


「ライトさん。だからルナマリアを受け入れてあげて?ルナマリアはライトさんが好きで、ライトさんもルナマリアの事……大事なんですよね?」


 これでいいんだよね。


「……………………………………ああ」


 長い間の後ライトさんが認めた。ルナマリアが手で顔を隠しながらボロボロと泣き出す。良かったね


 ルナマリアが落ち着くのを待ってから一応お互いのルールとかを決める。話終えた頃には涙は笑顔に変わっていた。


 基本的に週四は私が、二日はお互いアタックしていい日にした。残りの一日がルナマリアの日だ。


 共有はしないと言ったけど独占しすぎてもルナマリアが引いてしまうかもしれないから一日だけ、そう一日だけ我慢する日を作った。その次の日ライトさんといられるのが倍嬉しいかもと思ったからっていうのもある。それにルナマリアが一日なのは政務で時間の都合がつかないかもしれないからって言ってた。都合がつく日は優先させて……うーん。それはまた話し合おう。譲りっぱなしも嫌だしね


 それから二人が同時にアタックした場合はライトさんが決める事に。どっちを選んでもケンカしない。キスはお互い見える範囲ではしないとか、そんなことを夜遅くまで話しあった


「だからと言ってすぐにキスとかしちゃダメですからね」

「エッチな所は見せ合ったから私の方がリードじゃない?」

「なんですか?それ?」

「姫様とライト様はお互いに一人でしているのを見られた仲なのですよ。恵様」


 ライトさんの方から女の子の声がした。振り向くと簀巻き猿轡になってるライトさん。なにしてるんですか?そんな趣味が……?


「むぐっ!むぐぐっ!」


 ジタバタともがくライトさんの左右からリアンとイリアさんが出てきた。リアンはいつも通り。イリアさんは闇に潜んでいそうな黒髪、黒装束。


 二人ともいつからいたの?気配には敏感になってるはずなのに全然気づかなかった。もしかして初めから?


「ライト殿、あまり騒がないでください。口の中に詰め込んだ姫様の洗い立てのショーツが涎まみれになりますよ」

「んぐっ?」

 

 ルナマリアの洗い立てのパンツだと知ってジタバタするのをやめたライトさん。簀巻きの為どうしようもなくなったから考えるのを放棄したみたいだ。


 イリアさん……なんでそんなにパンツのイタズラばかりするんだろう?パンツに何か恨みでもあるのかな?


「あ、一枚くらいなら姫様もくださると思いますよ」

「ら、ライトが欲しいなら……いいわ」


 よかったですね、と猿轡に触れるイリアさん。猿轡を外した瞬間金属製のゴツゴツしたマスクをつけた。ん?どういう事?


 がちゃりと鍵を締める音がした。


「このマスクの鍵はネームレスに渡してありますので屋敷に帰ってから外してください。あ、ちなみに媚薬の粉末タイプが内側に塗ってありますので例えゴブリンのように性欲に支配されて二人に獣の様に襲いかかっても仕方ないと思いますよ。二人の女の子の裸体を脳に焼き付けて夜な夜な一人でしてるラッキースケベ英雄」


 えっ?ライトさんが襲いかかってくる?ルナマリアと顔を見合わせるとルナマリアもあわあわと私とリアンを交互に見ていた。


 ん?一人でなにしてるの?


「むぐぐむん、むむむむ——」

「ライトさん、何言ってるか分かりません」


 ライトさんが簀巻きのままぴょんぴょんと跳ねて私に近づいてきて【ハートリード】で言いたい事を伝えてきました


「えっと、イリアさん、おいたはその辺にして空の散歩にでも行ってください。って、ええええっ!!」


 私が言い終わると心の中で【アクセス】と叫ぶライトさん。簀巻きにしていたロープをあっさりとちぎり、金色の鎧が装着された両腕両足を見せた。


 威圧感たっぷりに踏み出す一歩。なんでわざわざ私に喋らせたの?


「イリアさん、とにかく逃げて!」


 ライトさんが窓に手を振ると風圧で鍵がかかっていなかった窓が音を立てて開いた


「逃がざない゛」


 マスクでくぐもった声を発すると一瞬で後ろに回り込むライトさん。肩と太ももを掴み持ち上げ担ぎ体を捻りながら引き助走をつけた


「くっ!キャストオフ!」


 ライトさんが投げると同時に叫ぶイリアさん。甲斐無く投げられ窓の外に落ちていった。え?ライトさんなにやってんの?


「ちっ!」


 ライトさんが舌打ちした。後ろには下着姿のイリアさんが冷や汗を垂らしながらライトさんから距離を取っていた。窓から落ちていったのは黒装束だったみたい


 凄い!変わり身の術だ!あと下着も真っ黒なんだ。イリアさんは着痩せするタイプなんですね。白い肌が灯りに赤く照らされすごくムーディー。ライトさんのピカピカ感が無ければですが


「もう脱ぐものは……な……ゴホッ!うっ!」


 普通に喋ってしまったライトさん。媚薬パウダーを吸い込んでしまったらしく咽せた


「あつ……身体が……熱いっ!!」


 息を粗く私達全員を見渡すライトさん。もちろんロックオンされたのは私だった。良かったのかな?マスクを無理やり引きちぎると私の肩を掴んだ。


「えっ?まさか、こんな状況でなんて」


 ルナマリアのパンツ咥えたままキスとか嫌ですよ⁉︎


「ぐっ……ううぅ……」


 本当に理性が効かなくなりかけてるよ!


 なんとか口からパンツを取り出すライトさん


「恵、ゲートで……屋敷に帰るんだ。零華と一緒に獣人の受け入れ体制を整えてくれ。ルナマリアは…トランシーバーでネームレスに指示を……」


 喋ってる間にも身体に向かって鎧が形成されていく。ルナマリアに話した辺りで首まで鎧に侵食されていた


「う、うおオォォぉぉ!!!」


 窓に向かって走り出すライトさん。あっと言う間に空に向かって走り去りました


「えっと……」

「問題ありません。行為の為に一時間しか作用しないように調整した薬です。」

「じゃなくて……」


 私が詰め寄ろうとすると結局窓から落ちて逃亡するイリアさん。なんか話が中途半端になった気がする。


「姫様、おめでとうございます。よく逃げずに止まりましたね。その精神力には驚きました」

「ええ、これで俄然やる気が湧いてきたわ。恵、感謝します。でも負けないわよ」

「私だって」

「表立って公表するのは戦後にする方がいいでしょう。その方が受け入れられやすいはずです」

「そうね。公式に付き合うのはデルクリウスの後かしらね。それまでライトに甘えるといいわ」

「うん。いっぱいラブラブしよっと。あ、そうだ」


 イリアさんが言ってた事で一つ聞きたかった事があったんだ


「ライトさん、夜な夜な一人でなにしてるの?ルナマリアと見せ合ったって何のこと?」

「あ〜、う〜、ライトに聞いて。私からはちょっと。【ハートリード】で確認しておいた方がいいわよ。」

「何かまた一波乱起きそうな予感がしますね。楽しみです」

「趣味悪いわよ。リアン」







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