泣いてもいいと思うんだ——ライト
「……」
会議室に集まり検討が始まったけどルナマリアは目を瞑ったまま動かない。やっぱり昨日の今日では辛いか?それとも覗いていたであろう俺と話すのが嫌になったかな?
とか思っているとゆっくり目を開き口を開いた
「迎え討つわ。らっららライト、み皆、きききき協力して」
一晩が開け、ルナマリアに眼に意思の力が戻っていて声にも威厳とかやる気とかが伺えた……と思いきやダメかもしれない。みんなを見渡しつつ俺と目が合うと真っ赤になりながらオイルの切れた機械みたいになってしまった
「もちろんだ。その為に俺達はいる」
「へぁっ!あ、ずる……え、ええ。あああありがとう」
平静を装う俺に不満を感じたのか真っ赤になったままじと目で睨むルナマリア。
やめなさい。俺が何か無礼をしたとか思われるだろ!
「ほっ本題に入るわよ」
俺の後ろで皆がルナマリアが落ち込んでない様子に安心したみたいだ。少しリラックスしたのが分かった。まぁ裏声になってたりしたけどそこはご愛敬
「それで?具体的には?」
円卓に地図を拡げ計画を話し出す。出席している人間が身を乗り出してくる。俺も覗こうとすると何人かの舌打ち。過度にきらびやかな服装の貴族からだ
……誰だこいつ?
確認しようと隣のラドニー殿に話しかけようとするとルナマリアが話し出したので聞きそびれた
「まずは各地に斥候を送るわ。まずどこで迎え討つかよ」
場所さえ分かっていれば戦場を街から離れる事もできる。罠や戦術においても必要な事だもんな
「次に部隊編成だけど、魔物が陣形が取るのは考えにくいから地形を利用しつつ戦域を限定して三方向から包囲しつつ撃破。ライト達は魔神の位置を確認したら魔物はこっちで削るからデルクリウスを討って」
俺達は倒したら即撤退、負けそうでも撤退。最高戦力を失う訳にはいかないと付け足した。また何人かの舌打ち。しつこいな
「一応食糧は三日分もっていくけど……三日もかける気はないわ。所詮魔物、頭を失えば崩壊するでしょう。それに夜になったからって魔物も退いてくれるとは限らないし短期決戦よ」
むしろ夜は活発になり脅威にもなるので夜は絶対に戦いたくはない。大まかな作戦は以上のようだ。本当に大まかだな
あとは後日入ってくる情報によって微調整をすることになる。話を聞いていただけのシルバール陣に向きユニエール女王へ力強い視線を送る
「ユニエール女王、アルフレッド陛下、あなた達の支援、真に感謝します」
ユニエール女王は静かに微笑み頷いた。さっきプリンがもらえないのにブーたれてた人とは思えないな。あ……睨まれた
「それから二人もお願いしますね」
シオンとクオンに言うと二人は膝をつき「お任せ下さい」といった
「それで?恵は?」
「まだ起きてこない。こればっかりは自然に起きるのを待つしかない。まぁ今日には起きるとは思う」
確証はないが、やたら不安を持ち込みたくない。自分の時は寝る事すらなかったし
「さて、私はそろそろ屋敷に帰りますね。色々と手配しなければなりませんので……ね」
「そうだな。我もお暇するとするか。用もあるしな」
ユニエール女王とアルフレッド陛下視線を合わせると同時に席を立ち上がった。シオン達があとを着いていく。全員が立ち上がり見送りについていこうとすると「見送りは結構です。少しでも時間を有効に使って下さい」と断られた。着いて来させない気だ。これは店に戻る気だな
時間が惜しいのは事実。それでもルナマリアは礼を言い、扉まで見送った。でもまさか自国に帰らず店に向かったとは思うまい。言っておくが次は有料だからな
しばらくして会議を終えルナマリアの自室に集まった。俺、零華、ルナマリア、ラドニー殿、リアンの5人だ
「で、俺達はどうするんだ?」
窓際から地上を見下ろしながらルナマリアに問う。他の面々は会議室の横の待合室にいる。女王の自室まで他国の近衛が入ってきてたらおかしいもんな。今はみんなも待合室で待ってる
「正直編成するだけで手一杯、特に急用が無い限りは呼び出しもしないから屋敷で待機して。そうね……二週間後にきてくれるかしら。そうそう、ライトだけはその間に一度来てもらうわね。あー、やっぱり誰かと一緒に来て」
「分かった」
いつも通り零華がスケジュールを書き込んでいる。ルナマリアもなんとか正常を保っているようだし問題ないな
デルクリウスの言った20日後ではなく15日に赤い丸をつけられ対決と書かれていた。王妃の赤ちゃんの事もあるから待ってられない。攻めて勝つ。これしかない。ルナマリアは負けそうなら逃げろと言っていたけど悪いが必ず倒させてもらう。
「それから恵が起きたらとりあえず連絡して。手紙でも人づてでも、直接来てもいいわ」
「分かった」
「それから……ライトの領地からも食料の徴収するけど構わないわよね」
「根こそぎじゃなければな。」
ふっと笑うとルナマリアも冗談を言ったことに少し笑った
「あ、代わりにラドニー様の所はたっぷりいただきますよ。ふふ。」
「おいおい手加減頼むぞ」
「さて、まずは屋敷に戻るよ。恵の様子も見たいし、俺も休みたいからな。後でびっくりさせる事もあるしさ。楽しみにしてゆっくりしてろよ」
「また……私の休みばかり気にしてないで自分の休息も考えなさい。いざって時に動けないなんてだめよ…頼りにしてるんだから」
「あら…珍しい。本音が出ちゃったわね。恵ちゃんがいなくてよかったわ」
「なんだ。やっぱり―」
「ゆ…友人としてよ!そろそろみんな出てって!私まだ仕事あるんだから!」
強制的に退室させられていく俺たち。
「おいおぐえっ!」
みんな出されるかと思ったら俺だけ引っ張り込まれた。すかさず閉められる扉。直前の驚愕する零華とラドニー殿。転ばされ見上げるとルナマリアの焦った顔があった
「み、見たの!?」
「な、何を……」
しらばっくれようとする俺を壁際まで引っ張るルナマリア。腕をがっちり組んでいるので逃げられない。ダメだ。覗き穴、完全にバレてる
「ここ、覗き穴があるんだけど知らない?」
「…………」
「中を調べると大量の血があったわ。あの日応接間が大破してたのはどう?急な轟音だったから本当にビックリしたわ。口から心臓が飛び出すかと思ったわ」
そりゃ悪かった。没頭してるところにそんな事があればショック死だってありえそうだもんな。悪い事をしてしまった
「…………」
「コナーがね。差し入れを持ってきてくれたから、少し喋ったの。オーナーの腕が千切れててビックリしたって言ってたの。轟音と同じ日に。しかも翌日には腕が治ってたからまた驚いたそうよ。」
「…………」
「壁を大破させて腕が治す程の事が出来る……いえ、再生させるような事、他に誰が出来るのかしらね」
「すいませんでした!」
「はあ……………。やっぱりか……どうせお母様の策略でしょ?」
一瞬で正座になる俺。もちろん土下座だ。下手したら死亡フラグが立つ展開じゃないの?これ?
「うん。王妃が隠し通路の先の部屋を見てきてって言ったんだ。」
「それでここに来たって訳ね」
頷く。ため息をついて首を横に振るルナマリア。うん。もう洗いざらい話して裁判官の心証を良くしとこう。黒幕は王妃だから情状酌量を認めてくれるといいな
「それで……まさか打ち首とか言わないよな?」
「言わないわよ!そんな事!まぁ恥ずかしい所を見せちゃったのは否定しないけど…………………………………………………………どうだった?」
へ?どうだったとは?
「興奮したかとか色っぽかったとかあるでしょ!女に何言わすのよ!」
「あ、いや…その。エロかった……です。」
「ライト様も自分を慰めようとされてましたからね」
「「!」」
リアン!出て行ったんじゃなかったのか?ってかあの時王妃と一緒に出て行ったから知らないはず…………あぁ、そうか、あそこにいたんだな。忍者が。
「まぁ、あそこで逃げるとは思いませんでしたが。ライト様も媚薬を服用していたのによく姫様を襲いませんでしたね」
おいメイド!主人が襲われるのを期待してどうするよ!
「お、襲っ!?と、とにかくライトは見た。それは間違いにゃいのね?」
真っ赤になりながら指をさしてくるルナマリア。もう完全にテンパっていてハイになっている
「うん」
「なっ、ならライトも見せなしゃい!それでおあいこにょっ!」
なんでそうなる!なんで俺がっ!こんな目に遭わなくちゃいけない!神よっ!あ、いねぇわ
「ここ最近は王妃様の策略に性欲が増しているはずです。女を買ったとか恵様を抱いたという情報は入っておりません。だからもしかしたら一人でしているのをネームレスの中に見た者がいるかもしれませんね。目の前でするのが恥ずかしいのなら【ハートリード】で姫様にその者の記憶を写せばよろしいかと」
「来なさい」
ルナマリアが呼ぶと黒髪ロングの仮面メイドが現れた。ネームレスのもう半分の権利はルナマリアが持ってるのか
「はっ」
「あなたがライトの……んんっ!記憶を持ってるのね」
「はい、しっかりと確認させていただきました。口で説明した方がよろしいですか?事細かに、太ももの黒子の位置まで言えますよ」
「うふふふふふ………」
知らなかったんだよ。ネームレスが常から五人もいたなんてさ。知ってたら自分の家に帰ったのに。まさかそんなところまで見てんのかよ。穴があったら入りたい
「さ、ライト、【ハートリード】か自分でするか説明されるか選びなさい」
「そうだ。忍の店にスイーツが新しくメニューに載ったんだ。買ってこようか?」
ほら、好きだろ?甘いもの?え?既にコナーが持ち込んでるですと?
「ほらライト、【ハートリード】か自分でするか説明されるか選んで?」
「記憶!記憶を消すから勘弁してくれ」
そうだ。原因が無ければ問題無いはずだ?なんと!俺が信用できないですと?
「どうしたのライト?【ハートリード】か自分でするか説明されるか選ぶだけよ」
「あの……その……デルクリウス!デルクリウス倒したら……」
必殺の先送りだ。このまま忘れさられる事を……
「ライト、【ハートリード】か自分でするか説明されるか選びなさい」
…………………………………………………………………………………………………………………………………………
「【ハートリード】でお願いします……」
ネームレスめぇ………あっ!そんなところに覗き穴が……覚えたぞ!次は捕まえてやるからな!
心の中で毒づきながら泣く泣く【ハートリード】を発動。馬鹿め!せめてネームレス内にはまわさせん。記憶を消去してやる
「ちなみにここにはいない者も見ていますので消されても問題ありません。」
「のぉぉぉぉぉ!!!」
神は死んだ
「きゃっ!ライトの……凄い……」
やめて!口に出さないで。恵にもそんな状態見られた事無いのに。何プレイだよこれ?
「もうお婿にいけない…………」
「あ、ライト様はもう今日の用事はないので自由にして下さいね。お疲れ様でした」
もういや
何故こうなった?誰得?
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