戦前なのに——ライト
朝食後俺はまた【シールド】で主要人物を城まで運んだ。王妃に挨拶しネームレスの事に感謝した。詳しくは聞いてなかったけどネームレスの半分が俺の部下になったらしい。全権は王妃だけどね。王妃が社長、俺は部長。そんなイメージだ
で、ルナマリアだけど出頭後、すぐには会えなかった。なにやら忙しいとリアンから聞いていた。会議の時間までは好きにしてろと言われたので両陛下と出禁の姫巫女を連れて忍の店に行った。ラドニー殿には内緒だ。同じく出禁を食らっている勇者達は石化していたらしいルナードの様子を見に行ったので問題無し。姫巫女の護衛はいいのか?
カミラ、コナー、ユーリカに屋敷に引き上げるように言うとコナーから一部資金を都合してもらえないかという打診があった。
「戦えなくなった獣人奴隷が捨てられるという情報が入りました。常連様の貴族の方からの情報なので信頼性もあります」
戦えないのに装備品も食糧費もかかるのでは捨てる方が金もかからない。そう考える貴族が多かったそうだ。奴隷の返金自体はただらしい。ただ奴隷からの支払いを諦めないといけないだけで
「争えないだけで狩りができない訳ではないんですよ。ね、カミラ?」
あ、わかった。奴隷を手放す貴族から正当に移譲して貰うんだな。ただで手放すよりは金貨一枚でも得な訳だ。この話なら手放すって決めた貴族からなら安く受け渡されるだろう。ウチは従業員が増え、食糧の確保もでき、出費もそれほどでもなく、奴隷の解放も進められる。一石四鳥だな
「うん。今日も朝から10羽くらいとってきたからね。間違いないですよ」
デルクリウスの力はちゃんと条件付けしないと結構甘いものらしい。戦いという名目だと駄目みたいだけど、狩りはオッケー。外出も帰ってくるなら可、意識的に逃げたらアウトって感じらしい。
「なので新人従業員に狩りをお願いして食糧安定に貢献できればと……」
問題ないどころか助かる事ばかりだ。今俺が動かせるマネーをそのままコナーに渡す。どうせそんなに使わないし、奴隷も減るし食糧問題も軽減されるかもしれないならいいだろう。
コナーの要求を了承するついでに一役買ってやろう。窓を背にして立ち背後に来た存在に指示する。一回こう言うのやってみたかったんだよな。いかにもって感じだよな
「誰か。」
「はっ」
「分かるよね?」
「お任せを。該当する貴族を調べてきます。情報はコナー嬢へお渡しいたします」
「うん、頼んだ」
ネームレスにお願いしておく。きっと彼女らの事だし昼過ぎにはリストができるな
「忍、貴族のリストが来るからコナーと一緒に行ってやれ。何かあれば俺、ラドニー殿の名前を出していいから」
「分かった。」
「で、オーナー?やっぱり女の子の方がいいですよね?何の種族をメインにしますか?」
「私の奴隷友達に羊獣人と兎獣人がいるかな。弓と短剣が得意だよ。」
弓はともかく短剣か。鳥を狩るのは難しいかな?でも友達なら片方だけとか可哀想だし……
「コナーに任せる。あと俺に聞くな。趣味に聞こえるだろ」
「あらあら……カミラはオーナーの注文だったはずでは?」
「お、オーナー……まさか私を手篭めに……」
「やっちゃえやっちゃえ!」
ユーリカ!君何言ってんの!カミラも何嬉しそうにしてるんだよ!
「英雄は女好きなのだな。ウチに招待する時はカミラ嬢に似た女を用意しておこう」
「あれくらいの胸が好みなのね。覚えておきましょうね。シオン、クオン」
「女性をコレクションかなにかと勘違いしていませんか?まさか……本当に?」
「ちょっと待った。三人とも!なんでそうなるんですか!」
「そうそう!ライトさんは巨乳が好きなんですよ!間違えないでくださいよぉぉぉぉぉぉぉ………」
問答無用で瑠衣を投げ飛ばすとやっぱりよく飛んで行った。うん、帰ってくんな
「それから店長、店長が仰ってたコメ……ラニエの実なんですが……本当に食糧なのですか?確かに食べれなくはないですが誰も好まないと思いますよ」
「え?コメあったのか?」
「え、ええ。オーナーもご存知なのですか?」
「ああ、今あるか?」
「はい」
店の奥に行ってすぐに戻ってきた。手には未精米どころか稲に包まれたままの米が乗った皿を持っていた
「ああ、間違いない。コメだな」
「うん。でも長い品種だね。インディカ米だったかな。それに似てる」
籾殻を指で潰し中身を確認する忍。なんでそんな名前知ってんの?怖いよ?
「兄さん、【シールド】。こすり合わせる様に【シールド】を作って」
作った【シールド】より大きい範囲のシートを拡げ米をコナーにそこに投入するように指示する忍
いや、妹よ。兄を精米機か何かと勘違いしていないか?そういうと違うと言われた。精米機じゃなく唯のこすり合わせる何かだと思い込めと言われた。精米機ですらないのか……
しょんぼりしつつ唯のこすり合わせる何かになり作業する。何この扱い。この国だと英雄なのに……
「兄さん、もういい。」
「へーい」
拗ねながらシートの上を見ると籾殻が外れた白い粒があった。シートの四方を掴んで真ん中に寄せると皿にのせ直した忍。二合分くらいかな
「兄さんは近寄らないで、お米が美味しくなくなるでしょ」
「……オヤジキラー」
「うるさいよ、……の……を見て……出して気絶した英雄のくせに」
「すみませんでした」
やばいやばい。二王の前で何言ってくれちゃってんだよ。ギリギリだよ。主に俺の精神力が
「ははは!英雄は妹に弱いのだな。」
「ちょっと弱みを握られてるので」
「言っとくけど、兄さんを精米機じゃなく唯のこすり合わせる何かって言ったのは調理に該当させないためだよ。せっかくやったのに食べれなくなったら嫌でしょ」
「流石だ。信じてたよ。妹よ」
「でもごはんは抜きね」
ショック!!
「まぁ、試食分くらいはできそうかな。調理法も経験して欲しいし……誰か覚えたい人?」
「あ、私やりますよ。カミラ姉は仕入れも下処理もしてるし、コナー姉は会計も調理もしてるし」
ユーリカが忍に答え出て行った。でも聞いた感じどう考えても手が足りてなかったんだな。もっと早く教えて欲しかったぞ
忍がユーリカにレクチャーして四十分程経った。その間はコナーが用意してくれた唐揚げを食べた。やっぱり唐揚げは最高だ。
アルフレッド、ユニエール様もパクパクと食べていた。もちろん姫巫女もだ。勇者を忘れて唐揚げを食べている。勇者共に拗ねられればいいんだ
「それにしてもキヤマシノブは逸材だ。アレが調理できるようになると世界的に食糧を提供したも同然」
「確かに今までは家畜に食べさせるだけでしたからね。」
「兄は英雄で魔法の先駆者、妹は食の権威ですか……恐ろしい兄妹だこと。でもミラトリアスじゃないのが残念です」
ミラトリアスだけはごめんだけどな。偉い人間が馬鹿だしね
「とりあえず、米が普通に食べれるのが分かったら一大事だ。貴族が買い占めたら堪らない。こちらでできるだけ買い占めて管理した方がいいな」
「そうね。鋼、私と買い占めに行くわよ」
「え?俺も?」
「文句あるの?この出歯亀が……」
「ないです。すんません」
午前中に買えるだけ買うのだから量は知れてるだろうか?うーん……。なんかいいアイデアはないだろうかとコナーに聞いてみると商業ギルドはどうでしょうか?と言ってきた
「ウチは個人経営だからあまり関わりがないのですがギルドに登録すれば人手は借りれますよ。その方々にお願いするのはどうでしょう?」
「あー、ダメだな。確かに人手は借りれるがきっと搾り取られるぞ。手間賃だけならいいが何を買って何に使うのか、そんな情報まで全て売り買いするような奴らだ。情報はまだ開示するべきではないと思う」
アルフレッドがコナーに忠告をしてくれた。さて、どうするべきか……
「できましたぁ」
「完成です」
持ってきた皿は二つ。一つは白米、見た目は俺たちが普段食べてるのより長い。これはアレだな。
「炒飯とかにするのがいい奴だ。」
「そういうと思って簡単に作ってみた。二つとも試食してみて下さい」
二つ目には金色に輝く米達。刻まれたタマネギらしき野菜。なんらかの肉
「あー、お肉は余ったドラゴンの肉ね」
「白い方に乗ってる茶色い物は何かしら?」
「同じくドラゴンの肉を細かく切ってしっかり油でカリカリになるまで揚げて砕いたなんちゃってふりかけです。御飯と一緒に食べて下さい」
こ、これはヤバイな。食べたい。
「兄さんは抜きだからね」
「ふん。ズルいなんか思ってないし」
「ではいただきますよ」
「我も」
「さてさて」
食べたいのを必死に我慢しつつ三人の口に運ばれていくごはんwithドラゴンふりかけ。口に入れ噛み合わせる
「ほわあぁぁ!あり得ないぃぃぃぃ!!!」
「美〜味〜い〜ぞ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
「はうわっ!」
食べた後に叫び出す三人。アルフレッドの後ろにはどこかで見たことのある美食家が見えた気がした
「な…んだと。これがラニエの実?いやコメだと?」
「サクサクとしたふりかけがコメにしっかりとした味と食感を——」
「神よっ!!感謝します」
おい姫巫女!忍に祈るな!神が怒るぞ
その後炒飯を食べてまた叫び出す。いや、店の外がざわついてるから静かにしてよ
「シルバールの。」
「ええ……」
「買い占めは私達が手伝いましょう」
「これはヤバイものだ。バレたら一気に高騰するぞ!お前達一口食ったらすぐに行け。口実を忘れるな?何か勘繰られたら馬の飼料を同時に買ってしまったのかもとかいって誤魔化して買ってこい。送り先は城と英雄の屋敷に二分しろ」
「あなた達もです!一部はラドニー殿にまわしても問題ないでしょう」
「くっ!こんな時に勇者達がいないなんてっ!こうなったら自分で……」
それぞれの護衛が一口食べ、仰け反ったり、叫んだり、泣き出したりしながら走り去っていった。おい、護衛は?姫巫女も勇者を使いパシリにすんなよ。って自分で買いに行くんかよ!もうわけわからん
「なんて物を作るのだ。シノブよ」
何気に名前呼びになってるのはどういう事だ。
「ふむ、これは大変な事態になったな」
「ええ」
「まぁ幾つかの品種を見ないと私達が目指すお米を作れませんけどね。この品種じゃパエリヤとか炒飯向きですし」
「なっなんだと!まだあるのか?」
「材料がないから作れませんけどね。」
「これはいよいよシルバールにもこの店を出してもらわないといけませんね……」
くっくっくっと笑い出したアルフレッド陛下。どうした?変なものでも食べたか?
「シルバールの、ウチが先だ。協力の見返りにそう言ったのを忘れるな?」
「くっ!」
「あの……喧嘩はしないで下さいね。これ、デザートのプリンです。」
カミラと一つずつ持ってきた黄色い山。山頂にはもちろんカラメルソースがかけられている。忍からプリンの説明を受け、早速とばかりにスプーンをつかみ黄色い山肌に差し入れた。
「こ、これは…」
柔らかさに驚くユニエール様、掬い上げるとぷるんと震えるプリン。まじまじと見てから口に入れた。
「はぁぁぁぁ……これはダメ。もう苦しめないで……。美味しいって辛い」
「シノブ!我の妻になれ!うん!そうだ!それがいい!」
「ダメです!私の養子にします」
「両方無しです。ウチの妹を取らないように。妹は恋愛結婚しかさせませんし、養子になんて出しません」
「「ぬうぅぅぅ……」」
大丈夫か?今戦争前だよな?なに呑気な事してるんだろう?
「ライト様」
おっ、ネームレスが帰ってきたか。窓の縁に差し込まれるメモを受け取り目を通す。ふむ、知らん奴ばかりだな
「忍、リストが上がった。コナーと交渉しにいってくれ。後、零華に城前で落ち合おうと連絡頼む。あ、姫巫女様も頼む。言わないとうるさそうだ」
「了解」
さて、と店の中もほとんど人がいなくなるからそろそろ出発するか。護衛いないんだけど移動していいのかな……ま、いいか
「それじゃあ二人ともいきますよ。いつまでもプリンで遊ばないで下さい」
「もう一個、もう一個だけ」
忍がどうする?と視線で伝えてくるけど首を振り許可しない。それを見た二王が不満な顔を浮かべるけどやっぱり許可しない
「ダメです」
「ケチ英雄」
「シスコン英雄」
「出禁にしますよ」
「「ごめんなさい」」
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