朝食は遅めに——ライト
夜も遅いが後片付けのためエルゲニア城で部屋を用意できなくなった。その為シルバール、トラファールの人間を俺の屋敷で預かることにした。
既にベッドメイキングは済んでいたようだけどとりあえずで王用、護衛用をそれぞれに部屋を貸した。ただベッドが足りん。護衛はソファも使ってもらおう
この後二国の残りが合流するはず。団体客なので少しでも早い方がいい。執事長にすぐに指示してメイドさんを動かしてもらった。ちなみに王妃の手先も一人来ていたので到着時刻も連絡が取れるのでバッチリわかっている。ただ余計な客も向かってきているそうなのは予定外だな
ラフな格好に着替えながら執事長にデルクリウスの話をする。ついでに何故二国の王が来たのかも。それから運び込まれた鎧龍の胃袋を開けずに処分——一応マウリーの遺留品も出るかもしれないから胃袋だけ内密に王都に運び込むようにした——するように連絡。忍がショック受けちゃうしな
「領内の治安が荒れる見込みがあります。冒険者に依頼して見回りをさせます。」
「わかった」
「それから冒険者ギルドから手紙が来ています。」
「ん?登録してないはずだけど?」
「ついで程度に顔を出しておけばよろしいかと」
ふむ、手紙をみ見るとどうやら一度会いたいということらしい。例の件について話したいとの事だった。……例の件?
よくわからないまま手紙をチェストにしまい二国に不便が無いか確かめに向かう。些細な事で諍いが起こってはイリアさん、ひいてはルナマリアに申し訳ない。廊下を歩いて、まずは零華の部屋の方へ。こちら側にはシルバール陣が間借りしている。ちなみにトラファールは忍側だ。忍なら瑠衣と違って気を効かせてくれるはず。任せよう。
廊下を曲がると先の方で魔力を感じた。誰だ?廊下をうろちょろしてるのは
不審に思いつつ廊下を進むと挙動不審なクオンが廊下をうろついていた。すぐにこちらに気づき安心していた……方向音痴なのか?どことなく恵に似た雰囲気を感じ少し和んだ
「ライト殿、ユニエール様が少し時間をいただけないかと申されております。あと部屋が分かりません」
クオンと話すと話し合いの場を持ちたいということだった。時間も9時を過ぎている。すぐにでもと返事をするとこのまま廊下を進んで零華を呼び、応接室へ向かった
10分程すると応接室にノックの音。もちろんシルバール陣だ。扉を開き迎い入れ席をすすめる。後ろにはトラファール陣もいた。呼んでくれたようだな
零華が先に用意していた飲み物を全員に出すと俺の横に座った。先ほどとは違い明らかに不安な表情を浮かべている。ルナマリアに対する配慮だったのかもしれない
「大変な事になりましたね…」
「ええ…」
ユニエール女王が呟き零華が答える
「私達が出来ることは少ないですが、可能な限り協力を惜しみません。先の条件にもう少し力を貸すことにしました。【シールド】の事もありますし」
初めから協力してくれるつもりだったのだろうな。言い淀みがない。まぁ【シールド】には極意と言うか秘技的なのがあるけど教えてないのにいいのかな?いいよな?冒険物には必須なシステムと言うかこの世界じゃ完璧チート能力なんだけど。知られるのも怖いしまたにしよう
「例えばどのような?」
政治的な問題だけど時間が惜しい。引き出せる所は出来るだけ引き出したい。ルナマリアには悪いが少しでも進ませたい
「武力を送ることは出来ませんが、国民を一時的に脱出させる程度は出来ましょう。その間の食糧もある程度保証します。」
「他にも戦争後の復興に協力させていただきます。資材、食糧、労働力。その辺りですね」
シオンとクオンが説明してくれた。内容は問題ないと思う。敗北時も国民をある程度は受け入れるようにするつもりだと言ってくれた。難民を受け入れる国力がみてとれた。国人口増加の狙いも感じたけど
「先ほどは物資の援助と王都の警備と言ったがトラファールは往復日二週間、すまんが戦後という事になるだろう。王都の警備も見方によっては城を包囲しているようにも見えると意見があった。ルナマリア女王陛下には説明するが恐らく警備は無理だ。」
まぁ無いよりマシだからいいか。一応クーデターも大丈夫な気もするしな。ただ今回の地震被害がまだわからない以上戦力的な加算がないのが苦しい気がする。戦力の譲歩が欲しかったな
「魔神は何故人間と魔物にこだわったんだろう?」
「?」
クオンがポツリと言った。そういえば亜人が怯えて使い物にならないって報告を受けているな。コナー達は連絡が取れてるから大丈夫だろうけど一回屋敷に呼んだ方がいいかもしれないな。ネームレスに頼んでおくか
「魔神は本当に人間と魔物だけでやらせるつもりなのでしょう。亜人を連れていっても戦力にならないと思います」
女王様はさらなる戦力の低下を決定する一言を言った。……どうする。
「一つお願いしたいのですが」
発言した零華に視線が集中する。零華の事だろうから考えて言ってくれるから先に教えろとは言わないでおこう
「当日前までシオン、クオンの二人をお借りできないでしょうか?魔法の修行や使い方を教えていただきたいのですが?」
シオン、クオンは突然の申請に目を開き驚く
「前日までなら構いませんが、魔神を倒せるほどなのでしょう?今さら必要なのですか?」
ユニエール女王が用意された紅茶で口を潤してから言った
「実の所、本当に戦えるのはここにいるライト、恵、鋼介の三人だけです。それではみんなが生き残るには三人の荷が勝ちすぎます」
苦々しい顔で頭を下げた。そんな風に思ってたのか。【アクセス】教えてやろうか?零華は【タフネス】が使えるんだからタフにはなれるぞ
「お願いします」
膝に手を乗せ目を閉じ考えるユニエール女王。数秒して目を開き笑顔
「わかりました。シオン、クオン、女王として命じます」
戦争前日まで妖精騎士団と共に過ごし出来る限りの知識と経験を与える事を命じた。二人は少し戸惑ったが理解を示し、握手をかわす
「よろしくね、零華」
「セドリアがいれば何か教えられたのだが……」
細かいやり取りや今後の展開については明日ルナマリアと共にさらに話し合う事を決め今日はお開きした。結局戦力的には増加しなかった……後は自分達でできるだけやるしかない。冒険者ギルドもあてにならないだろうな。勝てるか分からない魔神相手の戦争だし、むしろ危険の方が多い。同じ理由で傭兵も駄目だろうな。亜人も冒険者も傭兵も駄目。戦闘訓練のない奴隷なんて無駄、戦闘中に反抗されたら厄介だし連れていけない
とりあえず…今日は状況を纏めるだけにしてもう休もう。シルバール陣、トラファール陣の順に入浴後に風呂に入った俺は恵の様子を見るために彼女の部屋に寝ることにした。
恵の部屋にはソファーがあるのでそれで寝ようとしたけど執事長にベッドを用意すると食い下がられた。「主人をソファーに寝かすなんて…」「末代までの恥に…」「陛下になんて申し開きをすれば…」とちょっとした小言が始まった
別に慣れてるからいいのにと言うとさらに小言が増えた…。駄目だ…この人の職業意識には勝てない。さらに話題は腕の怪我にまで発展し怪我をした詳細まで追及され誉められはしたもののやっぱり小言が飛んできた。自分で適当にした手当もほどかれメイドさんに新たに付け替えられた
その間に用意されてしまったベッドを眺めていると部屋の外から「珍しいものを見た」とみんなが集まってみていた
「みんなさっさと寝ろよ」
「おやすみなさ~い。くふふ」
瑠衣がにやけ顔で自室へ
「おやすみ」
忍が表情無さげに、でもどこか嬉しそうに離れていった
「じゃあね。またソファーで寝る時は教えてね。寝る前に面白いものが見れたわ。おやすみなさい」
零華が良い夢見れそうとか言って帰っていった。何満足してるんだ。見せ物じゃないぞ
「このやろ!ライト!よくも置いていきやがったな!」
「静かにしろよ。深夜だし恵の部屋に入ってくんな」
「それより部屋を都合していただけませんか?流石に眠くて……」
「我らもシルバールと同じ待遇を要求する」
夜も更けて、さ、寝ようかという時に恵の部屋の扉が開かれた。ずかずかと入ってくるのは解凍済み鋼介と姫巫女と勇者のウォルトにユディス。ルナードともう一人はどこに行った?
「はぁ……誰か聞いてるか?」
「はい。ここに」
ネームレスがササッと現れ俺の前に膝まづいた
「悪いが勇者は鋼介の部屋な。姫巫女様は……瑠衣の部屋な。まだ起きてると思うから案内してやってくれる?瑠衣は【スリープクラウド】で寝かせてソファにでも置いておいたらいいから」
「畏まりました。」
テキパキと決めてさっさと寝よう。
「おいっ!適当過ぎるだろ!姫巫女様にもっと敬意を払いたまえ!」
「それよかなんで助けてくんねぇんだよ!」
「なぁ、勇者。乙女を覗くのは犯罪だよな?」
「む、それは確かに。氷漬けにされても文句は言えん」
「それより姫巫女様を……」
「あと……身を清めなければ。お湯をください。あとタオルと、あと石鹸と、…あと香油と……あとお祈りして……」
あと、あとと繰り返す姫巫女。半分くらい寝てるな。足取りがゾンビのようだ。聖職者ゾンビとはなかなか洒落が効いてるな
「おい、勇者。姫巫女様が寝そうだ。今日は我慢してさっさと寝かしてあげたら?」
「くぅ……」
「ウチの人間はもう寝るから姫巫女を清めるなら自分達でやってくれよ」
「なっ!なんて畏れ多い事を!尊き方の裸体……いい……はぁはぁ」
「キヤマライト。ルナードが悪かった。頼むからメイドを貸してくれ。たのむよ」
さっさと出てって欲しいのでネームレスではなく自分の屋敷メイドさんにお願いする。どうでもいい事にネームレスを使いたくない。姫巫女様が出て行ったのであとは邪魔者を追い出すだけだ
「んじゃ、おやすみ。飯は明日に忍にでも言ってくれ。ほら、女の子の部屋だ。いつまでもいるんじゃない」
いい匂いがするからいたいのは分かるけどお前らはこの空気を吸うんじゃない。え?一緒にすんなとはどういうことだ?
【ストレングス】で強化した腕力で部屋からポイポイと投げ飛ばす。【シールド】で入り口を固めたら終わりだ。
「ったく。やっと寝れるな。恵、おやすみ」
寝ている恵の隣のベッドに入りその横顔を見ながら就寝した。寝ているとはいえ、いつ起きるかは分からない。手は出さない。誰がヘタレだ。紳士と言えよ
翌朝、ベッドに寝る恵の横で目が覚めた。恵はまだ起きていない。服の型崩れを防ぐために寝巻きを着させているけど全く動いていないようで乱れていなかった。起きた時身体が痛そうだ
「でもまぁ血色は良しと」
そう言えばルナマリアは寝れたのだろうか?覗きがばれたっぽいから顔を合わし辛いな。王妃の所為なんだけどなぁ
『ライト様、おはようございます。部下の方がそちらに向かっております』
「おはよう。うん、わかった」
扉の向こう側に人が歩いてくる音が近づいてくる。【サーチ】すると瑠衣だ。移動のスピードからするとテンションが少し高いな。俺は窓を開けて待ち構えた
廊下を走る音が一直線にこちらに近づくとノックも無しに扉を開き瑠衣が跳んできた
「おはようございまあぁぁぁぁぁ………」
いつもなら絶対寝ていると思ってたんだろうな。起きていたからかびっくりしている。フライングボディプレスで跳んできた瑠衣をそのまま巴投げで窓から放り出す。瑠衣は軽いから良く飛んでいった。鳥人間コンテストにでも出てろ
「あああああぁぁっと!何するんですかぁ!!!」
身体を翻し難なく着地する瑠衣。やるじゃないか
「おはよう。皆は?」
「みんな起きてますよ。じゃなくて!何してくれてんですかぁ!」
「飛び込んで来るなよ。ついついやっちゃったじゃないか」
「…………、あぁモヤモヤするぅ。昨日もベッドで寝てたら姫巫女と変な仮面したクレイジーなメイドが入ってくるし、起きたらソファで寝てたのライトさんの仕業でしょ!!」
身体を震わせ苛立ってる。よくわかったな。謎は全て解けたってか?
「とにかく!ユニエール様も起きてます。ライトさんも早く!」
「分かった」
室内に入ろうとする瑠衣を窓を閉め侵入を阻止。窓の外で何やらキーキー言ってるので仕方なく開けてやった
「後で覚えてろですよ」
使用人に服を用意してもらい直ぐに着替えダイニングへ。零華達とユニエール女王、騎士服に身を包んだシオンとクオンが先に朝食を取りながら、話している。どうやら今までの個人実績について話し合っているようだった。なかでも飛竜の一件は関心を引くものだったらしく盛り上がっていた。アルフレッドは忍が作った朝食をモリモリ食べながら忍を気にしつつ話も聞いていた。もう胃袋掴まれかけだな。忍が自分から言わない限り嫁にはやらんぞ。ってか無理だから諦めろ
「おはようございます。ユニエール様、アルフレッド陛下」
「うむ、おはよう。しかし寝坊助なのだな英雄は。」
「おはようございます。ライト殿。先に戴いていますよ」
「おはようございます。昨晩は助かりました。一応礼は言っておきます。ただちゃんとした部屋を用意してもらえなかったのが残念です。今度はしっかり準備してください。あとあのしゃんぷーとこんでぃしょなーの購入出来るところを教えてください」
「この卵焼き美味いな」
「いや、この芋の荒く砕いて揚げた奴もいいぞ」
勇者、礼より朝飯が大事なのか?まだ姫巫女の方がマシじゃないか。ってか姫巫女また来る気なのか?いや、それよりも勇者は普段何食ってんだよ。忍も店の朝食メニューを試食させるんじゃない。ちなみにハッシュドポテト、ケチャップ付きだ。ありがたく食え
俺も席に着き朝食を食べよう。
「今日これから、もう一度ルナマリア女王に会いに行くのですが、あなた方も一緒に行かれますか?」
「ええ、魔神が出てきた以上私達も会議に行かないと。」
デルクリウスは俺も目標に選んでいるし行かないわけにはいかないよな
「あいつ腹が痛いとか言ったら許してくれないかな?」
「怒ると思うからやめてね」
「ほんと、恵さんがいないと適当なんだから……」
「ほっとけ」
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