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今日の運勢は?——ライト

「ライト君、無事?」


 剣を鞘に戻しながら手を挙げて返事をする。もう寝転びタイムは終わりだ。帰らないと恵が心配する


「ドラゴン相手に勝つなんて人間技じゃないわね」


「簡単みたいに言うなよ。これでも超がつくほど本気だったぜ。手は骨折するしさ。顔から地面に突っ込んだのも痛かったし」


 右腕は赤く染まったシャツを撒いているけど、吸い込みきれない血液が肘から流れ、地面へと落ちていく。早くちゃんとした手当てがしたい


「すまないが馬車を取ってくる。証拠品を持って帰らないと」


 ドラゴンが人間だった面影は一切残っていないけど分かるものが見れば分かるだろう。手で引いた馬車の荷台にドラゴンの頭を乗せると気絶したままの騎士三人を空いているスペースに詰め込む。片手なのがやりにくいが零華はドレスだ。汚させるわけにはいかない。メイドさんが手伝ってくれたらなぁ。戻ってこないだろうか?


 おっと、尻尾を忘れるところだった。うん、これは串焼きだな。骨もついてるしシチューとか煮込み系の肉にするのも悪くなさそうだ


 仕方なく全部自分でやる。さっさと帰ろう。


 騎士が乗ってきた馬だが三頭とも頭の良さげな馬だ。ゆっくりと進む馬車についてくる


 途中、側近の馬が取り残されていたがそれは零華に任せる事にした。人間形態であの大きさだったのだから乗せて走るうちに溜まった疲れが多少まだ残っているのか特に動かない。零華も無理に引かず、時折待つように言ってくるので速度を合わせて帰った


 すでに周囲に生き物の気配は無く危険なものも特になさげだ。そんな中気になるとしたら声をかけてくるくせに顔を向ける度にカーディガンを握りしめ馬の陰に隠れようとする零華くらいだ


「さっきから俺が振り返る度に身構えるの何?」


 いい加減やめるか原因を教えて欲しい。どうしてもやめないし教えてくれないなら【ハートリード】で確かめていいんだぞ?


「逆に聞くけど知ってしまってもいいのね?もちろん恵ちゃんに言うけど後悔しない?絶対に誤解されて溝ができると思うけど。そして私ともお別れする可能性もあるわ。それでも聞く?」


「やめておきます」


 言ってもいいと言ってるように見えるけど聞くと死亡フラグが立つ気がする。即座に諦めて無言で馬車を動かす事に集中する


「よかった。聞いていたら氷漬けにして海に沈めるところだったわ」


 こっわ!!この子や◯ざだよ!


———————————————————


 しばらくして屋敷の明かりが見えた。バルコニーからは赤い点滅が見えるがモールス信号じゃない、火の玉だ


 気付くように恵がやってくれているのだろう。それに応えるように雷の玉を馬車の上に作り発光で帰宅を知らせると、バルコニーの赤い光が消え、玄関にぞろぞろと何人もの奉仕人と仲間が出迎えてくれた


 もちろん一番前には恵だ


「ライトさんおかえっ……あ、何があったんですか⁉︎。腕が…」


 泣きそうになる恵。今後あまり目立つ怪我はしないよう気を付けよう。零華が回復魔法を修得してくれれば助かるな。忘れてなければ明日にコピーしておこう


「説明は後でする。すまないが捕虜と証拠品を頼む」


 馬車は忍と鋼介がやって、馬は使用人達が引いていった。破れた幌が気になったようで荷台を見た鋼介が驚いた声を出していた


「恵、瑠衣、すまないがすぐに湯を作ってくれ、傷の手当てがしたい。医療品もだ」


「はいっ!」


「分かりました」


「ライト君、私は着替えてくる。すぐに行くから」


 右腕を抑えたままダイニングへ向かい壁際の椅子に座り一息つく。すぐに恵と瑠衣が戻ってきて湯気の上がる銀の器と水の入った器と清潔なタオルを何枚か用意してくれた


 恵が自分の荷物から消毒液を取り出しテーブルにそっと置いてくれた。心配かけてるな。ごめんな


 傷口を見つめ気合いを入れる。一枚のタオルを口に噛みしめ湯を傷口へかけた。【パラライズ】はもう解けているし追加もできない。目から涙がでそうになるし口からは悲鳴が飛び出しそうになるが我慢。することはまだある


 恵も瑠衣もそんな顔をするなよ。痛さが増すじゃないか


 泥混じりだった傷口を消毒し市販の傷薬を使う。ここでも染みるが我慢、ガーゼを乗せてもらい包帯を巻いて終わりだ。背もたれにズシッと体を預け脱力。こんなに体力、精神力を消費したのは初めてだった


「兄さん、あの人達は納屋に入れておいたわ」


「ライト君、傷の具合はどう?」


「よく倒したなぁ。コレ」


 三人が部屋に入ってきては自分が決めた椅子に座って行く。忍がテーブルにシートを置き、鋼介がテーブルの中央にドン!と置いた。ダイニングテーブル中央にはレジャーシートの上に置かれたドラゴンの頭がある。死んでいるとはいっても、やっぱりその風貌には威圧を感じる。その横には尻尾もある


「そういえばイクスをつかわなかったわね」


 今は本当にラフな格好の零華。簡単なドレスにベスト、はじめの頃のような格好で寛いでいる。心なしか顔が安心感に満ち溢れている。何故か腰に触れてはうんうんと頷いている


 そんな零華は自分の担当のメイドさんにデザートを頼んでいた。程なく怪我人を前に用意されていたデザートを遠慮もなく食べてる。いや、食べたっていいんだけどさ。


 会食でも食べていたけど本人は緊張して食べた気がしなかったらしい。胃薬いらないのは本当だったみたいだな


「あれは1日1回だ。それ以上は体がもたない。それより零華、今日1日をまとめてくれ。みんなも知っておくと良い」


 今日1日を時系列順に話すように頼むとメモ帳を取り出した


 今日書いてたっけ?


 朝、昼、夕方、夜、各時間帯の主要な事を自分の主観、感想を織り入れながら簡潔に話していった。中でも会食時の証拠はないが魔神と組んでいる可能性のある国、メディリシア。妖精騎士団を取り入れようと躍起になるアスツール帝王。それにつながるエルゲニアのマウリーと大臣。さらにマウリーの失踪と屋敷の炎上。そして、ドラゴンの襲来。シルバールの事を含めればいろいろあった日だ


「このドラゴンは証拠にはならないけど、決定的ね。可能性じゃなく、確実よ」


 とぼけられてそれで終わりだけど、メディリシアは魔神と繋がり協力を得ているという確信は持てた。糾弾するならドラゴンの胃でも持って来ればよかったかな?もしかしたらリザ唐の一個でも見つかるかもしれなかったもんな。失敗したな


「それでみんなには悪いんだけど、1時間でいいから屋敷の中を徹底的に探して欲しいの。大臣とマウリー、もしくは大臣とメディリシアのやりとりの手紙のような物があるかもしれないの」


 使用人も手伝ってもらい屋敷内すべてに人員を割いた


「ライト君は休みなさい。恵ちゃん。あなたは見張りよ。ちゃんとベッドに縛り付けておくのよ。こら鋼、さぼらないの」


 そういうと零華もダイニングをでて何処かへ行ってしまった


「さ、ライトさん」


「あ、ああ」


 左腕をがっちりと捕まれ寝室へ引き込まれていく。風呂上がりだったのか髪からほんのりいい匂いがした


「もう11時ですよ。明日は式なんですからライトさんは寝てください。お風呂は明日です」


 言われなくても体は限界だったのでベッドに入るとすぐに意識が消えた。エロハプニングがあった日は魔力が尽きるまで修行するんだけど今日は無理だ。っていうかエロハプニング最近多すぎだ。嬉しいけど同じくらい心労祟るんだよな。魔法の訓練が捗るから助かりもするんだけどさ


「お休みなさい」


 その晩、結局何も見つからなかったので全員就寝につくことになったそうだ。翌朝は用意のため全員が早起きをすることになってるので誰か起こしてくれるだろう


———————————————————


 「ねぇライトさん」

     「もう、ライトどこ見てるの?」

 「味見するんですか?オーナー」

    「肩を流させて下さいライトさん」

 「ライト君のエッチ」

   「ちっちゃくても好き?ライトさん」


   「なんなら私を抱きますか英雄?」

———————————————————


 はっ!……………夢か。知り合いの女性が裸で現れ迫ってくるなんて。右腕を包むように恵、左腕をルナマリア、両肩に押し付けるようにコナーとニーナ。右足にもたれるように零華、左足に座るように瑠衣。あと首に巻きつく蛇のように王妃。


 恵はいいだろう。彼女だしむしろ出てきてくれてラッキーだ。幸せだし今日一日いい事がありそうだもんな。


 ルナマリアも罪悪感を感じられるけどまぁラッキーだ。ニーナも同じ。


 俺、コナーをそんな目で見てたのかなぁ?よくわからん。それより何で零華と瑠衣まで出てきた?零華は昨日の夢の所為だろうと思うけど瑠衣にまで性欲感じてるのか俺?大丈夫だろうか?お巡りさん、こいつですとか指を指されないか心配になる。


 あと王妃は簀巻きにでもされてクローゼットの中にでも軟禁されて出てこないでください。それから誰か今日のラッキーアイテムを教えてくれ。きっと今日の運勢最下位だろうからさ


 悩むのは止めてそろそろ重い瞼を頑張って開こう。正直あと一時間は寝たいぞ


「キャアァァァァ」


「(なっなんだ?)」


 盛大な悲鳴で目がはっきり覚めた。確か自分の部屋で寝てたはずだけど……なんで悲鳴?事件か?癖になりつつある【探索】で調べるとやっぱり屋敷だし部屋だ。間取りも同じ


 違うのは瑠衣、忍、恵が室内にいた事だ。きっと起こしに来たんだな。でもなんで恵はベッドに乗ってる?


「わわっ。恵って大胆ね」


 大きな声に驚くが楽しさが勝ったらしい瑠衣。顔は崩れるほど笑っている。状況からすると恵もここで寝てしまった所を瑠衣に見られたんだろうな。恵が怒り瑠衣がなだめる。そんな二人のやり取りを感じながら起きるタイミングを見る


「恵さん、この前はどうやって起こしたんですか?」


 瑠衣の両肩を掴み揺さぶっていたが、忍に呼ばれ瑠衣を離してやった恵。


「そこの甲冑の頭を叩いてだよ。手頃だったから」


 見ると金色の甲冑の頭が歪んで置かれていて首を傾げているようだ。たしかに手頃そうだけど……あれで起こされたのか?その兜を手に取り恵に渡す忍


「今後は恵さんの係です」


「あ、え……うん」


 まさか、またそんな事するわけないよな?いくのか?だめなのか?


 右手を甲冑の頭の中に通し、近くに置いておいた剣で叩くとけたたましい金属音が室内に響いた


「ライトさん、あっさでっすよ~!」


 起きている状態でやっているところを見たことが無かったけど、された方はたまったもんじゃないぞ。零華の起こし方もそうだがこれも駄目だ


 そんなことを思ってたけどもう我慢ができない。鳴らし始めて数回、勢いよく瞼を開きストップをかける


「…起きた。起きたからもう鳴らさないでくれ」


 右腕を庇いながらゆっくりと体を起こす。


「おはようございます、ライトさん」


 自分に向けられた視線に満足した恵は頭を直しに行くと胸元に抱えた甲冑の頭から白い物がヒラリと抜け床に静かに落ちていった


「恵、何か落ちたよ」


 瑠衣は恵が気付かなかった紙を手に取り、中身を読む。


「七の月、一週目。軍は前線基地に到着。これにより作戦は成功を疑わない状況になった。後は待つだけだ。魔神が汚れ役をすることになっている。後はどうにでもなるだろう。そちらに手配した魔物だが、太陽に弱く、浴びれば弱体化する。姫の死後、手なづけた近衛に処理させるといいだろう…ってこれ!」


 おいおい……そんなところにあったのかよ。


「当たりだな。これで大臣はマウリーとのつながりが証明された」


 ベットに腰掛け聞いていた俺は包帯を外していく。昨晩は紋章を使いすぎた為か治りが遅く、まだ傷が残っている。忍に手伝ってもらい新しく包帯を付け替えると体型の近い使用人の持っていた礼服を借り受け袖を通し襟をただす。着替え中瑠衣がチラチラ見ていたけどなんだろうか?変なところから毛が生えてるとかないよな?


 問題もなく着替え終了。これでなんとか式には出ることができるな。皆がダイニングに集まっていることを聞くと早歩きに向かう


 挨拶と共に朝食の席につくと、俺の姿を確認した使用人がベルを鳴らし、朝食を運んでくる。この歳で家長ってのも違和感あるなぁ


「まさか、寝室にあるとは思わなかったわ」


 朝食を終え、果汁の飲み物を飲みながら話が始まった


 甲冑なんてわざわざ触る気にならないからな。都合が良かったんだろう。触るとしても掃除の時に拭くくらいだろうからな。大臣もまさか目覚ましがわりに甲冑に触れる者がいるとは思わなかったようだな。流石は恵、早速ラッキーを起こしてくれたみたいだ


「って事はなんだ?大臣はマウリーに操られてたって事か?」


 おぉ!少し状況が解ってるのか!やるな鋼介


「そうね、でもわかったのはそこまで…。メディリシアとマウリー伯爵との間の証拠がない。仲が良いだけと言われればそれまでよ。捕虜のマントだって盗まれたとでも言って誤魔化すと思うし」


「後は大臣に喋らせるしかない。しかし、相手は手強いな。決定的な物は掴ませない」


 果汁を飲み干すと話は終わり、皆に準備を急がせた。今日ばかりは自分達の馬車では行かず、迎えが来ることになっている。というより来ていた。一時間程前らしい。悪いことをしたな


 女性陣が集まるまでの間に挨拶しておく。玄関には三台の馬車が一列に並び乗車待機をしている。どれも安物ではない。小さなステップに扉、窓、中にはソファー並の座席。


「ルナマリアは優遇し過ぎだ。今度言ってやろう。」


「それだけ、期待してるんですよ」


 一番早くに来たのは恵だった。やっぱり横には恵がいると安心だ。



 その後全員集まったのを確認して三台に二人ずつ、俺は恵と、零華は鋼介、忍は瑠衣が相乗りになり、使用人にドラゴンの頭と目覚めた捕虜三人を運んで貰うことになった


 次は20日12時更新予定です。


 ライトの強さはハプニングありきって事ですね。常人以上の魔力のあるライトが魔力が切れるまで鍛錬してればそりゃ強くもなりますよ。


 王妃の手先が動けば動くほど……


 誤字脱字あれば教えてください。よろしくです。気が向いたら評価、ブクマなんかもお願いします。ページの下のほうにあったりしますよ

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