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会食——零華

「では、皆様にエルゲニアの料理が口に合うかはわかりませんが、用意させていただきました。そのどれもがこの団長の妹に手塩をかけて作ったレシピによるものです。ご賞味あれ」


 リアンから聞いていた通り用意されたのはワイバーンのステーキとスープ、リザ唐にコボバーグ。サラダにはこれまた忍ちゃんの作ったシーザードレッシングとマヨネーズが添えられている。他にもあるけど忍ちゃん製に比べて特に目立たなかった


 あまり目にしない料理を見たからか各国のそれぞれに大きな反応があった。


「これは団長が一撃で倒したワイバーンの肉や骨から作った料理です。スープは普通なら武具に使ったりする骨をふんだんに使った贅沢な一品。これを献上された母は止められなかったとか」


「む……これほどのスープが……」


「団長殿の妹君は料理人なのか?我が国に来てもらうことは出来ぬのか?」


「確かに美味しいですわね。ルクレツィア王妃がやめられなくなったのも頷けます」


 さり気にライト君自慢を入れるルナマリア、唸り、欲し、納得する三王や側近達。特にから揚げやハンバーグがお気に入りのアルフレッド国王。シーザードレッシングによるサラダも気に入ったようで静かながらもモリモリとたべてる。子供らしく野菜嫌いだったのかドレッシングと共にたべてる様子を見た側近が驚いているのには場が和んだようだった


「もし……このしーざーどれっしんぐとやらのレシピを譲っていただけないだろうか?なんなら既製品でも構いませぬ。研究して作りますので。」


「陛下が文句を言わずに野菜を食べるなど我が国の誰が信じましょうか?それほど憎っくき野菜をこれほど、いえ、自ら進んで食べるほどとは。妹君には後日感謝に伺いたく存じます」


「いやいや、これほど食を研究しているお方なら研究室の一つでも建てて差し上げては」


「うむ……食文化の開拓者か。素晴らしいな。ウチに息子が居れば……悔やまれるな……」


「我が国に適齢期の息子を持つ者……いや、しかしそ奴らなどに……。いっそ陛下の……」


 おかしいな。野菜食べてるだけなのに大事になってる?和やかなはずなのに何故か忍ちゃんの引き込みが始まりそうになってる


「お前達……減給な」


「減給などで陛下の野菜嫌いが直るなら結構。引き続き野菜などをお食べください。これであとは牛乳さえ克服すれば……」


 アルフレッド国王の言葉にも怯むことなく野菜を勧める側近達。減給いいんだ?


「騎士団の傍ら飲食店もやっています。そちらには甘い物のメニューもあるのでお暇があればどうぞ。西地区にありますのでお気になられたなら後で誰かに案内させましょう」


「是非に」




———————————————————


 食事も終わり、ルナマリアの提案で自由時間が設けられた


 ルナマリアは私達を連れてトラファール、メディリシアに挨拶に回る。二国から情報には感謝するが発言には注意するようにと再度言われ、私とライト君はもう一度頭を下げる事になった。トラファールからは多いくらいの感謝ももらったけどね


 さらにメディリシア勢はライト君を胡散臭げに眺めていたが、いちいち相手にしたくないので「いずれその目で拝見されるがよろしいかと」と流していた


「先ほどはありがとう。シルバール女王として感謝の意を伝えます」


 一段落ついた頃、ユニエール女王様がエルゲニアの席に来てライト君に言った。差し出された手にくちづけし、挨拶をする


「妖精騎士団が団長輝山ライト。光栄至極に感じます。私どもも支援の方、助かりました。」


 手を胸に騎士の礼。相変わらず様になってるわね。


「従者の方はお二方とも女性なのですね」


「彼女達はシオンとクオン。ドラゴンロード家の跡取り娘です」


 ユニエール様の右にいるのがシオンさん、左がクオンさん。双子の側近だという。似ていると思っていましたけどなるほどね。


 顔は同じだし瞳の色も同じ、制服なので服や靴も同じだわ。違うのは髪型と利き手、それと胸だけ。髪型はお互い、鏡合わせのように逆をむいているし、利き手はシオンさんが左利き、クオンさんが右利きだわ。二人の腰差したレイピアが物語っている


 最後に胸だけどシオンさんはDはあるけどクオンさんは……その話には触れない方が良さそう


「そちらこそ、女性が副団長なんですね?」


 シオンさんが私を見ていった。

 うーん。勝手に副団長になってただけなんだけどなぁ


「青山零華と申します、以後お見知り置きを」


 ドレスの裾を持ち会釈。二人も同じように会釈をしてクオンさんだけがそのまま固まった


「どうしたの?クオン?」


 ユニエール様に訪ねられたクオンさんは私をじっと見てる……何かしら?視線は顔より下。しかもクオンさんはプルプルと震えている


「…胸、おっきい」


 は?胸?


 突き刺さるようなクオンさんの目から私は両手で胸を覆い視線から逃げる


「ちょっ!どこみてるんですか」


 ライト君も私の『それ』を見そうになるけどなんとか耐えたみたいで思い切り反対を向いた。見てたら恵ちゃんにちくったのに


「ごめんなさいね。クオンは胸にコンプレックスをもってますから。ね?」


 ユニエール様も自前の胸を強調させながら言う。この人も胸大きいな。ライト君もそんなユニエール様の胸にどこに視線を逃せばいいのか分からず困りクオンさんに営業スマイルを向けた。


 クオンさんはライト君が自分に逃げて来たのに気づき少しベソをかきはじめた。恥の上塗りを避け、ユニエール様の後ろに逃げるように下がっていった


「ところでライト殿は爵位はお持ちで?さきほど紹介されるときおっしゃらなかったので」


 ライト君は顔を横に否定する。説明したのはルナマリアだった


「彼はエルゲニアの騎士ではないのです。団名は私がつけましたが、彼らの本質は騎士でも部下でもありません」


 ルナマリアが間に立ち代わりに話してくれる。


「彼は私の協力者であり、命の恩人であり、友人なのです。自分達の意思で力をかしたり、命令や指示も自分の判断で断ったりもできるのです」


 シルバールの三人はルナマリアの言葉を聞きライト君の評価を上げたようで目を丸くして驚いていた


「そこまで姫の信頼を得ているあなたは相当な人物のようですね。あなたの名前覚えておきましょう。キヤマライト殿」


 綺麗な笑顔をライト君に向けた。やっぱり魔神を倒せるライト君はどの国も欲しいのかな。今のはアピール?


「シルバールに来られた時は是非案内させて戴きたいです」


 言ったのはシオンさん、クオンさんは頷くばかりで何も言わなかった。それで会話が切れたようで自然と離れていった


 シルバール勢と別れた後ルナマリアが周りを見渡し場の空気が停滞している事を確認すると会食をしめることにした。


「皆様今日はそろそろお開きにしてお休みになられてはいかがでしょう?長旅やアクシデントでお疲れになっておられるかと。」


 時間はもう八時前だ。こちらの世界の一般人だともう少ししたら寝ようかという時間。施政者ともなると別だけどやっぱりゆっくり考える時間も欲しいわよね


 各国の王それに快諾。用意された部屋に戻り情報の整理に入った。帰り際にシルバールとトラファールからは礼を、メディリシアからは小言と冷たい視線を受け取った。


 トラファールのお礼を受ける際、側近がアルフレッド国王に脛を蹴られていたのには笑いが噴き出しそうになった。やっぱり年相応な面もある方が人間味があっていいわね。


 笑顔で見送ると私達は一度リアンがいる待合室で待機し各国の王達が用意された部屋に戻るのを待ってからソファに着く。


「ふぅー」

「はぁー」

「疲れたぁー」


 ソファに向かい合って座るとリアンがお茶を出してくれた。


「メディリシアはともかくシルバール、トラファールは掴みはオッケーね」


「そりゃあんな事言っちゃ誰だって怒る。トラファールは忍の料理があってこそなのを忘れるなよ。あのままだと誤解したままになるところだったぞ」


「だって、メディリシアはライト達に刺客を送って来たじゃない。ちょっとした意趣返しよ」


「それをやめとけって言ってんだけど。何がきっかけで戦争になるかわからないぞ。人間同士で争ってる余裕なんて無いんだから。せめて普通、良くて良好の関係にまでしておかないといざって時背中が怖いぞ」


 関係が悪かった場合の最悪のケースだって考えなきゃいけないもんね。どの国からもそっぽ向かれて、いざエルゲニアだけで魔神を倒しました。国は疲弊して国力が落ちてます。じゃあ落としちゃえ……なんて事だってありえるかもしれないもんね


「それを踏まえていうけど以前から思ってたんだが、エルゲニアは同盟国はないのか?」


 そう。どの国と話してもどこかよそよそしい感じだった。シルバールだけは良好に向かってる感じだけどまあ今の所仲の良い友達の友達くらい。トラファールはまぁ普通の知り合い。残りのメディリシアは警戒心バリバリ不審者扱いレベルだったし。目指せ親友ってね


「ええ、魔神の出現以来停戦しているというだけでそこまでの交友関係はないの。通商条約があるくらいで協力関係にあるのは近隣諸国の主従関係くらいよ」


 なるほど。だからどの国のものでも売られていたりしてるのか…


「予測だがマウリーは裏切り者だ。帝国と繋がっている可能性がある。今調べているがな」


「そうですか…それが同盟とどういう…」


「昼間のメディリシア騎士の事を思い出してくれ。連れていくか殺すかという判断だった。つまり自国の戦力を増やすか、相手の戦力を減らすか…どっちかだった。エルゲニアより有利な位置にいたいんだろう」


「なるほど。将来攻めてくる可能性があるわけですか」


「さらに魔神が帝国と繋がっているとすると、アスツールの侵攻は確実になるな。なにせ神殺しがいるんだから、魔神にしたら面白くないだろう」


「攻められない為には他との同盟の必要があるのね」


「ずるいと思うかもしれないが俺達は魔神と魔物しか殺したくない。必要に駆られれば俺がなんとかするがみんなにはちょっとな。だから軍備を整える必要がある。同盟するなら派手、自国の軍備強化は内密にな」


 いくら整えたとしても情報がだだ漏れでは意味がない。対人間戦では人を殺せない私達は苦戦を強いられるだろう。先手を打たなくてはいけない。まずはマウリー伯爵の身柄の確保ね


「同盟については分かったわ。検討してみる。ただ、国戦力については困った事にお抱えの商人では足がついてしまうわ。行商人でもいれば」


 行商人か……一人の顔が浮かぶ。会わなくてはいけなかったのでちょうどいいわね


「俺の知り合いにロレンスっていう行商人がいる。今は南回りに回っているはずだ」


 そうそう、ロレンスさん。馬車だし街から街へはすぐに移動できないけど何日かたってる。だから最後にいた街から移動の方向で照らし合わせると……


 街の名前は知らなかったので地図で教える


「リゴンの街ね。分かったわ。探して一度会って見ましょう。何を商ってたかは見た?」


「織物と毛皮よ。薪もあったかも」


 積み荷を乗せるのを手伝ったので覚えていた


「それだけわかれば十分よ」


 行商人には行商人の仲間がいる。それらを辿れば、軍備にもてこずらないだろうとライト君は付け足した。


 飲み干したカップをテーブルに置き窓際へ立つと壁際に背中をつけ、腕を組みながら次の会話に入る


「あと大臣の牢屋に見張りの強化。明日の面会までに殺されでもしたら困る」


「そうね……」


 突然、扉を叩く音が部屋に鳴り響き直ぐに扉が開いた。ラドニー様だ。すぐに入ってくるのは変わってないけど、顔は強張っている。良くない感じね


「ライト。リアンづての頼みの事だが、すまん。遅かったかもしれん」


 報告によるとアスツール帝王を案内したあと、帰路の途中からマウリー伯爵は行方不明になっていた。城から出た形跡すらないみたい。どうなってるの?


 さらに数分後追加の情報が来た


 分かった事は王都内にあるマウリー伯爵の屋敷は燃えている。侍女や執事などの勤務者は避難できているらしいわ。良かった


 で、確認に行った兵士が不審な人物やもめ事などが無かったか話を聞くと屋敷に勤めてる全員が最近勤務するようになった人達だそうで最近の事を聞いても知らぬ存ぜぬで情報は得られなかった。古勤の人は?と聞いてみたらライト君は言いたくなさげだったけど辿られないようにしたんだろうと呟いた


 それって……


「手がかりが消えたか……」


 恐らく屋敷はおろか、どこを探してもなにもでないかも。火のつき方もキッチンじゃなく寝室から出ていると兵士がメイドさんから聞いている。恐らく放火でしょう


 屋敷……屋敷か……


 !!!


「ねぇ、ライト君、私達の家って元大臣の家じゃない?調べた方がいいかも。だって大臣も魔神と共謀してたんだし」


 大臣→マウリー伯爵→アスツール帝王→魔神という繋がりかも知れないもんね


「価値はあるな。よし、戻って調べよう。ルナマリア、気をつけてな。ラドニー殿、後はお願いします」


「ええ、では明日に」


「任せておけ」


 私達は屋敷に戻る事にしたけど、さてどうなることかな?



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