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報告書——零華

 さて、記憶転写を受けた恵ちゃんから聴取した報告書を作るわ。ニーナと別れた宿屋の後からの記載になるわね


「じゃあ恵ちゃん、お願いね」


———————————————————



 私のチームに混ざりにいった忍ちゃんを見送り二人は行きたい所を相談している


「みんな気を使ってくれてるんですね」


「ああ、なら、お言葉に甘えようか。デートしよう」


 忍ちゃんを見ていた恵ちゃんが振り返り笑顔。そのあとだいたいは決まったようで、手をあげ別れの挨拶。二人で大通りの波にのる


「とは言ったものの、どこかで甘いものを食べて雑貨を見にいくとは言え、まずどこに行きますか?」


「街の外れに高台があるそうだ。冷たい物でも買って行こうか?」


 エルゲニア市街東地区にある公園から続く展望所よ。娯楽の少ないこちらでは景色だけでも好まれたりするらしいわ。貴族なら乗馬デートとか歌劇とかを見にいく事もある。二人は庶民派って事ね


「初デートですね。嬉しいです」


 赤くなった頬がなんとも可愛く見えてしまう。緩みそうな顔を引き締めて平静を装うライト君


———————————————————


「ライトさん……私の事可愛いだなんて。そんな」


 ………ライト君。この辺はカットしておくわよ。こんなの書いてたら笑われてしまうわ


———————————————————


「じゃあ行こうか」

「はい!」


 行き交う人の波を避け一つ隣の大通りを歩く。こちらは住宅がメインのようで、賑わいが少なく歩きやすかったし何より並んで歩く事ができる。


 静かな分、互いの事をゆっくり話すことができたようだ。話題はもっぱら式の事でパーティーという名の社交界、出会いの場、踊るであろうダンスの事。最近の王妃様事情。私と鋼介の事


———————————————————


 なんで私達の事なんか……これもパスよ。


「ええー。せっかく二人が行きそうなお店があったからおすすめを言いたかったのに」


「ハイハイ、また今度ね」


———————————————————


 恵ちゃんはライト君から贈られたドレスを散々に誉めちぎり記憶を思い出しては誕生日の夜にたどり着き、真っ赤になった


「そういえば、俺達キスしたんだよな」


 そうなんだ……ライト君意外と手が早くてびっくりよ


「あ、そっ、え、そ…もう!ライトさんってたまに意地悪ですね」


 ライト君は笑っていた。キスのくだりを言ったことがわかって真っ赤になる恵ちゃんは彼女らしい。照れながら怒るという器用なことをしながら少し先を歩いていく


 建物の間からドリンクを扱う店が見えたので機嫌を治して貰うために買いに行ったライト君


———————————————————


「ライトさんって紳士なのにたまに子供なんですよ。それがまた良いっていうか……えへへ」


 ニマニマと崩れた笑顔を見せる恵ちゃん。彼氏自慢はお腹いっぱいだからもういいわ


 ……っていうか何でデート風景をレポートしなきゃいけないのよ。内容が空きだらけになっちゃうじゃない


「すっ、すいません。だって初めからって……」


「ひゅ〜!この唇は奪われちゃったのか!何味?何味?」


 うるさい瑠衣ちゃんの頭を鷲掴み&凍結。唇を尖らしたまま凍っちゃったけどそのまま静かにしててね


 それから瑠衣ちゃん、キスには味なんて無いわ。最後に食べたもの味よ。現実を見なさい。ライト君はから揚げ、から揚げ言ってるからから揚げ味じゃない?


「本当にもういいわ……次に行って。見つけた辺りからでいいわ」


———————————————————


 状況を少し飛ばして次に行くと街を一望できる場所へ歩く恵ちゃん


「ライトさん!こっちに来てください」


 呼ばれて行った先は、突き出るように出ている切り立った場所だ。街の賑わいはここには届かない。人も小さく見える場所だわ


「城門の外まで見えますね。っと……あれ、何でしょう?」


 エルゲニアに向かって十数騎の騎馬隊と五台の馬車が走ってくるのが見えた。ちょうど森から抜け、街道に沿って来ている。普通の移動スピードじゃない。明らかに馬に鞭を入れて走らせている


「シルバールの王様でしょうか?」


 見た感じ護衛を付けたVIPという印象を受けた。さっき馬車もみたしね


「ライトさん!あれ!馬車の後ろの方!」


 指さす先には森の切れ目、次々と何かが飛び出してくる。魔物だ。私達じゃ詳しく見えなかったけど恵ちゃんの話からやっぱり蜘蛛の魔物だと聞けた


 護衛の騎士達も魔法で応戦しているけど騎乗しているし、後方なので正確な攻撃は出来ず地面に落ちたり、当たっても致命傷には至らない。しかも移動が馬車の為、思った以上は速度が上がっておらず、次第に追い付かれ最後尾の騎士が群れに飲み込まれていく


 ライト君はトランシーバーを取り出し電源を入れるとルナマリアに通信。数秒間の間があきノイズの混じった音の後、ルナマリアの声が聞こえてきた


「どうしたの?ライト?」


 まだ状況の知らないルナマリアの声はのんびりとしたもの


「シルバールの馬車らしきものが襲われている。このままだともって5分だ」


「何ですって!…すぐに兵を…」


 聞こえる声が大きく、トランシーバーからキーンとなったので耳を抑えながらトランシーバーを遠ざけた


「いや、兵には零華達を探させてほしい。祭りに出てるから、そっちを頼みたい。……西側の区画にいったはず。外には俺達が先に出る」


 ああ……だから騎士達もすぐに見つけられたのね。リカルド君も西側の通路にいたし


「分かったわ。とにかく馬車を救助。門内に入ったら一度離れて。殲滅隊を用意するから」


「了解」


 手を下ろし通話を切るライト君


「……と言うわけだ すまない」


「仕方ないですよ。見付けちゃったんですから」


 恵ちゃんは苦笑いだ。これでデートは終わり、残り時間も街に出るほどの余裕はないだろうしね


「さっさと片付けに行きましょう」


「そうだな。こい!イクス!」


 紋章から雷が放出されライト君の額へ落ちると角が生え、目は金色に、神獣との契約状態へ移行する。本人は神獣モードって呼んでるわ


「…ふぅ」


「何度見てもドキドキしますね。ちょっぴり怖いです」


 ライト君の姿ではなく、雷の方だと付け加えた。恵ちゃんはライト君の取る行動を読んだのかライト君とは90度の方向に向いた


「何度目だろうな。お姫様だっこは」


 そういって足と背中に手を回し恵ちゃんを抱き上げた


「しっかり掴まってろよ」


 恵ちゃんの頷くと同じに出撃した。突き出た展望台から飛び出し、城と街を囲う外壁へ飛び移り正門への通路をひたすら走る


 途中に見張りの騎士がさぼっているのを見つけたけとわ今は注意している暇はないからとスルーしたライト君。でも私は報告するわよ


 速度をおとさず、外壁の正門にあたる場所の真上に来る。ここには吊り上げ式の門を操作する兵士が二名、常時勤務している


「今から俺達が出る。馬車が通ればすぐに門を閉じるんだ」


 二名の兵士が敬礼をとった


「恵、首に手を回してくれ」


 言われるままライト君の首に手を回し抱きつくような姿勢を取る。勤務している騎士が羨ましそうに見ていたけど…緊急事態に緊張感のない騎士ね。手袋を付け門を支える鎖に手をかけると、外壁から飛び降りた。半分まで降りた所で手を恵ちゃんの背中に回し衝撃に備えた


 地面に着地、そのまま弾かれるように街道をひた走るライト君。彼の胸の前で赤い光が輝いた。恵ちゃんが紋章を発動させた


「恵は距離を保ちながら紋章術で魔物の中央を攻撃してくれ。前は俺がやる」


 高低差を利用するために街道沿いの丘に恵ちゃんを下ろした。恵ちゃんの攻撃が戦闘の開始だ


 騎士の数が減った馬車が丘を迂回を始めた。そろそろ恵ちゃんの射程距離に入る


「じゃあ。後でな」

「はい。後で」


 恵ちゃんと笑顔の挨拶を交わしライト君は丘を降りていく。大きく離れた後、街道に乗ると騎馬隊の正面から抜け馬車に取りつくライト君。


 馬車の窓にはカーテンがかかっていたけど中に人の気配があった。ノックしてから、窓越しに話しかけるライト君。


「ここからは食い止める。エルゲニアの城門は開けてあるから後は門兵に従ってくれ」


 言い終わると馬車から飛び降り見送った。騎馬隊の騎士がこちらを見て警戒して敵意を出していたけど目も向けはしなかったライト君に警戒しつつも敵じゃない事がわかり魔物の方へ意識を切り替えていた。もう魔物が来てるからね。


 全員が抜けた所で魔物の姿が見えてくる。追いかけているのは足の早い大きな蜘蛛だ。人間位のサイズで間近でみるのはとても気持ち悪いわ


 知覚能力の有効範囲を広げ魔物の数を調べるライト君。その数20匹。


 あれ?少ないわね?100匹以上いた気がしたけど…


「ここから先は行き止まりだ」


 ライト君のセリフと共に魔物の一匹に火炎の玉が飛び込み激しく炎上した。手足や外皮が焼け、のたうち回り息絶えた。丘を見ると恵ちゃんが手を前に構え、複数の火の玉を重ねて次の火炎の玉を打ち出していく


「負けてられないな」


 ライト君からはまだ距離がある。剣を構えそのまま突き。紋章のみでは棒でついた程度だが契約状態では全く違った。以前ラドニー様と戦った時に試したんだって


 剣先から一筋の電流が走り一番前にいた蜘蛛の額に当たり、続いて頭に穴があく。二体目を撃破。突きの衝撃波による遠距離の攻撃だ


 その間も恵ちゃんの火炎玉が何体かを焼き、ライト君も次々と撃破、攻撃範囲に入る頃にはあと5体になっていた


 糸や、溶解液のような攻撃を仕掛けてくるがかわすことは容易だったみたいで二人は無傷だ。お得意の【シールド】さえ出していなかった


 危なげなく倒していると群れの一体が叫びを上げた。それは声とは言えない物だったけど蜘蛛は何度か叫び続けた。


 やがて、叫びは終わり再戦…と思ったが仲間を倒された蜘蛛は勝てないと悟ったみたいでライト君を避けるように迂回を始めたけど既に三匹は有効範囲内だった。一気に切り崩しに走り三匹をあっさりと切り捨てる


 残ったのは有効範囲外だから深追いはしない

。丘に近い一匹を恵ちゃんが倒していたけど、もう一匹は茂みに入ってしまった


 逃がしてしまったわね


「ライトさん。ご無事で」


「ああ、平気だ」


「一匹逃がしちゃいましたね」


 茂みを見るがもういない……さっきの叫びを思いだし、嫌な予感が膨れ上がっていったと感じたライト君


「なんか変だ。嫌な予感がする」


 バルクティンと出会ったり王妃様の出現だったりと不運な方ほど当たるライト君の予感。……ライト君の中じゃ王妃様はアンラッキーなのね。王妃様が余計頑張りそうだわ


「恵、なんか変だ。まだ気を抜くな」


 知覚の能力を最大に拡げる。だいたい半径200メートルを確認するライト君


「……これは?」


「ライトさん?」


 いぶかしげにライト君を覗き込む恵ちゃん


「第二陣がくる。数はおよそ百だ」


「ひゃ。百ですか?」


 全てがライト君達に向かうなら倒せなくないだろうけど追っているのは馬車の方。城門に着くまではまだ時間がかかるから恵ちゃんの動揺する気持ちはわかる


「恵、掴まれ。敵は俺達よりも馬車に近い。急ぐぞ」


 馬車は城門まであと10分はかかりそう。魔物との接触まではそう時間がない。魔物の方が先に接触する。急がないと


 再び移動、馬車を追いかけるが魔物のほうが僅かに早い。城門への道を塞ぐように隊列を組んでいた。あれでは抜けられない。進行方向にいる分は動かず、周りの蜘蛛は馬車を囲むように拡がっていく


「やばいな」


 ジリジリと馬車との間を詰めていくのが見える


「ライトさん、あれ!」


 抱えられたまま窮屈な腕で城門を指さすと二台の荷台突きの早馬が飛び出してくるのが見えた


『——ライト君。吹雪と土石流がそっちに行くわ。魔法使いに手伝って貰って。正面が開いたら一気に突破。よろしく!』


 私だ。ルナマリアが渡してくれたトランシーバーで連絡をとった


「わかった」


 大きく踏み出し再び馬車に駆け寄る


「俺は妖精騎士団の輝山ライトだ。城門側から大きな攻撃が入る。正面を一緒に守ってくれ」


 もう一度取り付くライト君に騎士達はざわめく。互いに顔を見合わせるとライト君を今度は不審人物と判断、剣を向けてくる


「なりません。その方の言うことを聞くのです」


 あまり大きな声ではなかったけどハッキリ聞こえた。おそらく風魔法、自分の言葉を伝えるようなものだろう。忍ちゃんは同じように聞く事ができる。さっき公園で襲われた時もライト君とラドニー様の会話も聞いていたしね。いずれは馬車の人と同じように話せるようになるかも


「助かります。正面から吹雪と土石流がくる。吹雪は俺達がどうにかするから土石流を魔法で防いでくれ」


 馬車の正面に立った。蜘蛛と馬車がだんだん近づいてくる


「ライトさん、来ます」


 馬車の私達は荷台から降りると紋章を全開。各色が光輝いては青と緑、水色と茶色が力を織り混ぜて紋章術を発動。私と忍ちゃんによる吹雪と鋼介と瑠衣ちゃんによる土石流が発生、瞬く間に大量の蜘蛛が凍りつき流されていく


 ライト君は恵ちゃんの後ろに立ち、支えながら恵ちゃんの炎に雷をまぜ、吹雪を蒸発と電気分解で耐えた。シルバール騎士達も土石流を風の壁で軌道をずらしていくやがて、どちらの攻撃も終わり正面がぽっかりと開いた状態になっていた


「今だ。みんな進め」


 チャンスを逃さず蜘蛛の間を抜けていった


『——ライト君達は退いて。殲滅隊がくるわ。後は任せましょう』


「わかった」


 私達の後ろに大人数の騎士が立っている。私達四人が道を開けると同時に行進。馬車が入る分の道を開けているので、そのまま馬車は入城まで一直線


 作戦は成功だ。ライト君は恵ちゃんを抱え蜘蛛の包囲を飛び越えると一気に外壁通路まで走って行ったし殲滅隊が雄叫びをあげ残党に向かっていく。これで仕事は終わり


「俺は眠りに入るから後は鋼介にでも頼んでくれ」


 言い終わると目を閉じ紋章を解除、角が消えライト君は寝息をたて始めた。


「お疲れ様」


 恵ちゃんは門を操作する兵士の所へ行きライト君を運ぶのを手伝って欲しいと言うと一言返事で了解の返事を得た。ライト君を運ぶ兵士の後ろを歩きながら恵ちゃんが城下町を見るとまだ祭りが続いていた。


「中からは見えなかったのね」


『——ライト君』


ライト君の荷物入れから私の声がした


「零華さん、お疲れ様です。ライトさんは眠りにつきました。何か用でしたか?」


『―—いえ、いいの。私達も戻った事の報告よ。城で会いましょう』


「はい」


 外壁からの入城後、すぐさま医務室へ運び入れてくれた。


 別段怪我はないし、治療の必要はないけど筋肉痛が激しいはず。イクスを使った後はいつもそうなると聞いているので自分の荷物からスプレーの湿布薬を取りだしライト君に塗っていく恵ちゃん。首、腕を塗り、少し恥ずかしかったがシャツを脱がし胸、腹、背中に散布していった。……瑠衣ちゃんの言う通り鍛えてるみたいでなかなか?……何言ってるの私


 ただ困ったのは下半身。いくら起きないといっても恥ずかしすぎるみたいで悶えてるわ。かわいいわね。

 起きた時少しでも楽にしてあげたい恵ちゃんは2つの矛盾に悩まされる結果になったけど最終的にかけることにしたようでライト君のズボンに手をかけた


「やっぱり駄目ぇ」


「何が駄目なの?」


 後ろから声がした。そこには自分たち以外の妖精騎士団が立っていた





――――――――――――――――――――



こんなとこか…………………………ふう。最後のくだりは全くいらなかったわね


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