shall we dance—恵
修正後初投稿。かなり長くなった気がします
一歩歩く毎に祝う声と拍手、連発するクラッカー。私は誰かに祝って貰うのは初めてのことでした。誕生日でも日常と変わらない日々をすごしていたんです。だから私は席につく前に目頭が熱くなってきていてもおかしくないですよね?
円卓を回りながら早速のお祝い
「おめでとう、恵!ハッピーバースデー」
瑠衣ちゃんだ。高校に入ってからの友達。学校以外の部分もいろいろ教えてくれた。遊びもクラスの友達も増やしてくれた大事な友達。流石に恋愛感までは影響を受けたくないけど……大好きだよ
「お誕生おめでとうございます」
忍ちゃん。ライトさんの事をいろいろ教えてくれた。気の効くいい子。私、いいお姉さんできてるといいな。勉強も戦闘も努力してるのは知ってる。どちらも抜かれないように頑張るね
「「おめでとう恵ちゃん」」
零華さん、鋼介さん。あなた達はきっとお付き合いするんだろうな。その時はダブルデートしましょうね。私とライトさんとの4人で
「めでたいな。おめでとう」
ラドニー様。侯爵なのに私みたいな一般人にも普通に接してくれる。頼れるお父さんって感じ。まだ相談とかしたことないけど……こんなお父さんが良かったな
まずテーブルに座る五人が祝ってくれたのを嬉しく思いながらテーブルを半周歩くとルナマリアが円卓の反対側から正面に回り私達を待っていた
「恵、おめでとう。貴女に一層の幸福が訪れん事を…」
手を十字に切り、合わせ祈ってくれた。知り合って間もないような私達を受け入れてくれたちょっと変わり者?のお姫様。頭も良くて機転も聞くし憧れちゃうな。私も彼女みたいな女の子になりたい。
正直ライトさんのことはどうするんだろう?ルナマリアにも幸せであって欲しいのにどうしたらいいかわからないや
祈り終わるとラドニー様の右側に腰を下ろしたルナマリア。その優雅さも羨ましいな
厨房の方から慌てて出てくる三人、確かカミラさん、コナーさん、ユーリカちゃんだ。ライトさんの始めたお店の従業員さん達が料理を置いて私の所にくる。今日は給仕をするようでメイド服だ。王妃様が用意したらしいです
「おめでとうございます奥方様」
「こら。それは発展し過ぎだぞ。」
三者三様に笑顔をくれた。初めて会ったけど皆いい人そうだな。仲良くしたい
「オーナーにはこれを」
コナーさんがライトさんに一枚の手紙を渡すとライトさんは差出人を見ると渋々中を開いた。差出人は王妃様でした。
「あんの王妃〜〜!!」
手紙をグシャリと握り潰すと電気を発生させて発火させた。王妃様何を書いてたんだろう?
「あ、あのライトさん?」
「あ、いや、なんでもないんだ」
手紙が消滅し最後にライトさんが腕を解き向き直る。
ライトさん、いつも皆の1番前で戦い、護って、助けてくれる私の1番大事な人。誕生日の事もプレゼントの事も守るって言ってくれた事も私の1番の思い出です。私の最愛の人、これからも一緒にいたいです
「誕生日おめでとう。よく似合ってる。綺麗だ」
ああ……だめだ。最後の一言にとうとう涙が溢れ頬を流れていく
「皆さん、ありがとうございます。私、こんなに嬉しい誕生日初めてで…」
「今日はこれからよ。楽しんでね」
零華さんが優しく声をかけてくれた。ハンカチを渡す零華さんはとても温かく感じた。
私は涙を拭くと笑顔を作る。誕生日に泣いてちゃだめだよね
11人はテーブルを囲みグラスをもつ。この時だけは給仕もストップしてもらって従業員さん達もグラスを持ってもらった
中身は……ワインね。液面に各自の笑顔が映っている
ライトさんが音頭を取ることになっていたようです。全員の顔を見渡しグラスを前に差し出す
「恵の幸福を願って……乾杯」
「かんぱ~い!」
貸し切りの宿に歓声が響き渡った。パーティーは食べ、飲み、騒ぎ、全員が私の誕生日を祝ってくれた。
懲りずに鋼介さんはラドニー様に飲み比べを挑み負けているし、零華さんは鋼介さんの看病
瑠衣ちゃんとルナマリアは恋話で盛り上がっているし、忍ちゃんは従業員さん達と話したりしていた。従業員さん達は順番に自由時間をとって皆にワインを注ぎに回っていた
「ぐぬぬ……またかライト!最後の一個くらい年配に譲らんか!」
「ラドニー殿こそ若い者に良いもの食わせようと思わないのですか!もう二十個は食べたの知ってるんですよ!何皿ごと囲ってるんですか!」
急に声を荒げ始めたライトさんとラドニー様。対峙する二人の間に唐揚が一つ。箸で押さえ込むライトさんとフォークで引き寄せようとするラドニー様
二人とも笑顔だけど殺気だってるのはなんで?
ギリギリと力を込めていく二人に唐揚が裂けていく。それに気づいた二人はお互いの得物を持つ手を一旦引くと逆の手で相手の得物を狙い始めた
ライトさんが左手に雷を纏い某漫画の雷を斬る技を発動させフォークを半ばから断ち切るとラドニー様はそのフォークの先を空中で拾いそのままライトさんの箸を狙って突き刺すという神業を見せた
何してるの二人とも?
席を立って距離を取る二人。置いてあるナイフを手に取るとラドニー様に向かって投げるライトさんに指で挟んで刃を返しそのまま投げ返すラドニー様。それ二指◯空把!下手したら死にますって!
ライトさんは速度を上げて避けると給仕中のユーリカの前を飛んでいくナイフ。壁に突き刺さって震えていた
「くそっ!最後の一個くらい食わせてくださいよ。【ライトニング】!」
「あと百個食べたとしても全然いけるわ!かぁっ!」
とうとう無詠唱で魔法まで使い出したライトさんに気合いだけで【ライトニング】をかき消すとライトさんに詰め寄り足を掴むと二階へ放り投げる
「くっそー。また食べれないのか⁉︎」
二階の階段の手摺に着地するとすぐに飛び降りてくるライトさん。でももうラドニー様はお皿の前に……
のっしのっしと前に進むと新しいフォークを掴み勝利の笑みを浮かべてる
「うふ。さぁ儂の唐揚げちゃん!儂の口に飛び込んでおいで」
酔いがまわったからだと思いたい気持ち悪いラドニー様。その正面には赤と白のドレスを着た女性が……え?王妃様?
「あら、また唐揚げがあるわ。いただくわね」
ひょい、ぱく
「「ああああぁぁぁぁ!!!」」
——ドガァッ!!
ひっ!ライトさんが床に突っ込んだ!
「うふふ。ごちそうさま。ただ冷えてたのが残念ね」
シルクのハンカチで手についた油を拭くと横にいたリアンに渡し私の所へ歩いてくる
「恵、おめでとう。私からはコレを。夜のお供に……ね。リアン謹製の品よ。赤は男用だからライト殿に使うといいわ」
渡されたのは赤と乳白色の錠剤の入ったケースとそれを入れておく宝飾付き小物入れ。……かわいい
「王妃様、恵に変な物を渡さないでくださいよ」
「あら、いざという時に失敗しては男として問題ありますわよ。SPNUNH英雄」
「多い!あとその使い方どこで知った!」
「うふふ、内緒よ。恵?それを使う時は覚悟してから使ってね?朝まで寝させてくれないわよ」
朝までって!いやあの!まだ……え……そんなまさか、今日使えと⁉︎
「王妃!」
「うふふふふふふふふ。一人で体が保つといいわね?無理そうなら助けてあげますよ」
?
どういう意味だろう?体力でも回復させてくれるのかな?
「お母様!なんでここにいらっしゃるの?仕事は終わられたのですか?」
珍しくルナマリアが目を吊り上げて王妃様に詰め寄っていく
「あぁ……………………………大丈夫よ。パトリシアがきっとなんとかしてるわ」
うわぁ……絶対嘘じゃないですか。その間の取り方はばればれと思いますよ
「今日までの仕事が幾つかあったはず。ほんと〜に大丈夫なんですね?」
「だ、大丈夫………じゃないかも知れないわね。恵にも会えたし今日はこれでお暇しようかしらね。恵?ライト殿から贈られたドレス、よく似合ってるわ。良かったわね」
そう言ってラドニー様に一言言ってから全員に挨拶だけして最後にライトさんに一言言って自身が乗ってきたらしい馬車に乗り込んでいく王妃。ぱっと来てサッと帰る嵐の様な人だったな
「オーナー、唐揚げならありますから復活してくださいよ。いつまでメソメソしてるんですか?」
「ラドニー様、そろそろハンバーグが出来上がる頃ですから」
「ちなみに次喧嘩したらゴミ箱行きにするからね」
カミラさんとコナーさんが二人を宥めテーブルへ連れて行く。零華さんの忠告が聞こえたからか大人しくなった。座った二人の前には出来立ての山盛りの唐揚げと特大ハンバーグが
「ラドニー殿せめて一口」
「う、うむ。では唐揚げも貰おう」
こっちはなんとか落ち着いたかな?
「ここか!姫様が出席されている誕生日パーティーの会場は⁉︎貧相な宿でやるなど殿下を馬鹿にしているのではないのか?」
扉を押し開けて入ってくる金髪の貴族。たしかヤーツ男爵だ。
「ヤーツ男爵!?ヤーツ男爵が来たのか?」
大声を上げて復活する鋼介さん。立ち上がるとラドニー様の所にあるお酒を貰ってルナマリアへ近寄るヤーツ男爵の前に立ち塞がった
「よし!ヤーツ男爵!場を盛り上げる為にいっちょ酒豪対決だ。勝ったらおっちゃんに挑戦させてやるぞ!」
「ち、ちが!お、おぃぃぃぃ!!!」
はい。ご愁傷様。すでに飲んでた鋼介さんはそうそうに潰れたけど後ろに控えてたラドニー様に捕まりワインボトルを口に突っ込まれ地に倒れた。もちろん従者の人も何人か来ようと男爵を助けようと入ってくるもラドニー様に捕まり後を追った
「うひひひ!ひんうちとうにょうだにょー!だうぇでもかかっへこひ〜」
瑠衣ちゃん、もう何言ってるかわからないよ!あと床を這いずってまで参加しないでよ
そのまま壁に突き進んでぶつかり動かなくなった。大丈夫?
「【タフネス】!さぁ恵!今度は私が相手よ!ライトをかけて勝負!!」
ルナマリアが魔法で体を強化して名乗りを上げたけど指差してんの宿のマスターだからね。マスターめっちゃ困ってるからやめてあげて!あとライトさんはかけません。あといつから私と対戦する事になってんの?
「姫様、姫様は【タフネス】を使えないではありませんか」
「…………………………………キュウ」
リアンがそう言うとマスターに指を指したまま仰向けに倒れていくルナマリア。うわ……お姫様が白目剥いちゃうダメだよ
「では最後は私のようですね?」
顔を真っ赤にした忍ちゃんが剣を抜いて私に絡んできた!ちょっ!え!何してんの?
「兄さんをかけて………かけて……参りました。」
まだ何もしてないのにorzポーズを取ると何故か厨房へ走り去って行った。なんだったの?
「なんか混沌としてきたな?みんな大丈夫かな?」
グラスを片手にライトさんが私のところに来た
「ん〜……たぶん」
ちょっと酔っぱらっちゃった。ちょろちょろ飲んでたからかな?ワインに映る顔は赤く目はトロンとしている。もういいや。一気にいっちゃえ
グラスを一気に傾け飲み干す。未成年なのにい〜けないんだ〜。でもでも楽しい〜
「えへへへ……幸せ~」
にへらと笑った。あれぇ普通に笑ったはずなのに~。私も結構飲んでる~
「ライトさんがいて~皆がいるって~こんなに嬉しいことなんですね~」
「そうよ。嬉しいことはいいものよ」
そうそう、そうですよ〜。はっぴ〜が一番なんですよ〜
「れいか~」
「はいはい。そろそろお開きにしましょうか。恵ちゃんも出来上がちゃいそうだし鋼は限界だし」
零華さんがおでこに手を置いて冷やしてくれた。きもちい~
少し頭が冷えた所で周りを見る。ラドニー様をみると勝利を誇示するように立てた親指と笑顔。
話し疲れたのかな?瑠衣ちゃんもルナマリアもお互いを支えに座ってる。意識が戻って良かったね
忍ちゃんも戻ってきていてテーブルに突っ伏してる。顔が火照って赤い顔もかわいいぞ
「そのようだな。みんな、今日はありがとう」
「ありがとうございます」
周りに声をかけるライトさんに続いてお礼
「今後の祝い事もやっていこうと思う。辛いときもあるだろうがこれからもよろしく頼む」
音頭を終えパーティーを締めた。ライトさん最後までありがとうございました。全員のアルコールを分解していくライトさん。後片付けは従業員の三人に任せ一度城に戻り着替えてからゲートを開き地球へ帰るとそのまま解散
全員がわいのわいの騒ぎながら家路に着く。さっきまでグタグダだったのが嘘みたいだ。時間が遅いからお巡りさんに見つからないといいけど……
「恵」
ん?ライトさん?走って追いかけてきた。あれ?タキシードのまま?
「一緒に来てくれ」
「へっ?はい」
私を追いかけて来たライトさんと二人で再びゲートを越え現実へ。会場だった宿で待っていたのはルナマリアとラドニー様、リアン。ヤーツ男爵はいまだに酔いつぶれて酔った従者の人に足蹴にされてる
「恵、もう一度着てくれるか?」
リアンを引き連れて私の前に来たライトさんに頼まれドレスを着ることに。宿の部屋を借りルナマリアとリアンが私を引っ張っていく。どうなってるの?
「メイクは大丈夫ね。ドレスだけでいいわ」
「わかりました」
?
「終わりました」
だから早いって!いつ脱がしたの?
「さ、行くわ……ん?」
ルナマリアが聞き耳をたててる。ライトさんとラドニー様が何か話してるみたい
「…らライト、彼女を愛してるなら、絶対死ぬんじゃないぞ。無様でも生き残れ。這いつくばってでも生きろよ」
ラドニー様はパーティーの時とは違い、優しさと厳しさの入り交じった目で訴えてる
「ラドニー殿こそ、ルナマリアの為には長生きしてあげるべきですよ」
ライトさんは労わるような口調でそんなセリフを言う
そんな二人の言葉に私とルナマリアは互いに見合わせた
「お互い死ぬ事は許されんな」
息を抜くように笑うライトさんと豪快な声で笑うラドニー様
「この先もよろしくな」
「こちらこそ」
手を出すラドニー様に握手で返事。ライトさんも高揚か緊張か、それともラドニー様相手だからかつい紋章を出してしまってる
「っ!ビリッと来たぞ」
微弱だが電流が発生したみたい。ラドニー様が一瞬固まった
「どうしたライト?」
ライトさんが握手の形から全く動いていない。なに?大丈夫なの?
ドレスのままかけ下りライトさんと向き合う。目を覗き込むが反応はない瞳孔が開いているかのように濁っている
「ライトさん?平気ですか!?」
私が揺さぶると目に光が戻るライトさん。状況が分からないのか目を瞬いている
「め、恵?」
安堵の一息。大丈夫みたいですね
「ビックリさせおって……何だったんだ?」
「ふぅ………ラドニー殿がルナマリアに魔法を見せられたのは8年くらい前ですか?」
ライトさんは疲れたのか椅子に座った。水を飲んでリラックス
「ん?うむ……確かその辺りだが?」
でも突然どうしたの?
「今回の遠征の時、こっそり酒をもっていきました?」
「な、なんでそれを……いや、ライトはいなかっただろう?何故知ってる?」
ライトさんは腕を組み思案顔、そして言った
「ラドニー殿の記憶に触れたようですね」
握手の時だというライトさんは宙を見る。多分記憶を見ているんですね?
「なんと……儂の記憶とな」
「ええ。ルナマリアに抱きつかれた事も、酒瓶を馬車の座席の隙間に入れたのも見えました」
「新しい能力ね。役に立ちそう?」
ルナマリアがリアンを従えて階段から降りてくる
「ああ、割りと良いもんだ。強制的に情報を集められるからな。それにしてもラドニー殿、ダンス下手ですね」
ライトさんの記憶では相手の足を踏んだり、振り回したりしているラドニー様の姿が見えたらしい
「こら、へんな所を見るんじゃない」
「で、紋章を消すと再生も終わると」
紋章を解除、素手の左手だ。新しい能力にライトさんはニッと笑った。ラドニー様はホッとするけどもう見られてるからね
「………教わりたかったのだけどな」
「雰囲気でどうにかなさい。貴方なら大丈夫よ」
話を終えるライトさん。ルナマリアは聞こえてたらしく返事してたけど……何て言ったんだろ
「お待たせしました。移動の準備が終わりました」
「なら行きますわよ。リアンお願いね」
はい、とだけ言うと馬車へと歩き出した。みんなもついていく。私も行かなきゃ。って、あれ?そういえばこれどういう状況なんだろ?
ねぇライトさん?ちょっと先に行かないで下さいよ。ルナマリア?ラドニー様どうなってるんですか?いや……笑顔で返されても困るんだけど。も~。なんなの?
「どこへいくんですか?」
「…」
「…」
「…」
誰も話してくれない……
そのまま馬車へ乗り込むと扉が閉まった。カーテンがかかっていて外は見えないし景色からも推理できない。私以外はまったく表情を変えないのは行き先を知っているということだよね?でもなんで教えてくれないんだろう?
「誕生日はまだ終わってないってことだけ教えてさしあげるわ」
目を瞑ったままルナマリアはヒントをくれた。そりゃあまだ多分12時回ってないから終わってないだろうけどさ。わかんないよ~
私は斜め下を向き自分の想像力の無さを呪いながら馬車に揺られた
………………
………………
………………
しばらくして馬車がとまった。停まる直前に走っていたのは石畳だ。振動でわかる。走っていた時間も乗った時の向きも城に向かうものじゃなかった。時間は長かったし、門の外に出てる。どこだろ?
「着きました」
リアンの声が四人がいる箱に響く
「私達はこれで帰るわ。じゃあ、ライト、恵、いってらっしゃい」
「え?ルナマリアは一緒じゃないの?」
御者台を降りたリアンが扉を開けた
「行こうか。恵」
先に腰を上げ手を伸ばすライトさん。訳も解らぬまま私はライトさんに手を引かれて馬車を降りる
「団長殿、明日の打ち合わせには来てくださいね。ふふ…」
言い終わると扉を閉め、素早く御者台に乗ったリアンが馬を走らせ残ったのは私達二人だけ
立っているのは郊外の豪邸前。屋敷の中は明かりが付き、一部屋だけを照らしている
「行こう」
ライトさんは繋いだ手を引き玄関の方へ行くと、何人かの使用人さんっぽい人の姿が見えた
「お帰りなさいませ、だんな様。奥様。姫様よりすべて伺っております。ささっ」
何?旦那様とか奥様とか?え?あっ!ちょっとライトさん
疑問を解く前に中に進まされ広い空間へ通される。三色で配色され均一な床に豪華なシャンデリア、細かい刺繍のカーテン。高そうな調度品に趣味の悪い金の甲冑が並んでいる
「大臣の屋敷だ。今は俺の名義らしいが…」
ルナマリアが手続きが楽だからという理由でライトさんに名義変更してしまったので大臣の資産も、土地も、使用人も引き継ぐ事になってしまったそうです
「ま、それはいい」
指を鳴らすライトさん。キザな仕草だけど好きな相手だからよく見えてしまいますよね。だからで私は変に思うことはない。まぁ頭が回らないだけとも言うけど
鳴らした音と共に紫のカーテンが落ち、その裏にいた者の姿が露になる。全員が楽器を持っている
演奏でも聞くのかな?と思っていると演奏者が構え指揮者が視線で合図、タクトを振る。無音だった空間へ心地よい調べが流れ出す
「わぁ。素敵。一度こういうの聞きたかったんです」
ライトさんからは返事がなかったので、見てみると、ただ私を見つめています
しばらく見つめ合うと意を決したように一言
「一曲……踊ってくれるか?」
「わ、わた、踊る?」
「ダメか?」
「でも、ダンスなんて」
したことない……と言おうとするがライトさんは手を持ち腰に手を回す
「足を踏んでも躓いてもいい。踊ろう」
回した手が妙に熱い。ライトさんも緊張しているの?ぜんぜんそんな感じしないけど……
「はい」
私はもうそれしか言えませんでした。胸の中は嬉しさが込み上げていたからです
音楽に合わせライトさんが一歩動くと、ぎこちない動きで合わせるが早速、靴がぶつかってしまいました
「ご、ごめんなさい」
ライトさんは気にした様子もなく二歩目、三歩目と続けていく。ライトさんは紋章を使い、自分の思考、動く方向、タイミングを微弱な電流で私に送信してくれていました。新しい能力なのにすごいなぁ
私はだんだんと送られてくる情報から動きを理解し、合わせれるようになってきました。
この幸せな時間の中、私達二人は互いを見つめあいます。体は密着して鼓動が重なり、互いを繋ぐ手はしっかりと握る。乗っていた音楽も、次第に私達のリズムにのるように奏でられていく
首元に当たる吐息がくすぐる。私を見つめるライトさんの優しい目、仕草。冬の朝のお布団にくるまってるような暖かさ……は違うか?とにかく幸せです
二人だけの時間、感動、思い出を空間へ刻んでいきます。二人だけの舞踏会。なんて素敵なんだろう
曲調が変わり明るくテンポが上がった。二人でフロアをクルクルと周り手を引き合い踊る。輪舞曲だ。アップテンポに気分もハイに。手を合わせ距離を取って身体を廻しライトさんの胸へ飛び込む
ああ……なんて幸せなんだろう
やがて音楽が消え演奏者達が引き上げていく。明るく広いホールにはライトさんと私だけが残された
「演奏、終わりましたね」
「ああ…」
お互い名残惜しそうに腕から力を抜く。ちょっと暑いくらいだ
「少し休もうか」
窓の方を歩く。でも手は握ったままライトさんに引かれるままに私は庭園にでる




