から揚げと店員と王妃——ライト
さて、と。祝勝会明けの今日の授業も終わったし王都の拠点へ行こう
本来なら昨日奴隷商から獣人の女性を受け取るはずだったけど怪我で動けず治ったらそのまま祝勝会だったし会うことはなかった。
で、今朝早くにリアンを尋ねると明日、つまり今日の夕方に例の家に連れて来て貰えるとの事だ。
「なんで私までついてかないといけないの?夕飯の買い物行かなきゃいけないんだけど」
「みんな用事があるらしいんでな。それに俺じゃ無理だ」
結局多かれ少なかれみんな飲んでしまっていたのでアルコール分解をしてやった。だからみんな普通に登校している。恵や瑠衣は学校行事でクラスで集まってるそうだ。零華は鋼介の勉強の為王都の応接室を借りているそうだ。学校から直通で送ってやった。後でからかいに……じゃなかった。みにいこう。
それで忍を連れてきた理由は俺がから揚げを作ることができないからだ。
ちょっと前までは上手くはなくても料理ができたけど今では何を作ろうと激マズになってしまう。今朝コーヒーを飲もうと入れたら泥水かと思ったくらいだ。ただのインスタントなのにだ。味覚障害にでもなったかと思って忍に飲ませたら同じだった。ちなみに麦茶でも同じだった。……もう俺一人じゃ生きていけないよ。生肉と生水で生きるにはつらすぎる。生野菜だけで生きれるだろうか?
そんなわけで今、妹の忍を連れて王都の大通りを歩いている。顔は知られてないらしく黄色い声はあがらない。良かった
「あとから揚げとマヨネーズだけじゃお店的にどうかと思うから卵と牛乳、砂糖でできるプリン。小麦粉と牛乳、卵でパンケーキ。パンとフルーツでサンドイッチ。サンドイッチなら味のバリエーションでなんとか品数稼げるから大丈夫だと思うよ」
うむ。妹よ、よくやった。君に店の運用を任せよう。ただし労働力が足りてないけどな。
しばらく歩くと拠点である建物が見えてきた……けど。なんか馬車停まってるけど何かあったのだろうか?嫌な予感しかしないけど……
馬車を見ると見たことない紋章の入った馬車がある。どこの貴族……だ?ヤーツ男爵か?それともマウリー伯爵か?
玄関の扉を開けると同時にソナーを発動する。かなり慣れてきたな。昨日から使いまくり今はだいたいじゃなく形まで結構わかるようになった。ただこの能力は危険すぎる。この能力を十全に使えるようになったとする。それの何が危険かと言うと着替えや風呂、トイレの様子までわかるようになってしまうからだ。地球では電気が邪魔してぼんやりとしか分からないけどこっちではそんな物は無い。だから常に使うと娼館付近では大変な事になるし緊急時や仲間が全員揃って入る時だけしか使わないつもりだ。今は知らない人間かもしれないし使うけどさ
デカイ男一人と女の子が四人か……メイドだったりするとやっぱり貴族だな。しかも四人なら爵位持ちだろうな
ん?この前きた時は家具なんて無かったのに玄関に花瓶台と花瓶があるし廊下には絵が飾ってある。リビングに入ると絨毯、部屋の中央には円形テーブルまであった。そこには席についてる男がいた。後ろにはメイドが……ってなるほど、この人なら来てもおかしくはないな
「おっ?来たなライト。悪いが適当に家具を置かせてもらったぞ」
いたのは五人、そのうち二人は体格のいい褐色老人ラドニー殿と金髪美脚メイドのリアンだ。デブやネズミ男はいない
その向こう側には三人の獣人女性。薄茶色の髪 (ボブカット)と同じく薄茶色の垂れた幅広い耳をした女性 (犬種はダックスフンドなのか?)と腰まである白と明るい茶色の髪と尻尾を見せる(なんかコリーだな)女性、そしてショートカットの白と黒の斑……っていうかもろパンダの獣人女性がいた。この娘達が従業員か。でもこの格好はなんだろうか?全員ショートパンツに上半身を隠すマント。え?マントの下裸?
三人の獣人パーツを見ているようにチラチラ見てると後ろに気配が……こいつは!!
「昨日ぶりですね。チラ見英雄」
でやがったな王妃!こんなとこ何しにきてんだよ!ってかよく顔を出せたな?よーし一言物申——
「今日は仕事で時間があけられないルナマリアに代わりあなたの力になろうとラドニー様に無理を言ってお願いしました」
くっ!真剣な顔でこられちゃやりにくいな。だからと言って忘れる訳じゃないからな。後回しだ
「うむ。急だったのだがリアンの力で何とかなった。開店祝いに儂等から一人ずつ奴……従業員を与えよう。主人の名義はライトになっておる。詳しくはリアンから聞くとよかろう。それより忍よ。から揚げを作ってくれんか?従業員に見本を見せるために作るのだろう?」
ラドニー殿。そっちが本音でしょ。でも今日は数を限定させてもらいますよ。俺も食べたいしそもそも商品です
「え、あ……はい。じゃあ少しお待ち下さい。下準備しないと」
ちょっと戸惑いながらキッチンへ向かう忍を見送ってから居心地悪そうに立ってる三人に声をかける
「えと……君らが従業員って事でいいんだよな?」
「「「はい!ご主人様!」」」
きたぁーーーーーー!!!俺はエルフ派だけど獣人も嫌いじゃないんだよ。それがご主人様だぜ?ぐっとくるもんあるだろ?もちろんポーカーフェイスだ
「英雄は獣萌えもあり……と」
くっ!何故わかるんだ?
「中央がライト様のご注文の犬獣人、カミラ20歳。左がラドニー様のご注文の犬獣人、コナー19歳。右が王妃様のご注文の熊の獣人、ユーリカ16歳にございます」
リアンはこちらを気にせずサクサクと進めて行く。うん王妃はもういい。無視だ
ふむ。カミラの詳細は以前聞いているのでいいか。性格も真面目そうで問題なさげだ。
コナーは商家の娘らしい。親が破産してしまったので借金のかたに売られていたところ今朝ラドニー様に購入されたそうだ。性格はおっとりした感じ。ちょっと頼りなくもあるけど商家の娘。帳簿や計算、販売はちゃんとやってくれるだろう。
ユーリカは珍しい柄の熊獣人ということで攫われ売られたそうな。コナーはともかくユーリカは解放していいんじゃないか?性格は恐らく楽天家だろう。今の状況に臆する事なくへらっとした笑顔を見せてる。王妃とラドニー殿がいるんだけど怒られないかヒヤヒヤする
「えっとユーリカ、君はどうするんだ?犯罪に巻き込まれただけだろう?」
俺が質問するとユーリカは困った笑顔を浮かべた。なんか質問間違えたかな?
「ライト様、借金奴隷として売られた以上自身の買値の150%を買い手、つまりライト様に支払うまでは解放することもされることもありません。それは法律で決められていて私でもライト様でも変わりはありません。特例として妾などにした場合は別ですが。」
ふーん。奴隷についての制度なんてあるの知らなかったな。主人は奴隷に衣食住を提供することが義務付けられている。最低1日1食は与えなくちゃいけないらしい。俺は三食休憩付きにするつもりだ。布団もね。服は三人とも同じでいいだろう。カミラには狩りの為武器や防具も買うけど
三人の買値だけどカミラが金貨30枚、コナーは42枚、ユーリカは80枚らしい。一般人の生活費がどれくらいかは知らないから聞くと独身一般人男なら1日二食、雑費込みで銀貨1.2枚くらいだそうだ。一週間で銀貨8.4。一カ月なら27枚ほどらしい。全く気にしたことがなかったな。ロレンスさんの依頼受けておいてよかった
あと妾は全く考えてないし返済もいらんな。当初は資金調達の為と考えていたけど今はもう十分に金もあるから普通に働いて稼いでくれたらいいし。
「わかった。じゃあ三人はついてきてくれ。さっきいた妹……忍に作業を教えるように言うから」
「「「はい!」」」
「王妃様とラドニー様は少しお待ち下さい。リアン任せてもいいかな?向こうの食べ物も持ってきたから食べていいから」
リアンに頼むと笑顔で頭を下げられた。この娘は助かるなぁ。
安心してこの場を任せ三人を案内する。っていっても同じ階だから呼べばくるんだけどさ
「忍、どうだ?」
「あ、兄さん。今お肉切り分けた所だよ。材料もあるから始めるよ?」
もちろんリザードマンのから揚げだ。今日こそ食べてやる
「その前にカミラ、コナー、ユーリカだ。こっちは妹の忍。」
「初めまして。輝山ライトの妹、輝山忍です」
簡単に挨拶だけ済ませ全員に材料、手順を教えるとさっそく調理に入る忍。パパッと揚げてしまうと今度はマヨネーズ作りの為ハンドミキサーを用意しボウルに油、卵、ワインビネガーを垂らす
俺?コンセントを握ってるだけさ。即席のバッテリー役だ。魔力電池を作ろうと家を探したけどなかったから仕方ない。電池って必要な時ないんだよなぁ
「今は兄さんがいるからこれ使えるけどいない時は手動でかき混ぜなくちゃいけないから頑張ってくださいね」
何処ぞの料理教室みたいな事を言いながらハンドミキサーをボウルに突っ込みマヨネーズが出来上がるまで混ぜ調理を終えた
大きめの木の器にから揚げをドンと盛り端にマヨネーズをつけ完成だ。
「どうだ?簡単だろ?」
「これなら私達もできそうですが……本当に美味しいのですか?」
「ま、そういうよな。忍、試食用に切ってくれ」
「切るくらい兄さんやってよね?」
だから切ってもダメなんだって。たぶん料理っていう作業をすると不味くなる呪い的なもんだろう。やって不味くならないならそれくらいはするぞ?
文句を言いつつも二つ取り出し半分に切る。半身が4つだ。三人と俺のだよ……な?そろりと手を伸ばすと俺より先に取る手があった
「うん。ちゃんと熱通ってるね」
忍が食べてしまったので後は三人の試食分だ。また食べられなかった。とほほ……
「う、うまぁ!!」
「あらあら」
「なんじゃこりゃあ!」
ちょっと待てユーリカ!何故そのセリフを?
「なんじゃこりゃあ!」
あっちもか!何持ってきてたっけな?
ドタバタとこちらに乗り込んで来るラドニー殿。手にはパックのハンバーグだ。あっためて無いんだけどな
「ライト!これライト!美味い!ナンダコレ?」
片言になってるよラドニー殿。
「それはハンバーグっていう料理ですね。炒めたタマネギと牛肉を挽いて捏ねて焼いた物です」
「これっ!これは商品にせんのか?できんのか?」
ハンバーグねぇ……難しくはないけど肉がなぁ……こっちの牛って赤身が強いんだよなぁ。好きな人は好きかもしれないけど、俺はやっぱり程よい肉汁がないと。脂の乗りが良くてくどくない肉じゃないと気乗りしないなぁ…………あ、そうだ。あるじゃん。ちょうどいい肉
「出してもいいんですがちょっと材料が。コボルトの肉なら美味いかも」
「コボルトだなっ!聞いたな!コボルトを狩ってこい!可能ならハイ・コボルトだ!」
ラドニー殿が叫ぶと家の裏で何人かが走り去っていった。今狩ってこられても作る時間無いと思うんだけど……
「ふぅ……年甲斐も無くテンションがあげあげになってしまったわ!しかし何度食べてもから揚げは美味いな」
目を離した瞬間ラドニー殿はから揚げに手を伸ばしていた。一つ二つと体内に飲み込まれていくから揚げ。やめろ!最後の一個は俺のだ!
「ラドニー殿?試食……ですよね?」
「う、うむ。そうだ!もちろん試食だ!だからあと一個だけ……」
「ならその最後の一個を食べる権利を白金貨一枚で売りますよ?」
「なんじゃと!唐揚げ一個に白金貨を用意しろと申すか!」
「ラドニー殿……これは試食とはいえ商品なんですよ?そして俺はオーナーなのにリザ唐はまだ一個も食べたことがないんですよ。つまりこの一個は俺が食べるべきなんだ」
そうだろ?みんな?忍呆れた顔をするなよ。もう食べた事あるからそんな顔ができるんだ。食べてない俺の身になれ
「だからリザ唐!君に決めたっ!」
試食最後の一個に手を伸ばし掴もうとすると手首を掴まれ止められた。もちろん俺を物理的に止められるのはこの場に一人しかいない
「何をしてらっしゃるのですか?から揚げを掴めないのですが?ラドニー殿?」
「お主今白金貨一枚で買うかと聞いただろう!?つまり今は商談中!ライトがオーナーだろうが英雄だろうが商談中の物を自ら食おうとはいかなもんか!」
「何を言っておられるのか?貴族!しかも侯爵ともあろうラドニー殿が即断しないなど貴族の名折れですよ!」
ギリギリと押し合いをするが埒があかない。右がダメなら左があるじゃないか。俺は右手から一瞬で力を抜ききりラドニー殿に押させ体勢を崩させると同時に押された右手でラドニー殿の手首をつかみ返し引く。もちろん体重差があるのでラドニー殿は動かない。その分俺の身体が前に出る。
「甘いわ!」
俺が座る椅子を脚で押しテーブルから遠ざけると今度はラドニー殿が左手で焦げ茶の宝石に狙いをつけた
「させない!」
いまだ力のこもってる右手を返し空気投げ。人間いざという時は何でもできる。闘魂の人も元気があれば何でもできるって言ってたもんな
いける!!空中で体勢を整えるラドニー殿も流石だけど一歩届かないだろう!金髪の天使を引き連れた勝利の女神は俺に微笑んだ。でも勝利の女神の顔はルナマリアに似ているし天使はメイド服を着てるのはなぜだ?
「騒がしいと思ったら二人して……あら?これがから揚げ?あら、美味しい」
ひょい。パク。そんな擬音が聞こえ最後のから揚げが勝利の女神……いや悪魔の口に入っていった。悪魔王妃め……
「「最後の一個が……」」
俺たちは二人して床に倒れこむ。ユーリカが背中をポンポンと撫で慰めてくれた。この子ええ子や……
「これおいくらで販売なさるのかしら?運なし英雄?」
王妃が話しかけてくるがもう知らん。忍に視線を送ると溜息をついて代役を始めた
「クコ鳥使用時は3個で銅貨8枚にしようと思っています。リザ唐はちょっと割高ですが1個銅貨10枚で。仕入れとかなかなか難しいかもですから」
「なら兵に訓練と称してリザードマンを取って来させましょうか?割安で卸せば仕入れも安定するでしょうし。他にもレシピはあるの?」
「はい。一応女の人にも来て欲しいのでデザート……スイーツをいくつか作ろうと考えています」
忍は来るとき言っていた商品を洗いざらいしゃべっていく。
「なるほど。素晴らしいですね?何か試食できる物は作れますか?」
「パンケーキなら。牛乳と砂糖で甘味も足せると思います」
ではそれをと。王妃の手前断れず黙々と作業する忍。従業員もちゃんと見てるのが偉いな
しばらくしてまたコンセントを持たされ電力供給してホイップクリームをつくり完成だ。今度は俺とラドニー殿以外が食べ舌鼓をうっていた
「私も余り作った事がないのでこんな物ですがなれたら見た目もよくなるはずです。三人は覚えました?」
「はい。大丈夫です。それにしても凄いですね?そんなに若いのに。」
「ウチでは毎日料理してますからね。まぁできるってレベルなんでしょうけど」
「ではこのパンケーキも商品化という事で」
しまった。俺がオーナーなのに俺抜きで決まっていく。だれか聞いてくれよ。
「兄さん。いつまでもしょげてないで、ほら?小さいのだけど作ったから。マヨネーズないからレモンにする?」
妹よ〜〜〜!だけどマヨネーズがもうないのか。まぁレモンもありだからいいよ。くれ。いやください。お願いします。
皿には小さめのから揚げがいくつか。切り分けた時に出た肉のようだな。でもリザ唐ならなんでもいい!食うぞ?いいよな!食うぞ!?
「あ!」
あまりの食べたさにレモンをかける手に力が入りすぎてびちゃびちゃにしてしまった。
くっ
「あら?果物の果汁もアリなのですか?」
から揚げinレモン汁に臆することなく、むしろひたひたにつけ口に運ぶ王妃
酸っぱいぞ?大丈夫なのか?
「あら、私はこっちの方が好きだわ」
そう言ってレモンから揚げにパクつく王妃。次から次へとから揚げを貪る。胸焼けしないのか?
「ねぇ、兄さん。王妃様もしかして……」
忍が神妙な顔で話しかけてくる。やっと分かったか。王妃の異常が
「ああ……絶対味覚おかしいよな?」
見てるだけで唾が溜まっていくほど酸っぱそうなのにそれを美味しい美味しいと次々に食べていくんだから。唐辛子でも辛さを感じる事なく美味いと言うのだろうか?
「兄さんは頭がおかしいよ。王妃様妊娠してるんじゃない?」
「妊娠……ねぇ。」
確かに酸っぱい物を食べたくなるとか聞いたことはあるけどそれだけじゃなぁ……単純に酸っぱい物が好きなだけかもしれんだろ?王妃の好みなんて知らないんだし
「……兄さん聞いてよ。」
「なんで俺が?セクハラじゃないのか?最後に避妊具無しで王様としたのはいつですかってか?」
欲求不満と取られてしまうだろ!下手したら俺が王妃を妊娠させたいみたいじゃないか。恵に告白した以上他に思わせぶりな態度は取らないでおきたいし王妃とだけは絶対にゴメンだ
「馬鹿!他に言い方あるでしょ!?それに王女様にも関係あるんだし協力しないと」
「あ〜。じゃあ忍は検査薬買ってきてくれるか?その方が手っ取り早いだろ?」
「あのさ……中学生に何買わそうとしてるか分かってる?あとみんなに買いに行かすのもやめてね。特に恵さんだけは絶対にダメ」
「あ……そうだな。すまん」
そうだよな。恵はまだそういう関係じゃないとはいえ好きどおしなんだ。ここで関係ない王妃の為に検査薬を買ってきてなんて言ったらどんな勘違いが始まるか予想がつくもんな。仕方ない、直接聞いてやる。王妃だし気にしてやるもんか!
「あー。王妃様?」
意気込んでは見たもののやっぱり言いづらい。
「なんですか?種付け願望英雄。私を狙っているんですか?妊婦の私を」
「聞いてたんかよ!」
だったら昨日ルナマリアの部屋の前で誘惑しようとするなよ。お腹の子に何かあればどうするんだよ!
「ふふ、魔法は使い方です。私は身体能力はあげられなくても感覚の増幅はできるのですよ。レンズの魔法はお得ですよ?離れた場所にいる貴族の悪口とか聞こえますから」
そういって耳に手を当て何かを掴む行為をした手をこちらに開くと角のない菱形のレンズが乗せられていた。魔法使いでも全ての能力を上げることができる魔法使いは少ないそうだ。俺達はその少ない部類に入るそうだけどさ。脚力だけ腕力だけ体力だけはざらにいるそうで二つ、三つとなると極端に数が減るそうだ。身体能力を上げる魔法は無属性魔法にあたるそうだ。俺たちは意識して使った事がないな。今度ちゃんと勉強してみよう
「こうやって情報収集するしか役に立てませんのでだんだんとうまくなっていったのですよ。遠征の時は大臣に上手く夫と話す機会を潰されてしまいましたが……」
「それより王妃!妊娠してるのは本当か?男か?女か?」
「本当です。男の子ですよ。二カ月目と言ったところでしょうか?魔力で体調を整えているからわからなかったでしょう?まぁ忍は気付いたようでしたが」
水系魔法使いは身体の水の流れ、血液とか体液の感じで分かるそうだ。人体の70%は水分なんだからできる芸当だな
「妊娠初期の変化かと思いましたので」
「それより王子って事ですよね?」
「ええ。だからルナマリアも安心して嫁げるってものです。ね?ウチの娘にはだ——」
言わせんぞ!ルナマリアの事もあるけど身内の前でなんて絶対に言わせん。どこからあの時の事が漏れて恵の耳に入るかわからないからな。
王妃のセリフには危険物質が含まれすぎてる。気をつけないと
「あ、そうだ。三人の雑貨買いに行こうか!この家ベッドはあるけどシーツとか全然ないしさ。王妃様も身重ならそろそろ戻った方がいいですよ?」
「ふふ……わかりました。後の事はあなた達に任せて私は城に戻ります。ラドニー様。お願いできますか?」
いつの間にか王妃の後ろにいたリアンが手荷物を持って控えていた。俺が持ってきた食糧も持って帰るみたいだ。あ、チーズケーキはルナマリアのだぞ
「あ、ああ。」
この人も大変だろうな。王妃の話からすればルナマリアが一度王位を継承して何年かすれば王妃の息子に移される。短いスパンで政変するのだから周りで支える人間も騒がしく激しい流れに巻き込まれていくだろう
今から疲れた顔をしてると早死にしますよ?今度から揚げとハンバーグをしこたま送ってあげよう?え?高血圧になる?
「言っておきますが英雄。ルナマリアを娶ってもらうのを諦めた訳じゃありませんからね。」
「………」
やっぱりあの時のあれは王妃が裏で糸を引いていたのか。ルナマリアの気持ちをなんだと思ってるんだ?ってかあの時ルナマリアとやってたらいずれ政治の道具にされてたって事か?
「ね、裸の娘に迫られて大きくしながら鼻血出して気絶した英雄」
しまっ……た
「「「「「え?」」」」」
王妃ぃ!!!!!




