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旅の始まり——ライト

「そうですね…どこから話したらいいかな」


「儂が話してやろうか?」


モノクロ少女が玉座の後ろに立つと彼女に申し出る。やっぱりこの娘がこの不可解な現象を起こしてるのか?


「お願いするね。ルー」


うむ、と往々に頷き玉座の間から俺達の前に歩いてくる


「ここはな、本当の世界なんじゃ。お主らが現実と思っている方が夢じゃ」


彼女は次々と言葉を吐き出す。せっかく自分から話すと決めたんだ。まずは出しきってもらおう。整理はこちらでする


「お主らは夢の住人じゃ。現実にはおらん。もちろん◯◯◯◯もそっちのおなごもな」



なんだ今の言葉は?聞き取れなかった。英語っぽくもなかった。零華を見ると同じような反応だった。鋼介?当てになんかしてない



「すまない。もちろんの後をもう一度言ってくれないか?聞き取れなかった」


モノクロ少女に向きもう一度言う


「◯◯◯◯と言ったんじゃが…」


垂れた前髪が気になったのか手で直し、また話し出した


「聞き取れないみたいだ。なんでだ?」


「ダメか?まぁよい。これはさほど重要な事じゃないからな。続けるぞ?お主らは星の夢という存在でな。黙示録によると星は既に死にかかっていてあと数年後には完全に死滅する。そしてお主らも死ぬ」


黙示録を取り出した彼女から受け取り片手でもつ。この娘かなり腕力あるな


「それはこの星にいる十二の神が裏切ったから。死滅の時まで放っておくと十二の災いが世界を滅ぼす」


気になる単語だな。十二の神に死滅の時…


「星が死に夢も見れなくなり皆消える。儂もお主らも地球もこの世界も。今でも星の魂は消えそうなんじゃ。今はまだ表立ってないが兆しが出てるやも知れん。十二神が星の魂を奪っていったのが原因なんだと言われておるが…」


星の魂ね…


「十二神も星の魂を扱えず、化け物と化していたりする奴もおる。世界中の国が戦いをしているがまだ一柱も倒せておらん」


王国…ここはやはり日本…いや地球ではない場所か。不思議に巻き込まれてるんだ。いい加減違う世界でも驚かないぜ。異世界冒険なんて男子の憧れでも……あるかな?


「破滅を避けたければ全ての神から魂を取り返すことじゃ。星は死なず夢も見続けられるのでな」


要は地球じゃないこの世界にいる12柱の狂った神から星の魂を取り返して元に戻せって事だな


纏めればこんな感じか?


「おいおい、冗談はそれくらいにしてくれよ。神様とか俺達は夢の住人だとかやめてくれよ。だいたいなんで俺達なんだよ」


鋼介は一歩前にでて文句を言う


鋼介らしからぬまともな会話だ


「騎土鋼介さん。それは私たちが実行可能な人間として星が作りだした存在だからです。」


ここからは玉座の彼女が引き継ぐらしい。立ち上がりルーと呼ばれたモノクロ少女の横に来て鋼介の質問に答えた


集める=神から取り返す=倒してまわるって事がニュアンスで理解できた。どうやら二人もそうらしい


だかな、確かに不思議効果や事象があったのは認めるがさすがに平和な国の高校生に戦えと言うのは無理があるんじゃないか


しかもそれように作り出したとかさ


「あ、でも両親はあなたの本当の親でもあります。だから親の愛情も偽りないものですから安心してくださいね」


ただ、鋼介の情報を読んだのか、顔を暗くした。何か嫌な情報でも見つけたか?


「騎土さんの両親は…」


「やめて、その話は関係ないわ。仮に信じるとしてどうやって戦うのよ」


零華も鋼介の隣に立ち疑問をぶつける。急に出てきて話をやめさせた零華

何かあるのか?


「青山零華さん…あなたも…」


彼女は小さく「いえ…」と呟き話を進めた


「それは問題ありません。ライトさんは少しはわかりますよね?食堂で定食温めたりとかの延長ですよ」


「ああ…だがそれで、そんなので戦えるとは思えないがな」


「ふふっ、私も能力を持ったばかりですので…えっと、力は星が与えてくれますから」


星が?能力?


黙示録何も書いていないページを開き俺達に見せる彼女


やはり俺は読めないらしい。他の二人も『?』って顔をしているから読めないようだな


「零華さん?手を置いて下さい」


何も書かれていないページを零華に差し出しアクションを待つ。零華がおそるおそると言った感じでこちらを見てくる


「大丈夫か?代わるか?」


「う、ううん。大丈夫…だよね?」


「ふふっ。大丈夫ですよ。安心し…」


喋ってる途中で手が置かれたのでいたずら心がでたのか勢い良く本を閉じた彼女


「…てください!」


「キャア!!…あ?」


零華は挟まれた手を覗く


痛くないようだ…な。

確かに手は挟まれているが変化があるのは本のほうだった。本は閉じているがページがあるはずの部分は歪みもせず完全に閉じている



ゆっくりと本を開くと怪我や痣はないし赤くなってる事もない。ただ青い紋様が入っている


「あ、この紋章は氷の紋ですね 水を凍らせたり空気を冷やしたり出来ます」


次に鋼介、俺の順番で紋章を手に宿らせる


鋼介は土が俺には雷の紋章が入った


「さてみんな入った所で、自己紹介しましょうか。起きて忍ちゃん」


目蓋がピクリと動くのが分かった


彼女は玉座に座って寝続ける中等部の生徒を起こすと顔を上げた女の子は、妹の忍だった


なんで俺は気付かなかったんだ?


「ん?あ、ああ…さん…兄さん」


彼女の名前を呼んだようだが聞こえない


こちらを見つけると椅子から立ち上がった。そして彼女と同じように顔を拭いた


兄として恥ずかしいぞ


「なんでもっと早く来れなかったの?私達3日も待ったよ」


ってことは…1番は彼女、次に俺、忍が3番、鋼介が4番、零華が5番目に来たことになるな


すると6日目に来る人はいなかったってことか…そうするとルーはいつ来たんだろうか?ルーが6番目で先に着いたのかな?なんか俺達とは根本的に違う気がするのはなんだろうか?


「目印が無いんだ。早く来れるはずがない」


「で?紋章は入れたのね」


みんなで手の甲を見せあった。それぞれ違う紋章で忍が風。彼女は火だった。ちなみにルーは見せてくれなかった。なんでだ?


「後は自分たちが仲間にしたい人がいれば処理は出来ます。さて、アースガルズ来て」


彼女が手を叩くと赤い絨毯の上を身の丈2・5メートルを越える全身鎧姿のアースガルズと呼ばれたものが歩いてくる


なんだ…凄く懐かしい感じがする。向こうからもこちらを見てる気がするな


巨体は俺の前で立ち止まった。鎧の腕が多いな…6本ある。そのそれぞれの手には長剣、細身の剣が2つ、手甲、弓、杖があった


俺は長剣を手にとった。握り素人なりに振ってみるが、重くもなく振り回されることはない。それどころか手に馴染む。

鋼介は手甲だ。空手とかやってたなんて知らないんだろうけど出てきて手甲を嬉しそうにつけてる。外れなくなるとか考えたりしないのか?


零華には弓だ。美術部なので正直武器とか持つのは似合ってないが零華の物だと言うことで持つことに


忍と彼女は細身の剣を手にした


残った杖はアースガルズが持ち下がって行った。ここでもルーは何もしないし言わなかった。


「私たち用にしつらえられた物です。まだ上手く使えないでしょうがすぐに慣れます。まあ紋章術でも戦えますから」


一通りの説明を受け紋章術の使い方を教わる


これは本当にゲームと同じで精神力が切れたら使えない。ただし、いつ切れるか数字はでないのでわからない。無駄遣いはできないってことか。


「ゲームでも遊びでもないからの。この世界はレベルやスキルという概念はないから気をつける事じゃ。まあある程度の力を得られれば自ら作り出したりもできるじゃろ」


次に紋章術を持つ者は常人よりも腕力や体力が強くなっている事。他にも戦闘行動のサポート等至れり尽くせりだ


全体的に上回った存在になることを教えてくれた。


「それから夢と現実を行き来するにはこの星の鍵が必要になります。ライトさんに渡しておきますね」


ポケットから出し手渡してくる。真顔になる彼女。急に真剣な顔にならないでくれよ


「私は夢の存在ですが生きてます。消えたくありません。だから戦うことにしました。皆さんがやるやらないは自由です」


「いいじゃん。俺やるよ。どうせ、いつか死んじゃうんだし、それなら先延ばしにしたいからな。やりたいことまだいっぱいあるし」


鋼介は手甲をはめ拳を突きだす

かっこいいつもりか?どっちかっていうと駄目だぞ

とはいえ俺もベルトにホルダーをつけ腰に剣をさす


「面倒だけどやるしかないようだな。となるとまず地図が必要だな。あるか?」


「えっと、ルー?ある?」


ルーに尋ねるとずっとひっそり立っていた巨体を指差す。すると巨人の右足の辺りがパカッと開いて中から荷物袋を引っ張り出した


そこ荷物いれなのか?彼女は受け取り袋から八折りにしてある紙を取り出した


「今いるところはこの辺りです。この山道を越えて道なりに行けばこの町に行けそうですね」


現在地を差し、指を滑らし山、町を示す。通ってきた道を逆に進むような道のりだ


「じゃあいくか。」


俺は出口に歩いていくが零華とルーはついて来ない

零華は来ないというよりは迷ってるな。いや、どっちかと言えば俺達の順応が早いだけだ。普通は迷うだろうな


「零華?」


鋼介が変な物を見る目で声をかけた。俺達とだから一緒にすんなって


「分かったわよ。いけばいいんでしょ!私だって死にたくないわよ!」


弓と矢が入れてあるケースを肩にかけ、入口で待つ俺達に追いついてくる。


「ルーは来ないのか?」


「……儂は一緒には行けん。」


悲しげに呟くルー。


「なんでだ?」


「何故って……儂、お主らといずれ戦う魔神じゃし。何よりここを出ればわしに関しての記憶は封印させてもらう。それが今の儂の役目なんじゃ。」


説明は残るから安心しろと言われても……っていうか魔神だって?

って彼女も忍もビックリしてる。知らなかったのかよ⁉︎


いや、驚くポイントが違った。この娘が魔神って事はいずれ戦う相手なのか?記憶を封印?そんな事できるのか?


「まぁ戦うも戦わぬもお主ら次第じゃ。魔神と戦わず滅ぶのを選ぶのもよし。抗い戦うのもよし。中には力を貸してくれるやつも居ろう。好きにするが良い」


「そうか……なら仕方ないな。」


俺は素直に諦める。ここから出たら忘れる以上連れて行く事は無駄だろう。忘れた瞬間、誰とかいうのも可哀想だし


「仲間になれるといいな」


「ふん……あぁそうじゃ…」


「ん?」


「占いによると女難の相がでとる。あまりおなごに手を出しすぎるでないぞ。自分から手を出さんでも相手から寄ってくるからの。無闇に増やすと問題が大きくなるからな。要注意じゃ。」


「大きなお世話だよ。それじゃあな」


ルーを部屋に置いて俺達は扉を閉めた。なんていうか魔神ってもっとドロドロとしたような悪魔ちっくな奴だと思ってたのにいざルーを知ると拍子抜けしてしまった


とりあえずこの世界を知ることから始めよう。目的を定め、まずは近くの街で情報収集だ


あ…


「そうだ。忘れるところだった」


地図から目を離し女生徒の方をむく


「名前、聞いてなかったな」


「やっと聞いてくれましたね。私の名前は日比野恵です。クラスは1年B組です。恵で良いですよ」


こうして俺は彼女と出会った


五人で外にでると城の発光が止み、同時に山から見えていた黒い雲のような闇が押し寄せてきた。黒が織り重なってできている


「言わなかったんですけど、さっきまで時間が止まってたんですよ。正確にはゆっくり動いていたんですけど」


時間は午前5時をかなり過ぎていた。実際ならわずかに明るくなる時間だ


闇の向こう側は灰色の部分が見える


「私たちが集まるために時間をとめていたんです。時間が止まった世界には誰もいられなくなるらしいから。」


止めていたのはあの場にいたアースガルズだったそうな。意外な高性能だな。


「止まってたのは敵もです。そうしないと紋章を持つ前に殺されちゃったりするから」


「念のいったことだな」


時間が進みだしたようで辺りに日が差し明るくなっていった。空を見上げると鳥が飛んでいる。こちらに来て初めての生き物だった


「行動出来るのは後どのくらいなんだ」


時計を見ると6時前だ。いつもならそろそろ現実…ではない夢の世界へもどるはずだけど…


「今日を含めて6日間くらいですね。だって片方だけ進んだら時間が大変なことになるんですよ」


「つまり早く町に行かないと野宿するか夜通し歩くか城に残るかじゃない。そうよお城に泊まって明日再出発したらいいのよ」


零華は閃いたが恵は首をふった


「残念ですがお城は無理です。だって…」


後ろを指差すとつられて見る零華。そこには半透明になって消えていく神々の砦があった。どうやら留まるという選択肢は無いみたいだ


鋼介は零華の肩を叩き笑顔で言った


「さ、頑張って行こう」


元気な鋼介を見てイライラした零華は鋼介の手を払いのける


その時零華の紋章が輝き冷気が吹き荒れ鋼介の手を氷づけにした。初めて魔法を使った瞬間だった


――――――――――――――――――


「ったく。酷い目にあったぜ」


鋼介は恵に凍った手を溶かしてもらっているが、俺は自身が悪いと思っているので可哀想には思っていない。むしろ逆だな。もっとやられた方がいい


「使い方がわからないんだもん。仕方ないじゃない。」


心配し居心地悪く鋼介を見ている。零華は少し罪悪感があるみたいだな。いや、流石に嫌われたくはないってところか


まぁ、そこは二人に任せよう。他人が入り込む事じゃない



で、今の零華の感じを真似てみよう


「………」


 何気無く鋼介の頭に手を置くと少し浮かしてみる。すると鋼介の髪の毛は逆立ったように立ち上がった。擦った下敷き程度だ。


「なるほど、こんな感じか」


 俺の右手には金色の紋章が薄く光っている。なんと言うかこう……力は漲ってるけど何かがなくなって行く感じがする。この何かが魔力って事なんだろうな


「ライト~。人で実験するんじゃねえよ」


 とここで、突風が吹いて鋼介の髪の毛は原型がわからないくらい乱された。原因は風を使う能力者だ。だから忍だな


 忍はすぐに謝りに来たけとわ謝らんでいいぞ。後、恵と零華のスカートをめくったのはナイスだ。二人でオセロができるな。気づかれないうちに余所見でもしてよう


「ったく。恵ちゃんだけだよ。ちゃんとしてくれて…っ熱」


「…あはは」


笑った顔で誤魔化してるので鋼介も怒れないらしいな。溶けた氷が高温のお湯になって湯気を立てている


ズボンの前を濡らして漏らしたみたいだ。違うのは分かっているがわざと引いたような目で見る


「も~嫌」


鋼介は項垂れた。流石に恵も股間を乾かすのは嫌なようで間に俺を挟んだ位置をキープしている


その後、数分間愚痴を言いながら最後尾について歩いてくるがうるさくて仕方ない


「あと何時間歩くんだよ」


鋼介は追い付いて来てまで尋ねてくるがそんなこと知らん


確か山道に家かなんかの建物があったはずだ。地図によるとこの感じで進むと夜にはつくはずだけど答える気はなく無視



 遠くには鳥が飛んでいる。はぁ~……のどかだ。ゆっくりと俺達の旅が始まった……気がする

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