聖剣——ルナマリア
「エルブレイクスか…」
バルクティンの言葉に距離を保ち様子を見るライト。バルクティンが話した事を機に攻めるタイミングを図っている
「久しいな…お前は未だに創造神の僕なのだな」
イクスを知ってる?
鈍く響くような声がトランシーバーを通して耳に届く。耳を塞いでも大音量の中でも聞こえるような……頭に直接響くような声だった
話してる合間にバルクティンは岩を砕き複数投げつけてくるけどライトも紙一重で避ける。最後の一個をしゃがんで回避、立ち上がりつつ、下からの切り上げるが髭を切り落とすだけに留まった
魔神相手にひけをとってないわ。すごい……
周りでは逃げ惑う兵士が我先にと倒れた兵士を踏み越えて逃げ出している。
「お前も自由になれ。13番目の神よ。欲望の赴くままに生きてみよ」
イクスが13番目の神?この世界の神は主神2柱と12神のはず……
「………」
ライトは耳を傾けず魔力を足に集中、エネルギーを貯め一気に爆発。一点を目指し突く。狙いは額よ
速度をあげ一直線に飛び込むライト
圧倒的な速さで近づいたけど懐へ入り込まれ渾身の突きは当たらず獣の耳のそばを虚しく裂くだけ
腕を伸ばしたままの体勢に胴体へ剛腕が繰り出す一撃が入る
ライト!
「ぐっ」
殴り飛ばされ転がるライト。剣を杖がわりに立ち上がって息を整え向き直る。
今ラドニー様と零華達が兵士のところについた。急いで!
「知ってるか?人の恐怖の顔」
周りの兵士を見ろとばかりに剛腕を振る。その風圧がライトの前髪を揺らす
「知ってるか?人が騙された時の悔しそうな顔」
ライトに向かい半歩分足を出す。周りの赤くなった地面が音を立て亀裂、砕けていく。その力がこちらまで届きそうで怖い
「知ってるか?人が死ぬ直前の絶望の顔。神にとって変われば…いや、自由になればどんな愉悦も手に入る」
獣の目がライトを捉える。
「どうでもいい。俺達は俺達の為にお前を倒す」
ふん、と鼻をならすバルクティン。どうやら面白くないみたい
「解らぬならいい。だがこのバルクティンの前に立ちはだかるなら砕くまで」
巨体を沈めたかと思うと10m程のジャンプ。体重を込めた一撃でライトを叩き潰しにきた
少しふらつく足で後ろに大きく飛ぶライト。その動きに合わせ追撃してくる。右手を剣でガード、続く左手を後ろに仰け反り避けようとするけど胸に軽傷をおってしまう
バルクティンは追撃を止め後ろに飛ぶ
「そうか…まだ『贄』を喰わしてないのか」
左手の爪先についたライトの血を舐めた
「イクス、贄ってなんだ」
『………』
ちっ、と一つ舌打ち。イクスは話す気はないらしい。もっとも私には聞こえないだろうけど
戦闘に戻り、紋章を全開に解放、助走に入る。今度は剣先からライトの全身までを武器とした【槍】で攻撃する
雷が真横に走りバルクティンを貫く
「やった」
ライトは左手を付き獣の様なスタイルで着地。すぐさま振り返り構える
「あ…」
振り替えると再生の始まったバルクティンがいた
「だめか…」
顎を含めた縦の楕円形の傷は胸、胴体を貫いたが再生は止まらない。少しうんざりする
切っても突いても、穴を開けても、体が破損しても治っていく。このままだと消耗戦だわ。しかも圧倒的にライトに分が悪い
「無駄だ。エルブレイクスを味方にしても所詮は人間だ。俺には勝てん」
顎の再生が済み話しかけてくるバルクティン。私の所に軍隊が到着してきた。ラドニー様と零華達も来てる
「ライトさん。大丈夫ですか!?」
「こいつか?」
ライトの方には恵と鋼介が追い付いてきた
「離れるんだ。手強い」
ライトは一足に恵達の所へ移動。バルクティンから目を離さないように二人と会話する
「切っても再生を繰り返す。倒す方法を探らないと」
バルクティンが前につんのめる。ライト達に飛びかかる事前動作だ。気をつけて
「二人とも、後ろに飛べ。援護を頼む」
二人が下がると同時に肉食動物が飛びかかり剛腕を振りかぶる。一歩引き、腕の外からそれを上回る速度で横に切り裂くライト。バルクティンの唸り声は聞こえるがやはり治っていく。痛みは感じているようだけど…
「バルクティン。お前は神なんだな?」
ライトが話し出した。どうやらバルクティンも会話に乗り気のようだわ。自分の傷口を舐め血を舐めとった
「さあな。人を越えた存在なのは違いあるまい」
「なぜ痛みがある?」
もっと情報が欲しい。ライト、なんとか引き延ばして
「さあな。人が抗うためじゃないか?」
後ろに離れた二人を見やる
「二人とも全開で頼む」
あ、ダメか…戦闘中だもんね
「あいよ」
「はい」
時間を稼ぐために距離を詰め獣に刃を向けるライト。振り降ろしを避けられると、突き、雷撃、膝蹴り。
流れるような連続攻撃。バルクティンも顎に喰らった膝蹴りで牙を散らしたわ
あ…ライトの足を掴んだ
「ライト!」
そのまま地面に叩きつけた。右に左に振り回し叩きつける度ライトが血を吐く
二人とも何とかしてぇ!!ライトが死んじゃう……あ、叩きつけが止まった。ライトが両手で地面を掴んでる。動きが取れるようになったライトは逆の足でバルクティンの手首を蹴り潰した
たまらずバルクティンは後ろに飛び退く
……もう!もう手首治っちゃった
再度ライトの攻撃、地を這うような低空のダッシュ
途中で何か拾った?兵士の剣?ライトはそのままバルクティンに詰め寄る
何?何か攻略法を見つけたの?
「ガルルルルルルッッッッ!!!」
一際大きく唸るバルクティンそのまま飛び込むような体当たり。ライトは体当たりを……
避けない!
直前に雷撃を放ってから避けずにそのまま肩から対抗した。踏ん張りのないバルクティンは仰け反ってライトは競りかった。全面隙だらけだわ
「傷が残れば痛むのか?
ライトは自分の剣でバルクティンの右太ももを切り裂き、さらに兵士の剣を突き刺す。異物に対しての反応ね
バルクティンに自分で抜かさないよう攻撃の手を休めないライト
……剣は残ったままだわ。剣や槍で縫い付けることはできそうね
更に動かない右足をライトは集中的に狙うようにしてるみたい。ライトが手を後ろに下げた。私達のいる方
なにしてるのかしら?
「うわっ、剣が!」
退却中の最後尾の兵士が声を上げた。見ると腰に挿していた剣が抜かれ鞘だけに。兵士の視点の先には空中を移動する剣が三本
ライトね。磁力で引っ張ってるんだわ
昨 他にも盾が反応していたけどしっかり腕に固定されていたから飛ばなかったわ
ライトはその間も斬りあっているけどライトは多少攻撃を受けつつあるけど磁力を発生させ続けている。引かれている剣がどんどん加速していくわ
私の側からじゃライトに刺さりそうに見えるので気が気でないわ
「ふんっ!」
準備ができたのかライトは両手で剣を握って地面に振り下ろす。そのためバルクティンは崩れた地面に足を取られた。たたらを踏むバルクティンに残念ながら左腕の分は外れて後ろに飛んでいったけど残りの二本の剣が右腕、左足に突き刺さった
ライトの戦い方は想像もしない事ばかりで勉強になるわね
「小癪な!」
無事な左腕を大きく振りかぶりライトを殴り……いや炎の剛球を放った。後ろに逃げるライトだったけど読みを誤ったのか右肩を焼く
「ぐぅっ!」
「ライト!!行くぜ!」
鋼介は紋章を発動、自分の足元を回りの土を寄せ高く上がっていく。魔法が完成したのね
盛り上る塔の横では恵が無数の公転する火球をつくりライトとバルクティンを囲み辺りを赤く染め始める
「ライトさん!!」
火球はピタリと停止、恵はライトの名前を叫ぶ。すぐに理解したライト。右肩を押さえたまま後ろに大きく飛んだ
バルクティンは動く左腕で剣を抜きながら鋼介と恵を見た……と同時に体に刺さっているのにも関わらずライトに詰め寄ろうとするバルクティン
ライトに近づけば魔法は使えないと考えたのでしょうが、二人の方が早かった
ライトが距離を取ったと同時に恵は一つの火の玉を寄せ両手で挟むように破壊、連鎖するように囲んでいた火球が一斉にバルクティンへ突撃
「グオォ…」
被弾後、爆発し辺りを燃やし尽くす炎の檻
「まだだぜ」
土の塔の天辺から飛び降り地面に向かって拳を打つ鋼介。炎の中にいるであろうバルクティンにむかい亀裂が走る。ライトは鋼介の攻撃を予測、バルクティンに向かい走り攻撃の体勢に入った
焼けた右肩……動くの?イクスの効果なの?
広がる亀裂が足元に達したとき土の壁が凄まじい勢いで猛獣を挟み潰しにかかった。見たことのない魔法ばかりだわ
呪文を唱えてないからすさまじい魔力を使うはずよ?平気なの?
発動した魔法でバルクティンのいた場所は地肌を晒す小高い山が出来た。中にいるバルクティンは潰れている……はず
それでも生きているかもしれない
ライトがもう一度助走。
ちゃんと止めを刺すのね。今度は胴体ではなく頭(脳)を【槍】で狙うライト
踏み込む足が地面をめくりあげた
「いっけぇ!!!」
土の中のバルクティンごと貫くと衝撃で山は後方へ吹き飛び、頭の無い獣が後ろに倒れ込んだ
今度こそ…?
ライトは頭を無くしたバルクティンを覗き込み観察する。頭でさえ再生するだろうと思っているのね
「ちっ」
舌打ちが聞こえた。やはりライトの予測は当たったみたい。頭蓋骨が筋肉が、皮膚が、毛までもが何事もなかったかのように治っていく。ライト達の攻撃は血化粧が落ちただけに終わった
どうやって倒せばいいのよ……駄目なの?人には勝てないの?
「む」
全てが再生し、地面に手を付き身体を起こすバルクティン
「ぐふ、今のは効いたかもな」
「無駄口を…」
「今の間に逃げでもすれば良いものを……よほど死にたいらしいな……すぐにあの世に送ってやるわ」
「だったらなぜ、まだ座ったままなんだ?」
ずっと観察していたライトは気付いた。私もひとつの仮定を持っている
「お前の不死身の種は分かった」
「ほう……」
言ってみろとばかりにライトを見つめる
「ずばり熱だ。炎も雷も熱が発生する。だが土の攻撃は苦手のようだな。再生が遅いぞ」
そう。熱を吸収して回復していた。恵の攻撃の時、唸っていたけど苦しそうな声出はなかった
ライトが話し終わりようやく立ち上がった
「そうだ。だがそれを知ったとて、アイツはもう使えん」
指を差した先は膝に手を付きなんとか立っているだけの鋼介だ。肩で息をしているのは消費が激しいためね。何故呪文を唱えなかったの……
「魔法が駄目でもこの拳がある。あきらめねぇ」
「私はあと一回で打ち止めです。外しても一緒に戦いますよ」
魔神の興がのってきたのがその笑みからくみとれる。兵士達を振り返り砕けた岩を拾い投げた
「なっ」
ライトはバルクティンから目を話し岩へ先回りして切り落とす
「ぐはは、よそ見は禁物だ」
一気に走り込んでライトの右腕を掴むと思い切り投げた
―ガッ
ライトの荷物入れからトランシーバーが落ちたみたいだ。バルクティンの声は聞こえるもの
「これでよし、さて」
バルクティンは鋼介に狙いを変え猛威をふるう。ライトは体勢を整えられない。すぐには戻れない
「まずは貴様だ!」
よろめきながら構える鋼介に剛腕の一撃。両腕で顔と身体をガードするも、鋼介の身体ごと後方へ殴り飛ばす
「ぎゃっ!いてぇ!うわ!」
昨 吹き飛ばしさらに追いうち、背中から地面に激突した鋼介へ地面ごとの蹴りあげ。右腹部から一気に振り抜いた
あぁ……まずい。右腕が折れてる。飛びながらだけど見えた。
鋼介…
バルクティンはまだ攻撃をやめていない。蹴りあげた鋼介の落下を見届けた後高く飛び上がり鋼介を押し潰す。大地に埋まるかのような圧迫が鋼介を襲う。実際に鋼介は砕けた大地に身体半分埋まり、その腕はあり得ない方向を向いてしまっている。鋼介は僅かに首を回し自分の折れた腕を見て目の前が歪み気を失った
「終わりだな」
命を絶つために鋼介の頭の上に足を上げる
「まずは一人目ぇ!」
足に力を込め地面に杭をうつように容赦のない一撃———の直前にバルクティンの足場が爆発した。後ろ向けに倒れそうになるが身を捻り回避、邪魔の出所を調べてる
「なんだぁ?」
恵だわ。火球を自分に纏っている。残っている炎は5つ。震えながら剣を握っている
「ライトさん……私、私……あなたを守りたい。だから……戦う!」
一気に走りだしバルクティンに飛びかかった。首に蹴り、脛を斬り、胸を殴る。炎しか使えない分恵では勝てない。現にバルクティンがダメージを受けている様子はない
「……くだらん……お前ごときじゃこの体に打ち勝つことは無理だ」
右腕を振り払い恵を殴り飛ばす。小虫を払うように振られただけで数メートルも弾き飛ばされた。ダメージは少なかったのかすぐに立ち上がる
ダメよ!逃げるの!
「あぐっ!」
脇腹への強打。なんとか剣で受け止めたものの再び吹き飛ばされた。口元に血が滲んだ……あの量なら内臓は無事ね
ぐいっと口元を拭いてライトが戻る時間を稼ぐ恵。そうはいっても相手は魔神。軽く振った拳でさえ恵の体力、気力を簡単に奪っていく。左腕に爪を立てられ裂傷、足には砕けた石の礫による打撲
とてもじゃないが太刀打ち出来るわけもないわ
尻尾で視界の外から叩かれた。剣を持つ左手の甲を打たれたみたいだ。左手の握力が失われ剣を持つ手が緩み落としそうになるが唇を噛みしめ、耐えた
「せめて、一撃だけでも……」
トランシーバーから聞こえる声は小さい
「もう…逃げるのよ…恵」
それでもバルクティンに立ちはだかる恵。防御に既に二つの火球を使っている。残りは三つしかない。もう生成する魔力がないのかもしれない
一瞬不安を目に宿していたけど頭をふりバルクティンを睨んだ。何かを心に決めたみたい。顔つきが言ってる
「さあ、もういいだろう。諦めて死を受け入れろ」
大きくふりかぶると大した勢いもつけず、その巨大な腕を恵へ
「……よくない、諦めない、死にたくない!まだ死ねない!」
傷だらけの身体を動かし横薙ぎの切り払い。瞬時に火球を爆破、剣速をあげ首の肉を浅く裂く
瞳が剣が肉を裂いたのを確認すると紋章の力が消え意識も闇に落ちた
恵……ダメよ……おきなさい!!
「む、傷が治らん。奴と戦ったせいか…。……オンめ」
何?なんて言ったの…だんだん聞こえなくなってきてる。トランシーバーの魔力が消えかかってるみたいだわ
バルクティンは首の傷を抑え指についた血を舐めると恵を見下ろした
「人間の割…に頑張ったな…もう…め」
恵を殺そうと動こうとするバルクティン。
「誰でもいい!!恵を助けて!!」
零華も忍も瑠衣も走り出しているけど兵が邪魔で進めない。ラドニー様も同じだった。間に合わない。
恵のすぐそばまで歩み寄ると口を開き牙を見せるバルクティン。途端辺り一帯に恐ろしいまでの殺気を感じる。兵士達がバタバタと倒れて行く。気絶しているわ
津波のように押しつぶしに来る殺意に前に飛び距離を取ってから向き直るバルクティン。この殺気は私にも届いている。肌が総立ち、震え、萎縮してしまっている。双眼鏡を構える手が動かないのは決して目を離さないようにしてるからじゃない。本気で動けない……
本気で怒っているのね……ライト……
「お前を殺…ぞ。お前は大…なものを傷……た」
恵の顔の汚れを指で拭き剣を抜く。剣の柄を握る手が震えるのを見てバルクティンは唇の端を持ち上げた
「そ…か、『…』を捧げ…か……何を………?」
もう!良く聞こえない
「…………だ。いずれ……なくなるだろうが、お前は…お前だけは許さない」
何?何を言ってるの?
ライトの握る手には白く、鈍く光る長剣を握っている。さっきとは微妙に長さも違うし何より山羊を型どった鍔がある
「……殺しの……剣、エクスカリバーだ。もう一度い……。お前は殺す」
剣をバルクティンに突き出し勝利宣言をするライト
「こちらも本気を出さざるをえないな」
そう言ったバルクティンは四つん這いになり口から火炎を吹いた
「なんだ?」
「今見せてやる。この炎帝のバルクティン真の姿!」
口から吹いた炎は身体を取り巻き全身を包む
「この姿は人間ごときに見せるのは初めてだ。あの世で自慢するがいい!!」
肉声で聞こえた。なんて大きな声。毛並みは赤、オレンジ、黄色で構成され、それ自体が炎を連想させる。大きく変わったのは両手の爪だ。その一本一本が研がれた曲刀のように鋭い
前足を動かすだけで四本の筋を地面に残す
「覚悟……いな!」
「こっち…セリ……」
ライトとバルクティンはお互い必殺の範囲へ歩み寄る
「………バルクティン、これから殺すお前に感謝する。戦い方と有限の再生力、そして神を殺す力を得たことだ」
「役にたたんさ。今から死ぬのはお前なのだから」
二人はため息をつくと互いの得物を構えぶつけ合う。振り降ろされるバルクティンの四連曲刀とライトの直刀が交わり、金属を擦り合う音がする
まばたきをした瞬間力の拮抗は終わっており、バルクティンは曲刀を受け止めたライトの剣を押し込み右腕を切り裂くと、ライトは曲刀を後ろに流しバルクティンの右腕を斬りつけた
互いに傷ついた右腕をかばいながら斬りあう。ライトが、バルクティンが、交互に攻撃しあう。互いに防御をせず攻撃を攻撃でやり過ごす
何合かの斬り合いを経てライトは右腕が回復したのか庇うのをやめた。さらに攻撃主体に切り替えようと一瞬の間。バルクティンはそのタイミングを見逃さない。バルクティンは左手を振りライトの頭を潰そうとするとライトは身体を反らし避けるが、かわせず右の頬と肩を削られた
ライトは一歩下がると、振り下ろされた爪に向かい聖剣を振る。砕けた四連曲刀が光を受けてキラキラと輝きながら辺りに飛び散る
その中のひとつが破片がライトの右の瞼を切り血が視界を塞ぐ。血を拭い上を振り向くとバルクティンは火炎を口に溜めライトを焼こうとしていた
「まずい!ライト逃げて!!!」
この距離とダメージではかわせない。ならダメージを覚悟に斬る。ライトの顔がそう言っているように見えた。魔力を全身に巡らせ攻撃に備える
「ライト君!」
突然知った声が聞こえ思い立ったように左にずれるライト。その瞬間、氷の矢が空間に蒼く光る筋を描きながらライトのいた場所を抜け恵のつけたバルクティンの喉の傷へ刺さる。氷の矢は傷口を凍結させ火炎を止めた
ナイスタイミング!
距離をとったまま零華と忍が援護に来てくれた
「終わりだ!」
ライトは烈拍の気合いを込めバルクティンの四肢を斬り裂く。右腕と左足を切り離した。残った腕も足も傷が深いのか動かせないみたいで身動きしない
「バカ…な。俺が…負けるだと。せめて…道ずれに…」
「させるか!」
崩れ落ちるバルクティンの頭を切り裂くとそのまま地面に張り付けられ辺りに熱い血液を撒き散らす。血液は気化、辺りは陽炎のように歪みだした
「…無駄…だ。いったはずだ。みちずれだと。一人では死…なん。せめてお前だ…けでも…殺…す………死…【炎ご……く……】」
バルクティンは呪詛の言葉を吐き、息絶えた。体は赤い光が収束していく
「零華、離れろぉ!」
叫んだ後にバルクティンを起爆剤に大爆発、ライトは爆炎に飲み込まれた
——ガガ…ガガ…ガ………………………
ダメか……トランシーバーが壊れてしまった
「う、うそ、ライト君、恵ちゃん、…鋼…」
零華は爆風で服や前髪を揺らし腕で目を守りながら惨劇に涙をこぼし、横では忍も力無く膝をついて前屈みになり地面に額を擦り付け泣き始めた。瑠衣は唖然と口を開けたまま動かない、動けなかった
私は……私はどうして……一緒に戦わなかったの?もしかしたら違う結果だったかもしれないのに……今更後悔してももう遅いのに、我が身惜しさに踏み出す事ができなかった
——ガガ
?
トランシーバーは壊れたんじゃ…?
「…ぅ」
違う。壊れてない!じゃあ今の声は!早く!早く探さなきゃ!まだ生きてるかもしれない
まず私は雨を降らせた。水魔法だ。大規模な魔法は無理でもこのくらいなら……
空に向かって両手を掲げた。炎は消え泥濘、水溜まりが所々に出来ていく
「確認……しなくちゃ」
徘徊する死体のような足取りで爆心地に足を運ぶ三人に合流し私はエルゲニア軍と探索を始めた。まず行くのは爆心地だ、ライトはそのすぐ近くにいたはずだから
そこでまず、みつけたのはバルクティンの成れの果て殆んど炭化していて切り離されたパーツはどれが腕で足か区別がつかない
「爆風にとばされたのかも」
私達はわかれて探すことにして辺りを歩き回るけど、ほとんどが平坦にならされ見渡すだけでも何も無いのがわかる
「鋼、どこなのよ?人にキスしたまま消えないでよ。鋼の本当の気持ちが知りたいよ。なんでいなくなっちゃうのよーーーー!」
零華……?そっか。やっぱり貴女好きだったのね?
叫ぶ零華はその場にへたり込み泣き始める。少しして何故か後ろを振り返った。どうしたのかしら?
後ろからボコッと穴が開いた音がする。のろのろと反応した零華が穴を覗き込む
「え、え?えぇーーーーーーーーーーー!」
開いた穴の中から鋼介を担ぎ、恵を抱いたライトが出てくると、即座に倒れ三人は泥濘に横たわった
「あぁ……その声、零華、ルナマリア……後は頼む。二人の怪我の手当てを…」
ライトの角は消え、紋章も消える
「みんな!いたわ!ここよ!早く」
私は兵士を呼び三人を馬車に載せるように言う
三人とも生きてる。絶対に死なせないわよ




