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バルクティン——ルナマリア

—————————


「姫様、そろそろお休みになられてはいかがでしょう。ライト様達もお休みになられた頃と思います」


 ふぅ…ちょっと零華達と話しすぎてしまったわ。興味深い事が多くて止まらなかったわ


「二人とも。今日は突然のお願いありがとう。今日はこれで戻って休んで」


「はい」

「はい。何かあればすぐに来ます」


 私はうなずく。ライトの指示だったにせよ有意義な一時だったわ。二人を見送りリアンにも休むよう言う。リアンとも長い付き合いだけど、心配性なのよね。ちゃんと言わないとずっといるし


「では、私も失礼します」


 9時か…もう暗いわね。ライト達も寝てるだろうし、私も明日は見届け役として行かないと駄目だし、ちゃんと寝よう。部屋に帰った時リアンに着替えさせてもらったしあとはベッドに入るだけ


 枕元にある剣を確認して——父様にいただいた品よ。ずっと大事にしてきたわ——体をベッドに潜らせる


——————————————————




 ……………………………



 ……………ザッ



 どこだろう……見たことのない場所だわ



 ……………ザッザッ



 えっ……後ろにはたくさんの兵士達。ラドニー様も……父様も。


 じゃあ…ここは私の夢……ね夢なら父様もいてもおかしくないわ


 ん?どこにいくのかしら?皆どんどん進んでいく。ついていってもいいのかしら……?


「父様!私も同行してもよろしいですか?」


 ……父様?


 反応無しにどんどん進んでいく


「ルナマリア、行くな」


 あれ?ライト……夢の中まででてくるなんて……困るわ


「行くな。ルナマリア」


 でも私、父様と一緒に……


 ライトが腕を掴んでくる


「ちょっと……離して」


 ライトはかぶりを振り結局離してくれなかった。それどころか私の腕を引っ張り後ろに下げた


「離しなさい」


 ライトの腕を引き払い距離を取る


「……何故来てくれないのだぁ……私のルナマリアぁ…私の腹は……腕はどこにぃ……一緒に探してくれぇ」


 え……ライト……じゃない。父様……?血が……


 きゃぁ!


「いやぁ!」


 ゆ……夢?

 跳ね起きシーツもはねとばす。手が汗でびっしょりだわ。なんて嫌な夢……ふう…


 時計を見ると時刻は12時を過ぎていた。明日の事もあるので早く眠りにつきたいけど……


 さっきので引っかかって嫌な予感がする。明日の事に何か意味あるのかな?


 う~……だめだ。気分を変えよう


 外の空気を吸いにバルコニーに向かう。窓は3つありそのどれもがバルコニーで繋がっているの。中央の窓からバルコニーに出て静かに閉める。日中とは違い夏だとはいえ肌寒いわね


 さっきの嫌な予感は今まで感じたもののなかで一番だわ。


 ——ガチャ


 ん?誰か出てきた。この斜め下の階の部屋は…ライト達の部屋ね


「ライトさん…?」


 出てきたのは恵ね。ライトさっきからいたのね……ここからじゃ陰になっててみえないけどどうしたのかしら?二人の様子を伺ってみましょう


「どうした?」


 ——ギッ


 ライトがバルコニーの柵を背もたれに振り向くと(おそらく自前のパジャマをきていた)恵がバルコニーに姿を現したわ


「ライトさんが外にいるのが見えたから…」


「起こしてしまったみたいだな。すまない」


 いいえ、と顔を横に振ると、一旦部屋に入ったかと思うと、すぐにバルコニーに出てきた


「寝れない時はこれです。どうですか?」


 右手にワインのボトルと左手にグラスを二つ


「じゃあ、貰おうかな」


 横に並び恵はグラスを渡すとライトのそれにワインを傾け注いでいくとライトも恵に同じように注ぐ


「いただきます」


 乾杯する事柄はないけどグラスを合わせ、一時を楽しむ事にしたみたい。いい雰囲気ね。私ともいつか二人で飲みましょうね


 グラスに口をつけ、わずかに唇をぬらす


「どうしたんですか?いつもなら、一番に寝ちゃうのに」


「ん、あぁ…ちょっとな」


「何かありました?」


「そういう訳じゃ無いんだけど…嫌な予感がしたんだ」


 ライトも?


「嫌な予感…ですか?明日の戦いの事ですか?それなら平気だと思いますよ」


 ワインで喉を潤し続ける恵。貴女も何処か不安を感じているのね。ワインで注いでいるようにも見えるわ。月明かりが二人の苦いような表情を照らし出す


「いや…もっと違うものだけど。よくわからないが最近の嫌な予感は当たるんだ」


「それで?ライトさんはどうしたいですか?」


「わからない」


 ワインの波紋に視線を落とし、グラスを回す


「何かあっても私がライトさんを守ります。私だって結構強いんですよ」


 目を見開き恵を見るとにっこりと微笑んで見せた。その笑みにライトは確かに気持ちが楽になったみたい。小さくふっと笑った。彼女を愛しく思ったでしょ?抱き締めちゃいなさいよ


「そうか。だが今はまだ俺が守りたい。なにかあっても俺が恵を守る」


 そうよ。ここよ。さぁ行くのよライト。


「あ、あ、あ、ありがとうございます。あの…冷えてきましたね。そろそろ部屋に戻りましょう」


 早口に並べ立てワインを飲むと部屋に帰って行く恵。駄目じゃないの…


「俺が守る」


 自分の意思を確かめてるライト


「…覗き見はそのくらいにしてもう寝ろよ。ルナマリア」


 ぎくぅ!!!!!バレてる(笑)


―――――――



 翌朝、先にマウリー伯爵の部隊が先に城を出発したのを朝食時に聞いた。六人は朝の準備を早々に済ませ、出発までをゆっくりと過ごしているらしい


 今朝会ったライトは昨日の気持ちを振り払い、気力が満ちているのを感じた。恵への感謝と誓いを忘れないでね


 出発の10分前には全員が中庭に集まり今日の予定を部下に伝えに行っているラドニー様を待っていた


 天気は晴れ。空はのんびりと雲が浮かんでいるような快晴だわ


 あ、ラドニー様がきたわ


「皆さん、準備はいいですか?」


 私は何十枚かの書類を持ちなおしラドニー様を率いて前へ出る。勝つ勝負だもの仕事するつもりよ。今日来るって言うライトの雇い店長(奴隷)の店に着いても話を詰めておきたいしね。


「あぁ、問題ない、行こう」


 ライトの声に皆が頷く。御者は私の命令で乗せる六人を見渡し扉を開ける。ライト達の事を知らないので無言だわ


 開かれた馬車のステップを踏み多少狭さを感じたけど全員乗ると扉がしまり、ほどなく車輪が回りだす


 私も行こう


 前後にも馬車がいるようで車輪が土を走る音は絶え間なく続いた。約束の場所へは平原にでると後はずっと直線だから時間までには必ず到着することができる


 小高い丘を越え、城が見えなくなると件の男が単身で現れ進行を停めると私の馬車へ馬を寄せた


 挨拶してくると馬をおりた。何か話すつもりね。面倒だけど相手をしましょうか……ちなみに彼の発言はトランシーバーを通じて筒抜けよ。


「こちらの準備は終えております。今日の勝利はあなたに捧げましょう」


 いらないわ…いらないし、勝てるはずもない。そもそも貴方私に反感持ってるくせにその発言はどうかと思うわ


 そんな言葉を垂れ流すいやらしい顔が違う準備、ライト達を陥れる罠を物語ってるわ


 内容はすでに陣取った場所を知らせる事だったけど…


「私…この場所がきらいですの……陰気臭くて。もう少し行った先に広い平原がありますからそちらに行きましょう」


 ライトも言ってたけどあなたは三流策略家よ。そのままにするわけないじゃない


「な……なぜです?あの無礼者はここだと……」


 つまり待ち伏せをしていることを吐露したようなものよ


「ん?なにかここでないとダメな理由があるのですか?たかが6人に……まさか罠なんて使うような騎士はおりませんわよね」


 ぐっと言葉に詰まったわ。やっぱりね


「後で儂等の演習を予定しておるのでゴミなど残さんようにな」


 移動を申し立てると、戸惑いだしたけどすぐに気を取り直し了解した。ラドニー様が言うと青くなったのには吹きかけてしまったわ


 苦し紛れの会話の変更にライトの事を聞いてきた。ライト達の姿が見えないので(姿は知らないはずだが)確かめてきたけど知らんぷり。「後からこられるのではなくて」と惚けておいた


「姫様も、嫌いなようじゃな」


 馬に跨がり自身の部隊へ戻っていくマウリー伯爵


「ギャアァァァァ!!!!」


「うわぁぁぁぁ…」


「誰かたす…」


「ガァァァァァ!!!!!!!!」


 昨 マウリー伯爵がライト達の馬車を越えた辺りで轟音、続いて悲鳴と怒声が聞こえてくる。ライトは馬車から飛び出すと屋根に登りマウリー伯爵の兵がいるはずの場所を見ていた


「あれがそうか…」


 私もすぐに双眼鏡を取り出しライトが見る先を見る。マウリー伯爵の兵を紙屑を散らすように吹き飛ばし叩きのめしているのが見えた


 その中心で嵐の様な猛威を振るう巨大な虎。振るう剛腕は兵ごと地を削り、その足は歩くだけで地面に亀裂が入る。口元は血にまみれ、牙には兵士のものであろう衣服がひっかかっていた


 すでに100人は息絶えているかもしれない。血の色に染まった大地に座り込みその遺体を貪り始めた


 周囲の兵は突然の襲来に対応できず、ただ震え見ていた


「ライト……」


 騒ぎに気付いたラドニー様がライトの眼下に駆け付けた。ラドニー様に双眼鏡を渡し見るように言う


「初めて見るけど、あれがバルクティンだろう」


 双眼鏡で惨劇の場を覗く。見ているだけで涙が出そうになるわ。引きちぎられ、吹き出る鮮血がバルクティンにかかり血化粧のように模様になっていく


「………」


 息を飲み押し黙る。ラドニー様は双眼鏡を覗いたままその手を震わせた


「そうだ。あれがバルクティンだ。あの顔。あの腕。忘れたりするものか!」


 双眼鏡からミシミシと悲鳴があがる。ライトが屋根から降りると皆も馬車から降りてくる


「まず俺が行く。ラドニー殿は皆と一緒に来て兵士の指揮を頼む、ルナマリアは避難の準備を…」


 わかりました。後ろにいる護衛の兵に伝え下がる


「な、なんだ、話が…」


 話が?何?


「いや、私の兵を勝手に…姫様を呼び捨てとは」


 マウリー伯爵……あなたが一番失礼なのよ


「姫の御前だぞ。馬を降りよ」


 ラドニー様の言葉に苦虫を潰したような顔で馬を降り片膝をつく伯爵


「ここからはラドニー様が指揮を取ります。もう下がりなさい」


 ぎっと歯ぎしりをする音。悪いけど構ってる時間はないのよ


「姫……この仕打ち、問題にさせて貰いますぞ。しかし、私の部隊。指揮は私が……」


 『取る』まで言えなかった。彼はライトの雷によって意識を失っている


 前のめりに土へ倒れ込むマウリー伯爵。邪魔なので荷物用馬車に詰め込んでおきましょう。途中で起きてこられても面倒だし猿轡もね


「零華、忍、瑠衣はラドニー殿について怪我人を避難させてくれ。こっちに側に頼む。恵と鋼介は追い付いたら俺の援護。近づくなよ。避難させること、俺の援護。いいな」


 時計は10時過ぎ。腕から時計を外し私に預けてくれた。特に意味はないわよ。壊したくないからだから


「じゃあ…行くぞ。イクス」


 左手の紋章を前に差しだし神獣の力を引き出す。雷を纏い太陽の図形が額に走り、角が生え、目が金色に変わる


 なんというか……気配はライトのまま、威圧感……存在感が半端ないわ



 初めて見る零華と鋼介は姿の変わったライトを眺めている。驚愕とも言えるわね。


 余りゆっくりしている時間はない。一応トランシーバーはonにするライト。ライトの魔力が入ってるから多少の障害は関係ないみたい。戦闘中でも聞こえるはず。そう言って前を見つめた


「じゃあ、な」


 ライトは惨劇の舞台へと走る。姿は一瞬で消え、纏う雷がライトの行く先へ流れていった。合流まで15分はかかる場所がものの2・3分で目前まで到着、そのまま剣を抜きバルクティンの頭上へ跳躍すると渾身の力を込め頭から斬りかかる


 双眼鏡が追い付かないわ


 光の反射か影の変化かバルクティンはライトに気付き見上げる


 構わず剣を振り下ろすが腕を掲げ防御、剣が骨に達する場所で止まってしまう


 ライトの剣撃はバルクティンの足が地面にめり込むほどの威力だったが剣を引くとすぐに裂けた腕が治っていく。奇襲は失敗した

第3の魔神バルクティンが現れました



第1・2よりも先に出て来ましたが順番は今のところ関係ありません



1・2・3の魔神の種族がわかれば魔神の形態はわかると思います


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