晩餐——ルナマリア
あれは……ライトと鋼介が訓練所の方から歩いてきた。さっき大声でライトの名前を叫んでいる人がいるとリアンから聞いて出てきたんだけど無事のようね
あのイクスっていうのを使ったあとすごく疲れたと言っていた。だから心配してたんだけど……もう休むのかもしれないわね。ライトはリアンを探しに城内に戻ってきたのかもしれないわね
休む前にまだ用事があるわ。彼女達の姿を見せにいきましょう
階下はまだまだ騒がしい。城は活気に満ち溢れているのは父様の死を忙しくすることで一時的にやわらげようとしているようにも見える。結構慕われていたんだから当然って言えば当然ですわね
動き回るメイドに声をかけ先にリアンについて聞いておきましょう
会議室の後片付けをしていること聞き出し礼を言う。忙しいのに悪いわね。会議室はさっきライト達も入っているので案内をさせるのは断った
真っ直ぐに目指すと二階の踊り場からこちらを見つけた二人が見えた。視線が右から零華、瑠衣、私を挟んで忍、そして恵に…ん?ライトの視線がむく前に忍の後ろに下がってしまった
照れてる(笑)
零華は私がクーデターの時に来ていたような肩まで繋がった胸当てと柔らかい生地のドレス。動きやすくするためか二本のスリットが入っていて動く度に中から足が見え隠れするのは色っぽいわ
零華は剣は使わないけど無いと不自然だという理由で帯剣しているわ。どうみても女性騎士よ
忍と瑠衣はメイドと同じ服を着ている。紺色のワンピースに前掛けにカチューシャ背もあまり高くなく子供容姿の二人には新人だと言っても誰も疑わないでしょうね
そして恵、同じ服の裾が見えることからライトも恵が同じメイドなのだと気づいたわ。ライトに見られるのが恥ずかしいのか隠れている
かわいいわよ
ライトと合流すると一旦膝まづく、そうだった。外では家臣の一人の扱いだったわ。ライトを立たせる
「ライト。先ほど決闘だとか聞こえていましたが…どうしたのですか?」
いきなり聞くのもなんだし、感想を考える時間をあげるわ
「姫やラドニー殿と並んで歩いているのが気に入らないらしいようです」
あら?あぁ、近くにまだメイド達がいたのね。敬語なのが哀しいけど我慢しましょう
「あ、俺が懲らしめときました」
鋼介が出てきたけどやはり零華に足を踏まれていた。彼の事は零華に任せましょう
「そうですか。それで今は何をしてらっしゃるの?」
「リアンに部屋を聞こうと思ったんですが、その途中に姫様達を見かけたんですよ」
まだ近くには兵士やメイドが結構いる。臣下としての礼儀を継続中
「ライト見て。その皆に着替えをしてもらったんだけどいかが?」
私は忍の後ろにいた恵を引っ張りだし四人を並ばせる。一人ずつ前に立ってコメントしろという雰囲気。あなたならわかるでしょ?
まずは零華
「意外と似合っているな。戦争時はそれ着た方がいいかもな」
??…あれ?
「もうちょっと気の効いた事も言えるようになってね」
いや…本気なのライト?零華は結構な美人よ?対する零華は手を腰にため息をつくだけ。それほどコメントを求めてはいないようだった。彼はこんな感じなの?
忍を見るが特に感想は無さげ、瑠衣衣にも同じな様子
「二人とも、まあ似合っているな。そのまま仕事についても不自然じゃない。変装とかに使えそうだな」
実の妹だしそんなとこなの?瑠衣には…まぁわからないではないわでも少しは誉めましょうね?
「兄さん、怒るよ」
「ライトさん。誉めるとかしてくださいよ」
ほら、怒らせてしまったみたいよ
最後に恵よ。手を前で交差させもじもじしているけどちらちらと期待したような目を向けているわ。
この娘、ライトに?ライト、ここはいいコメントをいうのよ。ちょっと羨ましく思うけどここは攻め所よ。王女の命令よ!いや、男なら行きなさい!ガッと行きなさい!
「……いいと思う」
本当にそう思う……けど、それだけ?
「ライトさん!なんですかぁ!その恵との差は!私も誉めてくださいよ!」
それも大事だけどそうじゃないわ!もっと恵を誉めなさい
あ…
ライトもそれだけいうと頬を掻き、横を向く掻いた頬は僅かに赤い。好きあっているのね。
……そっか。……そうよね。
二人が自分達のペースで何とかするわ。周りが言うことじゃないわ
だって言われた側の恵はエプロンが破れそうなほど強く握りしめその顔はライトより赤くなってるもの。ライトも慣れていないから表せないだけみたいだし
……なにかもやっとするわね。私も褒めてくれない?
「ありがとう……ございます。うれしいです」
「では、私は書類を取りに会議室に向かいます。あぁ、リアンもそちらにいるようですよ」
私を先頭に零華、忍、瑠衣、恵で廊下をいく。最後尾についていく恵が振り返り手を振る。顔の赤さが抜けていない恵にライトも手を掲げた
「『良いと思う』だぁ?せめてかわいいくらい言えよ。あ、おい」
ライトは鋼介の言葉を無視し私達の後をおい会議室を目指す
会議室は……ん?今後片付け中ですか。ちょっと見守りましょうか。素のリアンなんてあまり見れないし
「早く片付けてよ。まだまだやることあるんだから」
へぇ、意外とタメ口だったりするのね
私達は隣の部屋で待ちましょう。待ち合い室内に入ると一人いたメイドに人数分のお茶を入れてもらいソファーに座る
ん…?あら。会議室に忘れた書類がこちらの部屋にあったわ。これで会議室に行く必要がなくなったわね
まぁ、ライト達に見せるって用事も終わったし戻りましょうか
半分開いた扉の中から忙しくしている女の子の声が聞こえてくる。扉から中の様子をチラリと見ると一人のメイド——私はメイドの名前は全員知ってるけどちゃんと名前で呼ぶのはリアンくらいよ——のトレイにワインのはいったままのグラスを次々に載せていくリアンの姿があった
「あ、ライト様。姫様より承っております。お部屋に案内しますか?」
ライトが室内に入った事に気づいて話すけどその手は止まらない。見る間にトレイの上はグラスで一杯になる
「そ、そのへんにしたほうが…」
ちょっと載せすぎよ。困ってるじゃない。トレイの面積一杯では飽き足らず上に積んでいくリアン。その様はまるで赤い山だわ
早々に会議が終わったので誰も飲む暇が無かったからなのだけど、載せる限度を超えてるわ
案の定、トレイを持つ手は震え初めているし
「リアン。待ってるから手伝ってあげてくれ。このままだと絶対にやってしまうぞ」
「ん~、まあライト様が言うのならそうします。それ、私が持つから残ったの持ってきてね。ではライト様、少しお待ち下さい」
トレイを引ったくり、早歩きで部屋を出ていくと器用に行き交う人を避け、見えなくなった。私には気づかなかったわね。ちょっと寂しいわ
「あの、ありがとうございます。失礼します」
残ったグラスをかき集めリアンに遅れをとらない様に早歩きで行こうとするが何か危険な予感がするわ
まぁライトが何とかして
「ちょっと待ってくれ。鋼介飲め」
グラスを1つ渡してるみたいね。飲ませるのね。軽くなるしそれならいいか。
ここはもういいわね。戻りましょ
「お、いいのか?いっただきま~す」
グビッと一息に飲みグラスを空ける
「飲め」
しばらくしてすべて空になったグラスは液体の揺れを気にすることなく運べるようになったメイドが出てきた。メイドは再び頭をさげ軽い足取りで部屋を出ていった
階段を上がって行く途中、零華の持つトランシーバーに声が届いてきた
『零華、来てくれ。まだ会議室にいるから』
もはや呂律が回らない鋼介は会議室から出られないくらい酔っているらしい。飲ませ過ぎたようす。目は赤く、常に笑っている状態だそう。気持ち悪いわ
「え、なに?ライト君?」
『俺のせいなんだが、気持ち悪い感じになってしまった。とにかく来てくれ』
「鋼が?わかったわ。すぐ行く。トランシーバーは恵ちゃん、お願い」
「はい」
鋼介の面倒をすぐに引き受けるのはやはり零華の役なのでしょうか?チーム内での恋愛なんて……。
……うらやましいわ
「ライトさん。どうしたんですか?」
トランシーバーに声をかけるのは恵だ。零華はすでに私の元を離れ向かっている
『鋼介が酔ってしまったから零華に冷やして貰うよう言ったんだ』
「そうですか。あの……さっきはありがとうございました。嬉しかったです」
さっきとは着替えた四人を見て恵に言ったセリフの事ね
『うん、正直いうと可愛いと思った』
皆の前だったので控えたのね。皆聞いてるけどね。
ライトが言ったあと、突然恵の方からゴトンと言う音がした。驚き振り向いて恵の様子を確かめるが十秒経ってもうんともすんとも言わない。何も硬直しなくても
『恵?』
ライトが呼びかけてみるけど返事はない。そういう耐性がないのね?
「ライトさん?何言ったんですか?恵、真っ赤ですよ」
次にトランシーバーを取ったのは瑠衣。やるわね。聞いていたのにワザともう一回言わそうなんて
「あ、わかったぁ。ライトさん、恵にえっちぃこと言ったでしょう。恵は猥談は苦手なんですから。ライトさんも男ですね~」
この娘は少し女らしさが足りないわ。猥談が好きなのはあなたでしょ?ライトに変な噂が流れたらどうするのよ
完全にからかうことにテンションがあがってきたらしく、ツインテールがピコピコとせわしないわ。さらなるトークに入ろうとしたが、今度はバシッという音がする
「す、すみません。ちょっと気が遠くなって…。その間に瑠衣ちゃんが」
恵がトランシーバーを取り返したわ。不意にライト側から扉を開いた音がした。おそらく零華だろうけとわ一応ライトに確認する。実況もね
当たり前のように零華は鋼介に歩み寄り紋章を発動。冷気を帯びたビンタを一発。いつもどおりの流れよね?
「あ…キスした」
ちょっ?えっ?なんでビンタからキスになるのよ?詳しく教えなさいよ
「えっ!?」
「えぇ!?」
「マジでぇ!?」
突然の事に驚き零華の頬は紅潮し力が抜けていく。零華の振り上げられた手は鋼介の服をつかみ、なすがままになっているらしい―byライト
昨 嫌がってないの?
「うっ…」
ライトがうめき声をあげたわ。今度は何?
「タ、ターミネーター…」
は?意味が分からないわ詳しく!
どうやら、零華と目があってしまった
↓
更に赤くなった零華の左手が激しく光り、零華の体が震えだす
↓
光は周囲の湿気を急激に冷やし出す
↓
室内の水分を凍らせている音が聞こえる程だそうで圧倒的な威圧感にライトも動けなかった
「ヤバい、恵もきてくれ!早く!死ぬ!ぐぁぁぁぁぁぁ!!!」
トランシーバーからゴトって音を最後にライトの声は途絶えた
「バカーーー!!!」
しばらくして零華の声が城内に響いた。恵を追った私達が来たとき、会議室は無惨な姿をさらす鋼介と少し離れていた為、体の半分が氷におおわれたライトを飾る展示室となっていたわ
入り口近くでは零華が息を荒げるのが見えた。この娘、冷気の魔法使いだったのね……この規模の魔法を使うなんて……あ、いや、今はおいておきましょう
「恵、頼む」
右半身を完全に氷で覆われてるわ。巻き込まれただけなのに悲惨ね
「あ、ああ…ライトさん~。大丈夫ですかぁ。何があったんで…ひえっ」
問いただそうとする恵に凍てつく視線を送りそれを阻止する
「言わないから頼む零華」
寒さで奥歯を揺らして頼むライト。なんなの?キスくらい友好の証でするでしょう?…え、違う?
「いいわ、恵ちゃん」
零華の許しを得て解凍を施す恵。
結局説明してくれないのね……こっちの二人は前途多難の様子。もう少し仲が進めば助けてあげようかしらね
さて遊んでばかりもいられない……私はライトの頼んでた誓約書を作りましょう。戻ったばかりなのにまた兵を動かさなくてはいけないとはね
文句を言っても仕方ない。ライトの言う通りにしよう。王位はあまり興味ないけど不本意な相手が玉座に座らないようにしないと
執務室に戻り腰を下ろす
「恵?ラドニー様を呼んできて貰える」
「はい」
ん?ああ、いまは護衛兼メイドだったわね。お辞儀して出ていったわ
っていうか零華…まだ怒ってるのか冷気が漏れてるわよ。忍と瑠衣が微妙に距離をとってる
私の部屋は見た感じ50畳はある広さだし。………いらない広さだわ。でもいざというときは逃げるくらいはできるでしょ?いくらなんでもこの広さを氷で埋める事はできないでしょうから
ベッドにテーブルはもちろん、床を彩るは真っ赤な絨毯にそれを縁取る金の刺繍。鉄では無く銀で出来た甲冑が二体——なんで女の部屋にこんなものがあるのかしら——と壁には誰が作者かはわからないが遠方からエルゲニア城を描いた絵画。窓には薄い青をあしらったレースのカーテン。どれも高級そうである。値段よりは気に入ってるから使っているけど売ったら少しはお金になるかしら?
「はぁ~私の住んでる所の8倍はあるなぁ」
そう呟くのは瑠衣。私は机にむかい椅子にかける。手早く誓約書を造るわよ
「あ、忍?リアンに夕食は執務室横の待合室に用意してって伝えてきて。8人分よ。ラドニー様がいるからたくさんお食べになるから多めにって。から揚げは忘れちゃダメよ」
「はい」
両手を前に御辞儀。リアンみたいな娘ね。丁寧で真面目な娘だわ。静かに扉を開け静かに出ていった
瑠衣が暇になったのか窓から見下ろす
「何か集会みたいなのしてますね」
マウリー伯爵が騎士団を並ばせ演説し、協力という名目で徴兵している
「姫を愚弄する六人の不貞な輩がいる。我らが主君を侮辱するなどもってのほか…うんぬんかんぬん」
「愚弄したのはおまえだっつ~の」
「好きな様に言わせておけばいいわ。明日の午後にはどっちが間違ってるか明らかになる事だもの」
私は椅子にもたれ完全に脱力する。椅子に沈む体が心地いい。できた誓約書を確認し終えると背もたれに体を預けた
ちょっと体を休める為だったけど途端に疲労が恐ろしい程にのしかかってくるけど、まだ目を閉じるには早い
「勝敗よりライトが勝つことですることになる金銭の使い道を考えないと…」
鉱山のマスクに車輪のついた専用の荷車、鉱山内部に空気を送る扇風機、これだけでもかなりの変化が見られるはず。まだ途中だという農具や農法も気になる。詳細がほしいわね……
考えた所で眠気が襲い船を漕ぐようになる。まだ駄目よ
次は新しい羊皮紙を用意して今回の出費から計算する。さすがに貴族達に首を吊らす気はないから実際の国庫の回復は数パーセントくらいか…
「姫様、女王陛下とラドニー様をお連れいたしました」
ん?恵だわ。お母様も?
二人に入室を許可し入ってもらう。入ってきたラドニー様はポットを持ってきている。ラドニー様がお茶とか似合わないわね。お母様の気遣いかしら?
「ルナ。一服してはどうだ?頭が覚めるような濃い茶を用意したぞ」
助かるわ…ふぅ…
「今は護衛はいいわ。ラドニー様がいるし3人は忍を見つけてライトの所にいててちょうだい」
「わかりました」
護衛リーダーの零華がそういうと私達の部屋から出ていった。ついでに部屋周りから人払いをしよう。
「お母様、ラドニー様……話しておかなくてはならないことが…」
「ふむ、ライト達の事だな?」
「私は今朝リアンから聞き及んでいます。問題ないでしょう」
私は頷き、ライトから伝えられた情報をラドニー様にかいつまんで話した。だって…私の理解したことをそのまま伝えてもきっとわからないもの。ラドニー様だし
――――――
「なんと…そんな事が?」
ラドニー様が驚いている。私だって今知らされたら信じられないもの。
「だから彼らは私達の敵にはなりえないわ。だから…私は彼らを信じています」
「ルナの人を見る目は正しい。ルナが信じるなら儂も信じよう。」
「ただし逐一の報告を受ける事を条件に……です。例え彼等が裏切らなくても知らずに操られたりする可能性だってあるのですから。」
流石はお母様。第三者の意見助かるわ
「ありがとうございます。ではお茶を飲み終わればライト達のところへいきましょうか。ラドニー様と飲む機会などそうはないですから」
「本当に……あなたときたら王と酒、部下と酒しかないのですから」
「まいったな」
―――――
「…ぅん」
起きたライトは固い体をゆるゆると動かし時計を見る。現時刻は7時前よ。あなたは2時間近く寝ていたことになるわね
「起きました?ライトさん」
ライト対面の椅子に座っているのは恵。ここに来たときライトは眠りこけていたのよ
寝ぼけライトは服装は変わらずメイド服を着用している恵に反応して顔を向けた。
昨 右側に零華、その前には鋼介がいる。二人が何をしているかといえば、やはり勉強よ。何を勉強してるかは分からないけど頑張りなさいね
テーブルは高さがないので鋼介は前に突っ伏した体勢になっている。腰が痛くなりそうだわ
「……なんで二人がここに?ルナマリアの護衛は……?」
「皆いるわよ」
私は読んでいた本を閉じポシェットに入れた
「ぅん……ルナマリア……ラドニー様も……」
うとうとして意識がはっきりしないライト。結構かわいいかも…
私が指をさすほうにつられライトが振り向く。そちらには忍と瑠衣がいた。忍は手を使わず果物の皮を剥いているし、瑠衣もグラスに入った水を空のグラスに移し変えるといったコントロールの訓練をしているようだったわ
魔法じゃなくて魔力でコントロールしてるわ。すごく高度な訓練なのに普通にやってる。瑠衣(この子)使い始めたばかりって聞いているのに……才能はこの子の方が上のようね……頑張らないと
「ラドニー様もいるし、私達の事ももう説明してるから紋章の訓練してたのよ」
「そうか、ま、明日は頼むな」
ライトはまだ寝ぼけた顔で微睡んでるけど、思考力は戻ってきてるわ
「あの人は嫌いです。でもライトさんも無茶な発言はやめてください」
確かに。最初何を喋りだしてんのよって思ったわ。あなたが強いから最後まで喋らせたけど自重なさい。他のメンバーも巻き込んでるのよ
「一対一でやればいいじゃないの。他を巻き込むのはライト君らしくないわね」
鋼介の勉強に目を通しながら零華がいった
「でも、またクーデターを起こされちゃ困りますよ。兄さんはその芽を摘んでおこうって考えてるんですよ」
確かに…クーデターはもうこりごりよ…疲れるし、何を信じたらいいのか解らなくなるわ
「ま、とりあえずはだ。明日マウリーをぶっ飛ばせば丸く治まるんだろ
」
鋼介は両手を重ね上に伸びるようにストレッチをしながらいった。ボキボキと骨をならすのは気持ち良さそう…今度やってみよう
「簡単な事だよ」
「よし、いいわ、今日の勉強はここまで。ご飯にしましょう」
「腹減ったぁ」
勉強道具を片付けてテーブルの端に固めて置くと立ち上がり手を払い、背中を反らし移動の準備をした
「姫様。ライト君も起きましたし…」
「わかりました。では、執務室の横の部屋に向かいましょう」
「わかりました。皆用意して」
鋼介、以下四人は部屋をでる準備が出来ているけど寝起きの為かライトの動きはのろい
恵は部屋にあった手頃な布をとると水差しに入っている水で湿らしタオルがわりにライトに渡す。世話を焼くとこなんてもう奥方と呼んでも差し支えないわよ。洗顔くらいなら私がしてあげてもいいわよ
「ライトさん、せめて顔は拭いてくださいね」
短く、あぁ、とだけいうと、顔を拭きだした。駄目亭主ねライトは(笑)
「ライトさん、恵ならいい奥さんになれますねぇ」
寝ぼけたライトは何も考えず、あぁ、と答えてしまう。言ったのはもちろん瑠衣だわ
みんな聞きました?とか言っているのをぼんやりと眺めていた。やがて、質問を理解出来るほど覚醒すると、周りを確認するライト
零華、鋼介はニヤニヤ。二人はライトの反応を見て楽しんでるみたい。忍は特に反応せず。兄の恋愛事には無関心…いえ。複雑?どうしていいかわからないのね。瑠衣はおめでとう~とか言っている。この娘はノー天気ね。親友とは言ってたけど、仲間内なら誰に対しても同じ感じっぽいわね
ラドニー様は暖かい目線だわ。息子娘の年齢だもんね
当の恵はライトの使ったタオルの水分が蒸発するほど熱く真っ赤になっていた
「あまりからかうな、行くぞ」
少し強めに言うライト、それで皆やっと歩き出す。それでも表情はさっきと変わっていない瑠衣。
「まったく…恵、ほら、行くぞ」
高温になりすぎてカラカラのタオルをテーブルに置いて横に並んできた。さらなる話題になりたくないのかライトの横じゃなく、私の横よ。普通に歩けばいいのに
「瑠衣、いたずらが過ぎるぞ」
「えへへ、ごめんなさ~い」
やっと出てきたライトは廊下で待っていた瑠衣達に混ざり執務室へ向かう。一応部屋を出たら臣下と言うことなのか私、ラドニー様、ライト達と言う順番になった
中央階段をおり謁見の間を横切り一つ二つと扉を越えメイドが待機する扉を見つける
「あそこよ」
こちらの接近にメイドが頭を下げる。リアンよ
「姫様がお着きになりました」
中にノックをしたあと告げる
「準備はできております」
そう一言告げるとリアンはゆっくりと扉を開き中へ通してくれた。中にいるのは侍女が四人。食事係よ。そこに私達が入る
「待たせしましたね」
上座に座り皆に着席を促すとライトを基準に左右に拡がり座った
「明日とこれからの事を話しましょう」
私は食事の開始を告げる。扉が開きカートに載せた料理をテーブルへと次々にのせていく。ラドニー様の席だけ倍はあるわ。ワインはボトルごと。そんなに食べるのかとこの人にはいつも驚かされる。毎食完食するのだけれども
さて、と。あまり、雑談ばかりでも寝たりないライトにはキツいでしょうし。本題といきましょう
「明日の勝算は?…聞くまでもないわね」
あの商路にいた魔物の数と質。あれをさらっと倒してしまうライト達。ここにいる人達は規格外だもの。特にライトにはイクスがいる。これぞ奥の手と言うほどの戦闘力だった
マウリー伯爵には悪いけど勝目なんて1パーセントもないわよ
「私の為にごめんなさいね。それからありがとうございます」
ライトが会議を終わらせたのは私に中傷が集まるのを防ぐ為。マウリー派でない貴族まで反感を持ち始めたら面倒だものね。わかってるわ。感謝してる
「守れなかった。成し遂げられなかったのを他人を言い訳にするのが嫌いなだけだよ」
ライトらしい言い方ね。でもありがとう
「ライト」
ライトの名前を呼ぶと豪快に料理を食べている軍団長が手を止め私の所にある一枚の書類をもって行った(余談だけど彼の指は唐揚げの油がついていて書類の右上の角にはシミができていた)。今もばくばく食べているのをライトが悲痛な横目で見ている。
残しておきから、それより誓約書よ
マウリー伯爵の名が書いてある。誓約を認めたことを証明するための国印も押されている。ライトは(負けることはないが)負ければ死ぬだけなので書くことは何もないし改めて言う事は何もないわ。
負けたとしても絶対死なせないけどね
「内容も問題なかろう?」
王女である私、軍団長であるラドニー様を証人とする1000対6の戦い。1000とはあるけど本当の所はどうだか。余分に増やしてそうね
昨 マウリー伯爵が負ければ前回の出兵の際の出費を負担し、さらに爵位を失うということが書いてあるわ
「これでいい」
ラドニー様は頷くと席に戻るとボトルごとワインに口をつけた
「ふぅ。聞いたぞ。お前さんらの事。儂もルナと同感だ。戦力は多いにこしたことはない。ただ…な。ルナを裏切る事だけは許さん。いいな」
圧力をかけるのはやめてくださいね。こちらにまでプレッシャーが来てますよ
「俺達は魔神さえ倒せたらそれでいいから。他の国へ行っていてもこの国の事は話さない。約束しましょう。まあ、関係無い思い出話しくらいは許して欲しいところだけど」
「ふはっ!いいだろういいだろう!それなら構わん」
しばらくして料理も残り僅かになり時間も8時を過ぎようという頃になった
「さて、そろそろお開きにするといたしましょう」
ほぼ食べ終えた食器から次々にカートにのせていくメイド達。鋼介がしつこくワインを飲もうとするが先に零華がグラスを奪いメイドに渡している。明日に差し支えるわよ。その辺で終わりなさい
「零華、忍。今日は私の部屋の横に寝室をとってあります。そちらをお使いになって」
「あれ、私達は?」
瑠衣は恵と目を合わせ二人で私を見た。どうしたのかしら?
「もちろんライト達の部屋よ」
もっていたグラスを侍女に渡しながらいうと大きな声が返ってきた
「え~~~!」
「え~~~!」
「そういやベッドは四つあったっけ」
鋼介が呟く。よく覚えてたわね
「え、ダメかしら?今から用意するのはいいけど時間がかかるわ」
特になにも考えてなかったけど……こっちでは男女で一緒に寝るのはそこまで変な事ではないんだけど……他人じゃないんだしさ。とくに恵はラッキーじゃないの?
「部屋もある、寝床もある。なら問題あるまい。明日の事もあるし今日は早く寝るといい」
二人の肩にその大きなてをのせ顔を近く、ん?どうだ?という視線を投げかけてる。ちょっと……強制は駄目ですよ……
「は、はいぃ!」
「は、はい」
肩を触れられ驚いたのか瑠衣の声は上ずっている。忍は相変わらず特に変化はないし、零華も鋼介に視線で釘を刺すだけで、反対まではしなかった
きっとライトがいるから安心したのでしょう?
「出発は朝8時だ。それまで体を休めるように努めること。ではルナマリア、ラドニー殿、失礼します。じゃあ二人とも頼むな。何かあれば…」
「わかってるわ。兄さん。何かあれば伝えるから兄さんが一番休んでくれないと」
「明日ね」
私に一礼して部屋を出ていった。部屋を出て入り口にいる誰かに話しかけてる
「リアン」
「はい、ライト様。いかが致しました?」
リアンは両手を前で組み顔を向ける
「あとで長い布を用意してほしい」
わかりましたとリアン。返事を受けライトは部屋に向かった。私ももう戻ろう
「ではラドニー様。明日はよろしくお願いします」
「うむ。ルナ、お前さんも今日くらいは早く休めよ」
今日帰って来たのに私が既に睡眠不足なのを知ってるのね。さっきもお茶を持ってきてくれてたし。リアンに聞いたのかな?
「わかりました。それでは、おやすみなさい」
私は忍と零華を連れて部屋を出る
「リアン、ライトの用事済ませて後できて」
「はい。わかりました」
そういうと私は自室を目指した




