エルブレイクス——ライト
光をくぐった俺は一瞬の浮遊感を感じた。光の中で後ろを向くとルナマリアと目が合う。小さく手を振る姿がとても寂しげで印象的だった。庇護欲が刺激され引き返したくなったけど皆の手前我慢だ
次第に光の円は小さくなり未来の女王が見えなくなった
直後、幾つかの光の波が駆け巡り、やがて絵の具を混ぜたような空間になり少し進んで出口に到着する
「………」
目に悪い空間の名残を目を閉じ消してから再度瞼を開いたけど辺りはまだ暗い。部屋に電気がついてないからだ
近くでカチカチと音がしている。目をやると鋼介が部屋の明かりを付けようとしているのが見えた。スイッチを押している
「勝手に付けるな」
最後にカチと鳴らし指を離す鋼介
誰かが腕を引いてくる。恵か
「まだ時間がとまってるんですよ」
指先に灯した火で部屋を照らしてる。たしか俺が地球で最後に寝たのは12時半ごろだったはず…いつも役立たずな目覚まし時計も少し進んでいるけど想像した就寝時間に大きなずれはなかった。たがら時間が動き出すならあと四時間くらいはあるはずだ
「あ、皆さん、武器はこっちじゃ使えませんよ。ほら」
見せてきたのは小さなキーホルダーにも見える剣だった。恵は紐を付けペンダントの様に首から下げるようにつけた
俺の剣も零華の弓も小さくなっている。どういう原理だ?説明書くれ。全部読むからさ。
零華はどうしようか迷った挙句財布に入れてしまった。円が入ってる方だけどいいのか?次に行く時忘れないか?
とかいう俺も邪魔にならないよう財布にでも入れようかと思ったけど取り出しに不便だ。リストバンドを付けその中にいれて身につけるようにした
鋼介は手甲が小さくなり指輪の形になり上手くはまっていた
「ライトさんの部屋ですか?」
明かりで照らす恵が部屋のベッドや机を眺めている。珍しげに机の上や棚、窓からの景色を見ていた
「エロ本はないのかよ?」
「想像してた男の子の部屋とは違うわね」
恵が笑ってる。そういえばエロ本の隠し場所はわかってるんだっけ。
こら、笑いながら辞書の方をみるんじゃない。バレるだろ?ほら、零華が視線に気づいて本棚見てんじゃんかよ
「とりあえず下にリビングがある。行くぞ」
これ以上漁られたくないからな。ドアを開けて四人の退出を促したが一人だけ動かない
輪(ゲートと名付ける事にする)をくぐり終えた先がベッドだったためそのまま眠りに落ちている忍だった
静かだと思ったら寝てたか……わざわざ今起こす必要はないな,ONになっている部屋の電気を切り替え静かに部屋を出た
「優しいんですね」
「そうか?」
三人を引き連れリビングに行く,初めて来る家に興味をもったのか風呂場やトイレまで覗いていやがった
「勝手に開けるなって」
零華が動いて扉や襖を開ける鋼介の襟元を掴みリビングまで連行してくれた。ナイスだ零華。そのままビンタでもしてやれ
持って帰ってきた荷物の中から制服を取りだし着替える。先に俺達、次に恵達が交代で着替える
「覗かないでね」
「お願いします」
と言われ襖をピシャッと締められた。
そう言われれば覗きたくなるタイプなのか鋼介は音を立てないように3ミリ程開き覗くと俺に向かって手招きする。同罪になれといっているが頭を横に振るとまた鋼介は前に向き直した
……む?二人ってことは……
いやいや、そもそもお前には必要ない映像だ。うん。お前にゃもったいない。てな訳で
「ハックション」
うん。言葉だけだけどな。白々しい合図だな。もっとこう鼻水を飛ばすくらいやるべきだったか?
「わ!おい…静かにし…」
覗こうとしていた鋼介に気付いた零華が着替えの途中にかかわらず襖を開けた。気づいたっていうかある意味生贄だ。
「何処を凍らせられたいのかな~?」
制服で胸を隠しながら出てきた零華の顔は笑顔だが声は笑っていないのが怖い
「ごめんなさい」
よっぽど怒りに燃えたのか頭を残し全身を凍らされ廊下に蹴りだした
襖を閉めた時、思わず固まって止まっていた恵を見れた。すると恵も我に帰り服で下着を隠したが遅い
「…白だ」
しかもトップレス。後ろを見てたからか双子山の天辺は見えなかったけど素晴らしい。こちらを振り向いた時の鎖骨に髪がかかるところとか。腕で押さえた下乳がぷにってるところとか
脳に焼き付けておこう。完了だ。この間0.2秒だ
ちなみに俺のセリフは襖を締める音にかきけされ無罪になった。流石は鋼介。俺の眼の保養の為のいい生贄だったよ
現行犯の鋼介を風呂に入れ凍った体を溶かしてやることにする。うん。これくらいならやってやろう。感謝してもらいたいものだ
浴槽に放り投げる。湯は今日入ったものだからまだ冷めきってないな。まぁ多少冷めてても氷を解かすには問題ないだろ。
っていうか後は何とかしろ
「湯冷めすんなよ」
一言だけかけ、リビングに戻る。入る時は声をかけることを忘れないぜ。鋼介と同じ目にあう気はないからだ
返事を聞いてから開けるのだがその手が引く襖のスピードはゆっくりになってしまうのはご愛嬌。怖いものは怖い。だってリビングにいた零華の顔が鬼みたいだったんだから。まだ怒ってんのな
「鋼は?」
風呂場に入れてある事を言うと顔から波が引くように怒りも引いていった
恵を見るとあわてて顔を反らす。さっきの事を恥ずかしがってるようだな
……いや、白かったし柔らかそうだったな
「さて、ルナマリアにはまた来る的な事をいったけど、みんなはどうするんだ?」
話を始めると自然に俺の方をみる。まだ照れたような顔をしているが会話には参加してくれるようだ
「私は行きます。前もいいましたけど、守りたいものがありますから」
「私もよ、始めは本当に怖かったけど、ライト君がいれば、心強いし」
恵が一瞬反応していた。零華の後ろに何かいたのか?訝しげに見ると逆に見返された。なんだったんだ?
「そうか。2日後に行くがテストが近い。ルナマリアの護衛の話を聞いた時思ったんだが、鋼介の学力じゃギリギリになりそうな話だろ。二人は?」
俺は平均60点位だな。国語が得意だしな。そこで点を稼がせてもらおう。たまにはゲームをせずに勉強でもしてみるかな
「私は平気よ。だいたい80は堅いわ」
「私も、まあ70前後ですね」
「安心だな。次に行くときは鋼介に教科書を持って行かそう。悪いが零華が教えてやって欲しい」
そういうと快く了承してくれた。制服のポケットから生徒手帳をだし何か書き込んだと思ったらスグに入れ直した。目がすでにスパルタ教師の存在を示していたので鋼介には心中で謝っておく
「ライト~、服貸してくれ~」
部屋の外から馬鹿が俺を呼ぶ声がした。制服のまま凍らされてしまったので仕方ない。家の中をびちゃびちゃにされるよりかはマシだと思い服を貸すことにする。二階の自室からジーンズとTシャツを持って降りる
下着まで貸す気はないのでドライヤーを持っていく。自分の紋章に感謝しつつ階段を降りた。だって家電使いたい放題なんだぜ
階段を降り、風呂場の戸を開けると鋼介にドライヤーを渡しコンセントは俺が持ち電力を送る。雷の力でドライヤーが動き鋼介が下着に熱風を当てはじめる
二人して風呂場にいるのは気が引けたのでコンセントだけ持ち廊下に出た。
「ライト君。アドレスを交換しましょう」
スマホを持ち、廊下に出てくる零華。恵はすでに登録したようで携帯(恵はスマホじゃないらしい)の画面を覗きながらボタンを操作している
「少し待ってくれ。今持ってない」
そういうと置いてある場所だけ聞いて零華は俺の部屋を目掛け階段を上がっていく。ちなみに俺も携帯だったりする
「ライト、もう良いぜ」
下着が乾いたようで戸の隙間からドライヤーを渡してくる。受けとると戸の奥から着替える音が聞こえてくる。男の着替えを想像する気はないので恵のいるリビングに行く事にした
「あと次に持っていく物も決めましょう」
着替えた鋼介と俺の携帯を持った零華も合流すると四人で相談して持ち物を決めた。忍には後で言っておこう
そうこうしている間に三時間はたっただろうか話も切りがよく解散になった。鋼介は零華を俺は恵を送っていく事になった
場違いな荷物を入れる妥当な袋が無かったのでエルゲニア王国で買った服をスーパーの袋を渡し持たすことにした。人はいないはずけど本当に場違いで仕方ないからだ
忍宛に書き置きを残し、鍵を閉めて自転車を動かす。久々に乗る自転車だったがいつも通りに乗ることができた。うん。馬も悪くないけどやっぱ自転車だな
鋼介は文句を垂れていたが結局断らず零華を連れて離れていく。二人を見送り、俺も恵を乗せ自転車を走らせ始めた
通学路前から駅の方へ向かう
—―………………パシッ
そっちの方に恵の家があるらしい
いつも見馴れた光景だけどひと一人いないのは、どこか冷たく寂しく感じた。同じことを思ったのか恵も口にはしなかったが背中に掴まる手がほんの少し強くなる
「私達が負けても、間に合わなくてもこうなるんですね」
「そうだな。俺達は頑張れてんのかな?」
頑張っているとは思うけどつい弱音をはいてしまった。ジェネラルリザードに火傷を負わされ倒すのもかなりギリギリだった。今後が不安だ。どうすれば強くなれるんだろうか?楽に勝てればあの肉をまた食べられるのに
「私、もっと強くなりたいです」
——パシッ
ただ二人の声と車輪が廻る音だけが辺りに響いていた。停止している電車の高架下をくぐり、さらに住宅街の方へ進む。
——パリパリッ
「?」
辺りは既に寝静まったように『しん』としてやはり人の気配は微塵もしないが異質な何かがついてきている気がする。
「気付いたか?」
恵に短く問う。今も角を曲がったけどついてくる何か
「えっ?なんですか?」
どうやら気付いたのは俺だけみたいだけどふと見た手が光っていた。特に身体の強化を感じない。勝手に浮き出てるのか?
「なんだ?」
電線を伝いながら確実にこっちへ迫ってきている。通り過ぎた後に電子が宙に飛び散っている。
電線を伝う何かは視界ギリギリ外で移動を繰り返し視界に入らないように動いているけどさ。そんだけ派手ならわかるって…
堂々とこいよ
自転車を漕ぎ電線の少ない場所を探し空き地に入る。ここなら隣接する道にある一方向の電線に絞れるし被害は少なくて済みそうだ。周りの家はさーせんって事で
「ライト…さん…?え?」
横で顔に手をあて真っ赤になっている恵がいるが今は気にしてる場合じゃない。ってかこんな時になに考えてるんだと思ったけど問い詰めてる時間はないな。正直ジェネラルリザードを食べた辺りから俺もムラムラしてるし。……帰ったら大人な雑誌を見ようと思う。
自転車を止め何かに対し構え、残り少ない紋章の力で体を強化した。時間が止まっている中で動いている以上普通ではない。ってか敵じゃないか?
「あ…そっか…違うよね…」
そう。違うよ。それより強化してくれ。
恵は何故かがっかりしたものの、訳が解らずおどおどしている。でも相手はお構い無しだ
電線の一部から強力な電流が俺達の前に集まり形を成していく。形といっても輪郭があるだけの球体だが、紋章が反応するのが気になる
「………」
球体は俺達の様子を伺っているようで動きを見せない
「契…約」
「契約?」
おうむ返しのように反応してしまう
「我…みの…ものなり」
「ライトさん?これなんですか?」
恵には見えてはいるものの聞こえないようだ
「汝…、契約…ない」
聞こえる内容から意味をくみ取る。この球体は俺に用があるようだけど、今のところ敵意はない。恵には聞こえず、恵は契約出来ないと言っている
「我、神の創りし獣なり」
大分、はっきりと聞こえるようになったがどうしたいのかはわからない
現代語学んで出直せよと言っても仕方ないな。付き合って聞いてやるか
「神の獣。契約ってなんだ?」
「我、神の獣…我、神を守護するものなり」
話し終えるまで聞いてみる
「我が雷は形あるものを粉砕し、形無きものを引き裂く。我が力、欲するか…?」
要は神を護るための力を雷の紋章を持つ俺に与えようという話のようだな。今後の闘いに役に立つのは間違いないけどなんで今でいきなりなんだ?
「リスクは?」
「我が身の一部を受け入れよ。だがそれは汝が身を滅ぼす力なり」
「具体的に言え。決めにくい」
「我が力を使用した時の分の眠りと苦痛が伴う」
使った分だけ副作用がでるようだ。紋章を瞬間的にしか使わないようにしてる俺には切り札になるかもしれない
「いいだろう。神の獣。お前の力をくれ」
俺の言葉に球体は四足歩行の獣の姿になった。その姿は大きな足に蹄長い体毛に金色に光る目。そして雷を思わすようにその頭から伸びる角
雷を全身に纏う巨大な山羊だ
目の前でブルルと嘶く姿は雄々しく猛々しい
「我が名はエルブレイクス。契約者よ。汝が名を我に」
「ライトだ。エルブレイクス、お前の力を貰おう」
「契約は成立だ。汝とともに神の敵と戦うことを約束しよう。汝の運命、切り開く雷光となろう」
神の?なんだそれ?ちょっとま…
目の前の巨体は白く光ると瞬く間に球体に戻っていく
おい!ちゃんと説明してくれ
エルブレイクスは球になった体を俺の右手を目掛け飛んでくると吸い込まれるように紋章に入っていった
クソっ何か騙された感あるな
とりあえず、あっさりと終わった契約だったけど、どれほどの効果があるかわからないしリスクもあるのでおいそれと使うわけにもいかない
最後の手段として考える事にした
「ラ、ライトさん。どうなったんですか?今のなんですか?」
わざと「今の?」と聞き返してみる
「おっきな山羊ですよ!ライトさんの紋章に入っていったじゃないですか!」
さっきと同じで、見えていたようだが声は聞こえなかったらしい
「エルブレイクスっていう名前らしい。神の獣で力を貸してくれるらしい」
「エ、エル?」
何事もなかったかのように自転車のスタンドを上げ、恵に近寄る
「ほら送るから乗ってくれ」
説明は明日するとだけ言って二人乗りで自転車を漕ぐ
俺だってまずは一人で処理したいんだ。ゴメンナ
——————————————————
あれから恵は黙って後ろで揺られている。たぶん考える時間をくれてるんだろうな。
エルブレイクス……山羊型の神獣……リスクのある能力アップか。我が身の一部ってなんだ?食べるのか?神の敵って悪魔か?
答えの無い問答を繰り返してみるけど、纏まる訳ないな。やめよう。話題を変えて恵と話そう
「魔法って呪文のあるもんなんだな。名前唱えるだけなんて簡単なもんじゃなかったな」
ルナマリアがなんかブツブツ言ってたもんな。戦闘中だったしよく聞いてなかったけどアレが呪文の詠唱なんだろうな。だったら俺達が使ってる魔法は魔法とは言わないのだろうか?
「そうですね…魔法は呪文を覚えればいいんでしょうか?使えれば戦いの幅が広がりそうですね。あ、そこ左です」
「その辺りは聞いてみるしかないな。戦闘中に唱えられるかわからないしな」
「そうですね。そうなると前衛、後衛がはっきり分かれそうですね」
ああ、と返事
「ここです」
自転車は住宅街でも一際大きな家に着いた。表札が日比野と記されいるからここでいいみたいだ。名字で呼ばないから忘れがちだけどここが恵の家のようだな
どうみても金持ちとかセレブといった感じの家だ。広い庭にはプールまであるのが見えた
え、お金持ちなのか?
「私のお父さんの家ではありません。叔父の家ですよ」
鍵をだし扉を開けるが玄関のものではなく、直接部屋に続く階段をあがり二階の自室に入っていく
「入ってください」
恵の部屋は大きな家とは隔離された1DKでなりたっている。風呂もトイレもちゃんとあるし、キッチンだってある。一人で自活していける分のスペースは十分だ
スーパーの袋を部屋の隅に起く
電気は着かないので空中に浮かせた火の玉が部屋を赤く照らして明かりにした。火事にならないことを祈る
ふと窓のある方をみると勉強机だろう。部屋の片隅のスペースを占めているその上に無造作に星の黙示録があった
女の子の部屋だけとわ余りそういった感じは受けない。ピンクピンクしてないし、小物がいっぱいあるわけでもない。ただ机の付属の棚に一つだけ熊のぬいぐるみがあるだけだった。あまり生活感が感じられないのは時間が止まっているからなのだろうか?
他には……ベッドの上には恵の物らしき下着が……ピンクか。悪くない
「あまりじろじろしないで下さいよぅ」
急いでベッドの中に隠す恵。うん、やっぱりピンクもいいけど白は至高だと思う
(…これでは鋼介の事など言えないな)
「あまり物を置きたくないんです。無くしたり壊したりしたくないから」
なんとなく恵自身の戦う意味にも当てはまる気がした。率直に聞いてみる
「それが戦う理由なのか?」
冷蔵庫からお茶を出しコップに注いでいる。出されたお茶は冷たい。やっぱり電気ごと冷蔵庫の時間も止まっているんだな。作りたてじゃなくてよかった
「失わないために戦ってるんです。ライトさんは何故何ですか?」
何で……か。
「…一人が恐いから…かな。両親は家に寄り付かない以上、家族は忍だけ。その上、数年後に消えて無くなるかもしれないんだ。誰もいなくなってしまう。それは嫌だ」
我ながら寂しい理由だな。でも人間一人は辛いぜ?いかにボッチでいたと言っても忍がいたし、両親だっていた。大まかに言えばそこここに誰かはいた。それが誰もいなくなり、何もなくなる。究極のボッチって訳だ。
それは勘弁願いたい。
恵に心の内を話したのは同じような痛みが感じることができたからだ。現状から失いたくない。そんな共感
俺は自分の事を話すのが苦手だったんだけどこの部屋の主は話しやすくて一緒にいるとどことなく安心できる。いつもよりは饒舌になっているのは気のせいじゃないな
だいたいは恵の質問に答えるだけだったけど悪い気はしない。互いの家族の事、思い出、二人合わしても、たくさんといえるほどではなかった。でもなんとなく嬉しく温かい気持ちなった
恵はアルバムまでだしてくるほどにテンションが上がっていて、その素の笑顔に自分の鼓動の打ちかたが少し早くなった事に楽しく思った
開いたアルバムの中に恵の出生時の写真があった。産湯に浸かっている赤ん坊の写真だったが恥ずかしかったのかすぐに次のページに進もうとする。流石にそれにエロスは感じないぞ
写真の下をよく見ると細かく走り書きの文字がある。一瞬だったがテスト明けの日が誕生日だと記されていたのを見逃さなかった
「あ、ライトさん。時間が動き出しましたよ」
壁に架かっている時計の秒針がカチカチと音を鳴らし時を刻んでいる。0時を過ぎた夜が動き出したようだ
遠くで車や電車が走る音や近くをバイクが通る音がしだした
誕生日の事を言うタイミングを逃したけど、それはまた今度聞くことにして帰る事にした。仲間なんだから誕生日を気にしたっておかしくないだろ?
「じゃあ、また明日…か」
「学校で、ですね」
たちあがる俺に玄関まで送りに来てくれた
「それじゃ私はお風呂入りますんで。」
それもそうだな。向こうに行く前に入っても既に6日経った後だ。俺もゆっくり風呂でも入りたいな
「あ、一緒に入りたいですか?」
「なっ…え?」
冗談なのは分かるが靴を履こうとする体が固まり止まってしまう
「あはは。嘘ですよ。お休みなさい」
渾身の笑顔で送り出してくれた。扉をしめ階段を降りる。自転車に乗る頃には恵の部屋に電灯が付きシャワーの音がしていた
あらぬ想像が始まる前にって…いや、無理だろ。一瞬で想像したし
さっき着替えを見ちゃってるんだからさ。脳内補完してしまうって。俺も男だし、高校生が何日も禁欲してたんだから
漕ぎにくくなった自転車に乗って日比野家を後にする。鋼介に見られ無くてよかった
帰り道は人の生活音やコンビニの明かりに安心した。やっぱりこれが日常だよな
「帰るか」
忍だけがいる自宅に真っ直ぐ帰ることにした




