お家に帰ろう——恵
「おーい!ライトー!!」
みんな着いたかな?鋼介さんの叫び声が聞こえた。正門に集まろう。
正門には騎土さん達と屈強な男の人達が準備体操をしています。大工でしょうか?ルナマリアに印象付けようとしているのが伺えますね
ライトさんは役割分担を零華さんに任せる(丸投げ)と零華さんはテキパキと男達に指示を出し始めた。適材適所、委員長気質なところもありますね。ライトさんのクラスでやってるのかな?
「鋼、ライト君、あなたたちはあのワニを運び出しておいてね」
怪我人二人にも容赦なく指示が飛びます。仕方なく二人は階段を登る事になり、巨大ワニの所まで行きました。エリャソーナ・ヤーツ男爵にやらせれば良かったのに……
さて私は仕出しを作りましょうか。買い出しに行った零華さんが買って来た食材を切りまくりましょう
ふむふむ…夏野菜?が多いですね。魚はないですね。下処理面倒だし助かるけど。
それよりリザードの肉をいいから食べろって?塩振っただけでいいからって……まぁそう言うなら
……え?美味しい!わっ!やっぱりワニって鶏肉っぽいんだ!しかも脂はのってるのにくどくないし、この軟骨っぽいところ噛めば噛むほど味がでてくるよ
これはけんちん汁決定だね。零華さんが買ってきた材料でもいけるし。大人数だし作りがいあるね
「こんチクショオォ!!!」
な、何事ですか!?
声のあと例の巨大ワニは中庭側にある採光用の大きな窓を突き破り城壁受け止められ移動を終えた
「………」
私は思わず声を失いました。上の方のテラスからはルナマリアが顔をのぞかせてました。そりゃ驚くでしょうね
え?ジェネラルリザードも食べるんですか?尻尾だけ?一番美味しいところだそうです。分厚く切ってステーキがいいんでしょうか?倒したライトさんに決めてもらおうかな?
え?どこ持ってくの?
他の部位は市場に流す?食べないのかぁ……残念。実費で購入しましょうかね。本気で悩みます。
薄く切って食べたけど一噛みで肉汁が口いっぱいに拡がって行きました。心なしか元気になった気もします。ちょっとムラっと……いえ、なんでもありませんよ。
食堂から調理道具を借りてきてざっくざく切っていきます。紋章があればなんのその。ジェネラルリザードの皮も切れますよ。戦った時切れにくかったのはやっぱり生きていたから、生きた筋肉が収縮して抵抗していたのが原因のようです。お肉になったらズッパし切れちゃいます。
あはははははは!切れる切れる!……………あ、引かないでくださいよー!!!
夕方になり辺りには赤い光がさしてきています。実際の時間が分かったら六時頃でしょうか
夏なのでまだ周りは明るいですが作業も暗くなっては出来ないので早めに零華さんに終了の合図を出すライトさん。後片付けもしないといけませんからね
「ご飯にしましょうか。ライトくーん!上がるわよー!」
ライトさんに呼びかけると手を上げて答えていた。そういえばワニのあとライトさんは居なかったな。
ルナマリアの指示で各役所に行っていたらしい。ようは郵便屋さんですね。ライトさん馬も乗れますし、走っても速いですからね
配達後はジェネラルリザードの斧と鎧を武器屋さんに売りに行っていたんだって。さっき切った時鎧とか何もつけてなかったから何処いったんだろうとか思ってたけど……もうお金に変わってるって凄いね。金貨40枚(40万円くらい)を袋に入れて見せてきた。
それからはずっと作業者に混じって作業していたそうだ。いろいろとしているなぁ
「ライト様」
急に声をかけられ背筋が立ったようだった。結構驚きやすいんですね(笑)
私も気が付きませんでしたがいつのまにかリアンさんが横に立っていた
「姫様がお連れの方達と来るようにとの事です。どうぞ、こちらに」
「その前に二人とも動かないで。忍ちゃん」
「はい」
呼んだだけで通じたのか両手を突き出し風を吹かし始めた
「暑いし汗臭いわ」
風に冷気を混ぜて、体を冷やしてくれたおかげで大分楽になった。もちろん私も涼みますよ。
よろしいですかと問われました。ルナマリアを待たせたくないのかな?微妙にはや歩きな気がしたけど私達も同じ速度で歩きます
中央階段を二階に上がり、長い廊下をさらに奥に進む
通された部屋は応接室だ。さっきライトさんが待ってた部屋ですね
臨時で真っ白なクロス付きの長いテーブルが置かれた食事もできる歓談室になっていた。テーブルには誰も着いていない
窓の近くからだんだん暗くなりつつある中庭を眺めていたルナマリアだけがいるだけだった
リアンさんがルナマリアに近づき到着を知らせると窓から離れテーブルに着くまでに私達の顔を見た
指を揃えてお辞儀、そのまま扉を閉じるリアンさん、さすがのメイドっぷり
扉が閉まる音を聞いた後、ルナマリアとの会食が始まった。今日の作業状況から政治、昨日の魔物、そして今後の話になった
「父も大臣もいないのだから私がしっかりしなくては…」
揺らしたワインの液面を見つめ『ふぅ』とため息をつくルナマリア
これまでは王様と大臣がやっていた仕事も手を着けるとなると寝る時間も削る事になるだろうな
「自分だけで抱え込まず新しい役人を立てるべきですよ」
と私が言葉をかけたんですが、「一度裏切られたという記憶がいつか同じ事を繰り返すのでは…」と否定気味
「どうしたらいいのかしら…?」
「ライト、なんかいい方法はないのかよ?」
鋼介さんに無茶ぶりされましたが、こればかりはどうしようもなかったみたいです。あと鋼介さんもちょっとは考えてくださいね
政治なんか執ったことはないライトさんは無理だという。そりゃそうですよね。だからただ励ましていました
「そうね。弱気になってたら何もできないわね」
会食も終わり、テーブルにはワインだけが残されている
「今月末に即位式と父の葬儀を行うよう取り計らうわ。そこであなた達には私の護衛をお願いしたいの」
今回のクーデターで近衛兵までが裏切っていたんです。友人である私達に守ってもらった方が信頼性があると思ったそうです
私達には夏休みが始まった辺りなので、こっちの世界にいても問題なさそう
気になるのは鋼介さんが追試や補習に引っ掛からないかどうかだとライトさんから聞けた……鋼介さん……ちゃんと勉強しましょうね?
「わかった」
ライトさんの返事に安心の顔を覗かせたルナマリアはメイドさんを呼び、五人それぞれに寸法を測らせた
式に着る服を造らせるのかな?無料?
「式には他の国の王も来られるわ。何かあるかもしれないから準備はしっかりしないといけませんよ」
しばらくして鋼介さんがアクビをかみ殺しているのがわかりました。忍ちゃんもあまり喋らない所を見ると眠いのかも知れない
時間はまだ遅くないですがこっちにきて以来、完全な休みをとっていないので疲れ気味なんですよね~
「そろそろ戻るよ」
ライトさんは私達四人に目配せするとルナマリアの席の横に立つ
「次はいつお見えになるの?」
「えっと…2日後かな」
地球の時間が動いていない事を計算して予定を決める
「わかりましたわ。次からは門番に声をかけていただける?それで入れるように手配しておきますから」
微笑みをライトさんに向け手を差し出した
「?」
「忘れていました。あなた達は騎士ではございませんでしたね。こういう時は甲にくちづけをしてくださりますよう」
ライトさんはテレビか雑誌か確証はないけど今の説明をなにかで見たことがあることを思いだしルナマリアの手を取り唇を合わせた
「ふふっ、ぎこちないですわ」
むぅ……騎土さんニヤニヤしないの!
「式までには何とかするさ。じゃあ」
ライトさんは四人を確認すると鍵に紋章の力を注ぎ込む。すると鍵は弾かれた様に手から離れ光の輪を作ります
横から見ると1センチに満たないそれは宙に浮いている
「心配ですか?大丈夫ですよ。想像した場所に着くだけですから」
顔に出ていましたのですぐわかりましたよ。親が家にいないライトさんの家は都合が良かったです
「先に行くぜ」
興味津々とばかりに騎土さんは光の輪に飛び込み、零華さんは恐々と、私と通った事がある忍ちゃんは普通に入っていった
「ライトさん、お先に」
私も輪をくぐり、ライトさんだけになった。最後に再び会う約束だけ交わし別れる事に
「それじゃ、また」
「ごきげんよう」
ライトさんがくぐると輪は小さくなり消えた




