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偉そうな奴——恵

 さっきからみんな大口を開けて欠伸ばかりしている。ライトさんも手袋で見えないですがこっそり紋章の力でなんとか歩いているのがわかります。手首から光でてますよ


 大通りを抜けて戻るのでは民衆の壁に足止めされるかもしれないと言うことでメイドさんに道を聞き遠回りをして裏道を行く


 さっきも通ったし今度はするすると道を歩けます


 空はかなり明けている。まだ薄い群青色を残していた空がもう綺麗な水色です。じきに完全に日が昇るでしょう。騒がしい夜が終わりましたね





 宿に帰ったとき怪訝な目で見られましたが、主人を相手にしてられるほど睡魔は待ってくれません。部屋に入ると着替えもせずにみんなベッドに倒れ込み爆睡を始めました






 次に起きた時、昼でした。


 昼なのだから食事に来る者も多いのですが騒がしさの質が違うので私は一階の騒音を確認に行こうと思う。


 手早く着替え部屋から出るとライトさんも出てきた。たいした事でなければいいと呟きあいます


 ライトさんは焦げたシャツだけ取り替えていました。やけどは大丈夫でしょうか?シャツで見えません


 庇う様子がないから大丈夫かな……多分。んで、騒ぎを調べに階下を覗いてみると何故かはすぐわかっちゃいました


 何十人かで囲むテーブルにただ一人の女性が見えました。彼女が原因のようですね。見覚えがある。


 うん、お姫様


 一階にはお姫様が一人で席についている。なんで?


 先ほどとは違い動きやすい柔らかなドレスに身を包んでいたが、王族オーラ出過ぎ。誰も近寄りません



 ライトさんと二階の階段の手すりから眺めていると、一分おきにキョロキョロしている


 ここに宿をとっているのは言ってありますが、私達に会いに来るには無防備にもほどがある。一人の兵士も付き添いもいないのだから


 階段を降り、近づいてみると目には涙がうっすら見えます


 人垣の向こうにライトさんを見つけたお姫様は立ち上がり駆けてくる。彼女が一歩進むごとに間にいる人達はライトさんまでの空間を譲り道を開いていった


 そのまま胸に飛び込むとかダメですよ


「あぁ、ライト殿…あぁ、そんな…」


 ライトさんを見つけた事で安心したのか涙が頬を伝い落ちていった


 ライトさんが小さく何か言うと涙の跡を拭いお姫様は手に持った手紙を渡してきた


「拝借いたします」


 民衆の前です。臣下という身分にしておいたほうがいいでしょうね。


 ライトさんは恭しく手紙を受け取り、読み始めた。内容は魔物のボス(こっちでは魔神)が突然現れ、一直線に基地を攻め込んだあと、王様がその凶手にて討たれた事を書き記してあったそうです


 王様が死んだという知らせでした


 人前を避け、ライトさん達の部屋に来る。一国のお姫様に頼られる一騎士に見える光景です。すでに見られてるけど国に遣えてる訳じゃないので変な噂立てたくないらしく部屋に移動します


 寝ていた騎土さんを叩き起こすと扉の前に立たせ人払いをさせ、残る二人は朝食兼昼食をとりにいっているので部屋の中はライトさんとお姫様と私だけです


「で…どうされるんですか?」


 木の椅子にドレスで座っているという奇妙なギャップのある光景を見ながらライトさんが言った


「父王がなくなった以上、私が国をまとめなければ…でも、どうやって?大臣は…駄目…筆頭貴族…?いや辺境伯に相談を……」


「まずは、落ち着かないと、いい案などはでませんよ」


「でも……私、いえ、取り乱して申し訳ありません」


 こうなると、どちらが主でどちらが従なのかわからなくなりますねぇ。父王の存在が彼女を強くさせていたようです


「まず今回の遠征は断念して、一度兵を戻されるのが良いでしょう。城があれでは民衆も安心して生活できない」


 お姫様にするべきことを伝えたライトさん。それはまずは城を治す事だったり、兵を戻すこと。今回の事件でも姫は健在であること。そして王位は姫が継ぐ事である


 よく考えてるなぁ



「なんでそこまでして下さるの?」


「なんでですかね?」


 はぐらかすようにライトさんは窓を開け城を眺める。内部はボロボロだがしっかりとした立派なものでした


 まだ立て直せるから?姫の臣下になったから?


 ただそうするほうが自分達にとって良いと思ったからだそうだ。直感ですね


「さて、昼食を取ったら城を掃除しますよ」


 同時に部屋に二人と騎土さんがお腹を刺激する匂いが入ってくる。手に持っていた料理を女部屋からもテーブルを運んで食べることにしました


「ライトに恵、零華、鋼介に忍ね」


 テーブルの用紙に名前をそれぞれ書き込んでいる。ペンの動きまで優雅だなぁ。お姫様の客員剣士としての証明書と権利書だ。来るまでに作成してたんでしょうね~。仕事早いな。


 書類に抜けていた名前の欄を埋めていった。そこには関所の無税通過や国立の建物からの物資の調達の権利を有すると書いてある


 なにこれ?スゴ!


「基本好きに行動していいわ。何処に行くかだけ連絡して」


 そして最後にルナマリア・ベルド・エルゲニアと書き記した。私達はお姫様の名前を初めて知ったことは秘密にしておいた。


「さて、これであなたたちは名目上、私の臣下よ。ともに戦いましょう」


 ライトさんは椅子の前に膝をつき、丸められた証書を受けとる。騎士の礼儀なんて知らないライトさんがそんな行動を取ったのはお姫様の高貴さと威厳かな


この先、また泣くかもしれないけど新しい仲間を見つけたとお姫様は、まだやっていけると思ったと率直な気持ちを教えてくれました


 一人で帰っては民に示しが付かないからとライトさんに供を命じ、ライトさん所有の馬を使い一緒に城へ戻る事になった


 お姫様はどうやら勝手に出てきたようで、なんと馬で来たらしい。いくら急いでいるからといって護衛も着けず無茶をする


 ライトさんを先頭に部屋を出るとお姫様を一目見ようと見物人が階段の両脇から入り口迄の道を作っていた


 不安だって言ってたわりに人気あるなぁ


 部屋を出たお姫様は先ほどの涙目が嘘だったかの様に笑顔になり、手を振っている。私達はまるで有名人のSPの様にお姫様を囲み先導していく


 私達が通り終えた空間はすぐさま無くなり、一定の距離以上は進んで来ない。私達には言葉の雨が飛んでくる。だいたいは羨望、お姫様には喜びと期待の言葉


「今後もお願いする事になります。もっと堂々としてください」


 五人にだけ聞こえる様に言うが、ライトさん以外は慌てていたり、緊張したりしている


 そんなのいきなりは無理だよ!


 入り口を抜け大通りに出ると、本当に酷い有り様だった。街中の人間が集まったかの様に辺り一面、人で埋まっている


 これにはライトさんも圧倒されてましたがお姫様は気にした様子もなく、馬に―姫様の馬だと言うことで少しでも役に立とうとしたのか宿の小間使いの少年が持ってきた足場を使ってた―跨がった


 少しドレスが変形していたが気にしていない様子


 ライトさんも遅れて馬に跨がり出発を告げるとモーゼ―モーゼってわかるかな?―の如く民衆は通る道を開いていった


「みんな、修復に必要な人材と服飾関係の人を集めてきてくれ。」


 そう頼み宿を後にすると馬一頭分下がりお姫様の後を行きました


 私達は群衆が切れるまで左右後ろを守ります。急がず手を振りながら、優雅さも振り撒くお姫様にはこれからたくさんの仕事や障害がある


 気丈に振る舞うのもそうなのだろうとお姫様の境遇を思っているとライトさんと小声で何か話してます


「嫌ね。今、こんな気分ではないのに………本当は思ったより困惑してるの……何も知らない民衆はついて来てくれるのかしら……ねぇライト、あなたたちは…

…」


 お城はまだ遠く本音を洩らすにはまだ早い事に気付いたのはその直後で、唇を噛みしめ前を向き直しました


「俺達は貴方が諦めたら去ります。でも諦めない限り手伝いますよ。ま、出来る限りですがね」


 そう言葉をかけるライトさん。お姫様は驚いた後、営業用の笑顔から自然な笑顔に変わるのが見えた。もしかしてライトさん、お姫様に?


「ライト、本音を言ってくれるのはあなただけよ。みな本当に心から思っているのかわからない中、あなたの言葉はハッキリしていて嬉しいわ」


 お姫様は何かを考えているようでお城を眺めた後、恥ずかしそうにライトさんに言った


「臣下ではなく……友人になって欲しいわ。ライト」


 びっくりしたぁ!告白かと思ったじゃないですかぁ!ライトさんもなにドキッとしてるんですか!もう!


「分かりました、姫さ…」


 お姫様は顔を振り真っ直ぐな目を向ける。なんて綺麗な瞳だろう


「分かった、ルナマリア…よ」


 指を立ててはにかんだお姫様。綺麗なだけじゃないんだ。可愛いところもたくさんあるなぁ。女として負けられ……


 ……ん?なんで負けられないの?勝負とかしてないのに…





—————————————————


 さて、ルナマリアと友人になったとはいえ形は臣下です。召し使いです。お供です


。忘れませんよ。他の人の前では礼儀を尽くさなければならない事を忘れない。ライトさんに言いつけられます


 鋼介さんは大丈夫でしょうか?心中でそう思いながら城の正門を潜る二人を見送ります


 城内には十人程の兵士さん―襲撃時他の出口から出た人達です―と数十人のメイドさんがそれぞれに作業を行っていた。城を出る時に来た武芸者っぽい人達は食事に出てるらしい。間の悪い人達だなぁ


 正門を潜ると視線が飛んでくると同時に次々に駆け付けては左右に拡がり道を作りルナマリアの帰城を向かえてくれてます。どうやらルナマリアの外出はバレていなかったみたいですね


「あぁ、姫様…」


「みんな持ち場に戻って仕事を再開なさい。ライトあなたは応接室で待ってて。リアン、来て」


 一人だけ侍女を呼びつけ供をさせる。リアンって娘はお付きのメイドさんかな?


 ライトさんは指示通り応接室にいくようです。二人の後ろをゆっくりと歩いていく


「ライト、すぐ行くから待ってて」


 さて、私達はお使いに行きますか。でもかライトさんと二人にさせると何故かモヤッとします


 さっさと行って戻ってきましょう


 みんなで話し合った結果私は服屋と布屋(仕立て屋)に―—くじで決めましたよ―—向かいます


 ふっふっふっ……その二つは目の前でしたぁ。やったね


 店に入り説明します。料金とかはわからないからまずは一度見て欲しいと言いました


 ここの店だけじゃ組合がどうとか言い出しましたので、先に行くから組合で話して来るよう言いました


 別に全部じゃ無いんだけどな…応急措置したいだけだしさ。お城には王宮専門の店とかあると思うんだよね


 ま、いっか。次に仕立て屋にも行ってさっさとお城に戻ろっと


 で、また待たされそうだし先に向かいます。城内に入るんですが門番さんはいません。すぃっと通り抜け進むと兵隊さんが大荷物を運んでいました


 大丈夫?前見えてる?と、まあ見とがめられずそのまま階段へ向かいます。確か応接室…あ、ラッキー!ライトさんめっけ


 …何か悩んでる?結構待ってる感じ?

 ちょっと待っててみようかな


「………」


 待つ時間が長いといろいろと考えてしまうみたいです


「ルナマリアには話しておくべきか?」


 ああ。私達の正体の事ですね。まぁライトさんに全て任せてますからばらしても文句無いですからね。お互いに譲歩も必要になるだろうし言ったほうがいいかも


「うん」


 決心をしたみたいですね。スッキリした顔をしています


 ルナマリアを待ってる間、窓の外を眺めていると兵士やメイドが作業をしているのが見てました


「あなた達が守った人達よ」


 声のしたほうには光沢のある白とそれを際立たせるための薄い水色をあしらったドレスに身を包んだルナマリアがいた。後ろにはリアンさんがぴったりくっついてる


 ライトさんはルナマリアに言ってリアンさんを下がらせた。二人になったのはこれから話す内容を余り知らせないためです。やましい事はないのて安心してください。何かあったら飛び出しますから


「ひ…ルナマリア。やっぱり言っておこうと思う。俺達五人は―」


 信じる、信じないに関係無く、ライトさんは真実を伝える事にした。それは自分を友人と信じてくれた礼と今後の行動に左右するから


 もちろんルナマリアへの協力もその中に入るからです


「夢の住人…紋章…神」


 ライトさんの言う単語を確かめるように繰り返し言った


「そう…今この世界はそんな事になっているのね」


 魔神がいるのでは滅亡の日を待たなくてとも滅ぼされるだろう。ルナマリアもそう思ったのか深く沈んだ様子はない。倒さなければ未来はないということだし


 眼を瞑り溜息ルナマリアは結論を出した


「私たちは互いの力が必要よ。目的が同じなら世界が違っても構わないわ」


 意外と懐も深いみたい。物怖じもしていない。私なら何言ってんのってなると思う


「それならいいさ」


 ライトさんはこれで話は終わりとばかりに城をでようとルナマリアに背を向ける


「最後にこれを持ってみんなに指示してきて……リアン!」


「はい」


 おお…気配感じなかったよ


「ライトに一任してますが、困ったり、金銭のやりとりには手を貸してあげて」


「わかりました」


 リアンさんは深々と一礼


「私はこれから自分の仕事に入るので、後は任せます」


 降りていくと階下から兵士さんが階段を上がってくる。きっと王様の訃報を届けた人だな。


 ルナマリアに指示をあおいでます。指示の内容はおおよそ分かる。ライトさんがさっき教えた撤退命令だ


 命令を受けた兵士さんはまたライトさんとすれ違い先に中庭に出ていくと馬を走らせた


「さ、私達も行きましょう」


―ビクッ


「いたのか…出てきたらいいじゃないか?」


「考え事してると思ってたらルナマリアが来て出るタイミングなくて」


 ん?下の方で声がする


「私はエリャソーナ・ヤーツ男爵だ!姫殿下をお助けしたという冒険者よ!出てこい!私は仲間と一緒にいるぞ!このエリャソーナ・ヤーツ男爵逃げも隠れもせん」


「……なんですかね?お礼でもくれるんでしょうか?」


「そりゃないよ。そうだな……ただ早く城について姫殿下にいいところを見せたつもりだろうが、私なら姫に危険に合わせる事無く倒した筈なのに何一般人がしゃしゃり出てきたのか……的な文句だと思うよ。」



 なら私達より先に来て解決してくれればライトさんも怪我せずに済んだのに。文句言いにわざわざ大声だしてんの?


 それよりも逃げも隠れもせんってどういうことだろ?使い方おかしいよね?


 中央階段を降り中庭に着くと兵士が一人ひざまづいていた。あのワニの時いた人だ。仲間ってこの人の事なのかな?その前には金髪のゴテゴテな服を着たTHE貴族らしき男の人がいた。


 ぽっちゃり&カツラだね。カツラはそんなに質が良くなさそう。風が吹くたびにプカプカ浮いて薄い部分が丸見えになってる。良ければアデ○ンスを紹介したい。


 体型は太いお腹に短い手足。全体的に丸い輪郭……もう太ってるで良かったかも。ダイエットを推奨するよ。蒟蒻なんてどうだろう?喉詰めそうだしやめとく?


「お前が姫を助けた冒険者か。今回の事分かっておるだろうな?貴様らは必死に早く城について姫殿下にいいところを見せたつもりだろうが、私なら姫に危険に合わせる事無く倒した筈なのに何を勘違いして一般人がしゃしゃり出てきてるのか……恥を知れ。しかも姫殿下の客になるという傲慢さ。もはや目に留めておくのも不愉快だ。去れ!」


 ライトさん読み凄過ぎでしょう。前半てかほぼ一緒じゃないですか!


「……で?俺達はまだ仕事があるんだけど引き継いでくださるって事でいいのかな?買い物に商人招集、魔物の死体運びに解体、掃除、他にもあるかも知れないけどそういうならエリャソーナ・ヤーツ男爵に任せたって言って帰りますけど?五人分の働き頼みますね。お一人で来られてるみたいですけど」


「あ、そうなんですか?代わっていただいてありがとうございますエリャソーナ・ヤーツ男爵。いやぁ、流石は貴族様。姫殿下の為になら労働を厭わないとは、貴族の中の貴族ですね?いやぁなんだかんだ言って疲れてたんで助かります。」


 なんだ。口じゃあ酷い事言ってるのに代わってやるから帰って休めだなんて優しい人だなぁ。ツンデレなの?


「き、貴様ら!人を労働者扱いしおって!」


 あれ?


 急に顔を真っ赤にさせて怒り出すエリャソーナ・ヤーツ男爵。労働者ってなんでそうなるのかな?ただ後をお願いしますってだけなのに。やってくれるんじゃないの?


「いや、帰れって言ったじゃないですか?やらないと困るの姫様なんでちゃんと引き継がないと迷惑かかるでしょう?」


「だまれー!!!!黙れ黙れ黙れ黙れー!!!その良く動く口を切り落としてやる!」


 わっ!いきなり剣を抜いてきちゃった。なんなの?貴族って意味わかんないよー!


「下がってろ」


 言われた通りに下がるとライトさんは近くにあった木の棒を拾いあげると手袋をつけた。紋章を発動させる


 ふむ、このエリャソーナ・ヤーツ男爵はコボルト程度の力しかないな。もしワニに前に出たら一瞬で死んじゃったんじゃないかなぁ


 「どぅりぃやあぁぁぁ」


 変な掛け声だなぁ。あ、剣の構え方が私に似ててやだなぁ


 私が見てる間ずっと避ける事に徹するライトさん。少しずつ壁に向かって下がって行きます


「ククッ!ほらどうした!何故手出しせん?大方殿下の近衛が致命傷を与えた所で横取りしたんだろう!この薄汚い冒険者風情が!」


「……………………」


「何か言ったらどうだぁ!」


 大きく振りかぶり真っ直ぐ振り下ろすヤーツ男爵。さらに下がってそれを躱すと壁にぶつかるライトさん。


 追い詰められましたが焦りの色はありません。むしろこの状況を待っていたようです。。ヤーツ男爵が中央階段への入り口に背を向ける形を


「もう逃げ場は無いぞ?覚悟はいいな?」


「あー、やばいな」


 ライトさん。棒読みはやめましょうよ。ヤーツ男爵の怒りがさらに増しましたよ


「死ねぇ!!」


 死ねぇって……なんで殺しに来てんの?貴族って怖い


 ライトさんに向かって滅多打ちするヤーツ男爵。でも紋章を使うライトさんにはゆっくりに見えているでしょう。現にしっかり打ち落としてるし。それでもまぁ木刀は削れていく訳で、だんだんと剣先が削れていってる。


 それを分かっているからか剣を止めないヤーツ男爵。ニヤニヤと底意地の悪い笑顔を浮かべている。でもなんで剣先だけのかは気づいていない。


 「ほれ!これでその無様な木刀は使えんぞ!」


 分かっていたけど木刀が折れてしまった。砕け、飛んでいった剣先。それを唖然と見るライトさん……なわけが無くただ単純に持つ所を変えて構え直した。


 仕切り直しに顔を真っ赤に青筋を浮かばせる男爵は鬼の形相をしている。ただこのお遊びはおしまいです。だって


「お疲れ様ですね。ヤーツ男爵。」


「邪魔をするな!……ぁ」


 ルナマリア殿下が来ちゃったんだから。


 ライトさんが狙っていたのはこれですね。自分が勝っちゃ余計面倒な事に巻き込まれるし、だからと言って負けたり怪我はしたくない。時間を稼いでルナマリアが来るのを待つことにしたんですよね。

 ヤーツ男爵に入り口に背中を向けさせたのはルナマリアが来ることに気づかれないように、それでいて現行犯である状況を作り出す為ですか。


「邪魔ってなにかしらね?それで?実剣まで抜いて何をしてらしたのかしら?私の騎士に?」


「へっ?騎士……?こいつが?いえ、こやつが?」


 あまり変わってないと思うんだけどさ。国語もっと勉強し直した方がいいよ。


「お気をつけくださいね?近日中に彼らに何かあったらヤーツ男爵を疑ってしまいそうですから。もちろん貴方の国への忠誠を信じておりますのでそんな事にはならないでしょうが……」


「も、もちろんですとも。私の忠誠が揺るぐ訳がありませんぞ。これも稽古……そう稽古をつけておったのですよ!でわな!君!頑張れよ!それでは殿下!わたすはこれで!!」


 そそくさと去って行くエリャソーナ・ヤーツ男爵。なんかどっと疲れちゃった。しかも最後わたすになってたし


「助かったよ」


「ごめんなさいね。ああいう貴族がいるって伝えるの忘れてたわ」


「いいよ。これでやっと仕事始められるよ。無駄に疲れたけど。」


 同時に溜息をつく二人。顔を見合わせるとまた後でと無言で通じ別れて行った



 …………………………えっ?付き合ってんのってぐらいの意思の疎通何?



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