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決着——恵

 それじゃ…いきます!……が、私はさっきほどの力は残ってないです。


 火の玉も形は悪く速さもないので、ここはライトさんの真似をします。転がってる石を投げつけ作戦です。もちろん紋章の力を込めてますのであっついですよ


 と言うわけでえいやぁ!


 ガスッという音、でもそれは石が弾かれた音でした。……意外と効きませんね。次々投げるも鬱陶しいからか顔を振っていなし始めました


 ここは極悪ですが目を狙いましょう。これなら少しは注意を払わずにはいられないでしょう


 後ろじゃ右手のひらを左手で支え呪文を唱え始めたお姫様


「『清め守るは青の水


 流れを変え、たゆたう姿を彼が身に委ねよ』」


 まだ呪文を唱えただけで発動していないのに私はとうとう一つずつの火の玉を投げるようになってしまった。キツいな……お願いライトさん!


「限界だな。頼むぜ、姫様」


 ライトさんが駆け出すと同時に零華さんは弓を引き矢を構えた。まだライトさんの攻撃範囲外だ


 せめて後数秒の余裕が欲しい


 私は気を引くために一際大きな声をあげ、炎を射ちますが。威力がないのはバレているようで、一瞥するとライトさんを向き直した


 くっ…すみません


「う、うぉぉぉぉぉ!」


 失敗かと思ったとき、今までいなかった兵士さんが槍でワニの右肩の傷を突き、ここぞとばかりに声を張る。


 いいとこ取り!でも許す!


「どうだ!こ、この魔物め!」


 傷口を攻撃されたワニは手に持っていた斧を落とし、左手で肩を押さえた。


 怯んだ様子を見て零華さんも氷の矢を飛ばした。やっぱり勢いは……駄目だ


 あ…いえ…いきなり上手くなるわけないですから。


 心の中で謝りつつ、続いて忍ちゃんの風の紋章で方向修正と加速を行った。アシストのおかげで狭い額を正確に穿つ。


 忍ちゃんやるぅ!


 2つの紋章術で矢は額の皮も貫き、頭を氷づけにすると姫様の呪文は完成していないけどライトさんは額の矢を目掛け飛ぶ。そこから斬るみたいだ


 ―ビシッ


 ヒビが入る音がした。次の瞬間、氷の呪縛を解いて顎が開き炎を吐いてくる。大した威力はないですが至近距離にいるライトさんくらいは道ずれにできるでしょう


 くぅっ。魔力ももうない。体力はあるけど距離がありすぎる。ライトさんは既に飛んでいて、身動きがとれない。どうしよう。


 せめてダメージを減らそうと体制を変えようと空中で体をねじるライトさん。天井を蹴り、逆さ落としで突きを構え、炎ごと貫くよう紋章術を剣先に集中したみたい



「うおぉぉ!!!」


 攻撃と防御を合わせた一本の金の槍となってワニに最後の一撃を加えました。落雷を思わせるような低く鈍い、それでいて鼓膜まで響く音が鳴り、少し間があいて廊下が揺れました


 ついに強固な魔物が倒れ、短い静寂、次に私達は歓声が上げました


 ライトさんは鎧の上で振り返る。見える体は湯気が出ていた。間一髪、お姫様の水の魔法が発動し炎からライトさんを守った証だった。おかげでライトさんは火傷を増やすことはなかった。


 お姫様なかなかやりますね。


「あ~疲れた」


 ワニのお腹から降り剣を収めると瓦礫を椅子がわりに腰を降ろすライトさん


 忍ちゃん、零華さんはライトさんに駆け寄る。安堵と喜びの表情を満載してますよ。お姫様は腰が抜けたのか、その場に座り込んでいますね


「また無理して…怒るよ」


 忍ちゃんはそう言いながらも、薬―昨日の食後にも訓練の傷を癒してたらしいです。寝てて知りませんでした―を塗っていました


「今回はちゃんとサポートできたかな?役にたてたよね」


 零華さんは塗り終えた腕に布を巻いてアイシングをしてあげてます


 私も行きましょうか。


「お疲れ。すまなかったな」


「お疲れさま。いえ、ライトさんこそご無事で」


 私達は微笑みを交わしお互いの労をいたわった


「おっ?おっ?」


 零華さんが私達を交互に見る。なんですか?


 まだ話したいこともありますが人を待たしているのは忘れてません。ライトさんは疲れた体に鞭を打ち立ち上がる


「さて、鋼介を迎えに行くか」


 断る理由はありません。ライトさんについて後ろを歩きます。採光用の窓から光が差し込んできます


 外はもう明るいや。今日の夜、自分たちの世界へ帰る日です。本当は訓練するはずでしたが、これほどの事件があったのだから今日くらい何もしないで自由にしようとライトさんは提案してくれた。賛成しますよ


「お待ちなさい!」


 不意に高い声が廊下を通り私達にストップをかける。声の主はやはりお姫様。腰は抜けたままだけど顔は平静を取り戻してます


 腰の抜けてるお姫様はそれなりの威厳ある態度で声をあげた。気品はあるけと格好はつかないけどね


「あなた達には聞きたい事が…」


「後にしてもらえるか?仲間が待ってるんでね」


 ライトさんは言葉を遮りお姫様に構わず、階段を降りていく。お姫様は何か言いたげでしたが、追いかけられないので足を引きずって這って階段近くまで来てライトさんを見つめていた


「よかったんですか?お姫様無視して」


「鋼介と合流してからな」


 魔物も人もいない城をゆっくりおります。軽くため息。うぅ~また魔力無いです。眠いです。辛いです。でももう少しだから頑張ろう


 とにかくもう警戒の必要はないのでそのまま中庭を抜けようとすると正門あたりから騎土さん以外の声がする


 正門は石の壁はなく、閂がかけられただけの状態でした。その近くには鋼介さんと誰かの頭があった


「よ~ライト、こいつら今回の真犯人だぜ。」


 犯人と呼んだお年寄りと男性を指さし、じろりと睨む


 お年寄りの方は紫色の帽子に剣に水色の蛇が巻きついた紋章をつけている。恐らく王家の紋章なのだろうな。なんか詰所にかかってた気がするし


 とりあえず、かなりの高位の人間だとわかる


 もう一人はすぐわかる。近衛兵の鎧を着ていたからね


「ほら、話せよ」


 紋章術で埋めたのでしょう、蟻地獄状の穴に埋れた頭だけのお年寄りの額を指で弾いた。老人虐待じゃないのかな?でも悪い人だし……でもでもライトさんも止めなかったし……うーん


「うぐぐ…」


 さんは砂を持ってきてお年寄りの顔の前に山を作る。そのままなら吹けば飛ぶでしょう。でも鋼介さんは水筒を取り出すと砂にかけて固めていった


 初めは首、次に顎が砂に埋まり口にかかろうかという時命が惜しくなったのか砂攻めが効いたのか白状し始めた。


 っていうか言うんだ?


「この街を見たか?たいした政治もせず、戦も弱い!王がいなければ、あの若輩者の姫が後を継ぐときた。他の継承者もひよっこばかりだからな!わしがこの国を治めた方が必ずうまくいく!」


 紫色の衣服やセリフを聞いた限り、このお年寄りはきっと大臣さんだね。つまり今回の事件はクーデターだったのです


「それには二人が邪魔だったのだ。だから二人に刺客を差し向けたのだ」


 二人?


「王様にも?」


 ライトさんが表情を変えた。私達は理解してざわめく。さっきの魔物でも相当苦戦した。それが本当なら王様は……でも兵士達がいるんじゃ


「そうだ!今ごろ、魔神に攻められ大騒ぎだ。誰が騒ぎを静めるのだ?儂しかおるまい。だから早く出さんか?」


 は…魔神!ライトさんも目を開いて驚いてる。魔神が近くにいる?


「お黙りなさい」


 五人を割って入ってきたお姫様は砂を大臣にかけ埋める。あの……死んじゃうよ?


「魔物と手を組む輩などに国は任せられません。あなた、この者を牢へ」


 ついてきていた兵士さんに命令すると皆に背を向けた


「まだ…亡くなられたと決まった訳ではありません」


 手を強く握り締め、突然の訃報(仮)に耐えている…んだと思う


「あなた達、今度こそ話してもらうわよ」


 空はもう明るくなっている。早く休みたいんだけどなぁ


「それより姫様…その…足が…」


 ライトさんが困ったように目をそらして言ってるけどしっかり見ましたよね?足が…とか言ってたけど腰の破けた部分まで…


 お姫様の破れてたスカートから見えた薄い水色のパンツをしっかりと。それどころか水魔法で濡れてたからかブラも見えてたし。


 ……でかっ!ニーナといい、お姫様といいどうやったらそんな大きさになるんだろう?教えてほしい


「………」


 お姫様は無言で破れた場所をタオルを巻くように直して何事も無かったかのように気持ちを立て直した。濡れた服はマントを被って隠した


 でも恥ずかしかったですよね。わかりますよ。耳まで真っ赤です


話をする前に鋼介さんが正門を開くと、脱出していたメイドさん達が心配そうな顔で覗いてきた


 ずっと門前にいたのかな?膝には砂がついていた。お姫様の無事を祈っていたのかもしれない


 メイドさんはお姫様の汚れた顔や腕をみるやいなや、自前の清潔なハンカチで拭き始めた。姫様、姫様と何度も呟きながら涙も流していた


 後ろの方には今更ながら武器を持った集団がこちらに向かって走ってくる。敵?


「姫様ー!今お助けをー!」


 遅っ!今来てたら姫様死んじゃってるよ!何してたの?


 集団が正門を抜け中庭を目指して走って、途中でお姫様に気づき方向転換して来た。ピ○ミン思い出すなぁ


 私達は巻き込まれないように10m以上下がって成り行きを見ていた。メイドの壁を押しつぶしそうになりながらも話を聞いた武芸者達は残党狩りの為にお城へ入っていった


「あなた達、ありがとう。もういいわ」


 お姫様はメイドの壁から抜け、正門で集まっていた私達に近寄る。もちろんメイドもごっそりこちらに動いてくる。とりあえず危険視するのはやめて欲しいなぁ


「とりあえず、礼は言うわ。あなた…ライトって呼ばれてたわね。あなたがリーダー?」


「…ええ」


 お姫様はライトさんを上から下まで値踏みするかのように眺めてる。それなりの格好はしているから貴族に見えなくもないわね……とか思ってそう


「一応聞くけど貴族じゃ無いわよね?見たこと無いわ」


「ええ」


「神官…には見えないわね」


 鋼介さんを見ると、また干し肉をかじっているし。何枚持ってるのかな?一枚くれないかな?


「エルフ…でもないわね」


 不殺生(魔物を除く)の教会関係者が肉を食べるはずがないし、彼を見て王族や神官には絶対みえないだろうし


 ましてや亜人に見られてたらショック


「あなた達の親は?」


「いない」


 この世界にはという意味だったんですが、知る由もないお姫様は死んだものだと受け取ったようです


 ごめんなさいと素直に言った。死んでませんよー


「と言うことは…出生不明なのね。気の毒に…」


 違いますよー


 横では掘り出された大臣と近衛兵が連行されていく。お姫様は歯を噛みしめ、大臣の帽子を取り上げた


「それで?あなた達はこれからどうするの?」


 寝たい。うん寝たいです。マジでです


「とりあえず今日は宿に帰るつもりです。夜中に出てきたから逃げたと思われるかもしれないので」


「じゃなくて、今後の活動よ。あれほどの腕なんだからどこかの凄腕傭兵団か名のある冒険者のチームに入ってるんでしょ?お礼の事もあるし」


 ライトさんはかぶりを振る。


「俺達は俺達だけです。目的の達成の為だからお礼も別にいりません。いや、魔物分だけもらいましょうか。」


 とりあえずライトさんは魔神を倒す旅をしていると簡単に説明した。紋章術の事は生まれつきでわからないと言っていたし口止めもした


「それなら、私があなた達を雇えない?目的も同じなら作戦や戦略の幅が拡がるわ。もちろん勝つ可能性もね。どう?冒険者ギルドよりも優遇するわよ」


「どうする?」


 ギルド自体はまだ加入してないから貰えるのは魔物の素材分だけって事だし今日の分だけならどっちでも同じかな?


 ライトさんは後ろに並んでいる仲間に問いかけた。姫様に雇われる以上、勝手な行動はできなくなります。優遇の度合いもよく分からないですしね


 なにより忘れていたんですが……もうすぐテストがあるので一旦帰る必要があるんですよね~テスト嫌い……


「ライトが決めろよ」


 鋼介さんはあまり興味なさげにいった。みんなも異論はなさそうだ。私も任せてしまおう


 結果条件付きだけど了承し膝をついたライトさん。そういうのも似合うなぁ


「分かりました。従いましょう」


 お姫様は今回のクーデターの件の事後処理。ライトさんに姫直属の客員剣士と私達にその一行という肩書きを付ける作業、その二つを始めるというので正式に余裕のある日に改めて来ることと本日、昼にもう一度出頭する事を伝え宿に帰らされた



 はぁ〜。お疲れ様でした。

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