真夜中の異変——恵
私が着替えの間に二人は隣の部屋に出向きノックしている。夕食に向かうことをしらせているんだろうな
私は汚れた服を払い、簡素な服に着替える。
……パンツはどうしようかな? なんだかんだで汗もかいてるし、埃だってついてるよね……
よしっ!こんな時こそちょっと高級な店で買った赤のパンツ (金貨六枚シルク製)だ。
普段は銀貨三枚程の無地のパンツです。カボチャパンツじゃありませんよ。
初日に履いてたやつも洗いつつ履いてますけど次履く時は洗濯機で洗ってから履きたいですのでここはおニューで行きますよ。
さすがに食堂に剣を持って行く必要はありませんね。ベッドに立て掛けておきます。食べるだけなんで服は適当にして早く合流しましょう
扉を開けると皆揃っていた。ライトさんも着替えていた。ちゃんと着替えておいて良かった
「お待たせしました」
私達は一階にある食堂で夕食をとる。昨日と違い、ちゃんと注文できる時間だよ
真四角のテーブルに今日のチームで左右に分かれて座る。どちらが疲れているかは一目瞭然でした。
私達は二人ともグッタリとしてるけど三人は普通かな。私達は疲れたのもそうだけど魔力を使い気が抜けたのもあります。なので私はあまり話しに加わらず(加われず)、食べ、ときおりうなずくのが限界でした
「明日の晩は帰るんだし訓練は午前中だけにしよう」
零華さんは…三人は余り疲れていなさそうだった。訓練の様子を聞いてみるが少し眠くなっては休憩していたんだって
それを繰り返し夕方前には宿にいたようです。三人が別々に思い思いにやってただけだって。私達とは全然違うなぁ
「…明日はみんなでやろう」
零華さん達は余り悪びれた様子はなく、忍ちゃんだけが気落ちしていた。根が真面目な忍ちゃん。それでも魔法の特訓はやっていたけど、歳上の言うことは逆らわなかった。帰るときは素直に帰ってきたそうです
「兄さん達はハードにやってたのね」
顔や手、腕にも痕があるもんね。ごめんね……お兄さんを傷つけちゃって
「あとで…屋に行っておくわ」
ん?どこって言ったの?あぁ……眠いな。
水のを入ったコップを持ち一気に飲むライトさん
「明日はしっかりとやってもらうぞ。時間はいくらでもあるわけじゃないをんだからな」
次に街の情報を聞く。零華さん達に任せたのは街の事でしたが意外と魔物との戦の話しが多かった
まず街の中には兵士がいるが城内には、ほとんどいないため防衛力はないに等しいらしいです。城には今、お姫様しかいないんだって
今施政を行っているのはそのお姫様で、なんとかやっているが心もとないことも聞けた。
戦争になった場合、兵力のほとんどは前線に割いているため、エルゲニア城の有事の際はこの街の人間も戦うことになるかもしれないなんてことも話に上がっている
城下の住民の不安が大きいのが分かりました。詰所では戦の事しか聞けませんでしたが、街の情報のほうが色々聞けた気がしますね
「なるほど。本気で倒す気だな」
「この国の王族は水系の魔法使いらしいわ」
やはり王族は確実に魔法が使えるようですね。一般人が知っているのだからロレンスさんの話は合っていたことになる
「水使いがどうしてこんな平原で戦う気になったんだ?」
ライトさんは悩んでますが、途中で止めました。ここは異世界です。普通じゃ考えられないような戦い方もあるかもしれませんからね
全線基地のある場所を地図で確認すると辺りは平原、砂地で構成されていて河や海など近くにはないから戦略的に有利な所はありません。兵力のみで勝つ気なのでしょうか?
「ま、情報はこんなとこだな」
騎土さんは食べ終わり食後の一杯を飲んでいる。私はというとコップに手をかけたまま動けません
「わかった。今日はこのくらいにしよう」
地図をたたみ、席を立ち解散する
「ほら、恵ちゃん。起きて」
ぅ~眠い~。私達の部屋は二階です……遠いなぁ……あぁ……足もダルいよぅ
二人が両手を引いてくれて何とか二階の部屋へ。なんか遠目にライトさんが見てたような……
「………の…お金…」
「まだ……ってるで……」
二人の声が遠い。何か喋ってるけどわからないや
「恵ちゃんは疲れてるみたいだから寝ててね」
しばらくすると零華さんと忍ちゃんが部屋から出ていった。寝間着じゃなかったな…どこいくんだろ?
私はなんとか着替えを始めます。ブラウスを脱いでスカートを脱ぎます。スパッツも靴下も脱ぎます。ブラも……もういいか……
ブラを脱ぎ捨て最後の一枚、パンツは……………………履いておこう。準生まれたままの姿になりさっと身体を拭く
はぁ……気持ちいー……寝間着…どこだっけ?
あふ……もうだめ…ベッド
―――――――――—————————
その晩、夜の闇が深くなり、月だけが仄かに輝き、全てが寝静まる頃、街の外には人ならざる者の集団があった
それは城の裏手側の森の中、街とは反対側に集まっていたため誰にも知られずに魔物達は群れをなしている
魔物達は雄叫びを上げず、ただ待っていた。闇の中、その瞳だけがギラギラと光っている
街の人の不安は当たった
戦力不足を知ったかのような奇襲だった。月が隠れると空を昇るように一気に城を目指して城壁を駆け上がっていく
闇の中、それらはワニの形の影を映しては城の窓やテラスから城内へ侵入していく
壁を登る影は無数にあった
見張りは壁を登る物を見つけたが既に遅く、その多くが城内に攻めていってるのが月明かりによって映し出されていた
兵士は警鐘を鳴らし危険を知らせ姫の元へ向かう。階下からは同僚の怒号やメイドの悲鳴も聞こえる
急ぎ物見塔を降り姫の寝室の扉を叩く
「深夜のご無礼お許し下さい!緊急事態です!」
扉の外から中に聞こえるよう大きな声で叫ぶように報告をする
「姫殿下、魔物の襲撃です!現在城内の者で対抗しています。先導いたしますのでどうか避難を」
扉が開き中から姫と呼ばれたまだ顔に幼さを残す少女が顔を覗かせた。その姿は海のように青い髪と形の整った鼻、人を惹き付ける目にそれを治める端整な輪郭。そして頭頂部にはティアラがのせられている
それらを確認した兵士は急ぐように訴えるが何も返事は聞こえない。それどころか階下では猛る声や悲鳴の入りまじる声がさっきよりも近く聞こえる
「みんなが戦っている間に逃げろと?」
目には戦う意思が宿っている。姫と呼ばれた彼女も階下に耳を澄まし情報を得ようとしていた
何事かと廊下を駆け付けてきた女中に服を用意するよう申し付け自分は部屋のベッドに向かった
「むざむざ城をあけ渡せと言うのですか?」
枕の下から細い剣を取り出すと女中が服を持って少女を取り囲む。兵士は真下を向くと同時に着替えを始めた
「あなたは戦えない者達を集めて逃がしなさい。城下の戦士団、ギルドの冒険者に応援を求めるのよ。」
着替えながら背中越しに指示を出す。
「リアン、貴女はメイド達を集めて下を目指しなさい。中央階段は使ってはだめよ」
「御意」
姫は寝間着用に着ていた薄いドレスを脱ぎ、少し厚い生地でできた王族の戦着を着た。その上から肩当てとマントを着けるとリアンと呼ばれた女中は一礼し部屋を後にした。
「父様のいない間は私が王国を守る。街を守る。民も守る。それが王族たる私の役目でありプライドよ」
着替えの終わった姫は兵士の指揮を取りに部屋を後にする
「父様…私に力をお貸しください…」
―――――――――――――――
「なに?」
一番早く寝たから、その分早く起き、街の物音や城から聞こえる警鐘にいち早く気付くことが出来た。まず窓の外を見る
辺りの包む空気感がおかしい。宿に泊まっている他の客も家から出てきた人も城を見上げて動かない
街中には聞こえるほどの鐘もなっている。私は城に何かあったことを理解した
「二人とも起きて!」
二人が眠るベッドの横に立ち、起きるまで揺することにした。ブラをつけていない私の成長中の胸も一緒に揺れる。
まずは忍ちゃんだ。寝相がとても良くベッドシーツが全く乱れていない。生きてる?
私は肩の辺りに手を置き揺らすとすぐに起きた。この辺りはライトさんと同じだ。パチっと目が開いて起きた。身体を起こすと太ももにシーツが落ち脇の隙間からぽっちが見えた。寝る時はやっぱりブラを外すよね
「忍ちゃん。起きたなら着替えて!」
「…どうしたの?恵ちゃん」
私の声に零華さんが寝返りを打ってこちらを見る。こちらもノーブラシャツに黒のレースのパンツ (金貨八枚)だけだ
薄いシャツを持ち上げる立派な胸、シャツに浮かぶ二つの点。明らかにアルファベット二つ差があるそれらと自分のものを比べショックを受ける。
「……………………」
違う!ショックは受けるけど今はそれどころじゃない!
事情を説明すると顔色を変え二人とも隣の部屋に走っていく
「冷たぁぁ~!」
悲鳴の直後、カンカンカンカンと金属を叩く音がした。日常ならすごい迷惑な起こし方だなぁ
二人は戻ってくると訓練で着ていた服を掴むと直ぐに着替え始める。ってか二人とも……特に零華さん、そのままの格好で行ったの?
「恵ちゃんも急いで!」
慌てて私も着替えを出し着ていく。戦闘が予想されます。パンツルックで行きますよ。
隣の部屋から足音がやってきます。ライトさんだ。部屋の前で止まりノックが聞こえた
「下で待つ!準備してきてくれ」
扉の外で階段を降りていく音がする。私達も準備を終え部屋を出る。起き抜けに一杯の水を飲んで頭を起こそう
「まず様子を見に行く。状況を見てからだ」
宿の正面は人の壁が出来ているが、なんとか押し退ける。宿の中はともかく主要な道は人で溢れているので裏道を通り城に向かう。土地勘がないのでとりあえず進みます
裏道は明かりがなく暗い。裏道を走ると店の裏なのか雑貨や樽、木箱が並び塞き止めている場所も何ヵ所かあったし、路地はごつごつとした石肌が乱雑に道を作っていて、走るだけでも足の裏に不快感を感じる。全然舗装されてないね
街の裏側に不平等感を感じながらも進むと城を見上げる程近くにつきました
うーん。本当に大きな城ですね
ライトさんは家の屋根に登り騎土さんを引き上げ城内を見るように言った。こっから見えるんだ?すごい視力だなぁ
屋根に登り手を眉間にのせジッと見る騎土さん。その目は一階…二階…、そして最上階までをじっくり観察すると警鐘の理由を告げた
「ワニが一杯だな。二階は交戦中。おっ三階に女の子発見!たぶん、あれお姫様だ。指揮を取ってる」
相変わらずの視力を披露しました。さらに正門を見る
「あっ、ヤバい!城から出てきそうだ!」
騎土さんの目には正門奥の格子状の門を抜け、正門を開けようとするワニの一団が見えた
「俺達で止めるぞ。手袋を忘れるな」
後から屋根に登った全員に向かい指示を出すライトさん。紋章で体を強化し屋根を飛び移りながら正門へと急いだ。
正門まで民衆は来ていなかったので一番近くの建物から門前に降りるとその大きな扉にとりつく
「…開かないな」
押しても引いてもびくともしません僅かに隙間があき、ガタガタ音がなるだけです。内側に閂がかけられているのが隙間から見えました。こんな時間なのだから当たり前なのだけど、今は障害にしかならない
なんだろ?隙間から何か動くものも見えた。ワニはまだ来ていないはず。
「どうしますかライトさん?燃やすには時間が…」
ライトさんは剣を引き抜きそのままの勢いで隙間から刃を通し閂を切り裂いた
わおっ!強引に開けますね
剣を持ったまま正門を押しあけるとそこにはメイド服を着た十数名の女達としんがりを引き受けている兵士だった
困惑や安堵の声がする。どうやらワニはメイドさんを追いかけて来ていたようですね。非戦闘員を狙うなんて最低ですね
メイドさん達は私達五人の合間を抜け市街に入ると入口近くで城とワニが来ないかを気にしている。
他には泣き出したりおろおろしたり、神に祈る人もいました。そのうちの一人が兵士さんに声をかけるとその場を後に市街へ走って行った
「君たちは?」
メイドを守りきった兵士は疲れきった顔をしていますね。閂を動かそうとしていたが女達の力ではどけることはできなかった―—何人も持つところがない―—し兵士が開ける間に襲われても意味がなく困っていたらしい。
見ると全長は5メートルはあり、太さもしっかりとした切れた木の塊があった。女の力ではまず開けることは無理だったでしょう
「話は後に。あれを倒しましょう」
見ると門を抜けたワニが一匹・二匹と駆けてくる。
前列にライトさん鋼介さん、私。支援を忍ちゃんに頼んで零華さんにはメイド達を避難させた
ライトさんは何事も無いようにまず先頭のワニを切り捨てる
ズバッとね。紋章を斬る一瞬だけに使い消費を気にした戦い方だった。いろいろ勉強してるなぁ
負けじと鋼介さんも戦いに出る。拳をあまり使えない彼は蹴りを主体に攻撃をする。紋章を使った蹴りは簡単にワニの頭をひしゃげさせた
私も炎は使わなかった。素人構えの剣でただただ速く単純に切る。振り抜く事はできないけど倒すには十分な威力はあります。
三人で敵を一蹴し、門にてこずっていたワニ達は勝てない事を悟ったのか城内へ引き返していく。もちろんライトさんは後ろから投石で倒し、逃がすことなく初戦を終えた
ひとまず一難は去ったかな




