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夜。
少しずつ気温が下がってきた今日この頃、
私はいつも通りに店を片付け、いつも通り家に帰るはずだった。
「…さて。」
どうやら私がここにいるのがバレたらしい。
嗚呼、面倒な事になった。
でもこんな時間に来る事はないわよね。
「出てきたらどうかしら。」
夜中に訪ねてくるなんて非常識すぎるだろ。オイ。
「…」
暗がりから姿を出したのは、しばらく振りの勇者様だった。
「今更何の用で?
私から国も、居場所も…何もかもを奪ったくせに。」
これ以上、何がしたいの?
そんな事を言われるのは想像外だったのだろう。
勇者様は珍しく驚いた顔をした。
「…戻って、来てほしい。」
「嫌です。」
私は笑顔でそう言い放った。