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勇者様は私たちに見向きもしなくなった。
いくら正室とは言っても、そんな正室の地位は脆い。
私たちは肩身の狭い思いをした。
いつしか私は、息子たちとこの国を出る計画を立て始めた。
勇者様にも唯一勝てる、私の隠密スキル(笑)が役に立った。
信頼できる人材。
昔から変わらず仕えてくれる侍女がいる。
お忍びで働いている宿屋の人たちがいる。
多額の資金。
これはドレスや装飾品を売ってできた。
住む家。
これも準備はできている。
後はもう、逃げるだけ。
「お母様、大丈夫?」
息子たちが心配そうに私を伺っている。
余程、私は疲れた顔をしているのだろうか。
「大丈夫よ。…セルシオ、セリュー。…貴方たちはお父様といたい?」
そんな事を聞けば、2人は困るだろう。
そう、思ったが聞かずにはいられなかった。
「セリューはお母様がいい!」
「僕もです。」
笑顔で、この子たちはそう答えてくれた。
そして、その答えは。
私が覚悟を決めるのに充分な答えだった。