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1 友達

0話を読んでいない方は、先にそちらをお読みください。

http://ncode.syosetu.com/n2319bl/1/

最初、0話の次話投稿じゃないやりかたで出してしまったのがこの回です。

消し方がわからなく、このまま残っています。ご了承下さい。

今日の放課後、学級委員の集まりで、移動教室についての話し合いがあります。

「星良さん。移動教室、楽しみだね。」

休み時間、私は通路を挟んで隣の星良さんに話しかけました。

 最近、やっと普通に話せるようになりました。

 まあ、星良さんは、私くらいとしか話さないんですが。

「移動教室とか、面倒くさくない?」

口を開いた星良さんは、そう言い…

 沈黙。

「せ、星良さん…それは…!」

爆弾発言!

 みんなの視線が痛いほど集まっているのがわかります。

「と、とにかく、こっちで話そ!」

私は無理矢理星良さんの手を引っ張り、廊下に出ます。

「絵莉さん、どうしたの?急に」

ぽかんとした表情をして、私の顔を覗き込む星良さん。

「いや、どうしたというか、こうするのが、得策かと…」

「意外と不思議な子ね、絵莉さんて」

 不思議なのは、星良さんの方だと思っている私は…普通の人間だと思うのですが。

「話戻すけど、移動教室って、なんのために行われるの?」

「そりゃあ、友情を深めるとか、集団行動を身に付けるだとか」

「…友達って何?」

少し冷めた表情で、星良さんは、私の顔を見据えました。

 少し対応に困る私。

「仲のいい子とか、信頼してる子とか」

呟くように私は言いました。

「裏切ったらどうなる?」

「へっ?」

 星良さんの声がとても低くて私はおもわず、変な声を出してしまいました。

「表だけ仲が良くても、裏で実は相手の悪口言ってる子は?自分が信頼していても、相手が裏切っていた場合は?それでもやっぱり、仲がいいから、信頼してるから、友達って言うの?」

 星良さんの言葉は、音を立てずに、私の心に大きなダメージを与えました。

 一瞬のうちに、過去の記憶が蘇る。

 「絵莉ちゃんって、本当は、いじめっ子なの?」

 なんで?

 「だって、××ちゃんが、「○○くんのことが好き」って言ったら、絵莉ちゃんに突き飛ばされたって言ってたよ。傷も見せてくれた。」

 私、そんなことしてないよ?

 『嘘つき!絵莉ちゃんは友達だと思ってたのに。私が○○くんのことが好きなのを知っていながら、横取りするなんて。』

 ××ちゃん、なんで、そんな嘘をつくの?

 『いつまでそうやってしらを切り通すつもりなの?サイッテー。』

 「こんな子が学級委員なんて。」

 「最悪。」

 …私は震えていました。

 星良さんはそんな私をしばらく見ていましたが、

「あなたも、過去にそういう経験があるようね。まあ、今の絵莉さんには私がいるから。とりあえず、安心しなさいよ。授業、始まるわよ」

と言いました。

 すうっと現実に戻りました。

 今の私には、星良さんが居る。

 心が少し温まりました。

 でも、私はそのとき、まだ、「友達」とはなんなのか、という答えを見つけることが出来ずに居ました。


 昼休み。

 みんなはお弁当を食べたり、食べ終えて遊んだりと様々です。

「絵莉ちゃん♪」

月夜ちゃんが私に声をかけました。

「六時間目に、移動教室の班決めるでしょ?絵莉ちゃん、一緒にやらない?」

「あ、いいよ。」

月夜ちゃんは、にっこりしました。

「他に誰が一緒なの?」

「優衣と、和歌子。」

「あ、そうなんだ。ねぇ、星良さんも一緒でいい?」

私が星良さんの名前を出した途端、笑顔だった月夜ちゃんの表情は、すっと冷たいものになりました。

「…ごめん。私、百合川とは…一緒になれない。」

「どうして?」

「…あんまり言いたくないんだけど」

月夜ちゃんは、そう言うと、周りをきょろきょろ見回し、私の手を引っ張って、廊下を駆け抜けました。

 そして裏庭のような場所へ。

 そこは、他の生徒は誰も居ない―この学校の喧騒から外された、秘密の空間のような場所でした。

 意外にも、日当たりは良く、暖かいのですが、風は結構ひんやりしていて、他人を寄せ付けない雰囲気を持った空間だなと思いました。

 「私が、百合川と小学校が一緒だったのは、知ってるよね。」

月夜ちゃんが風のようにひんやりした口調で言います。

 いつもと違う雰囲気が漂う月夜ちゃんに、私は以前感じたのと同じ恐怖を味わいました。

「もともとは仲が良かったの。いつも一緒で、悪いことする子たちには、よく二人で一緒にお仕置きしたりしてたな。今考えると、ちょっとやり方が荒かったかなって思うけど。」

月夜ちゃんの言葉に私はひどくびっくりしました。

 「もともとは仲が良かった」―では、二人の間に一体何が起こったのでしょう?

「六年になって、みんなが星良のお仕置きに対して、『それはいじめなのではないか』と思うようになった。みんな復讐を考えて、クラス全員で、星良を無視することにしたの。それだったら、私だって無視されるべき人間なのに…。私は、あの子の親友だったのに、周りの空気を読んで、あの子を…星良を一人にしてしまった。ある子が、『百合川のこと嫌いな人、手、挙げて』って言ったとき、私は手を挙げてしまった」

独り言のように、月夜ちゃんは一気に言いたいことを吐きました。

 私は信用されているのだと気付きます。

「私は…星良…いや、百合川と友達でいていいような人間じゃないの。あの子のこと裏切っちゃったし。星良だって、私みたいな裏切り者とまた友達になんかなりたくないと思うし。」

「月夜ちゃん…」

私が何か言おうとしたとき。

 くるり、と月夜ちゃんが振り返りいつものように明るく微笑みました。

 一瞬にして、スゥっと空気が変わったので、思わずピクッと指が動いてしまいました。

 ―この子は、笑顔の裏に、もっと深い感情を持っている、と、一瞬の間に考えます。

「…そういうことだから。私、別に百合川のことが嫌いだから一緒になれないって言ってるわけじゃないからね。」

「…うん」

私がうなずくと、月夜ちゃんはいつものスタスタとした足取りで教室に戻っていきました。

 なるほど。

 私の心の中で、星良さんの言葉と月夜ちゃんの言葉が繋がりました。

 ―この移動教室で、絶対二人の距離を近づけて見せる。

 私は心のどこかでそう呟きながら、次の授業が数学のことを思い出し……

「やっべぇえ!宿題終わってねぇえ!」

……と、人影のない裏庭で虚しく、しかも変な言葉遣いで叫んでしまったのでした。


 そして六時間目。

 私は約束通り、月夜ちゃんと、優衣ちゃん、和歌子ちゃんと同じ班になりました。

 星良さんは、誰かと同じ班になれるか心配していましたが、移動教室を機会に仲良くなろうとしてる子が多いと見えて、結構みんなから声を掛けられていました。

 班が決まって、次はバスの席決めです。

 バスレクで伝言ゲームをやるので、星良さんと月夜ちゃんの席をどうにかして、前後にしてみせる、と燃えていたのですが…

 私と星良さんと、佐倉くん、鶴見くんの学級委員は、一番前の座席に座ることになっており…しかもその後ろはバスレク係の北村くんと相模、木ノ下さん、露川さんと決まっていて…。

 つまり、私の決意は虚しくも実践することができずに飛んでいってしまったのでした。


 そんなこんなであっという間に移動教室当日に。

 みんなはわくわくとした雰囲気で、お菓子は何を持って来ただとか、実はこっそり音楽プレイヤーを持ってきた、など、ざわざわしていますが、私はこの雰囲気が結構好きです。

 バスに入り、早速バスレク係が用意したCDをかけます。

 結構みんなからのリクエストに忠実に作られたものなのだそうで。

 今、はやりのアイドルの曲はもちろん、あまり有名ではないバンドの曲、アニソン、中には某野球チームの応援歌や童謡「どんぐりころころ」なんてものまであります。

 曲が流れている間、みんなにはマイクが回っているので歌いたい人はマイクを使って歌ったりします。

 と、大分盛り上がってきたところで、星良さんがマイクを取りました。

 曲目は、「青春」(作詞:康珍化/作曲・編曲:芹沢廣明/歌:岩崎良美)。

 「タッチ」のエンディングになった曲です。

  ねえ音もたてず

  過ぎてく青春には

  さよならがいっぱい

  ねえ楽しい日々

  お願いこのまま

  Stay Stay Stay

  時よ動かないで

 星良さんはびっくりするほど歌が上手く、しかもとても感情を込めて歌っていました。

 いつもは星良さんのことを怖がっている男子も、このときは楽しそうに揺れていました。

  わたしはまだ 

  あなたに 好きですって

  打ち明けてさえ いないの

 私はこの瞬間、えっ、と振り返りました。

 今の部分を、誰かが星良さんの歌に対して綺麗にハモらせたのです。

 その人物こそ、月夜ちゃんでした。

 星良さんはじっと月夜ちゃんのことを見ていましたが、にこっと微笑みました。

 一瞬、月夜ちゃんは複雑な顔をしましたが、それでも素直に、にっこり微笑み返しました。

「いいぞーっ!」

「ひゅうひゅうー」

いい具合に相模や北村くんたちが合いの手を入れます。

 ―こいつらは、面倒くさい奴らだけど、こういうとこがあるから嫌いになれないんだよなぁ、としみじみ思いました。

 私はとっても嬉しく思いながら、お菓子を頬張り…

「ぅ…ごっほ、ごっへ!」

胸をどんどんと叩く私。

 …お菓子が喉に詰まったのです。

「絵莉ちゃん大丈夫!?」

後ろで露川さんが聞きます。

「だ、大丈夫…だ、よ…」

「あはは!だっせぇ」

「雛罌粟さんて、期待を裏切らないよなぁ」

相模と北村くんに言われます。

 ―さっきは嫌いになれない、とか思ったけど…

 「大っ嫌いだぁ!」と叫びたい気持ちにかられながら、私はお菓子をどうにか飲み込むことに精一杯なのでした。


 やっとのことで宿泊地に到着しました。

「では、まず自分の班の部屋に行って、荷物を置いてきてください。置いた人から、五階の食堂に移動をお願いします。」

紗梨香先生が言って、みんなわぁっと動きはじめます。

「いよいよって、感じだねえ」

のほほんと私の隣で優衣ちゃんが呟きます。

「そうだね。」

「ここが、私たちの部屋か。…今日の夜は、みんなの好きな人、気になってる人…全部吐いてもらうからねぇ」

にやにやしながら、和歌子ちゃんが言います。

「特に、絵莉ちゃんの好きな人、気になるー。」

月夜ちゃんが言い、私はびっくりして、振り返ります。

 初めて会ったときと同じ、眩しい笑顔。

 この子は、本当にあの日星良さんとの過去を語ったときと同じ月夜ちゃんなのでしょうか。

「絵莉ちゃんは、好きな人いる?」

急に興味を持った目で和歌子ちゃんが私の顔を覗き込んだので、思わず我に返って、

「へっ?」

と叫びました。

「おっ!その反応は…?」

「ひょっとして、いるのかな?」

「相模くんとか、北村くん?」

三人に笑顔で迫られ、

「ちがーうっ!」

と結構な声で叫んでしまい…

「宿では静かに、よ。絵莉さん。」

と、隣の部屋から出て来た星良さんに軽く叱られてしまいました。

 急に後ろから星良さんのあの不思議な響きの声が聞こえてきたせいか、一瞬にして私たちの部屋は静寂に包まれてしまいました。

 星良さんの声には、有無を言わせない力がある、と私は思います。

「…荷物置いたなら、食堂に行きましょ。」

「は、はーい…」

ちょっと緊迫した空気の中で沈黙を破ろうと私と優衣ちゃんが頷きました。

 ちらっと月夜ちゃんの顔を窺います。

 半ば下の方を向いていると思ったら、悲しそうな顔をしていました。

「…じゃ、じゃあ、昼ごはん!早く行かないと、馬鹿な男子に全部食べられちゃうよ!」

和歌子ちゃんが、月夜ちゃんの顔を見ないようにしながら手を取って部屋を出ました。

「そうだねぇ」

優衣ちゃんはいつものように、でもちょっとぎこちなく、のほほんと答えます。

 ちょっと、この三人のことを不思議に思いましたが、これ以上ボーっとしていると、また叱られるので、気にせずに階段を登…ろうと、思いました、が

 ズドンッ

「ひぎゃっ」

…階段を踏み外しました。

「ちょっ…雛罌粟さん大丈夫!?」

後ろにいた鶴見くんが言い、その隣にいた佐倉くんは私を支えてくれたようです。

「だ、だ、大丈夫!です。…ごめん。ありがと」

私がそう言うと、

「おぉ!絵莉ちゃん、ずりぃぞぉ」

後ろを振り向いた和歌子ちゃんがにやにやしながら言います。

 さっきまで悲しそうな顔をしていた月夜ちゃんもにこにこ…しています。

 月夜ちゃんが笑顔になってくれたのは嬉しいのですが…

「…気をつけろよ」

低い声で佐倉くんが言ったので、私は驚いて、

「は、はい…」

と返事をしました。

「…分かれば良し」

そういうと佐倉くんは軽ぅく、でもあたたかく微笑みました。

「おっ!今、雛罌粟、佐倉にときめいただろぉっ?」

「ひゅうひゅうー」

また相模と北村くん…

 ―…おめぇらはうっせんだよぉっ!

 ものすごく叫びたかったのですが、また叱られても困るので、必死にこらえます。

「気にしないで大丈夫だよ、絵莉ちゃん」

…優衣ちゃんに慰めてもらっている私って一体…。


 お昼を食べ終えたら、晩御飯のカレー作りへと事が流れます。

 普段、料理をほとんどしない私としては緊張…するものです。

 そして…男女の班の組み合わせは、クジ引きで決めたにも関わらず、どういうわけか、またも、相模、北村くん、鶴見くん、佐倉くんの班と一緒になってしまいました。

 ―どこまで縁が腐ってんだよっ!

 と、思いましたが、もちろん、言えるはずもなく。

 仕方がないので、とりあえず、まな板除菌から始めます。

「絵莉ちゃん、絵莉ちゃん」

和歌子ちゃんに話しかけられます。

「何?」

「絵莉ちゃんって、百合川さんと仲良さそうだけど、どうやって仲良くなったの?」

「えっ」

少し考えてみます。

「…わかんない。でも、私が最初から、星良さんに惹かれていて仲良くなりたいって思っていたことは事実、かな」

私がそう言うと、

「んまあ、確かに。学級委員決めのときの台詞はかっこ良かったねえ」

と人参の皮を器用に剥きながら優衣ちゃんが答えます。

「でも、ちょっと、近寄りにくいんだよねぇ。どんな子?あの子。」

和歌子ちゃんにそう言われ、即答できると思って口を開けてみましたが、

「………」

…言葉が出てきませんでした。

 意外と私は星良さんのことをよく知らないのだなあ、とのんびり考えます。

「でも、急にどうしてそんなことを?」

質問されたのに、質問で返す私はずるい人間だな、と思いながらも問います。

「うん。…これ、本人には、言わないで欲しいんだけど…月夜って、誰とでも仲良くしようとする子じゃない?実際にほとんどの子と仲いいし。でも、どういうわけか、あの子、百合川さんにだけは話しかけないんだよね。小学校一緒だったっていうのは聞いたけど。…だったらもっと話してそうなもんじゃない

?だから聞いてみたんだけど。絵莉ちゃん、月夜とも百合川さんとも仲いいし。」

 その言葉を聞いた瞬間、思わず、びくっとしました。

 ―和歌子ちゃんでも、二人の関係を知らない?

 私はちらっと、肉の重さを量っている、月夜ちゃんを見ました。

 では、あのことは、私にしか言っていないと?

 ちょっと不思議に思いました。

「絵莉ちゃん、あの二人のことなんか知ってる?」

 そう言われて、思わず反射的に和歌子ちゃんから目をそらしてしまいました。

「知らないよっ」

…目を合わせて言っていたら、バレバレの嘘を大きな声でついてしまいました。

「そう。…そうだよね、ならいいの」

 そう言って、私と目を合わせて微笑む和歌子ちゃん。

 和歌子ちゃんの目は―

 なんでも見抜かれてしまいそうで…

 正直恐いです。


 午後五時。

 どうにか、私の班も、カレーが出来上がり、月夜ちゃんがお皿に盛り付けております。

「はい、北村くん」

月夜ちゃんはにっこりしながら、北村くんにカレーを渡しました。

「あ、ありがとうございます…」

「よっし、んじゃあ、食うか!」

相模がそう言って、班のみんなが席に着きました。

「いただきまーす」

そう言って、一斉に食べ始めるみんな。

「むっ…ちょっと、水っぽくね?」

佐倉くんが呟きます。

 私は、煮込みすぎて水分がとんだカレーを見て、勝手に水を足したことを思い出し…

 少し、うなだれました。

「いや、でも、やっぱり自分らで作ったものは旨し!」

にこにこしながら、すばやくスプーンを動かしてそう言ってくれる、鶴見くんは、やっぱり、いい人だな、と思います。

「ほんとにぃ」

「美味しいね」

優衣ちゃんと月夜ちゃんがつづけて言った時でした。

 急に、北村くんの体がグラッと傾きました。

 その瞬間、それまでの和やかな空気も、グラッと傾いてしまいました。

 スローモーションのような時間は一瞬で過ぎて―

 北村くんは倒れました。

「きたむぅ?」

一斉にみんなが駆け寄ります。

「…気を失ってる」

冷たい響きを持った声で佐倉くんが呟きました。

 その後、北村くんは、先生に負ぶってもらって、保健の先生のところへと運ばれました。

 気まずい沈黙。

 それをはじめに破ったのは相模でした。

「ひょっとして。萩野、お前、きたむぅのカレーになんか、悪いもん入れた?」

「えっ」

さらに嫌な空気になります。

「月夜がそんなこと、するわけないでしょ!」

和歌子ちゃんが叫びます。

「それに、なんで、月夜ちゃんって決めつけるの?」

優衣ちゃんも負けじと問います。

「俺たちになんともなくて、北村だけ倒れたんだから、煮込んでいるときに入れたわけじゃない。それなら、普通、盛り付けるときに入れたって考えるのが一般的だな」

佐倉くんがひんやりした表情で言って

「…私はそんなことしてない!」

月夜ちゃんが泣きそうな顔になって言いました。

「でも、お前、本当は冷たい人間なんだろ」

相模がそう言いました。

 このとき私は心の中で相模の言っている言葉を肯定している自分がいることに恐怖を覚えました。

 …誰も言い返せなくなりました。

 私は…やっぱりいつも、目の前に困っている人がいるのに、何もできない人間なのか、と思いました。

 ―悔しい。

 思わず泣きそうになりました。

 その時でした。

「…黙って聞いてりゃ。あんたら、サイッテーな人間ね。」

はっとして、振り返る、私と月夜ちゃん。

 そこには、いつも背中に垂らしている黒髪を、作業しやすいようにか、一つにしばった星良さんが立っていました。

「さ…サイッテーって、なんだよ」

ちょっと戸惑いながら、抵抗する相模に、星良さんは、いたずらっぽく微笑みました。

「あんたは、まず、月夜…萩野さん、が、北村くんのカレーに毒を入れた、と決め付けた。証拠は?」

高いとも低いともつかないけれども深みがありよく響く星良の声によって、みんなはしん、と静まりました。

「ないでしょ?ないのに、そんなこと言うなんて、最低っつってんの。それに、私は…この件に関しては、絶対に月夜はやっていない、と言い切れる。何故なら」

一旦そこで切って、星良さんは、涙を流す月夜ちゃんの表情を見据えました。

「…この子は、嘘をつくとき、絶対語尾に『じゃん』をつけるから!」

その瞬間、全員、ぽかんとした表情をしました。

「いや、まさか…出会ってまだ、一ヶ月しか経ってないのに、そんなこと、わかるわけ」

「私はっ!」

相模の言葉を遮るように星良さんは続けます。

「私は、萩野さん…いや、月夜、の親友なの

!一番長いこと一緒に居て、あの子のことは、全部わかってんの。」

「ぅええぇえ!?」

みんながざわざわとどよめきます。

 和歌子ちゃんが、

「そ、そうだったの?」

と、月夜ちゃんに聞きました。

 月夜ちゃんもしばらくびっくりしていましたが、もう一粒涙を流しつつ、心の底から、嬉しそうに、

「…今でも、そういう風に思っててくれてんだ。」

と言いました。

 星良さんは静かに頷きました。

 それが合図だったかのように、月夜ちゃんはその途端に泣き崩れました。

「星良…今まで、ごめん。私、あの日から…ずっと、あなたのこと嫌いなふりしちゃってた。友達なのに、守ってあげられなかった。ごめん。でも、ずっと…また仲良くなりたいって思ってた。ずっと星良のことが好きだったんだよ。だから」

「大丈夫」

星良さんは優しく言います。

「私も、月夜のこと嫌いになったことないから。それに…私、あの後、こんなに強くなったから。」

二人はしばらくの間、互いの瞳を見つめ合って…

 抱き合いました。

 みんなは、その様子を、ぽかんとして見ていましたが、私はものすごく心が温かくなりました。

 そして―

 このとき私は、こないだ星良さんが問うた「…友達って何?」ということの答えを見つけたような気がしました。

「話は終わってないわよ、相模くん」

 目の前で起きていることの意味が全く理解できずにぽかんとしていた相模は再び声をかけられ、「へぇっ?」と変な声を出しました。

「さっき、あんたは、月夜のことを、“冷たい人間”と呼んだ。…今の月夜を見ても、そう思う?」

じっと相模の目を見据えて言う星良さん。

 蛇に睨まれた蛙のような顔をして相模は首を振ります。

「人の性格なんてね…一言で言えるほど単純に出来てないのよ。簡単に人の性格決め付けて声に出すな。わかった?…相模くんだけに言ってんじゃないんだからね!」

みんなは、びくっとして、「は、はい」と頷きました。

 「んでも…じゃあ、北村はどうして倒れたんだ?」

そう佐倉くんが呟いたときです。

 宿から北村くんが戻ってきました。

「きたむぅ!」

「大丈夫か?」

みんなが北村くんに駆け寄る。

「大したことないわよ。ただ気を失っちゃっただけみたいだから。」

保健の先生がそう言うと、みんな、

「なんだ、そうだったのか」

と安心した声を出します。

「でも、どうして気を失っちゃったの?」

私が、北村くんに聞くと、北村くんは、急に顔を赤くして、ちらっ、ちらっと月夜ちゃんの方を伺い、耳まで真っ赤になってしまいました。

「おい、きたむぅ…なんだ、そういうことかよ。紛らわしいぞ。お前のせいで、俺は誤解しちゃって、百合川さんに説教されることになっちゃったんだぞ。」

相模はそう言って、ため息をつきました。

 ―つまり

 北村くんは、月夜ちゃんのことが好きになってしまって、あのときの月夜ちゃんの笑顔によって気絶してしまった、といったところでしょうか。

「北村くん。元気になってくれて、良かった。」

月夜ちゃんがそう言うと、北村くんは

「あ。萩野、俺のせいで、なんか、色々大変なことになっちゃったみたいで、ごめん」

と、言いました。

「大丈夫ーおかげでいいことあったし。」

月夜ちゃんはそう言うと、星良さんの顔を見ました。

 星良さんは、いつものような無表情に戻っていましたが、そのときだけ軽く笑った…ような気がしました。

「夜はこれから!だよ、みんな」

和歌子ちゃんが言って、みんなはキャンプファイヤーのところへと走り始めました。


 次の日。午後三時。

 うとうとしてしまったと思ったら、寝ていたようです。

 後ろの席を見てみると、バスの中では、みんな寝てしまっていました。

 あの後、移動教室は平和に楽しく過ぎていき、大成功を遂げたのでした。

「起きた?絵莉さん」

星良さんが隣で言いました。

「うん。おはよう」

「おはよう」

しばらく、私達は無言でいました。が、

「星良さん。私、こないだ、答えられなかった星良さんからの問いの答え、見つけ出せた気がする。」

「友達って、何なの?ってやつ?」

「うん。」

私は少し、宙を見ました。

「困ったときに助ける、それが友達なんじゃないかな」

しばらく星良さんは黙っていましたが、

「そうね。」

私と星良さんはじっと互いの顔を見合いました。そして―

 自然に笑いあいました。

 ―すぐ、隣に、百合川 星良という名の友達がいる。

 星良さんが居れば、私は大丈夫。

 そう確信した瞬間でした。


楽しんでいただけたでしょうか?

星良さんと月夜ちゃん。いいですねぇ。

自分がつくったキャラクターにも関わらず、惚れてしまいそうですw

男の子のキャラも出てきて、書いていてとても楽しい回でした。

今回は移動教室でしたが、次はふだんの学校へと戻ります。

舞台は六月の教室です。

まだ全然書いていないので、投稿はかなり遅くなると思いますが。

楽しみにしていただけると嬉しいです。

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