恐怖の鎖
幼稚園の頃から日常的に見せつけられた光景を、私は最近まで普通だと思ってました。
他の家庭を知りません。
普通だと言い聞かされて育ちました。
何より、父親は外面が良く、周りも気付かず、良い父親だと言われました。
「お前の考えがおかしい。こんな事普通だ。お前が悪い。お前が馬鹿で出来損ないだから俺が面倒見てやって居る。俺が居なきゃ生きていけない。」
何度も何度も聞かされました。
一種の洗脳だと、病院の先生や、児童相談所の職員、弁護士、警察官に言われました。
毎日、同じ事を繰り返し聞かされると、本当にそうなのだと認識してしまうらしいです。
私はとにかく、父親を怒らせないよう、静かに、息を潜めて居ました。
既に感覚が麻痺したのか、普通にそうなんだと、疑問も抱きませんでした。
「お前のせいで、こうなる」
と、いつも父親の失敗は私と母のせいになりました。
私は自分の事を出来損ないと思い込んでいました。
父親はお酒を飲まなければ、良い父親ですが、ひとだび飲み始めると、人が変わり辺りに八つ当たりをし始めます。
時には、会社での失敗で責められましたが意味が分からず、ただ黙って従いました。
ある日から、自分は父親のペットだと思い込みました。
扱い方もその通りです。
機嫌良ければ、撫でられ、悪ければ、殴られ蹴られ。
私の個性など意味は有りませんでした。
恐怖は最強の鎖です。
本能的に逆らえません。
特に、生まれた時から同じ事を繰り返し受けていた私には、逆らう事が想像もつかず、世界は家の中だけだと思ってました。
幼稚園でも、私だけ浮いてるような、場違いのような感覚を覚えて居ました。
どんどん感情の無い人形になって行きました。
人形が自分の意志など持ちませんよね?