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ドパガキ転生〜非効率な異世界を俺の合理主義で作り変える〜  作者: のりチーズ
第一章 とりあえず効率化

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第11話:村を動かす仕組み


「村長、少し相談があります」


翌朝、俺は村長の家を訪れていた。


「相談? また何か思いついたのか?」


村長は苦笑しながら椅子を勧めてくれた。

この村に来てから、何度もこうして話し合いを重ねてきた。

最初は俺の提案に耳を貸そうともしなかった人たちも、今では少しずつ話を聞いてくれるようになっている。

それは素直に嬉しいことだった。

だが、まだ足りない。

この村を本当に変えるためには、俺一人が頑張っていても意味がないのだ。


「今後の村の運営についてです」


「運営?」


「はい。これまでは問題が起きるたびに、その場で対処して

きましたよね」


「まあ、そうだな。今まではそれで何とかなっていた」


「ですが、それでは限界があります」


俺は机の上に一枚の紙を広げた。

そこには、村で起きている問題をいくつか書き出してある。

食料の管理。

農作業の分担。

道具の修理。

物資の備蓄。

そして、村人同士の情報共有。

どれも、一見すれば大した問題ではない。

しかし、これらが積み重なることで、村全体の生産性を大きく下げている。


「例えば、食料の管理です」


「食料なら、各家庭で管理しているぞ」


「そこが問題なんです」


俺は紙の一部分を指差した。


「今は各家庭がそれぞれ食料を保管していますよね。ですが、それだと誰がどれだけ余裕を持っているのか、誰が不足しているのか分かりません」


「それは……確かにそうだが」


「もちろん、すべての食料を一か所に集めろという話ではありません。ただ、村全体で備蓄量を把握する仕組みが必要なんです」


村長は腕を組んだ。


「つまり、村で食料の量を管理するということか?」


「はい。収穫量と消費量を記録して、余裕がある分を備蓄に回す。そうすれば、何かあったときにも対応できます」


「なるほどな……」


村長は紙を見つめた。


「だが、誰がそんな面倒なことをする?」


「そこも考えています」


俺は次の紙を取り出した。

そこには、村の仕事を分担するための簡単な表が書かれている。


「仕事ごとに担当を決めるんです」


「担当?」


「例えば、食料の管理をする人。道具の修理を担当する人。農作業の予定をまとめる人。それぞれに役割を持ってもらいます」


「そんなことをして、本当に上手くいくのか?」


「最初から完璧にはいきません。でも、誰が何を担当するのか決まっていれば、問題が起きたときに誰に相談すればいいのか分かります」


今の村には、明確な役割分担がない。

そのため、誰かが問題に気づいても、結局は誰かが動いてくれるのを待つことになる。

これでは、村全体が効率よく動けるはずもない。


「……お前は、本当に色々と考えるな」


村長が小さく息を吐いた。


「だが、村人たちが納得するかどうかは別の話だ」


「分かっています」


俺は頷いた。


「だから、まずは希望する人たちだけで始めたいんです」


「全員に押しつけるつもりはないのか?」


「ありません。実際にやってみて、便利だと思ってもらえれば、自然と参加する人も増えるはずですから」


無理やり変えようとしても、長続きはしない。

大切なのは、村人たち自身が必要性を感じることだ。


「……分かった。話し合いの場を設けよう」


「ありがとうございます」


こうして、村の新しい仕組みについて話し合うことになった。

その日の夕方。

村の集会所には、十数人の村人が集まっていた。

俺がこれまで関わってきた人たちもいれば、まだほとんど話したことのない人もいる。


「それで、今日は何の話なんだ?」


一人の男性が尋ねた。


「村の仕事の進め方についてです」


俺は前に立ち、用意していた紙を広げた。


「今の村では、それぞれが自分の仕事をしています。でも、村全体で見ると、無駄になっている時間や労力がかなりあります」


「無駄だと?」


「例えば、農具の修理です。壊れた農具を、それぞれが別々に直していませんか?」


「そりゃあ、自分の道具なんだから当然だろ」


「ですが、修理できる人は限られていますよね?」


その言葉に、何人かが頷いた。


「だったら、修理が必要な道具をまとめて、修理できる人に任せた方が効率的です」


「でも、それだと修理を頼まれた人間が大変になるんじゃないか?」


「その通りです。だから、修理を担当する人には、ほかの仕事を減らす必要があります」


俺は表を指差した。


「一人ひとりが全部をこなす必要はありません。得意なことを担当してもらえばいいんです」


集会所が静かになる。

反対意見が出るかと思ったが、誰もすぐには口を開かなかった。

すると、奥に座っていた男性が手を挙げた。


「……俺は賛成だ」


その男性は、以前から農具の修理をしていた職人だった。


「確かに、俺は修理が得意だ。だが、普段は畑仕事もあるから、頼まれてもすぐには直せないことが多い」


「それなら、修理の時間を確保できれば?」


「ああ。少なくとも、今よりは早く直せるだろうな」


その言葉を聞いて、別の村人も口を開いた。


「食料の管理についても、興味がある。去年は収穫量を正確に把握できなくて、冬になってから困ったからな」


「俺も農作業の分担には賛成だ。人手が足りないときに、誰に頼めばいいのか分からないことが多かった」


少しずつ、賛同する声が増えていく。

もちろん、全員が賛成しているわけではない。


「そんなことをして、本当に暮らしが良くなるのか?」


「今までのやり方で困っていない人間もいるぞ」


そうした声もあった。

それでも、以前とは明らかに違う。

俺の話を最初から否定するのではなく、自分たちの暮らしと照らし合わせて考えてくれている。

それだけでも、大きな進歩だった。


「では、まずは小さく始めましょう」


俺はそう提案した。


「食料の備蓄量の記録と、農具の修理担当。この二つから始めたいと思います」


「期間は?」


「一か月です。その間に問題があれば、何度でも見直します」


村長が立ち上がった。


「よし。それなら、まずはやってみようじゃないか」


その言葉をきっかけに、集会所の空気が変わった。

村人たちはそれぞれ、自分にできそうなことを話し始める。

誰かに命令されたからではない。

自分たちの村を良くするために、自分たちで考え始めたのだ。

集会が終わったあと。

村長が俺の隣にやってきた。


「上手くいったな」


「まだ始まったばかりですよ」


「それでもだ。以前なら、こんな話し合いを開いても、誰もまともに聞こうとはしなかった」


村長は集会所を見回した。


「お前が来てから、この村は少しずつ変わっている」


「……そうでしょうか」


「ああ。だが、一つ聞いてもいいか?」


「何でしょう?」


「お前は、この村をどこまで変えるつもりなんだ?」


俺は少し考えた。

畑を良くするだけでは足りない。

道具を増やすだけでも足りない。

食料を備蓄するだけでも、いずれ限界が来る。

この村が抱えている問題は、もっと根深いところにある。


「この村が、何か一つの問題で簡単に立ち行かなくなるような場所ではなくなるまでです」


「……大きな目標だな」


「はい。でも、できると思っています」


村長はしばらく俺を見つめたあと、静かに笑った。


「なら、期待しているぞ」


「任せてください」


そう答えたものの、俺の頭の中には別の問題が浮かんでいた。

村の仕組みを整えることはできる。

だが、それだけではこの村の未来は守れない。

この村は、外から運ばれてくる物資に大きく依存している。

もし交易が途絶えれば、今の仕組みを整えたところで、いずれ限界が来る。

ならば、次に考えるべきことは一つだ。

この村だけで、どこまで物を作れるようになるのか。

俺は、次の課題を頭の中で整理し始めた。

村の再建は、まだ始まったばかりなのだから。

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