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転生したら、生活魔法使えるようになりました  作者: メイコノノ


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翌朝、研究室に行くと、エルクがすでにいた。


窓から朝の光が入っている。サチコが好きな、一日の中で一番明るい時間だ。


「おはようございます」


「ああ」


「昨日、アンナと話しましたか」


「……話した」


「どうでしたか」


エルクはしばらく羊皮紙を見た。


「アンナが言った。認知の話については、僕の気持ちを優先してほしい、と」


「そうですか」


「あの子は——素直だな」


「素直な子です」


「お前と友達になるわけだ」エルクは静かに言った。


「素直な者は、素直な者を引き寄せる」


「私が素直かどうかは、少し疑問ですが」


「少なくとも、僕には素直だ」


サチコは椅子に座って、羊皮紙を広げた。


「認知の件は、どうするつもりですか」


「……受ける、と父に返事をするつもりだ。アンナのためではなく——僕が、そうしたいから」


「それがいいと思います」


「お前に背中を押された気がするが...」


「何もしていません」


「そういう押し方をするな」


「どんな押し方ですか」


「……うるさい」


サチコは笑った。


窓の外で、五月の風が木の葉を揺らした。研究室に光が満ちている。


机の上に、今日やるべき仕事が積まれている。殿下の治療の記録をまとめること、調律魔法の応用理論の続き、エルクが昨夜書き上げた新しい仮説の検討——


やることは山ほどある。


でも不思議と、重くない。


「リナ」


「はい」


「今日は、魔力伝導の第四章に入る。昨日書いた仮説の確認から始めたい」


「わかりました。読んでいきます」


「それと」


「はい?」


エルクは羊皮紙から目を上げた。窓の光の中で、まっすぐサチコを見た。


「今日も、来てくれてよかった」


サチコはしばらく、その言葉を心の中に置いた。


練習してきたのだろう、と思った。昨日の夜、ひとりで何度か言ってみて、それでも言えるかどうか迷って——それでも言った言葉だと思った。


四十三年の経験が、そう教えてくれた。


「私も」とサチコは言った。


「今日も、来られてよかったです」


エルクが羊皮紙に目を戻した。でも耳が、赤かった。


五月の研究室に、ふたりの沈黙が、あたたかく満ちた。


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