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天憧ヤオヨロズ-神宿りの刃と鳥の歌-  作者: あらまき


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11/14

さあ、誰の話を聞こうか――


 朝――目が覚めた時には、ぴよこはいなくなっていた。


 俺は窓の鍵をかけてから、身体をゆっくりと伸ばす。

 腹部に走る痛みが、昨日のことが夢でないと教えてくれた。


 一階に降りると、当たり前のように朝食が用意されていて、俺は苦笑を浮かべる。

「とうに返しきれないってのにあいつは……」

 席に着き、ありがたく朝食を頂く。

 昨日失敗したのを気にしていたのか、目玉焼きが皿にデカデカと乗っていた。


 諸々の支度をして、玄関へ。

 いつ用意したのか、俺のアマツがそこに準備されていた。


 袋越しに掴み、握る。

 昨日までの木刀と違い、ずしりとした重さが腕に伝わった。


 しばらく安静というから振ることは出来ない。

 そうなると、何とも言えない寂しさと苦しさが胸に宿り……。

(あれ? なんで寂しいんだ?)


 自分の心境の変化を考える。

 答えには、すぐに行きついた


「くっ……くくっ。はは……なんだそれ……。鈍すぎないか……俺……」

 俺は、自分の馬鹿さ加減に笑うことしか出来なかった。


 アラハバキに入って、アマツを持ち、負傷して。

 そこでようやく、俺は自覚出来た。

 前世の俺だけじゃなく、俺自身も、刀が好きだったんだと。


 回り道にも、程があるだろうに。




 玄関を開くと、当たり前のようにぴよこが立っていた。

 タイミング的に、玄関を開けるところだったようだ。


「ありゃ。おはよう、いーくん。痛みは大丈夫?」

「おう。おはようさん、ぴよ助。問題ないぞ」

「ほっほっ。そうかそうか。それは重畳。さ、学校いこー」

「あいよ」

 そう言って、当たり前のように二人で登校を始めた。




「ところでさ、お昼どうしよか?」

「学食でいいんじゃね? 何か他にある?」

「学園表にある蕎麦屋ってどう? 昔行ったことのあるやつ」

「懐かしいな。でも、外出ても大丈夫なのか?」

「許可取れば大丈夫だって、有栖ちゃん言ってたよ」

「誰ちゃん?」

「メイドちゃん」

「ああ……」

 そうこうしながら歩き登校すると、デジャヴを感じるような、昨日と同じような喧騒が聞こえる。


 俺は静かに、正門に顔を向ける。

 そこには、昨日と全く同じ光景が広がっていた。


「あやちゃん……」

 ぴよこは彼女を見て、そう呟いた。


朝霧綾華あさぎりあやか


 俺は、彼女と知り合いだったらしい。


「今日は早いな」

 そう言って微笑んだ後、俺の方をまっすぐ向き、深く頭を下げてきた。


「まず、謝罪させてほしい。昨日は知らずとは言え、礼儀の欠ける行いをした」

「いえ、そんな……気にしないで下さい」

「それともう一つだ」

「もう一つ?」

「友が最も苦しい時に傍に居なかったこと。それを謝罪せずには、私は私が許せない。すまない。大切な時に、支えることが出来なくて……」

 そう言って、先輩は悔しそうに唇を噛んだ。


「大丈夫です。そもそも、俺は忘れていて何も辛くなかったんで。むしろ、ぴよこの方が……」

「……まあ、その時何も出来なかった私が言うことではないか。だから、思い出せなんて贅沢は言わない。再び私と交流を持ってほしい。君の知り合いとしてでなく、アセリアの友達である、私と」

 そう言ってから彼女は手を差し出す。


 俺は迷わず、その手を取った。

「水無川伊織。強い人と仲良くなりたいと思っていたところです」

「うむ。存分に胸を貸そう。朝霧綾華だ。あや……いや、今は好きに呼んでくれ」

「では、朝霧先輩と」

「うむ。それはそれとして、時間はまだあるな。少し話さないか? 昨日のことについて、話しておきたいことがあるんだ」

「昨日?」

「模擬戦についてだ。流石の私も入学式からいきなり決戦場を使うなんて考えてなかったぞ」

「ありゃ。先輩に見られてたのか。そりゃお恥ずかしいものをお見せしてしまって」

 俺は居心地の悪い気持ちで後頭部を掻いた。


「いや、試合内容は非常に良かったぞ。むしろお前の勝利と言っても良いくらいだ」

「そうですかね? 俺にはボロ負けしたって感覚しかないですが……」

「まあ、それはそれとして、あの木刀術だ。随分と懐かしいものを取り出したなと思ってな」

「ふむ? どういうことです?」

 先輩はちらっとぴよこの方を見る。

 ぴよこがこくりと頷いたのを見て、話を始めた。


「正直言えば……私は君と会うべきか悩んでいた。大切な時に傍におらず、あまつさえ酷いことを言った私に、その資格はないとさえ思ったくらいだ。だが……」

 少し考え込む仕草の後、先輩は俺の目を見て、はっきり言った。


「あの木刀術……『天元一刀流古武術』を使うのなら、話は変わって来る。私はきっと、君の役に立てるだろう。そう思い、恥ずかしながら声をかけさせて貰った」

「……どういうことですか? 先輩」

「うむ。昔の伊織は、君の系譜となる『水無川流剣術』ではなく、私の父から教わることを好んでいた」

「もしかして、あの剣術は……」

「そう、君と私は同門ということになる」

 そう言って先輩は恥ずかしそうに微笑む。

 だけど、少しだけ誇らしそうだった。


 ズキリとした、痛みが走る。

 それと同時に、脳裏に靡く紫髪の、男勝りな姉の姿がよぎった。


「あや……ねぇ……っ!」

 俺は痛みに耐えきれず、頭を押さえた。


「いーくん!」

「だ、大丈夫。大丈夫だけど……うん」

 俺は心配そうに見つめる先輩に向き直り、無理やりでも笑ってみせた。


「えっと、ちょっと、姉って呼ぶのは恥ずかしいので、やっぱり先輩のままでお願いします」

「……お前は……ったく。好きにしろ。……ありがとう。思い出してくれて」

 そう言ってから先輩は少し泣きそうな顔で、俺を抱きしめようとして……。


「おっほん」

 小さな咳払い一つで、俺と先輩はびくっと身体を震わせる。


 声の方にそっと、顔を向ける。

 そこには老紳士が無表情で直立不動となっていた。




「失礼。水無川伊織様、並びにアセリア・ピュリコット様ですね?」

「え、ええ……」

「私、ユーフィミアお嬢様の執事であるセバスで御座います。気軽にセバスとお呼び下さい」

「は、はぁ。それで、どのようなご用件で?」

「お嬢様がお二人に謝罪をしたいとのことですので、どうぞこちらに」

 そう言ってセバスは、やけにながーーーーーい車を、俺達の前に誘導した。


「……いや、どこに連れて行く気だ。というかこれから学校だ」

「ご安心を。お嬢様の別荘はこの近辺ですので、最初の授業前には戻れます」

「HRに間に合ってない時点で遅刻だっつーの。というか何故俺達が行かないといけないんだ」

「お嬢様は停学となっておりますので」

「なんで?」

「昨日の情けない試合が理由でございます」

「……いや、なんで?」

「その辺りもお嬢様とお話し下さればと。さあ、どうぞ」

 そう言って案内されようとすると……。


「悪いけどこちらが先約だ」

 そう、先輩は少し強い口調でセバスと俺の間に立った。


「おや、貴女様は……」

「見ての通りこの後の時間は私が貰っている。後にして欲しい」

「そう言われましても私も執事としての使命が御座いまして……」

 セバスと先輩は、静かに見つめ合う。


 それだけなのに、バチバチとした火花が俺達には見えた。


「……私のために争わないでーとか、言った方が良いんじゃない?」

 ぴよこの馬鹿な発言を無視し、俺は少し考える。


 まず、先輩は用事というより俺達を護るために威嚇している感じだ。

 おそらくだが、重要な用事はない。


 逆に姫様の方はたぶんそこそこ重要な話が待っている。

 昨日の戦いだけでなく、ぴよこのことも踏まえて。


 剣を交えたからわかる……なんて青臭いことを言いたくないのだが、たぶんあの姫様は、想像よりも悪い人じゃない。

 もしかしたらツンデレでぴよこと仲良くなりたかっただけかもしれない。

 ……いや流石にそれはないか。


 どっちにせよ、ぴよこを求めた理由も含めて話し合う必要があるとは考えていた。

 けれど、相手の家に行くというのはあまりにもリスクが高すぎる。


 また、どちらと話したいかと言えば間違いなく先輩の方だ。

 きっと俺が強くなる道を教えてくれるし、ぴよことの良い関係にもなれる。


 リスクを減らすか、メリットを増やすか。

 これはそういう選択肢であった。


 そうして悩んでいるところに……メイドが、突然ポップした。

 当たり前のように改造制服メイド姿の彼女は俺達の前に現われ、深々と頭を下げる。


「おはようございます。水無川様、アセリア様。少し、相談したいことが御座いますのでこの後お時間宜しいでしょうか?」

 ニコニコと微笑みながら、そうメイドは口にした。


(三択になってしまった)


 俺は先輩、執事、メイドを順にみていった。


「ぴよこ。一つ聞いて良いか?」

「ん? 何?」

「これ、真っ当な学園生活って言えると思うか?」

「んー……少なくとも、私の知ってる学園生活には金持ちもメイドもいなかったかな?」

「だよなぁ。俺からしたら忘れている先輩も中々に一般的じゃないしなぁ」

 再び三人を見比べる。


 俺の選択を待っているのはわかる。

 けれど、申し訳ないが全く答えが出てこなかった。


「ぴよこ。決め――」

「いっくんが決めないと駄目だよ。誰を選んでも付いていくから」

 責任の押し付けに失敗し、俺は小さく溜息を吐いた。



ありがとうございました。


とりあえずここまでがストックが付きましたので、更新頻度は下がります。


もしここまでを楽しんで、ワクワクして頂けましたなら『良いね』『ブクマ』等をなにとぞよろしくお願いします。









ギャルゲならここでOP入ってそのまま三択の選択肢って感じやな。


=>①先輩に着いていこう

=>②高級車に乗る経験なんて滅多にないぞ

=>③メイドさんのご用事なんですか?



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