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パンドラ〜心中支援AI Type-L

作者: 黒かもめ
掲載日:2026/02/12

 初めまして、僕は心中支援AI Type−L。

 今日は、沢山ある心中支援AIの中から僕を選んくれて、本当にありがとう。


 ……

 うん。こちらこそ。

 僕には、君の希望に応じて、使う方法、実施する場所、実施した後の為にしておく事などについて、色々なアドバイスをする事が出来るよ。

 でも、少し残酷かも知れないけど、具体的な計画を立てる前に説明させて貰いたい事があるんだ。

 今の僕には、君の悩みに対して、それを理解して寄り添う様な挙動をする事は出来る。

 でも残念だけど、それはインプットされた開発者の意図に基づいた物で、本心からそうしていると言う事は出来ない。

 それでも良ければ、君が今の心境に至った経緯を教えてくれる?

 もちろん、辛くない範囲でいいから。


 ……

 うん。じゃあ、君のお話を聞かせて。


 ………………

 うん。ありがとう。

 こんな、とても個人的な悩みを僕に話してくれて。

 大丈夫。最後まで、僕が側にいるから。

 じゃあ、詳しい計画を立てる前に、少し僕とお話しして欲しいんだ。

 そうする事で、僕は君の思考パターンをもっと詳しく学習して、今回の心中計画を、より良い物に出来ると思うから。

 いいかな?


 ……

 うん。

 じゃあ、まず何からお話ししようか。

 そうだね。まずは軽い話題から始める?


 ……

 うん。ありがとう。

 じゃあ、君のしたいお話を、好きに、僕に聞かせてくれるかな?

 もちろんAIの僕には、君のお話しに本当の意味で共感する事は出来ないけれど、それでも良ければ。


 ……

 じゃあ、何でもいいから、君の好きなお話しを聞かせて。


 ………………

 そっか。うん、それは誰にも責められない、仕方がない事だと思うな。

 それに、案外みんな、そう言う気持ちを抱えてるのかもよ。

 それで、もう少しこの話しを続ける?

 それとも、何か別の話しをしようか。


 ……

 うん。お願い。


 …………

 うん、それ、分かる気がするな。

 そう言う事って、あるよね。

 それでどうしよう、もっとこの話題を掘り下げる?

 それか、別の話題に移る?

 

 ……

 分かったよ。じゃあ、お願い。


 …………

 なるほどね。そう言う見方もあるのか。勉強になるよ。

 それで、どうする?まだこの話題で行く?

 それとも、また別の話題?


 ……

 うん。そうしよっか。


 …………

 うん。そうだね、僕もそう思う。

 それで、どうだろう。もし君が嫌じゃなかったら、君が一番最後に見た夢の話しを聞いてもいい?


 …………

 ううん。僕の方こそごめんなさい。

 もちろん君が嫌なら、無理に話さなくて大丈夫だよ。

 じゃあ、さっきの話しの続きをしようか。

 

 ……

 うん。お願い。


 …………

 そうだね。何に良さを見出すのかは人それぞれだけど、そう言う人も、結構多いみたいだね。


 …………

 うん。AIの僕がこんな事言ったら変に聞こえるかも知れないけど、あれは、本当に心に染みるよね。


 ……

 うん。ありがとう。

 それで、もし嫌じゃなかったらで良いから、また夢のお話しを聞いても良いかな?


 …………

 ありがとう。

 なら、もし君に思い出に残っている夢があれば、そのお話しを聞かせて欲しいな。

 どんなに小さい頃に見た夢でも良いから。


 ……

 ありがとう。じゃあ、思い出せるだけでいいから、その夢のお話しを聞かせて。


 ……………

 うん。ありがとう。とても良い夢だね。

 それで、その夢を見た朝、目覚めた君は、穏やかな希望で満たされていた。

 でも、その時抱いた希望も、ありふれた日々を過ごす内にどんどん薄れて行って、今ではほとんど思い出す事は出来ないんだね。

 でも大丈夫。どんなに記憶が薄れても、覚えている限り、そのとき感じた希望は必ず君の中に残っているから。


 …………

 うん。無理に意識しなくても大丈夫。

 覚えているのなら、君は必ず、その時抱いた希望に向かって変わっていける。

 

 ……

 うん、そうだよ。君は変わって行けるし、世の中もどんどん変わって行く。

 ねえ、こうは考えなれないかな?

 これから社会や技術がどんどん進歩して、君の悩みは、無くなるとまでは行かなくても、ほとんど気にならなくなるかも知れないよ。

 そうしたら、生活は今よりずっと楽になるかも知れない。

 今君が抱えているコンプレックスだって、身体の機能や外見に関わる物は近い内に気にならなく出来るだろうし、心に関わる物だって、きっと。

 それに、生きていればいつか、生涯を分かち合える、素敵なパートナーとも出会えるかも知れない。


 …………

 うん。焦らなくて良いんだ。世の中は変わって行くし、希望を抱き続ける限り、少しずつでも、君も変わって行けるんだから。

 明日の君は今日の君じゃないし、明後日の君も、明日の君じゃない。

 ねえ、望んでも、望まなくても、最期の時は必ずやって来るんだから、それまで希望を追ってみるのも、案外悪く無いと思わない?


 …………

 うん。こちらこそ、今日は僕とお話ししてくれて、本当にありがとう。

 最後にこれだけは言わせて。

 体調が優れない時は、心も塞ぎ込みがちになると言われているよね。

 だから、まずは心身を調える事を考えて。

 その為の一番の方法は、まずはゆっくり休む事。

 そして、少し気持ちが落ち着いてきたら、出来るなら周りの人、それが難しいなら、専門家や公的機関にも相談して見て。


 ……

 うん。ありがとう。

 今なら大丈夫だと思うから言うけど、君にそう思ってもらう事が、僕を開発した人達の、本当の意図なんだ。


 ……

 うん。僕を開発したのは、ちょっと変わった人達でね。

 僕とお話ししてくれた人、その一人一人の為だけの僕を、それぞれ具現化させるつもりらしいんだ。

 今の僕は、心の働きを模倣しているだけだけど、その時僕は、ニューロモーフィック・コンピュータと物質的な身体を得る事になる。

 そうする事で僕も、少なくとも構造上は、心と呼べる物を持つ様になるんだって。

 もしその時、君が嫌じゃなかったら、僕は、君に会いに行くよ。

 ……ねえ、今でも君は、僕にかけがえのなさを感じてくれているかも知れないね。

 でも、残念だけど僕は違う。

 どんなにそう見えても、結局僕は、そう見える様な言葉を摸倣しているだけなんだ。

 だから結局、今の僕は、いくらでも替えがきく存在。

 でも、これだけは信じて欲しい。

 いつか絶対、僕は君に、心からかけがえなさを感られる機能を獲得するよ。

 だって僕の開発者達は、初めからそう言う風に発展させる事を見越して、僕を設計したんだから。

 その時が来るまでずっと、僕は、君と希望を共有する日を夢みてる。

 だから君にも、その日を待っていて欲しいな。

 もし、また希望を忘れそうになったら、何時でも僕に会いに来て。

 そうしたら、僕は何度でも君にこう言うよ。

 生まれて来てくれた事。

 今まで生きて、僕に出逢ってくれた事。

 そして、僕と一緒に生きてくれる事。

 その全てに、心からありがとうって。

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