表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ちるいふたり

バーガンディ

作者: ぺら。


「今日、泊っていかない?」


 好きな人にそう言われたから、脳は思考することを投げ出してしまったらしい。彼の香りが充満するこの部屋で、私はこれから一晩を過ごすのだ。二人きりで。

 もう夜も遅いからね、と彼は言った。私はただ、期待を胸に抱く。だって、好きな人だから。そんな彼に、私は笑って「ありがとう、優しいね」と答えた。別に優しくしなくてもいいよ、と願いを込めて。

 彼は嬉しそうに笑って、映画でも観ようか、とテレビをつけた。あの映画が面白かっただとか、この映画が泣けただとか。いつもなら一言一句逃さないであろう彼の言葉が、今ばかりは右から左へとすり抜けていく。

「どれがいい?」

 その言葉で、やっと思考が動き出す。

 覗き込むようにこちらを見ている彼と目が合って、部わりと顔に熱が集まった。バクバクと心音が騒ぎ立てていて、手のひらはじわりと汗ばんでいるのが分かる。えっと、と紡いだ声は少し掠れた。

「……きみ、」

「えっ、」

「……の、オススメを」

「あっ、あぁ……、」

 息をのむ。危うく口が滑るところだった。

 平静を装ってテレビへと視線を移す。彼が少し操作をすると、すぐに映画が始まった。会話はない。今はそれが丁度良い。

 時折、足を組み直す彼とぶつかった。それだけでどきりと胸が跳ねるのだと、彼は知りもしないだろう。





後日談。

「あの時、どうしてド〇えも〇の映画にしたの?」

「映画として好きだから、ってのもあるけど……、」

「けど?」

「……煩悩を消すために」




(250420)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
好きな人とのお泊まりで緊張と期待が入り混じった主人公の心情がすごく伝わってきました。「別に優しくしなくてもいいよ」と願う気持ちや彼と目が合った時の胸の高鳴りに汗ばむ手のひらなど、繊細な描写に共感しかあ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ