コンビニに行こうと言ってくれた教育係
新卒から働いた職場を体調不良で辞めた後、わたしは事務職に転職する。常に立ちっぱなしの仕事から座りっぱなしのデスクワークに変わった。オフィスにはデスクが島のように並んでおり、ドラマで見たことある光景だと感じた。
わたしの教育係は1歳下で新卒2年目のAくんだ。元バスケ部だというAくんは長身でスラッとしていて、ハーフかと思うくらい彫りの深い顔立ちだった。社会人2年目とは思えないくらいしっかりした人で、のちに彼女さんとの写真も見せてもらったけれど、美男美女だったのが印象深い。
ある日、わたしはいつも通り業務をこなしたけれど精神的な限界がきていた。クレーム対応をする部署なので常にお客様から電話越しに怒鳴られたり、理不尽なことを言われたり、理詰めされたりしたからだ。Aくんに業務について報告していた際、急に目から涙がぼろぼろ出てきて止まらなくなる。自分でも何が起きているかわからなかった。
「……大丈夫ですか? 何かありましたか?」
わたしの様子に気づいたAくんから声をかけられるも、うまく話せない。首を横に振るしかできなかった。やばい、引かれたかも。そんな気持ちだったのだ。
「……相沢さん、コンビニ行きましょう」
Aくんはわたしに息抜きでコンビニに行こうと提案してくれる。しかし涙でぐちゃぐちゃなまま席を立つこともできなかったので、わたしは再び首を横に振った。落ち着くまで座っていてくださいとAくんは言ってくれたけれど、わたしはトイレで涙を流す。
数分後、わたしは自席に戻る。心の中で見苦しい様子を見せてごめんなさいと思いながら。