兄弟喧嘩
7話目!
その後、トーナメントは進んでいった。ハルキは1回戦で敗退していたが、カグヤが準備室で次の試合の準備をしている間に試合は終わっていたのでカグヤは詳細は知らない。それに、カグヤの頭の中はそれどころではなかった。
(次の相手はラクか、、、)
カグヤの頭の中はそれでいっぱいだった。
「試合開始!!」
アナウンスが響き渡る。カグヤはラクと向かい合う。
「みんなに見てもらおうぜ、僕らの兄弟喧嘩!」
ラクが挑発してくる。
「兄として勝たせてもらう。」
カグヤも言い返す。
「じゃぁ、始めようか。」
「ラク、手加減はしないからな。」
「こっちもそのつもりだから安心っ!してくれ!」
速い。いきなり距離を詰められた。ラクが木刀で殴りかかってくる。
「ッ!速い!」
カグヤはそれを木刀で受け止める。昔からコイツのクセは知ってる。焦ると大降りになること。攻撃の前に一瞬体がぶれてからかかってくること。つまり、ラクはいつ攻撃してくるかがわかりやすい。
「避けられるか、、、」
この攻撃が無理だと確信した瞬間ラクは距離を取る。ラクはカグヤの能力の危険性を一番理解している男だ。ここで距離を取るのも当然だろう。
「、、、次は当てる。」
ラクの足元からツタが生え始める。ツタのツルはのびていき、カグヤの足を絡め取る。
「フッッ!」
ラクの足が馬のものに変形し、地面を蹴り距離を詰めてくる。
「命ノ刃!!」
咄嗟にツタを技を使って切り、ラクの攻撃を回避する。
「チッ!」
ラクが舌打ちし、カグヤは木刀を構える。
「次はこっちのターンだ。ラク、覚悟はできてるよな?」
カグヤの木刀が赤黒く光り始める。
「不滅ノ鎧!」
不滅ノ鎧、、、カグヤの防御技。命を削って自分の力を強化、体力回復。効果発動中はある程度の攻撃は無効化できる。攻撃された瞬間に再生ができるためだ。カグヤは前からこのような能力の使い道を考えていたが、使うのは今回が初めてだ。
「とっ!」
不滅ノ鎧で自身を強化したカグヤのスピードは凄まじく、ラクに距離を詰め、攻撃を仕掛ける。ラクは動揺し、攻撃をモロ喰らう。並の能力者相手ならこの時点でカグヤの勝ちだ。だが、ラクは吹き飛ばされるもそこまでダメージを受けてないようだ。
「アルマジロって弾丸弾き返すくらい硬いのよ。」
ラクの能力の厄介さはカグヤは理解している。ラクの能力は『生物』。植物や動物に体を変形、また、それらを召喚できる。万能の能力だ。弱点はほぼない。動物に詳しいラクは状況において能力を瞬時に使い分けてくるからなおさら厄介だ。
「あんたが自身にバフをかけるなら僕もかける。『獣装備』!」
ラクの頭から狐のような耳が生え、鞭のような尻尾も生えてくる。翼も生えてくる。目は鷹のような目になり、片腕はおそらくクマ、もう片腕は何かネコ科の腕だ。複数の動物の能力を同時使用している。
「僕はあんたに勝ちたいんだ!」
普段のラクはこんなやる気に満ちたセリフもはかないし、そこまでなにかに執着することもない、だらしないやつだ。
「なんだ?今日は珍しくやる気だ、な!」
距離を詰め木刀をまた振りかざす。ラクは木刀で受け止め、同時に攻撃をしてくる。木刀同士を数回交える。ラクが押されており、どんどん後ろに下がっていく。自身にバフがかかっているのでカグヤの一撃一撃は重い。
「っ!なかなかやるじゃん、カグヤ。だけど重要なことを忘れている。僕の強みは手数の多さだ!!」
いきなりタケノコがカグヤの尻めがけて生えてくる。カグヤはそれを避ける。タケノコは一瞬で竹になるまで成長する。カグヤが身をひいている隙にラクは竹を噛みちぎり、竹槍のようにする。
「おりゃ!」
そのまま竹槍をラクは投げつける。カグヤに当たるが、不滅ノ鎧のおかげでダメージはない。カグヤはすぐに刺さった竹槍を抜く。自身の傷は一瞬で癒える。
「やるな、、、」
ラクは翼で空を飛び、カグヤを見下ろす。その時、カグヤの全身に痛みが走る。ドクドクと心臓が鳴り響き、体が動かなくなる。同時にカグヤの不滅ノ鎧の効果が消える。
「っ!」
カグヤは倒れ込む。カグヤは知らなかったが、不滅ノ鎧は命を削って一時的に自身を強化する技だ。その代償として一定時間が過ぎて効果が切れると自身の体力は著しく低下し、一定時間動けなくなる。
(まずい!このままじゃ負ける!)
カグヤの状況に気づいたのか、ラクはにやりと笑う。
「あれれ〜?カグヤはバテちゃったのかな?じゃぁ、トドメ刺して僕が勝ち上がるからゆっくり休んでおきなよ〜。それじゃ、バイバイ。」
そういうとラクは大量の鳥を召喚した。おそらくそれを突撃させてカグヤを倒すつもりなんだろう。カグヤはそれを待っていた。
「待ってたよ、ラク。ありがとう。」
周囲の空が闇に変わる。ラクが召喚した鳥たちが人魂のような形になり、カグヤの胸のあたりに吸い込まれていく。
「『命蝕』この技はあまり使いたくなかった。俺の道徳心が傷つくからね。だけど、前にラク、自分が出す動植物はあくまで動植物のようななにかでありそのものに意思はなく、この世界に存在しているだけのものって言ってたよな?だから吸い込んでも問題ないと判断した。」
『命蝕』、、、自分の周囲にある自身より寿命の短いものの命を吸い取り、自身にバフを掛け、それと同時に自身の寿命を伸ばす技。自身の寿命を削って戦う能力であるカグヤのたった一つの自身の寿命を伸ばす技。さらに、今回はラクの攻撃の無効化にも使えた。
「なっ!」
ラクが動揺する。まだ、なぜ自身が召喚した鳥たちが消えたのか理解してないようだ。その隙にカグヤは地面を蹴り、ラクが飛んでいる高さまで跳び、木刀でラクを叩き落とす。そのまま地面に転がっていくラクを追い、ラクの首筋に木刀をピタっと止める。
「俺の勝ちだ。」
「ッ!」
会場内に声援が響き渡る。カグヤは周囲を見渡し、自身の勝ちを実感する。そして、そのままラクを見下ろす。すると、ラクが下を向いたまま話し始めた。
「言いたいことがある、、、あのさ、僕はあんたに勝ちたかったんだ。憧れてた。いつもその背中を僕は追いかけていた。一緒にいるとどこか安心感を与えてくれて、みんなから慕われるその背中を。それで、心配だった。僕はカグヤの能力をよく知ってる。弟だもん。命を削ってまでこんなトーナメントに参加して戦う理由が僕にはわからなかった。なんで自分の命を大事にしないのか分からなかった。だから、勝ちたかった。勝って止めたかった。そして、その背中を超えたかった。」
ラクの半分涙声になって語る思いを聞き、カグヤはビクッとする。
「僕の能力はいわば生命を司る能力なんだ。だからそこまで命を削る理由を理解するのは難しい。僕の価値観では理解できない。」
「、、、お前は俺の背中をずっと追いかけてたんだな、、、なら、俺が戦う理由はその背中であり続けるためだ。俺は星野イオから期待されている。そして、お前たちからも。俺は後輩に追いかけられる背中であり続けたい。だから、俺は命に変えてでもその背中を守り続ける。」
「、、、ッフ、、、狂ってる。じゃぁさ、絶対に負けないでね。僕の、僕らの、後輩たちの背中であり続けてね、カグヤ。」
カグヤはラクに手を差し伸べるラクはそれを握り、立ち上がる。そして、二人で試合場を後にした。
今後大事なストーリーになる予定なので頑張ってかきました。伝わりづらかったと思いますが、どうか許してください!まだ未熟者でして!