40.『人形使いと動物使い』
大阪編第2話!第3章は大阪編を入れて4つの編で構成します!
「新大阪駅、遠目で見てもヤバいじゃん!ラク、大丈夫か?」
「クソ先輩、急ぎましょう!」
アラタとハルキはそれぞれの能力で風のように大阪の街中を移動していた。アラタは自身の脚力で、ハルキは風の力で空を飛んで。今は新大阪に残っている後輩...ハルキにとっては同級生の親友を助けに行かなくては。
「クソ先輩、速度上げて良いから、速く!ラクが!」
「言われなくても分かってる!遅れてでも良いから来いよ?」
「いいからh...ゴボッ!」
アラタが速度を更に上げようとした瞬間、ハルキの声が中途半端な部分で途切れた。アラタが振り向くが、ハルキは影も形もない。
「...は?」
アラタは足を止め、急ブレーキをかける。
ハルキが...消えた?そんなはず無い。いくら風の能力とはいえ、そんな速く移動できるわけがない。となると......
「何処だ...?」
アラタは辺りを凝視する。敵だ。間違いないだろう。音はしない。人の気配もしない。夕方で暗くて見えづらい。
「クソ先輩!後ろだ!避けろ!」
突然ハルキの声がした。アラタはその声と共に反射的に地面を蹴り、するりと5mほど離れた場所にネコのように着地する。それとほぼ同時に何かの影がアラタの隣を通り過ぎていった。
砂埃が舞う。その砂埃の中から、ひょろりと痩せた、高身長の男が死んだ顔でコツ、コツと姿を表した。
「お前は...誰だ?」
アラタは腰にくくりつけていたトンファーを手に取り、構える。
「.............」
「答えろよ!」
アラタは叫ぶ。男は全く喋らない。
「先輩、マジで危なかった。俺、受身取ってなかったら大怪我してた!」
ハルキがスタッとアラタの隣に着地する。服の腹の部分が破けていた。
「俺の名前は.....コラプス....そう.....呼ばれている......」
男はやっと喋った。
「自己紹介ありがとな!コラp...」
「あの方は....俺に.......神木の協力者を......捕らえろと....。」
男はアラタのセリフを無視し、話を続けた。話しながら男は地面に手を付ける。
「死なない程度に....痛めつけて....」
「はっ?!」
咄嗟にハルキはアラタを抱えて飛んだ。
「ちょっ、いきなりお前!って.....えぇ?!」
アラタは目を丸くした。というのも.....さっきまで自分が立っていたはずの地面が無くなっていたからだ。
「....ラクの援護よりこいつのほうが先だな。」
「同感!」
ハルキの言葉にアラタは食い気味に大声で叫んだ。本当にハルキの意見に賛成したのもあるし、第一に先輩である自分がハルキに仕切られるのは嫌だったからだ。
「死ね、緋ノ宮ラク!」
「殺してみろや!」
ラクはマリオネットの猛攻を避けながら、さらにアカネを庇いながら戦闘を続ける。ミナトは何処か別の場所にワープしたようだ。駅のホームにはラクとアカネだけが残っていた。
「みんな、喰らい尽くしちゃって!」
ラクが両手を広げるように上に上げる。それと同時に何処からとも無く大量のネズミが召喚され、マリオネットの『人間粘土』を喰らい始める。もう原型を定めてないとはいえ、元は人間。血しぶきが上がり、だいぶグロテスクだ。アカネはラクの後ろで口を抑える。
「ふんッ、鬱陶しいわね、あなた。」
マリオネットは明らかにイラついた様子でラクを睨む。ラクは大型動物も複数体召喚し、壁にする。大型動物に隠れながらラクはアカネに敵の説明をする。
「あの女は『マリオネット』。本名は知らない。少し前に真剣組と戦った相手だ。ニュースにもなってたから知ってるんじゃないかな。あの時は多くの被害を出された上、逃げられた。アイツに触れられたら負けだ。操られる。そういう能力だ。アカネ、悪いけど逃げてくれる?ミナトみたいに。キミの能力が近距離か遠距離か知らないけど、危険すぎる。」
「オレも戦....」
アカネは食い気味にラクに言うが、途中で言葉を止める。ラクは、アカネの事を遠回しに足手まといだと言っているのだ。邪魔するわけにはいかない。
「....分かった。オレ、逃げるよ。だから、一つだけ。勝てよ?」
「あったりまえだ。」
ラクは手をパチンと叩く。すると、ラクの隣から馬が現れた。
「コレに乗って逃げな。」
「すげぇ!本物か?!」
アカネはラクのすごさを改めて実感する。召喚系の能力者はこんなにすごいのか!
「いや、どこまでもよく出来た偽物だよ。この子達に感情はない。僕の命令に従うだけ。僕が欲しい時に召喚できるし、いらない時は消すこともできる。この子もアカネを逃がす役目を終えたら消えるよ。」
「そっか〜、よっと。」
「乗るの、結構高いから難しいでしょ。ちょい待ってて。僕が持ち上げるから。」
ラクはアカネをすっと持ち上げて、馬の上に乗せてやる。
「じゃ、気をつけてね。」
「おうよ!」
ラクが手を降ると、馬は走り出し、駅のホームから飛び出し、ビル郡の中に消えていった。
「....さてさて、なんで今、攻撃しなかったんだ?僕、隙まみれだったし。まさか僕が召喚した動物に手こずったわけじゃないだろ?...てか、少し目を離したうちにみんな死んでるな。召喚解除。」
ラクは振り向いてマリオネットを睨みながら、倒れている動物たちの召喚を解除する。
「だって、そんな不意打ちしても面白くないもの。本気で戦いたいもの。因縁の、相手だから。」
「そりゃどうも。」
ラクは指をパチンと鳴らす。それとともに今度は鳥が召喚される。
「突撃!」
ラクの掛け声とともに鳥たちがマリオネットに突っ込んでいく。マリオネットは微動たりしない。鳥の群れがマリオネットから1mもしない距離に近づいた時、マリオネットは「ふんっ」と笑った。
「カァ!」
カラスの鳴き声が響き渡る。他の鳥の鳴き声もたくさん。駅のホームに血しぶきが上がる。ラクの『人間粘土』への攻撃もあって、もうホームは真っ赤だ。その赤の上にまた赤色が落とされる。
「こんなことも、出来るようになったのよ。」
鳥たち1羽1羽がみな、腹にトゲのようなものが貫通している。『人間粘土』の応用だろう。
「...召喚した動物では歯が立たないらしいね。なら、僕自身が行くしか無いか。」
ラクは息をスーッと吐いて、目を瞑る。
「....獣装備、改!」
ラクの体が鎧のようなもので覆われる。背中は甲羅のようになり、トゲトゲがついている。尻尾が生え、その尻尾はハンマーのようだ。左手はクマのようで、右手は大きな鈎爪のようだ。両足は恐竜のソレで、コチラにも大きな鈎爪。目も鷲のような目になっている。
「....なんとも醜い姿ね。」
「だろ?僕でもそう思う。生物の様々な特徴を自分が合わせるって、生物への侮辱って言われてもしょうがないと思う。キメラだからね。」
ラクはそう呟いて、地面を蹴り、マリオネットに飛びかかる。そして、顔に向かって鈎爪で引っ掻こうとする。
「フンッ!」
案の定、人間粘土のトゲがラク目掛けて飛んできた。ラクはソレをクマの腕で殴り、そのまま落下してマリオネットの顔を引っ掻いた。
「ッ!」
「オラオラ!」
ラクはそのままマリオネットを殴りつ透ける。マリオネットはラクに向かって手を伸ばし、触れようとする。が...手が動かない。
「なんで?!」
「お嬢さん、後ろをご覧くださ〜い!」
ラクは悪い声でマリオネットに言う。マリオネットが振り向くと、地面から生えたツタが自身の手に巻き付いていた。
「ッ!小細工ばっかり!死ね!死ね死ね死ね!」
人間粘土を操ってマリオネットはツタをちぎる。それと同時に、ラク目掛けて人間粘土が覆いかぶさろうとしていた。
「当たるかよ!」
「逃さないわ!」
ラクは気づいて避けようとする。地面を反復横跳びのように蹴り、上から迫りくる粘土から逃れようとする。しかし...
「ッ!」
「甘いわ!」
ラクの逃げ道を、人間粘土の壁が塞いだ。
「クソッ!」
ラクに、大きな人間粘土の塊が覆いかぶさっていった。
何も見えない。聞こえない。痛い。情報が分からない。速く出ないと。痛い。脱出方法はなんだ。とにかく体を動かさないと。痛い。あれ?なんで?なんでだ?痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い.......感覚がない。おかしい。痛い。そうだ、再生だ。僕には再生能力がある。治して...痛い。分かった。腕を粘土の中で引っ張られているんだ。引きちぎられたんだ。そうだ、再生だ。痛い。再生、痛い。再生、痛い。再生、痛い。再生、痛い。再生、痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。再生。痛い。痛い。痛い。痛い。再生。痛い。痛い。痛い。なんで?再生。痛い。痛い。まさか。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。再生した瞬間に。痛い。痛い。痛い。痛い。引きちぎられている?痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。ダメだ、もう再生能力を使いすぎた。疲れた。痛い。痛い。痛い。ヤバい、このままだと死ぬ。痛い。痛い。ダメだダメだダメだ。再生能力を止めるな。痛い。痛い。痛い。痛い。再生、痛い。痛い。誰か、痛い。痛い。苦しい、痛い。痛い。痛い。意識が、痛い。痛い。痛い。なんだ?音がする。痛い。痛い。爆発音?なんで?痛い。痛い。痛い。苦しい。息もできない。そうだ、息、息しないと。酸素が薄い。痛い。痛い。ッ!誰か、助けて.....
「ゴバッ!」
ラクの視界に光が広がる。もう再生能力は使えない。体力がもうない。右手の感覚がない。左手は....変な方向に曲がってるな。光、僕、死んだのか?
「おい、ラク。聞こえるか?」
ラクの視界がそっと広がる。聞き覚えのある声。
「ミナト君だっけ、コイツを避難させてやってくれ。」
一週間ぶりだな、この声を聞くのは。
「ラク、よくやった。後は『先輩』に任せておけ!」
「ソウヤ....先輩....」
ラクは左目を開けて見ようとするが、ぼやける。人間粘土が迫ってきている。しかし、その粘土はラクに触れる前に穴が相手崩れたり、爆発したりしている。
真剣組メンバー、銃の能力者、雨宮ソウヤ。ソウヤは血まみれになって体がボロボロ....本当に何個か体の部品がなくなっている後輩をミナトに避難させ、マリオネットの方を向く。
「じゃ、第2ラウンドだ。」
ソウヤはアラタ達を心配していた。カグヤの死後、霧里町のあの事件以降、真剣組はバラバラだ。ソウヤはそんな真剣組メンバー一人ひとりと連絡を取り、消息を把握していた。ミクは早乙女邸、タカマは自分の家、ヒビキは自分の家。そんな感じだ。しかし、何処にいるかわからない奴ら、消息を断ったのが三人いた。アラタ、ラク、ハルキ。この三人だ。ソウヤが電話をかけても出てこない。メールも無視。SNSのDMも全部無視。完全に避けられている。ラクとハルキはスマホのGPSも分からなかった。しかし、アラタだけは分かった。アラタはGPSアプリを消していなく、ソウヤとつながったままだったのだ。アラタがバカで助かった。ソウヤはそれでアラタ達の居場所を突き止め、大阪まで来ていた。するとこの騒ぎだ。ソウヤはパニックになっている一般人たちをなだめようとしていたところ、一人の少年に話しかけられた。ミナトと名乗るその少年は真剣組のファンだという。今、新大阪でラクたちが戦っている。アラタとハルキは何処にいるのかわからない。ラク一人だけでは勝てないから、助けてほしい。ざっとそういった内容だ。ソウヤはソレを聞いて、相槌を打つ前に駅のホームへ走り出していた。
9月15日、午後19時
_____まだ、死にたくない______
左手の感触がない。おそらく斬られたのだろう。右目も痛い。開けれない。いや、開けているのに見えない。僕は本当にこんなところで...
マリオネットなんかよりこのコラプスとかいうやつのほうが今後のストーリーでよっぽど重要キャラです。




