2度目の人形劇
久々の更新です!ここから第3章!
9月15日、午後19時
_____まだ、死にたくない______
左手の感触がない。おそらく斬られたのだろう。右目も痛い。開けれない。いや、開けているのに見えない。僕は本当にこんなところで...
同日、午後1時
「うわー、めちゃ速い!すげぇ!」
ラクは新幹線でテンションが上っていた。乗ったことは何回かあるが、それでもテンションは上がるらしい。
「そんなに楽しいか?」
アラタとハルキはそこまでラクに共感できなかった。アラタは自身の肉体を爆発的に速くする能力の持ち主であり、ハルキは風を操る能力で自身の動きを速くできるため、これくらいの速度には慣れている。
「ラクはこんな速度出せないのか?」
アラタはラクはこの速度に慣れてないからこんなに楽しそうなのだと思って聞く。
「いや?出せるよ。ハヤブサの能力で時速300キロくらいは...」
「出せるのかよ!」
ハルキがすかさず突っ込む。
「じゃぁ、なんでそんなに楽しそうなんだ?」
アラタの質問にラクは少し考える。
「何ていうんだろう...何ていうか、スゲーってなるんだ。この新幹線って発明は僕らが能力者になる何十年も前のモノだ。なのに、この速度が出せる。それってすっごいことじゃない?僕はs...」
「あのー、すみません、真剣組っすか?」
ラクの言葉を遮って向かい合わせにしてあるアラタ達の座席の後ろから声が聞こえた。アラタが振り向くと、ボサボサな灰色髪の中性的な見た目をした少年が顔を座席から乗り出してこっちを見ていた。
「うわぁ!本物だ!嘘じゃないっすよね?!こんなところで会えるなんて!」
少年は目をキラキラさせながら喜んでいた。
「ったく。うっせぇなぁ。オレの存在忘れて騒ぐな。ミナト。それに自己紹介ぐらいしろよ。」
後ろから気だるそうな声がミナトの隣の座席から聞こえた。何処かで聞いたことある声。その声の主も座席の上から顔を出した。パーカー姿の茶色いショートボブ。ショートパンツの少年...否、少女だ。
「久しぶりだな。真剣組。...つっても、1週間しかたってないけどな...」
アラタとハルキは目を見開く。この少女のことは知っている。あの時の少女...真田アカネだ。
「...誰?」
面識がないラクはアカネを指さしてアラタとハルキに尋ねる。アラタは驚いた顔を次第に緩めていき、少し笑みを浮かべた顔でラクに言う。
「緋ノ宮カグヤが最後に助けた少女、真田アカネだっ。」
ラクはそれを聞いて驚いた顔をする。
「この娘が...カグヤが最後に助けた...」
ラクの目が潤んでくる。
「カグヤが...カグヤが助けた...」
「おうよ。真田アカネ、13歳。能力は『紅雷』。電気を操れる。けど、時間制限があって1日の使用できる時間が決まっている。だから持久力がないのが弱点の能力だ。アンタは?」
ひょこっと座席から降りてテクテクとアラタたちの座席のところまで歩いてきたアカネはラクの涙に気づいてないのか、そのまま自己紹介をした。
「僕は...緋ノ宮ラク...緋ノ宮カグヤの...弟だっ!」
ラクは無理に作り笑いをして顔を上げて、アカネに手を差し出した。
「おうよ、よろしく!」
アカネはラクの手を取った。まだ小さいその手で、ラクと握手をした。
「今度は俺の存在忘れてない?」
少年の声がする。
「すまんすまん。忘れてた。ほら、オレの隣に立って挨拶しろよ。」
アカネと同じく座席から降りた少年はアラタたちにぺこりとお辞儀をした。そして...
「俺、真剣組のファンなんっす!ニュースとかネットとかで、めっちゃかっこいいなって思ってました!いや、マジで嬉しいっす!」
少年はアラタの手を無理やり握り、上下に激しく振った。
「おい、自己紹介しろ。」
アカネが少年を少し蹴る。
「あっ、初対面なのにすみません。俺、真堂ミナトっていう名前っす。ミナトで構いません。学年は中3っす。よろしくお願いします!」
「ちょっ!激しい!痛いから!やめ、やめてっ!」
ミナトはまたアラタの手を上下に激しく振った。アラタはものすごい勢いで上下に手を振られるので痛く、話してもらおうと必死だ。
「あっ、すみません!怪我は無いっすか?」
ミナトはアワアワと心配そうに手を離す。
「っ、ねぇよ。で、俺達に二人揃って何のようだ?」
アラタは手をフリフリしながらアカネとミナトの方を見る。向かい側の席に座っているラクとハルキもジッと二人を見つめていた。
「言い遅れました!俺達の要望は...」
ミナトは口元をキリッとさせ、アラタの方を見つめる。そして...
「俺達を真剣組に入れてください!」
ミナトはまた頭を下げた。隣りにいるアカネも頭を下げている。
驚いた。カグヤが創ったこの団体に入りたいと自分から志願する人がいるなんて。彼らも真剣組がどれほど危険なところを歩いているのか知っているはずだ。なにせ、リーダー含めてメンバーが二人も殉職している団体だ。まともな人間ならそんな団体に入りたいと思わないだろう。だが、この少年と少女はそれを希望しているのだ。まともだとは思えない。それでも、カグヤの人助けの意志が他の人にも伝わっているのだと思うと嬉しい。ぜひとも入団してもらいたい。だが...
「...ダメだ。」
アラタは首を横に振った。彼らにとって危険すぎる。それに...
「今、真剣組は活動してないんだ。カグヤ先輩が死んでから、もう誰も真剣組の活動をしていない。」
「で、でも兄ちゃんらはこうして新幹線でどこか行こうとしてるじゃねぇか!これは真剣組の活動じゃねぇのか?」
アカネは慌ててアラタに訊いた。
「あぁ。真剣組の活動ではない。俺と、ハルキと、ラクが勝手に動いているだけだ。」
アラタは即答した。
「そうっすか...なら、しょうがないっす。じゃぁ、俺達はあなた達について行きます。」
ミナトが顔を上げてそう言った。
「はぁ?お前、今の話聞いていたのか?」
ハルキがミナトに言う。
「えぇ、ちゃんと聞いていました。だから、俺達は真剣組にはついていかないっす。あなた達に勝手についていくだけっす。」
つにこにこでミナトは席に戻っていった。後を追うようにアカネも歩いていく。
「ちょっ、おい!」
「...変な奴らだなぁ。」
アラタが慌ててミナトらを止めようとし、ハルキが他人事のように呟く。
「あのさ、ちょっとあっち行って良い?僕、あの子達ともっと話してみたい!」
ラクは目をキラキラさせながらアラタに言う。
「お前なぁ...いいよ、行ってこいよ。」
「よっしゃぁ!」
ラクはルンルンでミナトたちの座席に移動していった。
「うわぁ!」
新幹線がいきなり急ブレーキをした。
「ただいま緊急停止信号を受信したため、急停車いたしました。状況を確認しております。次の案内をお待ちください」
新幹線の中でアナウンスが響く。どうやらなにかトラブルが有り、新幹線が止まったようだ。
「何事だ?」
アラタがパニックになる。
「ちょっと待ってて。何があったか調べるから...」
ハルキがスマホで調べる。そして、表情が固まる。
「おい、どうした?」
アカネとミナトを庇うように支えていたラクがハルキに言う。
「...大阪で爆発事故があったらしい。すごい大変なことになってる。」
ハルキが小さな声で、でもはっきりと言った。
「爆発事故?」
アラタがハルキの言ったことを繰り返す。
「あぁ、原因不明だって。」
「いやー、こんなところで足止め喰らうなんてね。」
真面目なアラタ、ハルキとは対象にラクは他人事だ。アカネといっしょにババ抜きを続けていた。
「お前、余裕そうだなぁ...」
「なんだ?心配したら解決するのか?」
ラクはアカネからカードを位置枚ひく。
「そうじゃねぇじぇどさ...」
「ほら!オレの勝ちだ!兄ちゃん!」
ハルキの話を遮るようにアカネがラクに向かって煽る。ラクは黙ってジョーカーが入った束を捨て札のところに投げた。
「しょうがねぇ、今日は大阪で泊まるか。」
新大阪駅のホームでアラタはハルキとラクに向かって言う。ハルキとラクはアラタの話を聞かずにスマホで美味しい料理店を探していた。
「お前ら、楽しむ気満々じゃねぇか。」
「せっかくこうなったんだし、楽しまないと損だろ?アラタ先輩は楽しまないのか?」
「そんなの...楽しむに決まってるだろ!」
アラタもラクたちと一緒に美味しい料理店を探し始める。その時、ミナトがゆっくりと手を上げた。
「あの...俺の能力で、東京まですぐいけるかもっす。」
「「「...は?」」」
三人の返事が重なる。
「俺、能力がワープホールなんっすよ。一度言ったことがある場所ならワープホールが開けるっていう能力っす。だから、俺、東京は行ったことあるから...」
「大丈夫大丈夫!俺ら、全然楽しめるから!せっかく大阪で足止め喰らったんだし?もうすぐ日もくれてお腹も空いてきたし?俺らにとっては別にそこまで苦じゃないっていうか?」
ハルキはよほど大阪を楽しみたかったのだろう。慌ててミナトに言い訳をしていた。
「じゃぁ、オレも兄ちゃんらとご飯食べていいか?」
アカネが話に割って入る。
「良いよ!大歓迎!」
アラタとハルキのどちらかが断る前にラクがアカネを迎え入れた。
「とりあえず、どの料理を食べるか...」
「キャー!」
少しはなれた階段の下から悲鳴が聞こえた。
「なんだ?」
「うわーっ!」「ヒィ!」「く、来るなぁ!」
悲鳴の音はどんどん増えていき、近づいてくる。アラタ、ハルキ、ラクはアカネとミナトを守るように立つ。
「...何だアレは?!」
階段の下から、動物の肉のような、粘土のような物が迫ってきていた。触手に見えなくもない。ラクは両手をヒグマのものに変形させ、その『何か』に向かって走り出した。アラタもそれに続く。ハルキはミナトとアカネを守ることに集中していた。
「オラ!なんだコレ!気持ち悪!」
ラクは引っ掻いたり噛みちぎったりしながら喋る。
「どんどん来るぞ!」
アラタも速度を乗せた打撃で攻撃するが、『何か』は減るどころかどんどん迫ってくる。
「皆さん!俺の声が聞こえるっすか?避難してください!」
突然、ハルキの後ろから声がした。ミナトの声だ。ハルキが振り向くと、そこには手を後ろのかざしているミナトが立っていた。彼の手の先には人が通れるほどのワープホールが開いていた。
「お前、なかなかやるな!」
アカネが嬉しそうに言う。
「アラタ先輩、この変なのは僕が引き受けます。だから、先輩はミナトのワープホールを通って、一般人の人たちと避難しておいてください!僕も後から追いつきますから!」
ラクが『何か』を砕きながら言う。
「そうだな、任せたぞ。」
アラタは攻撃の手を止め、少しはなれたところでその『何か』に潰されそうになっていた少女を拾い上げてワープホールの中に入っていった。それに続くようにハルキも誘導する。ラクはライオンやヒョウなどを召喚し、自身の戦力に加え、『何か』を足止めする。
「ミナト、もうみんな逃げたか?」
「はい、アカネと俺以外はみんな逃げたっす。」
ラクは『何か』の一欠片を粉砕して、ミナトに言う。
「じゃぁ、お前も逃げろ。ここは僕が引き止めるから...」
「あら、あなた一人でコレを対処できるとでも?随分舐められたものね。」
『何か』の中から突然声が聞こえた。ラクは咄嗟に『何か』から距離を取り、アカネとミナトの前に立つ。
「久しぶりね、緋ノ宮ラク。この前は、よくもまぁ、やってくれたわね。」
聞き覚えのある声。憎い声。嫌な思い出を掘り返してくる声。
「...マリオネット、お前...」
『何か』の中から少女が姿をあらわす。年齢はアカネと同じほど。見た目も前、見たときと同じ。違うことと言えば...
「私はあなたをずっと憎んできたの。今度は絶対に殺すわ。」
目が、光っていた。
「皆さん、俺の方についてきてください!コッチ側です!」
アラタの誘導に数十人の人たちがついていく。ハルキも一緒に誘導している。
「今、星野イオに連絡した。時期来るってさ。あと、ミナトのワープホールが突然閉じた。あっち側でなにかあったっぽい。速く戻らないと。」
ハルキはアラタに報告する。
「分かった。とりあえず、この人たちを何処かの建物の中に避難させよう。その後、大阪駅に戻ってラクの援護。ミナト、結構良いところにワープさせてくれたな。新大阪駅から確かにはなれているが、俺達速度系の能力者なら戻れる距離。絶妙だな。」
アラタはそう言ってビルの中に人々を避難させた。
「みんな、神環の方には俺達が連絡した!時期、ここに救助隊が来るはずだ。俺たちはもう一度あの駅に戻って仲間を助けて来るけど、みんなはもう大丈夫だから!救助隊が来るまでの辛抱な?」
アラタは声を張り上げて人々に言った。
「先輩、速く行こう。」
ハルキは地面を蹴り上げて飛行を始めた。それに続いてアラタも足に力を貯める。
「じゃ、みんな、また会おう!」
アラタは少し格好をつけて走り出した。
「....ずいぶん強くなったな、マリオネット。」
「もうあの時とは違う。私の能力はね、触れたものを操る能力なの。そしてね、覚醒したら、触れた人間の形も自由自在に操れるようになったの。そう、あなたがさっきまで砕いていたの、人間。明確に言えば、『人間だったもの』だけど。」
ラクはマリオネットを睨みつける。
「大方、お前がその変なのから出てきた時点で察していたけどな。」
「マジで?!あれ人間なの?!オエッ!」
かなり冷静なラクとは真逆で、アカネは動揺していた。
「あなたに毒を入れられて、私はあれから後遺症みたいなのが残ってるの。あなたが憎い。だから、素直に私の駒になって、死んで?」
マリオネットは冷たくラクに言い放つ。
「...今度こそ、お前を倒す。」
ラクはそれに応え、マリオネットに飛びかかっていった。
コメントしていただけたら嬉しいです!




