魔法使いの骨
第2章ラスト!
「骨?」
ハルキが食いつく。
「あぁ、明確に言えば遺骨だ。8人の魔法使いのね。」
本当に神木という少年は何を考えているのか分からない。
「8人の魔法使いというと...?」
アラタも興味を示した。
「あぁ。この世界樹をつくった魔法使い、知能の魔法使いもその一人だ。他にも、炎、水、生物、電気、空気、光、陰がいる。1000年以上前に実在し、世界各地で有名になっていた魔法使いたちは他の魔法使いたちに自慢するためにそれぞれの得意とする魔法を極め、自慢し合っていたという。この世界樹も、その自慢の一つだ。だけど、そんな彼らも年には勝てずにみんな死んだ。彼らの遺骨は世界中にある。すでに炎、電気、光、知能の魔法使いの遺骨は世界樹に吸収してある。僕は彼らの力を世界樹に集め、その力を使って『人間』になろうと考えているんだ。」
神木は嬉しそうに言った。
「僕は人間に近しい存在だが、人間ではない。あくまで世界樹の精霊のようなものが僕だ。僕は知能の魔法使いに創られただけあって、『人間』というものに興味があるんだよ。」
要約すると、神木は人間ではない。だが、人間になりたい。そのためには8人の魔法使いの遺骨が必要だから集めてきてほしい。ということらしい。
「...まぁ、闇の帝王、シンの過去も聞けたわけだし、その要望を聞くのが道理ってやつだよな。」
アラタは根っこに座りながら神木に言う。
「わかった。その依頼、俺、獅童アラタと、後輩の佐倉ハルキ、そして緋ノ宮ラクが引き受けよう!」
アラタはニヤリと笑いながら宣言した。
「そうこないとな、アラタ先輩!」
ハルキもやる気十分だ。
「は?僕も巻き込むなよ!」
ラクはアラタに怒鳴り、世界樹の間から帰ろうとしていた体をアラタの方に向け、睨む。
「で、残りの遺骨はどこにあるんだ?」
アラタはラクを無視して話を続けた。
「えーと、一つはアメリカのニューヨークにある。もう一つはヨーロッパの自治区であり人工島、ノルトハーヴェンに。残り2つは南極にあるはずだ。」
「南極?!」
ラクがいきなり神木に駆け寄っていく。
「おい!今南極って言ったか?なぁ!」
ラクは神木の襟を掴み、揺さぶる。
「あぁ。言ったよ。」
「つまり、南極にその依頼に乗れば行けるってことだよな?」
「まぁ...行かないと遺骨は手に入らないしね。」
「っ!分かった!緋ノ宮ラク、その依頼を承ったよ!」
ラクは喜びを隠せない表情で手でグッドサインを作り、笑う。先程まであんなにやる気がなかったのにもかかわらず。
「にしても...どうやって世界中に行けばいいんだ?俺達はあんまりお金持ってないし、真剣組の予算を使うにしても真剣組は今は活動休止状態。勝手に使うわけにもいかない。」
アラタは顎に手を当てる。
「それなら問題ないよ。僕が金を出そう。」
神木が言う。そして世界樹のくぼみの中に手を突っ込んで大きな袋を取り出し、アラタたちに投げる。
「何百年も前の通過しか持ってないけど、売ればそこそこの金にはなるはずだよ。」
中には金貨や銀貨、銅銭などが入っていた。
「おぉ!すっげぇ!!!本当にもらっていいのか?!」
アラタは興奮気味だ。
「あぁ。なにせ僕の願いを聞いてもらっているわけだし。」
しばらくして3人は世界樹の間から出て、ファミレスに入った。そこでご飯を食べながら皆で話し合いを始めた。
「なぁ、これからどう動く?依頼を承ったはいいものの、俺達三人では少し無理がないか?」
ハルキはジュースを飲みながらアラタに言う。
「だけど、遺骨を集めたいからとか言ってまたみんなに集まってもらうのも違うと思う。カグヤ先輩とトモヤ先輩が死んだのに他のメンバーにまた危険な目に合わせるわけにはいかない。」
アラタは頭を抱える。
「今、ぱっと考えて僕たちの力になってくれそうな人は...早乙女リリアくらいだな...」
ラクがピザを切りながら言う。
「まぁ、最悪3人でも行けるだろ。それぞれ手分けしよう。ニューヨーク、ノルトハーヴェン、南極。さ、どれがいい?」
アラタはフォークでカルボナーラをクルクルしながら二人に問いかける。
「僕はもちろんなんk...」
「俺、南極がいい。」
ハルキが言う。
「...えっ?」
ラクは悲しそうな目でハルキを見つめた。
「ごめん、冗談。ラク、そんな悲しそうな顔するなよ。」
「それじゃ、ラクは南極で決定な。ハルキ、お前は結局どこにするんだ?」
「そうだなぁ...俺はどっちでもいいんだけど...アラタ先輩は?」
「俺はニューヨークかな。一回行ってみたかったんだよな。」
「じゃぁ、俺はノルトハーヴェンでいいよ。」
三人は無言でしばらく料理を食べる。
「...南極、どうやって行くの?」
アラタがラクに言う。
「......観光ツアーで...」
「でもさ、ツアーなら途中で人が抜けたりしたら大変なことにならないか?場所が場所だし。」
アラタのセリフを相手に、ラクは三秒ほど黙る。
「なら、チリまで行ってそこから飛んで行くか、国の研究機関についていくか...」
「国の研究機関についていくとかお前、できるの?」
「一人心当たりがある。その人に頼めれば行けるかもってところ。飛んでいくのは体力使うし嫌だから、観測隊に同行できるならそうしたい。」
再び三人は無言に陥る。
「とりあえず、東京に向かおう。成田行って、そこからニューヨークとノルトハーヴェンは行けるはず。」
ハルキが食べ終わり、最初に口を開いた。
「そうだな。いつ出発?僕は明日でもいいんだけど...」
「明後日でいいか?」
ラクが答え終わる前にアラタが言った。
「出発する前に会いたい人がいるんだ。」
アラタは真面目な顔で二人に言った。
9月14日 午前10時
「......来ちゃった。」
ラクとハルキは二人でアラタを追跡していた。アラタがどうしても会いたいと言う人をひと目見てみたかったからだ。どんな人が来るか気になる。これは好奇心だ。ラクはカラスに変身し、アラタを追いかける。ハルキはラクをの場所からアラタの場所を特定しつつ、一般人のふりをしながら追跡する。
「ごめん、待った?」
アラタは駅前の広場で一人ベンチに座っていた女性に話しかける。
「いや?全然待ってないよ!」
女性はサングラスをかけており、帽子を被っている。身長は高く、胸は大きい。
「カー!カー!」
ラクは鳴きながら近くの電線の上にとまった。ハルキも少し遠くからアラタを見ていた。
(やっぱり見た目で選んでやがるな、この男。)
ラクは心のなかで笑う。ハルキはどんな人か知りたいという目的は果たせたし、興味をなくしつつあった。
「じゃ、一緒に行こう。一緒にご飯を食べに行こう。」
アラタが女性に言う。そして、女性に手を差し伸べる。
「...カー!カー!」
ラクは電線から飛び立ち、アラタに興味を無くしたのでウォーキング型のスマホゲームをしようとしていたハルキの隣に着陸。そして人間の姿に戻り、ハルキに言う。
「おい、あの女性っ!」
ラクがアラタ達のほうを指さして言う。女性と一緒に歩いているアラタはしっかりと手を繋いでおり、女性の方は慎重に白い杖を左右に振りながら歩いていた。
「まちがいないっ!目が見えてないぞ!」
ラクの言葉にハルキは驚いた。
確かに、白い杖やサングラス、手を離さずに優しく引っ張っているアラタなど、目の見えていないという証拠はたくさんあった。ラクの言う通り、彼女は盲目なのだろう。ハルキはそれよりも、アラタがハンデを負った人と付き合っているということに驚いた。
「マジか...ちょっと興味湧いた。」
ハルキはゲーム画面を閉じ、再び尾行することにした。
その後、アラタと女性のデートは順調に進んだ。アラタは女性とアクセサリーなどを買いに行き、似合うものを選んであげたり、目の見えない彼女に今の状況を教えてあげたりしていた。ラクとハルキの尾行も、ラクが途中でおもちゃ屋でおもちゃを買い出したり、道端のネコとの会話が盛り上がったり、ハルキが色違いポ◯モンを捕まえるのに必死になってアラタを見失いかけたりした以外は順調だった。
「あのさ、大事な話があるんだ。」
アラタはカフェで女性にそう告げた。アラタは向かい側ではなく、隣に座っており、目の見えない彼女をエスコートしていた。ラクとハルキは少し離れた席でバレないようにこっそり見ていた。
「なぁに?」
「俺、今度からニューヨークに行くんだ。」
「えっ?」
女性は驚いたという顔をする。
「いや、ニューヨーク行くって言っても、永住するわけではないよ?俺はちょっと用事があって行くだけ。すぐ帰ってくるよ。」
アラタは彼女には見えないけれど安心させるように微笑みながら話した。
「そっか。さみしくなるなぁ。」
本当に寂しそうに女性は言った。
「...俺がニューヨークに行っている間、シノは一人になってしまう。俺はすぐ帰るつもりだけど、いつ帰れるかは分からない。」
『シノ』というのは女性の名前だろう。
「だからさ、俺、毎日電話かけるよ。電話できなかった日は音声メールを送るよ。」
女性は少し嬉しそうに口元を緩めた。
「だからさ、帰ってきたら、また、デート行こうな!」
アラタは彼女の手を握りながら言った。彼女はアラタの少し寂しそうに笑っている顔は見えていないだろう。だけど、手の温もりは分かる。
「うん。待ってるから!」
女性は少し泣きそうになりながら返事をした。
9月15日、朝、駅集合。
アラタが来るのをラクとハルキはベンチでスマホゲームの対戦をしながら待っていた。
「後輩共!おまたせ!」
アラタが駆け寄ってくる。その声に反応してハルキとラクは顔を上げる。そして...
「「...フッ」」
二人合わせて少し笑った。
「?...何だお前ら?俺の顔になにかついているか?」
不思議そうな顔をするアラタにハルキが言う。
「いや。ただ、少し見直したって話。」
アラタはなおさら何を言われているのか分からなかった。
「おーい、電車来たよー!」
ラクが二人に言う。三人ホームまで走った。電車のドアが開く。三人はその電車に足を踏み入れていった。行き先は、東京。勿論電車で東京まで行くつもりはない。電車で新幹線が走っている駅まで行き、そこで乗り換えて行くつもりだ。
「今日もだめだった....本当ににゃんとかにゃるのかにゃぁ...」
「何度も言うようですが、その喋り方はやめたほうがいいですよ。」
暗い森の中、二人の少女が歩いていた。
「にゃぁ...」
片方は黒い猫耳と長い尻尾が生えている。褐色肌で、ギザ歯。服は露出が多めで、スカートは短く、胸は大きい。足は裸足だ。もう片方は黒髪で後ろで束ねてあり、限りなく黒に近い赤色のとんがり帽子をつけており、ビリビリに破れかけたショートマントをつけている。
猫耳の方は名をネーヴァという。もう片方の少女の方は名をセラフィナ・クロウといった。
そして二人は信じていた。いつかこの状況を変えてくれる『救世主』が現れると。
「アオイち〜、なにか手伝おうかにゃ?」
二人は森を抜け、港町に出た。港では一人の麦わら帽子を被った青年が釣りをしていた。
「おぉ、ネーヴァ、セラ。サンキューな。けど、今日は特に手伝ってもらうことないわ。」
アオイと呼ばれたその青年は振り向かずにそういった。
「そうかにゃ。にゃら、隣に座っておくにゃ。」
ネーヴァはアオイの隣に座った。セラフィナも「やれやれ」といった顔でネーヴァの隣に座った。そして、三人で海を眺めていた。
「...あの、アオイさん。」
しばらくのセラフィナがアオイに口を開いた。
「なんだ?」
「アオイさんは、なんで私達、亜人と仲良くするのですか?」
セラフィナはずっと不思議に思っていたことを尋ねた。
「あぁ、それか。俺の友達の影響かな。」
「友達ですか?」
「あぁ。ソイツとはしばらく会っていないんだけど、ソイツは面白いヤツでな。どんな生物でも好きなんだ。アイツ、ゴキブリだって素手で触れるような人間でな。」
「...ウェ、私はそんな人と友達にはなりたくないですね。」
「ははっ、だろ?だけどな、ソイツは凄く優しくて、いい奴なんだよ。ソイツの言葉を借りるなら、みんな同じ命を持っているから、みんな一緒。金持ちも、ナメクジも、飲んだくれも、アザラシも。だから、偏見とかで差別したりするのは意味がわからないことであって、意味がないことであるんだ。」
セラフィナは驚いた。そんなふうに考える人を見たことがなかったからだ。
「俺は初めは差別けっこうしてたけどさ、ソイツと離れてから、ここに来て、アイツの言っていたことが何となく分かるようになった。」
「...会ってみたいです。」
セラフィナはウトウトして眠りに落ちかけているネーヴァを支えながら呟いた。
会ってみたい。その人と話してみたい。その人がどんな人なのか知りたい。その人に会ったら自分の心が救われる気がする。それに...それに...もしかしたら...『救世主』はその人かもしれないと想ってしまう。
第2章は後付がほとんど無い章です。この『樹冠祈願』という物語は最初は5章で展開していくつもりで、後から第3章を半分に分け、その間に第4章を入れ、さらに第5章を2章に分け、全部で8章の構成になりました。それで、第1章から第8章まであるわけですが、最初に思いついたのは第6章。その次に思い浮かんだのが第2章でした。それに続いて第3章&5章→第1章→第8章→第7章→第4章という順番で思い浮かんでいきました。さて、第2章のサブタイトル、『〜皮肉な名前〜』ですが、もちろんシンのことです。明確に言えば、シンの苗字、『光冥』の方の話です。名前に『光』という文字が入っているんですね。ですが、この男は結果として闇の帝王となりました。この章は救いの無い章ですが、そのシンの気持ちはアラタたちに受け継がれていることでしょう。
さて、第3章はアラタ、ラク、ハルキの3人がメインです!さらに真剣組に新メンバーが?!




