キミは友達
約1ヶ月半ぶりの更新。ちょっとリゼロ本編が面白すぎたのと、ヒロアカファイナルシーズンと、定期テストで忙しかったので...
シンが村にとどまるようになってから2週間が経つ。いのりは朝起きて、シンの元に訪れて会話をすることが楽しみになっていた。一方、村の人々は村のアイドル的存在のいのりがよそ者に取られることをよく思っていなかった。
シンは村の人たちをよく手伝った。他所から来て村に滞在させてもらっている身、それが礼儀だと思っているのだ。それでも村人たちからのシンの評価は変わらなかった。シンが「手伝いましょうか?」などと話しかけると、「邪魔になるだけだ。」等と言って嫌そうな顔で追い払う。それでもシンは子どもたちと遊んだりと、できる限り村のためになることをやろうとしていた。
シンは毎日昼と夜に山に向かった。もちろん、熊を探すためだ。しかし、熊は冬なので冬眠しているためか、なかなか見つからなかった。
「ね?面白い人でしょう?」
いのりは神木柊にシンについて話した。
「ふーん。」
神木柊は魔法陣のようなものを地面に描いて、なにかいじくっていた。
「で、そのシンって男は『呪術』を使うのかい?」
「らしいです。神木さん、それって魔法とは違うんでしょうか?」
「あぁ。呪術と魔法は違う。魔法というのは君や僕が使っているものだよ。氷を出したり、炎を出したり。これは何百年か前の8人の魔法使いたちが起源だ。」
神木柊は手から炎を出してみせた。
「それから、呪術。これの起源はこれだ。」
神木柊は上に向かってまっすぐと指を指した。いのりが振り向き、神木が指さした方向を見る。そこには世界樹がいつも通り立派に立っていた。
「えっ?」
「呪術の起源はこれだ。この世界樹の力が源だ。この世界樹は人の概念を変える力があって。詳しいことは言わないけど、この世界樹での概念の変換が呪術を作り出したんだ。人は稀に呪術という能力を持って生まれてくるという概念を無理やりねじ込んでね。」
いのりは理解したような、理解してないような表情を浮かべる。つまり、自分は魔法という魔法使いたちが起源の力を使っていて、シンは呪術という世界樹が起源の力を使っていると。
「ちなみに、君の中にも『呪術』はあるよ。」
「嘘?!」
いのりは驚いた表情をする。
「君の力は...」
次の日は雪がやんでいた。世界樹の間にいのりは行く。いつも通りの足取りで、いつも通りの道のりで。だけど今日はいつもと違うことがあった。
「ここをくぐるんです。」
「ここか?」
シンもついてきていたのだ。シンはいのりに言われた通りに木の裏を歩き、洞窟をくぐり、足まで水につけて真っ暗な状態で壁に触りながら歩いた。そして、暗闇を抜けた。そこには言葉で表せないほど神秘的な...まるで天国の入口のような、広大な空間が底にあった。真ん中にはその空間の天井いっぱいに枝を伸ばしている巨木があり、さらにその根本に一人の少年が立っていた。髪色は水面に写った光のように色を変え、中性的な顔。どこか寂しげなようにもかんじる顔だ。とにかく、一言で表すなら美しい顔だった。
「君が光冥シンくんかな?」
少年が尋ねる。
「あぁ。私がシンだ。」
シンはそう少年に言い、「あなたは?」と聞こうとするが、それより速く少年は応えた。
「神木柊。世界樹の管理人だ。」
世界樹...というのは名前からしてここにある巨木のことだろう。つまり個々の管理をしている少年ということだろうか。
「とつぜんだけど、君、僕と契約を結んでくれないかい?」
本当に突然、神木は言った。
「そういうことだ?」
「そのまんまだ。お互い、武力干渉しないという契約を結びたい。」
神木はニマッと笑い、シンの方へ少しずつ歩いてくる。
「なぜだ?」
シンは警戒せずにはいられない。刀に手をかけ、いつでも抜ける状態で神木を睨む。
「シン様、落ち着いてください。あの方に悪意は無いのです。」
いのりの言葉にシンは恐る恐る刀から手を離す。シンはいのりに甘かった。
「何故って...君と友達になりたいんだ。いのりが君と僕が仲良くなればいいのにって言うから。」
神木はまた笑った。
「友達って喧嘩しないんでしょ?」
「僕は、キミと争いたくはない。
争いは、友のすることではないからだ。
ゆえに誓う。
僕とキミ、互いに刃を向けぬと。
それが、友となる証だ。」
シンは神木と手をつなぐ。そして神木がそう唱える。すると世界樹が一瞬光り輝き、宝石の雨のようにキラキラと水が上から降ってきた。それは、本当に自分が生きているのか疑うくらい神秘的だった。
3週間後、シンはいつも通り村で生活していた。村人たちもだんだん慣れてきたのか、シンへのあたりは柔らかくなっていた。シンはいのりと共に今日も山の中へ入っていった。今日もいつものルートを通る。熊が木陰にいないか慎重に探す。もちろん雪景色以外何も見えない。いつもなら。今日は違った。
「...あれは何だ?」
真っ白な森の中、一箇所だけ赤く染まっていた。シンといのりは恐る恐る近づく。
「っ!」
それはウサギだった。明確に言えばウサギの生首だ。惨たらしく死んでいる。
「シン様!あれは!」
いのりが別の方向を指を指す。そこには人の生首が3つ転がっていた。
「隣町の狩人の方です!」
「いのり!近づくな!アレは危険だ!」
シンが言ったときにはすでに遅かった。巨大な黒い塊がいのりめがけて飛んできていた。
「っ!危ない!」
シンは走り、いのりを庇うように抱きしめ、雪の中を3回ほど転げる。黒い巨大な塊は先程までいのりが立っていたところで標準が避けたためか、よろけていた。
「出たな、化物!」
シンは刀を抜く。いのりも指を構え、氷の弓矢を作り出して戦闘準備をする。
「カフカフ!」
その黒い塊は...巨大な熊は、シンといのりに対して威嚇してきた。
「シン様、先程は助かりました。今度はわたくしが足手まといにならないように気をつけますので。」
「あぁ。頼む。」
シンは雪を滑りながら熊に急接近する。熊も負けじと吠え、その右腕で殴りかかってきた。
「隙まみれだ。」
シンは熊の右腕に切り傷を与えた。熊から血が流れ、すこし雪がまた赤くなる。
「ヴォーーー!」
熊は怒ったようにシンに吠える。そして、熊の背中辺りから黒いモヤが出てきた。
「くッ!呪術を使いこなしているな!」
シンは雪の中を駆け回る。木々を盾にし、黒いモヤの追跡から逃れようと逃げる。黒いモヤに飲まれた木は枯れ、腐ちて倒れていく。
「やめて!」
いのりが叫ぶ。その瞬間、熊めがけて氷の矢の雨が降り注いだ。さすがの熊も避けるのが遅れ、血まみれになる。
「でかした!」
シンはいのりを褒めると、行き先を変え、熊めがけて走っていく。
「ギャーーーー!」
熊はシンに負けじと大声で叫び、最後の力で突進してくる。シンはその熊の動きを読み、そしてその力を利用して...
「光冥シン、ここに巨大熊を打ち取ったり。」
熊は両腕を斬られ、その場に倒れた。
「勝ったのですか?」
いのりが嬉しそうに近づこうとする。シンも笑みがこぼれる。
「あぁ。いのりのおかげだよ。俺だけじゃどうしようも...」
そこまで言った時、シンは後ろからゾワッとするものを本能的に感じ取った。これはまずい。
「...嘘だろ?」
熊の死体から...黒い靄が溢れ出していた。
「シン様!」
いのりが咄嗟に土の盾を作り、霧を阻止する。
「シン様、このままではまずいです!」
「あぁ、分かっている!あの黒いモヤに触れたら死んでしまう!触れてはいけない!幸い熊は死んでいる!俺ならなんとかできるかもしれん!」
シンは盾をどんどん魔法で強化していくいのりにそういった。
「なぁ、風の能力でこの霧を一時的にでいいから、一瞬でいいからはけさせることはできるか?」
「えぇ、本当に数秒なら...」
「なら、頼む。3秒後に始めてくれ。」
「えっ?そんな急にですか?」
いのりは少し慌てるが、シンはただ頷くだけだ。いのりもつばを飲み、風魔法を溜め、盾の魔法を解除する準備を同時にした。
「3,」
シンは優しい。さっきもいのりはシンがいなければ死んでいた。だから、
「2,」
絶対にシンには死んでほしくない。こんな熊のモヤなんかに殺されてほしくない。
「1,」
だけど、シンを信じたい。
「0!」
そのシンの声とともにいのりは盾を消し、風魔法でモヤをほんの一瞬だけ、辺り一帯からはけさせた。本当に一瞬だ。だが、シンには十分な時間だった。
「吸収!」
シンは熊に触れる。熊の死体が消えていく。さらに黒いモヤも。
「ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙!」
シンは苦しそうに叫ぶ。すかさずいのりは駆け寄り、シンを支える。
「はぁ...はぁ...これで完全勝利だ!」
シンは嬉しそうにいのりに言った。
「...はい!」
いのりは涙を拭い、微笑んだ。
今回は今後の樹冠祈願という物語においてとても重要な話でした。さて、この辺でタイトル回収しときましょうか。
『樹冠祈願』、語呂良いですよね。樹冠祈願には漢字に意味があり、
『樹』→世界樹→神木柊
『冠』→王→闇の帝王→光冥シン
『祈願』→祈り→いのり
と、この章で出てくる重要キャラの名前からとっているんですよ。で、全部合わせて『樹冠祈願』。つまりそれらのキャラの物語であるこの章はこの物語においてとても重要です。




