緋ノ宮 カグヤ
いきなりですが、第一章、ラスト!
9時59分
「出会うのは二度目ですね、闇の帝王。」
「あぁ。そうだな、緋ノ宮くん。」
カグヤと闇の帝王は一定の距離をお互い保っていた。
「黒翳操!」
先に手を出したのは闇の帝王だった。帝王の影が複数の刃物のような形に変化し、カグヤの影に向かって飛んでいく。カグヤの影に刃物の影が刺さるとともに、カグヤは何も刺さっていないのに体のあちこちから血が出る。影に気づいたカグヤは影を見ながら次から次へと来る刃物の影を避けていく。
「影ばかり見ていると隙がうまれるぞ、緋ノ宮くん!」
闇の帝王は影を見るのに夢中になっていたカグヤを殴り飛ばした。カグヤはそのまま受け身を取り、上手く着地。
「不滅ノ鎧!」
カグヤは自身の防御力を上げる。そして、鎌を構えて地面を蹴飛ばし、闇の帝王に振りかざす。
「命火連斬!」
カグヤは闇の帝王も反応できないほどの速さで鎌を連続で振り続ける。1秒に100は振る。
「見事。」
闇の帝王は体に斬撃があたり、傷がつくが、傷がついた先から再生して回復していく。この攻撃は決定打にならないと判断したカグヤは闇の帝王を蹴り飛ばし、再び距離を取る。
「残念なことに、私は防御力が高くてね。その程度の攻撃で私を倒すのはまず無理でしょうね。」
「敵にアドバイスですか?」
カグヤは目を閉じる。逃げる方法は...おそらく無い。この男はアラタとハルキの方は見向きもせずに自分だけを見ていた。アラタやハルキのように移動特化の能力ではない自分はまず逃げれない。かといって、仲間を呼んだり逃げたりしてもダメだ。最善の策は自分が星野イオが来るまで足止めすること。気を引いて逃げまくる。これが正解だ。
カグヤは目を開けて走り始めた。闇の帝王は目で追って斬撃を飛ばす。カグヤは身をくねらせて避け、斬撃をすべて避ける。そしてそのまま近くにあった木を蹴り、一気に帝王に距離を詰めた。そして、
「命ノ刃!」
と叫び、闇の帝王に一撃を与えた。
10時3分
「ここだ!」
ラクはミクと共に地上に着地する。そして、山を駆け上がり、少し開けた場所まで走る。
「...嘘だろ?」
ラクが目にしたのは大量に血を流して倒れている兄の姿だった。目に光はない。その隣には短髪の男が立っていた。
「おいおいおい、嘘だろ?カグヤ、やられたのか?」
ミクが慌てる。ラクはミクに一言も発さずに男に距離を詰め、怒りに満ちた目で片手をクマの手に変形させて殴りかかった。
「怒りに満ちて攻撃。まだまだ未熟だな。」
男はラクの攻撃をするりと避け、連続蹴り、顎に拳を入れる。ラクは吹き飛ばされ、近くの瓦礫で苦しそうに横たわる。
「まだ、まだだ!みんな!殺れ!」
ラクは横になったまま手を男の方へ向け、大量の生物を召喚する。
「...面白い。」
生物たちは生まれた瞬間に消滅していく。ラクは近くの瓦礫にもたれかかりながらその光景を見つめる。
「どうした、もう終わりか?私は君に期待しているんだ。失望させないでくれ。」
ラクは自分の頭から血が流れていることに気づく。いや、全身傷まみれだ。再生能力が追いついていない。このまま攻撃されたら死ぬ。自分に勝ち目はない。
「ラク...」
ミクはそれをただ見つめることしかできなかった。
「おい、俺の弟だ。手を出すな。」
男が振り向くと、そこにはカグヤが立っていた。カグヤは血まみれで、よたよたと数歩歩く。
「死んでなかったのか?いや、アレは明らかに...」
「勝手に殺すな、ここからが本番だ...!」
カグヤの目は再び光り輝く。
「この命、すべて削ってでも弟を、仲間を助ける!」
家族は好きだった。父、母、カグヤ、ラク、イツキ。五人で一家族だ。頭が良く、成績も良かった自分はよく両親から褒められた。兄弟の中で一番最初に産まれてきて、祖父や祖母にとっても初孫で可愛がられた。みんなをまとめるのに長男なだけあって慣れており、後輩たちからも慕われた。友達とも上手くやれていた。自分はみんなから愛されていた。
自分は、人をたくさん愛しもした。家族が好きだ。親戚が好きだ。後輩が好きだ。友達が好きだ。真剣組が好きだ。その誰かが傷つけば、見捨てることなどできなかった。
自分はリーダーなんだ。兄なんだ。先輩なんだ。自分が作った道を弟、後輩たちが通る。自分が間違ったことをすればみんな間違えた道を行く。自分が正しい道を行けば、みんな多少の脱線はあれどついて来る。それが嬉しかった。ついて来る弟や後輩が可愛かった。
だから、負けちゃいけないんだよ。自分が負けてしまったら、だって。
「壊魂!」
カグヤからオーラが湧き出る。カグヤはそのまま帝王の腹めがけて殴りかかる。
「なっ!」
カグヤの拳は帝王を貫いた。
「緋ノ宮...カグヤぁ!!!」
帝王から無数の影が溢れ出す。
「不滅ノ鎧・改!」
カグヤは防御力を上げ、一旦帝王から離れると、地面に落ちていた鎌を拾い、投げつける。
「念動捻転!!」
帝王が叫ぶと、カグヤの鎌の向きが変わり、ラクめがけて飛んできた、ラクはギリギリでかわす。
「貴様、その技...!」
「高尾ソウマ...だったけな。」
「殺したのか?」
「あぁ。」
帝王が答えた瞬間にカグヤは鎌を再び握りしめ、帝王に斬りかかる。
「命火連斬!」
カグヤは連続で帝王を斬る。何発も、何発も。先程の倍、いや、50倍は威力がある。カグヤと帝王は砂埃に包まれ、見えなくなる。
「....どうだ?...どうなっているんだ?...」
ラクはカグヤの無事を祈った。音が小さくなり、風が吹き、砂埃がはける。
「あぁ....あぁぁ!」
ラクは絶望した。カグヤの腹に貫通した帝王の腕。血を吐き、明らかに死んでいる兄。
「見事だった。緋ノ宮カグヤ。」
帝王はカグヤを称賛する。
「お前、ふざけるな!カグヤから今すぐその汚れた腕を抜け!おい!」
ラクが叫ぶのを聞いて、闇の帝王はカグヤから腕を抜こうとする。しかし、少しも動かない。
「抜けない?」
その瞬間、カグヤの目がパッと開き、顔に笑みを浮かべる。
「後輩の前だから...まだ負けられねぇんですよ!」
「諦めが悪いな!」
闇の帝王は焦っていた。殺せたはず。殺したはず。なのに、目の前にいるカグヤは生きている。
「カグヤ!」
ラクは立ち上がり、ツタを手から出して闇の帝王を拘束する。カグヤは帝王の腕を腹から抜き、ラクの隣にひらりと着地する。カグヤのお腹の穴はみるみる再生していく。
「ラク、手短に話す。俺はすでに死んでいる。俺の『命火』は命を削って戦う能力だ。それの応用で、詳しくは説明する暇がないけど、一時的に自身を生き返らせているだけだ。時間が経てば俺は死ぬ。だから素早くあいつを倒すぞ。」
ラクは少しショックを受けた顔をするが、軽く頷く。
「カグヤ...いや、兄ちゃん。かっこいいところ見せてよ。」
ラクのツタが燃え上がり、闇の帝王は反撃を始める。
「獣装備!」
ラクから獣耳が生えて、体のあちこちが生物のものに変化する。
「それごときで私に勝てると思うな!」
闇の帝王は無数の刀を召喚し、ラクに突き刺そうとする。ラクは近づいてきた刀を一つ噛み砕き、さらに闇の帝王の目の前で体をねじる。そして、そのままハンマーのような尻尾で闇の帝王の腹に一発決めた。
「アンキロサウルス!!」
「グッ!」
闇の帝王が飛ばされた先には小刀を構えたカグヤが立っていた。
「はぁぁぁ!」
カグヤは闇の帝王を刺す。何回も、何回も。何度でも刺した。そして、
「断血!」
カグヤは闇の帝王の首を斬り落とした。
「緋ノ宮カグヤぁぁ!」
闇の帝王は恨みの言葉を吐く。
「私は、こんなところで死んではいけんのだ!ワタシの目標はまだ!私はまだ!やらねばならぬことがあるのだ!」
「やたら騒ぐな。死んだ後の遺言が長い。俺とラクを舐めるな。兄弟ってのはな、最強なんだよ!...ゴボッ!」
カグヤは血を吐いた。
「「カグヤ!」」
ラクと、先程までカグヤたちを見ることしかできなかったミクが駆けつけ、カグヤを支えた。
「そろそろタイムリミットだ...」
カグヤが少し弱った声で言う。その時だ。
「感動のシーンを邪魔して悪いな。」
ラクは腹部に痛みを感じる。刀が貫通していた。
「は?」
カグヤがラクの後ろを見ると、闇の帝王が立っていた。
「なんで...首を斬り落としたのに...」
「なぜ首を斬り落としたら私は死ぬと思ったのだ?」
闇の帝王はラクから刀を抜く。ラクは倒れ、ミクは慌てて警戒態勢を取る。しかし、目にも止まらぬ速さで闇の帝王はミクに近づき、吹っ飛ばす。
「君はこの戦場に立つには弱すぎる。」
ミクは木に頭をぶつけ、意識を失う。
「さぁ、緋ノ宮くん、本当の一対一の殺し合いをしよう。」
闇の帝王は腕から刀を生成し、カグヤに向かって投げて渡した。カグヤはそれを受け取り、少し苦しそうな顔で刀を鞘から抜き、構えた。
10時14分
カグヤと闇の帝王はお互いじわじわと間合いを詰めながら、睨み合っていた。
カグヤが地面を蹴り上げ、闇の帝王に近づく。闇の帝王も刀を握りしめたまま走り出し、カグヤに向かって技を出す。
「命喰!」
「次元断章!」
二人は同時に技を放った。カグヤと闇の帝王の刀がぶつかり合う。カグヤの刀は赤黒い炎をまとっていて、闇の帝王は刀から無数の斬撃が出てきて、軌道を変えてカグヤめがけて飛んでいく。カグヤの体中に痛みが走る。斬撃のものと、自身の限界をとうに超えているからだ。それでもカグヤは手を離さなかった。二人はお互いに血を吐く。最初は接戦だった。しかし、徐々にカグヤの力が抜けていった。
自分は道をつくった。後は後輩たちがなんとかしてくれる。自分が作った道の先は、後輩たちがつくってつなげてくれる。だから、安心してもいいんだ。
カグヤの脳内に突然声がした。自分の声だ。カグヤはちらりとラクとミクの方向を向く。ラクは意識を取り戻しており、顔だけ上げてカグヤたちを泣き顔で見ていた。
「....後は頑張れよ。今度は、お前らが道を作るんだ。」
カグヤはラクに微笑み、最後の力を振り絞って帝王を押し、刀ごと斬った。
「最高の後輩たち、これからお前らの活躍を見れないのが残念だ。」
カグヤはそう言って、パラパラと塵のように消えていった。
「...見事!」
闇の帝王は自身の身体の傷を再生しようとするが、上手く再生できない。傷跡がどうしても残る。
「私が産まれてきて、ここまで死が近くに迫ってきていると実感したのは初めてだ。称賛に値する!」
「...なんで勝ったと勘違いしているんだよ...まだ...まだ僕がいるでしょ...カグヤ...兄ちゃんを...称賛するのは...僕を倒して...からにしろよ...まだ僕が...」
「この気配...イオがついたか。遅かったな。もう少し速ければ緋ノ宮くんは死んでなかったかもしれん。」
闇の帝王は刀を杖にして立ち上がるラクを無視して、そのまま立ち去ろうとする。
「聞いてんのか?...僕を...僕を殺せよ...なぁ、僕を殺せよ!」
ラクの目から涙が溢れ出す。
「それはできない。私は君に、期待しているのだから。」
闇の帝王はそう言い残して、そのままだんだん姿が薄れていき、消えていった。
「殺せよ...殺せよ!僕を!カグヤは殺して僕は生かすのかよ!殺せよ!なぁ!カグヤがいない...兄が死んだ世界に僕だけ残して守れなかった罪悪感に浸りながら生きろと?なぁ!」
ラクは叫び終わると、再び血を吐いて倒れた。
「カグヤ...」
ラクの視界は徐々にぼやけ、「大丈夫ですか?」という救助隊の声を最後に意識を失った。
「緋ノ宮カグヤ...いい線はいっていたんだけどな。惜しかったか。協力関係を結びたかったのになぁ。」
150メートルはゆうに超える巨大な木の下で神木柊は呟いた。
カグヤの死について
もちろん最初から決めていました。第一章はカグヤが死んで終わることは。それで、彼の最期の場に誰を置くかを迷ったのですが、あまり多すぎても変だし、弟のラクと、あまり語られてないけどカグヤに恋心をいだいていたミクにしました。アラタとハルキも迷ったのですが、選びませんでした。ラクとミクはトモヤの死を見たキャラでもあり、ラクをトモヤの死から立ち直させてからまた心をへし折りたくて。
さらに、カグヤの死は3話くらいに引き伸ばすつもりだったのですが、あまり長くても同じような戦闘が続くだけだし、一話だけで殺すことにしました。でもまぁ、何回も死にかけから立ち直るカグヤでカグヤのしつこさは表現できたのかなぁって思います。本当にカグヤは諦めが悪い人間なので。
関係ないのですが、自分の語彙力が無いばかりに、同じストーリーを別の誰かに書き直してもらいたいと思ってます。
次回から第2章!第2章から物語はどんどん進んでいきます!「樹冠祈願」というタイトルの意味は第2章で!




