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樹冠祈願  作者: レニペン
第1章〜カグヤの命〜
32/39

いい先輩

32話!





 9時45分 霧里駅 ナイトメア逃亡、真剣組一名重症。



「動け!動け動け動け!」


 ラクがトモヤに必死に心臓マッサージをしている。狼を召喚して、人工呼吸もさせている。ミクはスマホでカグヤに電話をかけようとしているが、繋がらない。


「くっそ、なんでだよ!」


 ミクが涙目になりながら他の人にも電話をしようとしているが、全く繋がらなかった。


「動け動け動け!」


 ラクは心臓マッサージを止めない。トモヤの冷たくなった体にずっと振動を与え続けている。


「ラク、もうお前じゃ無理だ。」


「は?諦めるっていうんですか!そんなことしてたまりますか!」


 ラクはソウヤを涙でよく見えない目で睨む。ソウヤの目にも涙の跡が痕がある。


「ちがう!お前の力じゃ無理だって言っただけだ!...避難所にいるツバキがいる...」


 ラクがハッとした顔をする。


「今すぐ連れて行きましょう!まだ助かるかもしれない!」


「ちょっ!待てよ!」


 ラクは足を馬のものに変えて避難所まで走り出した。その後ろにミクも能力をジェットのように使ってついていく。ソウヤはそれを見送りながら、生存者がいないか探すためにラクたちとは反対方向に向かった。







 9時36分 霧里公民館(避難所)



 カグヤは神環の職員と会話をしていた。

「住宅街の中心部は炎がすごくて近づくのも困難です。奥の方は中心部が燃えているせいで近づけなくて。」


「そうですか。しかし、あなたたちのお陰でたくさんの命が救われました。今、星野様がこちらに向かっているはずですので、それまでの辛抱ですので。」


「イオさんが来てくれるなら安心ですね。それまで被害がこれ以上広がらなければ良いのですが...」


「えぇ。」


 職員はカグヤの方から少し離れたところにいるツバキの方へ目線を向ける。


「それにしても、あの白椿さんはとても頑張ってくれていますね。彼女のお陰でどれほどの命が助かったか。」


「えぇ。自慢の後輩です。この件が終わったらたくさん褒めてあげようと思ってます。」


 カグヤもツバキの方を見る。ツバキはせっせと怪我人たちに治癒能力を使って看病していた。


「あのぉ...すみません、私の娘は避難できたかわかりますか?」


 カグヤと職員の後ろから声がした。振り返るとそこには40代前半くらいの女性が立っていた。


「...娘を、見ていないですか?」


「何歳くらいのどんな見た目の娘ですか?」


「13歳...中1です。やんちゃだけど優しいいい子で。今日は学校が休校で、あの子も家にいて...私は出勤中に事件を知っていそいで戻ってきたのですが、避難所で見当たらなくて...」


 不安そうな顔をする女性を見て、職員が地図を広げる。


「失礼ですが、ご自宅はどのあたりにありますか?」


 女性が指を指す。山の近く、住宅街の奥の方だ。


「あっ...」


 職員とカグヤは顔を見合わせる。奥の方に行くには燃えている住宅街をぬけるか、遠回りして山の方から行くかの二択だ。救助する側が危険にさらされる。


「大変申しにくいのですが、、、」


 職員がそこまで言ったところでカグヤが大きな声で言った。


「アラター!ハルキー!」


「えっ?カグヤさん、今なんと?」


「いや、一人で行くより3人で行ったほうが良いので。すみませんが、お母さん、娘さんのお名前は?」


真田(さなだ) アカネです。」


「ありがとうございます。」


 カグヤの呼びかけに応えてアラタとハルキが近づいてくる。


「よし、じゃぁ行くぞ。」


 カグヤは公民館から足を踏み出した。


「無茶です!焼け死ぬか、主犯に殺されるかですよ!あなたは...」


 職員はそこまで言って口を閉じる。


「...ご武運をお祈りしています。」





 9時40分


「で、どうやって山の近くまで行くんですか?ぐるっと廻るんですか?」


 燃え盛る炎の前でハルキがカグヤに質問する。


「いや、それだと時間が掛かる。その間に燃えたり、アカネさんが殺されたりするかもしれない。だから突っ切る。」


「マジで言ってます?」


「お前等ならできるだろ?そこはお前達を信頼している。」


「後輩使いが荒いですよ。全く。」


 アラタは伸脚を始める。


「先輩、俺が風で道をひらきます。その後ろをアラタ先輩と一緒に通り抜けてください。」


 ハルキが地面からスタッと舞い上がり、空を飛び始める。


「じゃぁ、先輩は俺におぶられて。あっ、そうそう。ハルキ、コレつけろよ。そっちのほうが移動楽だぞ。」


 アラタに渡されたワイヤーフックを腰に装着してハルキは自身の能力のエネルギーを溜め始める。


「あざす。じゃぁ、突っ切りますよ。」


 ハルキは手に風の球のようなものを作り、投げる。その球が通ったところに一瞬だけ炎が薄くなり、通れるようになる。そこをすかさずにカグヤをおぶったアラタが通り抜ける。ハルキもその後ろからワイヤーフックで追いかけ、また炎が行く手を阻んだら風を飛ばして道を開けさせた。


「うぉぉぉぉ!すげぇ!」


 アラタが叫ぶ。カグヤは目を瞑ってアラタにしがみついている。


「先輩、あと少しです!」


 ハルキが最後に風の球を投げ、道を作る。


「うぉぉっ!」


 アラタとカグヤが勢いよく炎の中から飛び出した。ハルキも後に続いて出てくる。


「ついたー、奥の方。」


「...ここも酷い有様だな。」


 燃えてないものの、すべての建物が崩れて崩壊していた。


「ヒッ!」


「ハルキどうした?」


「う、腕がぁ!」


 ハルキが指さした方向に誰かからもげた腕が落ちていた。おそらく若い女性の腕だ。


「...悲惨だな。」


 カグヤがそう呟くと、後ろから物音がした。


「喰らえ!クソッタレども!」


 カグヤが振り向くと、中学生くらいのパーカーを被った少年が拳を振りかざして飛びかかってきていた。拳にはビリビリと電気が走っている。


「俺の先輩に手出すな!」


 アラタが叫んで飛びかかってきている少年の後ろに一瞬でスッと移動し、少年のパーカーを掴んで投げ飛ばす。


「って!うわぁ!」


 少年は吹っ飛ばされて、飛ばされた先に待っていたハルキにキャッチされる。そのまま地面に押さえつけられる。


「ック!殺すなら殺せ!オレはお前らに利用されるくらいならここで潔く死ぬぞ!」






 9時49分


「ん?ラクか?」


 避難所の警備をしていたヒビキは駅の方から走ってくるラクとミクの方を凝視する。


「ヒビキ!ツバキ先輩を早く呼んできて!トモヤ先輩が、トモヤ先輩が!」


 ヒビキはラクの泣きそうな声を聞き、だいたい何があったか察する。


「わかった!そこで待ってろ!」


 ヒビキは避難所の中に入ってツバキを呼びに行った。


 ヒビキが事情を説明すると、ツバキは飛んでラクたちのところへやって来た。


「のいて!」


 ラクとミクが泣き顔で離れた瞬間にツバキは治癒能力を使い始める。


「...どう?」


「...ダメだわ...」


「は?...」


 ツバキはそっとトモヤから離れる。その瞬間にラクがツバキの肩を掴んだ。


「諦めないでよ!ねぇ!アンタそれでも治癒能力の使い手かよ!なぁ!なんで治癒をやめるんだよ!なぁ!なんで!」


「ラク!怒りを向ける相手を間違えるな!」


 ヒビキがラクに怒鳴る。ラクはツバキの肩からそっと手を離し、泣き顔でヒビキを睨みつける。ツバキは申し訳なさそうに下を向きながら、目から溢れ出そうとしてくる涙を拭う。


「クソッ!」


 ラクはツバキを押しのけてトモヤに心臓マッサージをし始める。


「やめろ...」


 ミクがボソッと呟く。ラクは心臓マッサージをやめない。


「やめてよ...」


 ラクは必死な顔でマッサージを続ける。


「やめろって言ってるだろ!もう死んでるのに無駄な幻想を抱くな!もう手遅れなんだよ!」


「うるさいなぁ!お前らはわかんないだろ!付き合いが短かったから!僕は小学生の頃からずーっとこの人のことを知ってるんだよ!あんたらみたいな最近トモヤ先輩と知り合った奴らはすぐ諦める!殺してたまるか!」


「ラク!しつこいぞ!もう死んでるんだ!今そんな事やっても周りの人達の心を傷つけるだけだ!」


「黙れ!お前らはトモヤ先輩を見殺しにするつもりかよ!」


「なわけねぇだろ!」


 ヒビキを睨みつけるラクをヒビキはビンタする。


「お前は今、俺達がトモヤ先輩を見殺しにしたと言ったな!なわけねぇだろ!ツバキ先輩が、俺が好きでトモヤ先輩の治療を諦めたわけないだろ!」


「知り合いが...カグヤの...兄ちゃんの友達が...先輩が死んでるんだぞ...それで『あっ、死んだんだ。よし、助けるのは諦めよう。』ってなるほど僕は薄情じゃない...僕は先輩を見殺しにしたくない。」


「ラク...」


 ミクはラクの前にしゃがむ。


「...なんだよ...」


 パァンッと音が響き渡る。ラクが後ろによろめく。胸ぐらをそのままミクは掴む。


「アンタのことを悪く言うつもりはない。アンタの気持ちもよく分かる。だけど...トモヤ先輩の死を無駄にするな。」


 ラクが顔を上げる。


「トモヤ先輩があたしたちにバフを掛けてくれたお陰であたしたちは死なずにすんだ!今も助けを求めている人たちがこの街の中にいる!そっちをアンタは死人を生き返らせることに必死になって見殺しにするつもりか!トモヤ先輩は死ぬ前にいい先輩になれたか聞いてきただろ!このままだとトモヤ先輩は助けられる命を見殺しにさせる原因となった悪い先輩になっちまう!トモヤ先輩をいい先輩にさせてやれよ!」


 ラクは泣き顔で涙を拭う。そのままよろよろと立ち上がり、ヒビキに言う。


「...カグヤは今どこに?」


「住宅街の奥の方だ。」


「ありがとう。僕、助けに行ってくるよ。」


「あたしも行く。」


 ラクの後ろから翼が生える。ラクはミクの腕を掴んで、そのままおんぶして、地面を蹴り上げて空へ飛んでいった。






9時51分


「なんだ、お前ら敵じゃないのかよ。救助しに来たのならまずそう言え。」


「お前がいきなり襲いかかってきたんだろ!」


 アラタが少年に怒鳴る。


「いやー、家で昼寝してたらなんか家が崩れてな。なんとか外に出てみたら火の海と死体の山。オレはビビってね。その直後に火の海から飛び出してきたお前らを敵だと思った。これってオレが悪いのか?」


「確かに、なかなかに俺達怪しいな。」


 カグヤが呟く。


「あっ、そうそう。この辺に真田アカネって子が住んでいたと思うんだけど、見てない?」


 カグヤはそのまま思い出したかのように少年に質問した。


「あぁ、それオレだね。」


「はぁ?お前男だろ!」


 アラタのセリフにムッとしてアカネは言い返す。


「女だよ!一人称オレで、パーカー被っている女の子がそんなに珍しいか!」


「「うん。珍しい。一人称オレのところが特に。」」


 アラタとハルキが口を揃えて答える。


「クソッタレども!」


 アラタとハルキをアカネは睨む。


「だってお前、女の子らしいところ何にもないじゃん。まな板だし。」


「今から大きくなる予定だ!」


「ふーん、でもまぁ、見つかってよかった。先輩、コイツ連れて帰りましょ。長居してたら元凶が来るかもしれないでしょ?」


「それもそうだな。」


 カグヤがアラタに応えて立ち上がる。


「よし、帰りは山の方から回り道するぞ。」


「待って...」


 アカネが立ち上がったカグヤたちに言う。


「オレの能力、長時間の使用ができなくてさぁ...今日は脱出するときとお前らと戦うときに使ったからもうろくに動けないんだよねぇ...助けて?」


 カグヤはやれやれといった顔でアカネを見つめた。





「おい!持ち方ってものがあるだろ!オレは道具かぁ!」


 アラタにカバンのように抱えられてアカネは怒っていた。


「助けに来てやっただけ感謝しろ。クソガキ。」


「オレをガキ呼ばわりするな!」


 山の中を歩きながらそのような会話をしていた。


「待て、ストップ。」


 カグヤが足を止め、手でアラタたちが進むのを止める。


「先輩、どうかしましたか?」


「......走れ...いますぐ走れ!走って逃げろ!俺が食い止める!」


 ハルキとアラタは察してアカネを抱えたまま、能力を使って猛スピードで山の中を駆け走る。


「...あの3人の方には目もくれないってことは、目当ては俺ですか?」


「正解だ。」


 大きな木の後ろから黒色の短髪の男が姿を表した。


「出会うのは二度目ですね、闇の帝王。」


「あぁ。そうだな、緋ノ宮くん。」







アカネは結構僕の好みのキャラ。(オレが一人称、パーカー。)パーカーの後ろはポニーテールなんですが、被ってるから見えてなかったですね。まぁ、美容室に行く事にショートになったりロングになったりと髪型は変わってます。


 好みのキャラって言いましたが、一番の僕の好みのキャラになるのはユウリになる予定です。(早乙女邸のメイド)

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