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樹冠祈願  作者: レニペン
第1章〜カグヤの命〜
28/39

ようこそ!私の望む世界へ!

25話!早乙女邸編クライマックス!





「これから実験させてもらおうか。」


 セルジュはその場にいた真剣組を見下ろしてそう言った。


「「「.........誰?」」」


 カグヤ、アラタ、ミクの3人は口を揃えて呟いた。


「...私の...兄だ。」


「「「えっ?」」」


「自己紹介をしておきましょう。早乙女セルジュ、リリアの兄だ。」


 セルジュが自己紹介をしてお辞儀をした瞬間に隣の建物から大量の翼竜がセルジュの方に突っ込んでいった。


「やったか?」


 ラクが翼竜が突っ込んでいったあたりを凝視する。


「全く、礼儀がなってないな。」


 セルジュの声が聞こえたと思うと、翼竜の首だけが投げ飛ばされた。その後ろからコツコツという足音とともにセルジュが現れた。義手が先ほどまでとは違い、輝いている。


「召喚解除。」


 ラクがそう唱えると翼竜の亡骸はすべて消えた。


「じゃぁ、次は私のターンかな!」


 セルジュはそう叫ぶと一瞬で隣の建物の屋根の上にいたリリアに距離を詰め、殴り飛ばそうとした。ラクはそれに気づき、リリアを押し飛ばし自分がセルジュの攻撃を受ける。


「ラーテル!!」


 ラクはそう叫ぶ。が、セルジュの攻撃をもろ受けて吹き飛ばされ、そのまま屋根の上から落ちていった。


「...ふむ、腹部をゴムのように柔らかくして威力を少しだけ吸収したか。咄嗟の判断であれをやってのけたのは称賛に値するな。だが、もうあの少年は戦えないだろう。そう思わないか?リリア。」


「なぜ私を狙った?お兄ちゃん!」


「お兄様と呼べ!名前の呼び方が昔のに戻ってるぞ!」


「っ!お、お兄様...」


「よろしい。じゃぁ理由を教えてやろう。簡単だ。あの少年を私の研究室にオマエが連れてきたからだ。私の研究の邪魔を、オマエは!したからだ!万死に値する!」


 セルジュははじめのほうは落ち着いて喋っていたがだんだんエスカレートしていき、最後は怒鳴りだし、リリアの方に腕を構えた。


「うっわ、見た目じゃわかんなかったけど完全に頭イカれてるな。大体察しが付く。あの魔獣を作ったのはあんただろ?」


 セルジュの後ろから声がした。セルジュが後ろを睨むと、そこにはアラタが立っていた。ワイヤーフックがちょうど収納されていっているところだ。


「邪魔だ!」


 セルジュは腕を向ける先をリリアからアラタに変えた。


「おっと!」


 セルジュの腕からとてつもないエネルギーのビームが繰り出される。アラタは自身の能力でそれを避け、そのままセルジュの腹を殴る。


「......っ硬ってぇ!」


 アラタの一撃は相手に特に効果はなかった。


「邪魔だと、言っているだろ!」


 セルジュが拳を振り上げる。その瞬間に火球がものすごい速度で飛んできて、セルジュの腕を燃やした。向かいの別館の屋根の上に目線をアラタとセルジュがやると、ミクがリリアに作ってもらっていたスナイパーライフルを構えていた。セルジュの視線がそちらに向かっている間にアラタはセルジュから距離を取った。


「ミク、エイムすご!」


「あったりまえだ!ゲームで鍛えてきたからな!」


 ミクはドヤ顔をした。


「どいつもこいつも私の邪魔ばかり...!」


 セルジュがミクに怒りをあらわにしている間にアラタはリリアを回収して、屋根から飛び降りて逃げた。


「チッ!クソッタレ!」


セルジュはポケットからゴキブリを五匹ほど鷲掴みにしてアラタが向かった方へ投げる。


「ウエッ...ポケットにゴキブリとかどういう趣味だよ...」


 ミクは吐きそうですといった感じのジェスチャーをして相手を煽った。


「私の駒だ。」


 ゴキブリは地面に着地すると、みるみる巨大化してアラタが逃げた方向へ走っていった。


「魔獣ってそうやって作ってたんだ。」


「うるさいなぁ!オマエも魔獣にしてやろうか!」


 セルジュの腕がまた変形し、地面を蹴り上げ宙に舞う。


(まずい...注意を引くためだけだったのに煽りすぎた!焼け石に水だ!私にはラクのやつと違って防御する方法がない、やられる!考えないと!...駄目だOK、死んだ。)


 ミクは目を瞑った。


「とりゃぁぁぁ!」


 突然キンッという金属音と共に大きな叫び声が響いた。


「私の拳を受け止めた...面白い!」


「ミク、コイツの相手は俺がするから後方援護してくれ。」


 カグヤが鎌でセルジュの拳を止めながら言う。


「えっ?あたし、死んでない?」


「なに馬鹿なこと言ってるんだ?」


 カグヤは鎌で相手の拳を止めたままもう片手で小刀を相手に投げつけた。


「くッ!」


 セルジュの腹に小刀は刺さり、セルジュの拳の力は弱まる。セルジュはそのままカグヤの鎌の威力に負け、飛ばされていく。


「頼んだぞ!」


 カグヤはミクにそう言うとそのまま壁を蹴ってセルジュの方へ近づいていった。


「ふぁ?...了解。」


 ミクはスナイパーの中に自身の火球を入れ、標準を合わせた。




「この武器...どちらもリリアが作ったものだな?」


「あぁ。アンタの妹さんの自信作だ。」


「すばらしい...すばらしい!私の妹が能力なしでもこれほどまで強い攻撃を与えられる武器を作るなんて!」


「本当にいい武器だよ。初めて使うのに簡単に使いこなせられる。俺も戦いやすい。」


「そうだな、そうだろうなぁ。その武器は優れている。美しい...私では作れないものだ...しかし、しかししかししかし!妹がそんな私では作れない美しいものを作っていいわけがない!どんなときでも妹は兄の後ろにいなければならない!憎い憎い憎い憎い!私のほうがよほど優れているのにぃぃぃ!」


「やっぱりイかれてる。対話を試みるだけ無駄だな。」


 カグヤは鎌を構える。


「命火解放。なるべく素早くアンタを倒す。」


 カグヤの鎌が赤黒く燃え上がる。カグヤは一度目を閉じ、開ける。目も赤黒く輝いていた。


「やってみるがいい!いけ!」


 セルジュが足を地面でカンカンっと踏む。すると別館の壊れた壁から100匹を超える大量の魔獣が飛び出してきて、カグヤの方に襲いかかっていった。


命蝕(めいしょく)!」


 カグヤの鎌が空を斬る。空は暗くなり、黒い闇に包まれる。魔物たちは人魂の形になり、一匹残らずにカグヤの胸の中に入っていった。


「なっ!私の美しい作品が!」


「ごちそうさま。」


 カグヤはそのままセルジュに駆け寄り、鎌を振り下ろす。


「私がどれだけの時間をかけてその量の作品を作ったと思ってる!」


 セルジュは次々と来るカグヤの攻撃を避けながらカグヤに言う。


「知らないね。そんなことどうでもいい。」


「私の努力の結晶だぞ!許せない!許せない!」


 セルジュは内ポケットから試験管を取り出し、その中に入っている液体を飲み干す。体がケモノのように毛が生えて、巨大化していく。腕も足もどんどん太くなる。義手が外れるが、義手だった腕は再生していく。


「うわっ、」


 カグヤは少し距離を取る。


(どう出ようか...一回様子を見るか、それとも攻撃を続けるか...)


「どうすれば君に痛い目を見てもらえるか。簡単ダ。私が...サクヒンになレば、、、いイはなシダ!ミロ!このゥ゙つクヂザヲ!」


 セルジュの声はどんどん聞き取りづらくなっていった。セルジュは腕を一振する。カグヤは避けるが、後ろに会った壁が粉々に破壊された。


「ドウシタ!ワタシにてもアシもデナイダロ!」


 セルジュが嬉しそうにそう言う。カグヤはセルジュの攻撃を何発も避ける。一度セルジュの爪が腕にかすり、腕にかすり傷ができた。


「なるほど、大体わかった。威力は跳ね上がってるけど、動きも遅くなっている。HPは増えたんだろうけど、他に欠点が多すぎる。さぁ、今から反撃させてもらうよ?」


 カグヤがそう言い放つと共に火球がセルジュの背中に当たる。セルジュの背中が燃え上がる。


「的が大きくなって当てやすくなったな。アイツ本当にリリアさんのお兄さんか?頭あたしより悪いだろ。」


 セルジュは背中が燃えて一瞬驚いたような顔をしたが、即座にカグヤの方を向く。


「グルルル!ガル!」


「とうとう喋れなくなったか。だけど、一番警戒しないといけない相手は理解しているみたいだな。」


「ガルルル!」


 セルジュがカグヤに腕を振りかぶって下ろす。するとカグヤは鎌を振り、セルジュの腕を切り落とした。


「でも、警戒しないといけないのは俺だけではないよ。」


 カグヤの合図と共に後ろからとてつもないスピードで...高速道路で速度違反をする車のような速さで2つの人影が近づいてきた。


「「スマーッシュ!」」


 セルジュの背中に2つの拳がぶつかっていた。どちらもジェットのようなものを搭載したグローブだった。セルジュはうめき声を上げ、苦しそうにする。


「俺、初めて戦闘してる!」


 タカマが嬉しそうに叫ぶ。


「すげぇ!拳の威力上がりすぎだろ!」


 共にセルジュを殴ったアラタも興奮気味だ。


「トドメは俺が指す!」


 ミクの隣にもう一つ人影が見えた。ソウヤだ。背中から大量のアームが蜘蛛の足のように飛び出しており、それぞれ先っぽは銃だ。スーツを着ているところ以外は普段通りの見た目だ。


「喰らえ!」


 ソウヤの銃からミサイルのようなロケランが3発発射される。その3発ともセルジュの顔面めがけて飛んでいった。


「危ない!」


 アラタは右手にカグヤ、左手にタカマを抱えて距離を取った。咄嗟の判断だったが、それは正しかった。セルジュに当たったロケランは大爆発を起こした。もし、アラタが距離を取ってなかったら多かれ少なかれ皆ダメージを喰らっていただろう。


「グハッ!」


 煙がだんだん履けていき、セルジュの体が見えるようになる。セルジュの体はしぼんでいき、元の人間の姿に戻った。


「私は...」


「お兄ちゃん。」


 リリアがそっとセルジュに近づいていった。


「お兄様と...呼べ...」


「呼ばない。お兄ちゃん。」


「お兄様と...呼べと...言ってるだろ...!」


 二人の様子を真剣組一同はそれぞれ遠くから見守る。


「私、お兄ちゃんにあこがれていた。いつもかっこよくて、研究熱心で、そのくせ家族思いで。」


「黙れ...」


「私はお兄ちゃんみたいになるのが夢だった。だけどお兄ちゃんは...私の追いかけていたお兄ちゃんではなくなった。14年前、お父さんとお母さんが海外で戦争に巻き込まれて死んだ。その時からこの屋敷は私とお兄ちゃんのものになった。その時、お兄ちゃんは私を守るって言ってくれた。それがたまらなく嬉しかった。だけど...お兄ちゃんはある日突然冷たくなった。昔からずっと研究室にいたけど、本当に出てこなくなった。話しかけると怒って、お兄様呼びを強制してきた。そして、2年前のあの日、私とお兄ちゃんは能力を手に入れた。私が発明の能力で、お兄ちゃんが錬金術の能力。あの時、お兄ちゃんは完全に壊れた。」


「黙れ黙れ黙れ...!」


「私はそれでもいつかお兄ちゃんが帰ってきてくれるんじゃないかってずっと思って信じてたんだよ。だけど、この前研究室を覗いてしまった時、その希望は崩れ落ちた。お兄ちゃんは非人道的な実験をずっとやっていたことを知った。流石の私でもびっくりした。あの時、お兄ちゃんに問い詰めた時、お兄ちゃんはあれらを『美しい』と言った。理解できなかった。それと同時に私は確信したんだ。あぁ、お兄ちゃんは帰ってこないんだって。」


「うるさい!うるさい!うるさい!」


「私はお兄ちゃんが帰って来るのを待つのを諦めた。だけど、お兄ちゃんの研究の邪魔はしないようにしてた。だけどお兄ちゃん、お兄ちゃんは絶対に許されない事をした。私、見ちゃったんだ。お兄ちゃんが人を自分の研究室に連れ込むところ。3回くらい会ったね。どれだけ待ってもだれも研究室から出てこなかった。お兄ちゃん、あの人達を魔獣に変えたの?」


「やめろ!やめろ!」


「そう思いたくなかった。だけど、そうとしか思えなかった。それでも私は目を瞑っていた。だけど、私の堪忍袋がキレたのはユウリを...あの娘を実験道具にしようとした時だ。お兄ちゃんはあの娘を自分の実験室に誘い込もうとした。私が見つけて止めてなかったらあの娘をどうするつもりだったの?精神を病んでいるあの娘の心に漬け込んで!私はあの娘を魔獣に変えようとしたお兄ちゃんが許せなかった。だから私はお兄ちゃんの部屋の周りはお兄ちゃんが研究の邪魔になるから掃除しなくていいと言ったとあの娘に嘘をついてお兄ちゃんに近づけないようにした。そして、一刻も早くお兄ちゃんを止めれる人間をここに呼ぼうと思ったんだ。それで目をつけたのが真剣組だ。もともと真剣組には興味をいだいていた。なにせ、あの星野イオお墨付きだからね。イオとこの前会った時、真剣組のことを彼女はべた褒めだった。いつか私の作ったアイテムを真剣組に使って貰おうと思ってたんだ。それと、ラクくん。彼が生物の能力だと聞いて、お兄ちゃんの研究を止めてくれるかもしれないと思ったんだ。」


「クソッタレが...!」


「お兄ちゃん、これまでありがとう。それから...さようなら。」


 リリアの目から涙がこぼれ落ちた。リリアはそっとセルジュを抱きしめて、セルジュの背中をナイフで刺した。


「ガハッ!」


 セルジュが血を吐く。リリアはそっとセルジュから離れた。


「私は...研究を完成させる...!私は...もっと美しい世界を!私が世界を壊して美しくするんだ!」


 セルジュは血を流しながら震える手でポケットに手を入れる。そのままポケットからなにかのスイッチを取り出した。異変に気づいた真剣組メンバーとリリアがそれを止めようとするが時すでに遅し。セルジュはスイッチを押した。


「これが私の望む世界だ!」


 別館の地下から大量の魔獣が飛び出していく。空を飛ぶもの、地面を這いつくばるものと、多種多様のだ。


「マジかよ!」


 アラタが大声を出す。


「口より手を動かせ!だいぶマズイ状況だぞ!」


 カグヤが魔獣を斬り倒しながら叫ぶ。他の真剣組メンバーたちも魔獣を倒し始め、リリアを守るようにタカマは立つ。


「クソッ!」


 真剣組はその後30分ほど奮闘するが、数が多すぎて3割ほどの魔獣は逃げてしまった。





「クソッ、勝ち逃げされたな。」


 カグヤはそう言って街の方へ逃げた魔獣を追いかけに行った。


「お兄ちゃん...」


 リリアは兄の亡骸をただ見つめていた。




セルジュについて。

セルジュの気が狂ったのは両親の死因を知ったからです。両親が発明家だったセルジュは、両親は世界を美しくするものを作っているのだと小さい頃から信じていました。ですが、親が死んで親の研究を調べていくうちに戦争兵器を両親が作っていた事を知り、絶望します。両親も海外で死んでおり、死因は他殺です。両親が協力していた国の敵国の兵士により殺されております。それを知ったセルジュはその現実を受け止めきれずに『両親が作っていたものは、戦争兵器は美しいんだ』と自分で思い込むようになります。その思い込みから兵器作り=魔獣作りに没頭していきます。その後、錬金術の能力を閾の日に手に入れたセルジュの研究は進み、自分の思うような魔獣を作ることに成功するようになりました。セルジュは今度は能力者が魔獣になったらどうなるのかが気になるようになり、早乙女邸のメイド、ユウリで実験しようとしますがリリアにバレ、計画は失敗します。その次に目をつけたのがカグヤで、カグヤの命を削る代わりにとてつもない威力を誇る能力をもった魔獣を作ろうと考えていました。


ユウリについて。

 早乙女邸のメイドの名前です。早乙女邸でたった一人のメイドで、リリアにかなり愛されています。真剣組のとあるメンバーと過去に関係があるようですが...誰のことか、どんな関係かはまたあとの話。

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