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樹冠祈願  作者: レニペン
第1章〜カグヤの命〜
26/39

兄弟と兄妹

26話です!





「......まだかな......」


 ラクは発明室の前で暇そうに椅子に座って足をブラブラサせていた。


「まだ2分も経ってないだろ。」


 カグヤがラクに向って言う。


「......カグヤは屋敷を見て回ったりしないの?」


「あぁ。オマエと話がしたくて。ほら、別居になって、なかなか話す機会もなかったし。」


 カグヤはラクの隣に腰掛ける。カグヤは真剣組を設立してからなかなかラクと、自身の弟と話す機会がなかった。ラクは真剣組事務所に住むようになったし、いろいろ忙しくて二人でゆっくり話す機会もなかった。だから、話そうと思った。話さなければならないと思った。


「...単刀直入に聞くけど、オマエはさ、、、ラクは真剣組に入ったこと、後悔してる?」


「...そりゃしているよ。そもそも僕は反対派だった。だけど、みんなが入るって言ったから。オマエが心配だったから、、、僕は真剣組に入ったんだ。もしあそこで入る選択肢をしてなければとよく思うよ。」


「...そうか。」


「前のマリオネット?だっけ。アイツと戦った時、アイツに操られている人たちを僕は縛り付けて無効化しようとした。守りたかったから。だけど、結局みんな死んだ。神環の人から聞いたんだけど、操られていた人たちは1000人ほど。そのうち62人が死んだらしい。縛られていた人たちがね。もし、僕があそこで拘束していなかったらその人達は...その人達は...」


 ラクの声が少し涙声になる。


「...あれはオマエが拘束していようがいなかろうが関係なく殺されていたと思う。だから...」


「僕もそう思えて心から割り切れたらどれほど楽だったろう。でも、確信がない!アイツはどっちみち殺していたということを証明できない!もちろんアイツが殺したんだ、アイツが犯人の殺人鬼だ!だけど...なら僕は共犯者だ!」


 ラクが少し大きな声で言う。


「...ごめん。」


 カグヤはラクにかける言葉が思いつかなかった。


「なんで謝るんだよ......」


 ラクは袖で涙を拭う。しばらくお互い黙った後、ラクは口を開く。


「僕は最近つくづく思うんだよね...あぁ、僕って無能だなって。前のマリオネットの時だけじゃない。ツバキの時も、僕は彼女の母親を殺させた。みんなが心配で、みんなを守りたくて僕は真剣組に入ったのに...」


「...オマエ、やめたかったらやめて良いんだぞ。真剣組。」


「...やめたいよ。正直。責任から逃れたい。オマエは知らないだろ。みんなで隠していたから。あの事件、僕らの存在は政府が隠してくれているんだけどさ、感のいい人達は真剣組という存在が関わっていたと気づくもので。それはもうひどい有様だよ。『真剣組という組織が黒幕だ!』とか、『闇の軍と関わっている!』とか、陰謀論もいいところ。陰謀論じゃないやつも、『無能』、『無能』のオンパレード。実際は闇の軍と最前線で戦ったというのに。安全圏から何様のつもりだよって思う。人を助けても誰も褒めやしない。でもミスったらこの通り陰謀論と批判の的。精神はどんどんすり減っていって、マジでクソッタレって思う。だからやめたいか、逃げたいか、とか聞かれたら、『はい。』しか僕に答えはない。」


「......」


 カグヤは黙ることしかできなかった。


「だけどさ、そこで真剣組をやめたり、逃げたりしたらそんなの『はい、僕達は無能です。責任が重いのでやめさせていただきまーす』って言ってるようなもんだろ?僕、性格悪いからさ、絶対に闇の軍も世間も見返してやりたいんだ。僕はすごいんだ!無能じゃないんだ!って世界に教え込ませてやるんだ。緋ノ宮ラクって名前が教科書にのるくらいにね。」


 ラクはさっきまで泣いていたくせに、少し笑っていた。あぁ、コイツは覚悟、とっくに決まってたんだな。カグヤはそう安心した。それと同時にラクの喜怒哀楽の変化の速さに情緒不安定なところを感じ、心配にもなった。


「それに、僕はすでに闇の軍に一筋縄ではいかないんだぞ!って証明してやったからね。」


 ラクはニッと笑う。


「なにか闇の軍にやったのか?」


「マリオネットに毒を注入した。超強い毒。ツタで縛り付けたときにツタからトゲを生やして、彼女に傷をつける。その後、リンカルスっていうコブラの能力を使った。その時に彼女の傷口から毒が入ったはず。その時、僕は動物の説明をしたんだ。リンカルスのね。その時、嘘をついた。弱い毒だと。リンカルスの毒だけでも皮膚が壊死して激しい痛みに襲われるくらいはある。それにプラスして、彼女の体の中に入ったのは僕の毒を持った動物の知識をすべて注ぎ込んだ最強の毒だ。死んでなくても後遺症は残るはず。」


「マジかオマエ...」


「ホントは即死、あるいは気を失うくらいは予想していたんだけどね。彼女、タフだったねぇ。どうせ治療を受けて死んでないと思うけど。」


「結構残酷だな。」


「僕は生きるのに必要な殺しならするんだ。肉を食べたり、他にも生活用品を作ったり。生きるためには殺しは必要だ。だから殺しはする。だけど、生きるため以外の殺しはしないんだ。彼女は殺さないとこっちが死ぬと思った。彼女を殺すのは必要な殺しだ。だけど、それ以外の人たちも間接的に僕は殺した。これは必要な殺しではない。だから結構くるね。」


「......オマエからは色々学ばされるよ。」


「どういたしまして。」


 ラクの返事とともにカグヤは立ち上がる。


「......なんかオマエの話聞いて、オマエに俺は負けている気がした。精神面も、考え方も色々。俺が先輩としてオマエらに道を作ってやらないといけないのに。なのに、ついていかせるだけついていかせて、つらい思いをさせた。俺は道を作らなければならないのに、オマエらを先にいかせていた。先輩なのにな。覚悟が足りてなかったのかも。真剣組のリーダーとしての覚悟が。だけど、オマエと話せてよかった。俺はオマエらの道になってやると決めた。ついてきてくれ。俺の背中に。」


カグヤはラクに手を差し伸べた。


「...ついていかせてもらうよ。その背中に。」


 ラクはカグヤの手を握った。





 カグヤはそのままアラタたちにも同じ話をしてくると言って他のメンバーを探しに行った。ラクはまた一人になって暇そうに天井のシミを数えていた。すると、発明室の扉が開き、リリアが顔を出した。


「おまたせー、ラク。さぁ、君への別件の時間だ!」


 リリアのテンションは相変わらず高い。


「ソウヤ先輩とタカマ先輩は?」


「あの二人ならあっちの方で試着をしばらくしてもらってる。なれるのに時間がかかるだろうからねー。なにせ私の自信作!彼らには早く慣れてもらって、早く使ってもらいたいのさ!」


「...仕事早すぎませんか?採寸して、もうできたんですか?」


「私の仕事の早さを舐めてもらっちゃ困るね!」


 バケモノだ、とラクは思った。


「さて、別件の話だが、ちょっと別館に関係がある話でね。ついてきてくれ。」


 リリアの声が少し暗くなったようにラクは感じた。


 リリアはラクに黙って行く。別館につき、リリアは鍵を開ける。そしてさらにその地下室へとラクを案内した。地下室には大きな扉があり、リリアはその前で止まった。


「君に来てもらった理由はこの扉の向こうにある。」


 リリアはそう言って扉を開けた。そこには大量の檻が並んでいた。


「これは.......」


 ラクは言葉を失った。檻の中には大量の、ラクが見たことのない生物がいた。人間のような腕が生えたもの、頭や目、口など、そんな体のパーツがたくさんあるもの。様々な形態の生物がそこにいた。


「これは何なんですか!研究ですか?」


 ラクの声には怒りが込められていた。


「落ち着け...と言っても落ち着かないだろうね。誤解される前に言うけど、これは私の兄が作ったものだ。私が作ったものではない。これを見て君はどう思うか聞いてみたかった。動物関連の能力者である君のね。」


「僕に感想を求めているのですか?なら僕の感想を素直に伝えます。ふざけるな、です。気分が悪いです。生物への侮辱も感じますし、見るからにこの生物たちは苦しんでます。」


「期待通りの答えだ。ありがとう。私もそう思う。私の兄は錬金術系の能力でね。もともとこれらは実験用マウスだったんだ。」


「どれひとつ面影無いじゃないですか?!あれなんか、ワニの口みたいなのついてますよ!あれはくちばし生えてるし!」


「そうなんだ。彼は生物を改造して、アラタな生物、『魔獣』を作り上げた。」


「失礼ですが、あなたのお兄さん、狂ってます。」


「私もそう思う。彼はこのままいけなとてつもないことをしでかすだろう。その前に止めてほしい。」


「僕にですか?」


「あぁ。君は生物の能力なんだろ?君と彼を対話させてみたい。そしたら、彼の暴走を止めれるかもしれない。私は兄の妹だ。彼を止めたい。」


「関係ないけど、あなた、まともに会話できるんですね。」


「君と同じ人種さ。オンとオフが私は激しいんだ。兄のもとに案内しよう。」


 リリアとラクは地下室から出ていった。






ちなみに人形遣い⑦で神木は毒をマリオネットに入れたのはラクだと気づいていますが、入れたタイミングはツタで縛ったタイミングだと勘違いしています。

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