親子
16話!前回に続き1回も主人公のカグヤが出てこない話。
白椿 ツバキは学校から下校していたら知っている顔が公園にいるのを見かけた。
「ミク、あなた何してるの?」
ブランコで遊んでいる黒澤ミクにツバキは話しかけた。トーナメントが終わってからミクに会うのはツバキは始めてだった。
「おっ!先輩じゃないですか!」
ツバキは隣のブランコに座る。
「ミク、なんで学校辞めたの?トーナメントでの事件でなにかあったの?」
「いやー、もう学校に居る意味がなくなったんですよ。あたし、真剣組っていう組織に入ったんだ!もう働いてるんだ!」
何を言ってるのかよく分からなかったが、就職先を見つけたのでもう学校に行く意味がなくなったという内容を言いたいようだ。
「トーナメントのときは大変だったよ!」
ミクは楽しそうにトーナメントの話をしてきた。テレビのニュースである程度のことを知っていたが、ミクの口から聞くとなにか違う気がした。
「それでさ、カグヤっていうやつが命を削って仲間を守ろうとしてさ!あたし、かっこいいと思ったよ!」
ミクが男の話をするのは少し衝撃的だった。
「じゃぁ、私、帰るね。」
ツバキはミクとしばらく話すとブランコから立ち上がり家に向かおうとした。
「あっ、気が向いたら先輩、真剣組、入ってみてくださいね!」
ツバキは軽く聞き流し、家に向かった。ツバキはミクのことを妹のように思っていた。昔から家が近く、よく遊んでいた。学校でも同じ部活の後輩としてミクといっしょにいた。しかし、ミクは不登校気味にだんだんなっていってしまった。ツバキはそれを心配していた。その後、交流はそこそこ続いたが、政府のトーナメントに参加するとミクが言ってからは会ってなかった。2週間ぶりくらいの再開でツバキは嬉しかった。それもあって、家に帰るのは少しツバキにとっては憂鬱だった。
「ただいま。」
アパートの一室に入る。散らかった床をツバキは見つめる。部屋の壁には写真がたくさん貼ってあった。5人で撮った家族の集合写真だ。部屋の奥には布団が敷いてあり、母親がそこで寝ている。
「バイト、行ってくるね、、、」
「、、、」
母親からの返事はない。ツバキはそのまま荷物を置くとバイトに向かった。
夜11時頃、ツバキは家に帰ってきた。疲労感がすごい。いまからご飯を食べて、宿題をやらなければならない。明後日は休日だ。明日頑張れば、大丈夫だ。
「お母さん、ご飯食べて、、、」
ツバキがそう言っても母親からの返事はない。
「ご飯は食べなくていいから、せめて薬だけでも、、、」
「、、、後で飲んでおく、、、」
ツバキは心配そうにそれを見つめながら勉強を始める。夕食はいらない。朝ごはんで少しだけ食べれたらそれで十分。ツバキはそう思っていた。しかし、ツバキには限界は近かった。日に日に目の下のクマが大きくなっていく。
次の日、6時にツバキは目覚める。2時間は寝れた。ツバキは母親の朝食を作り、学校に行く身支度を始める。制服を着て、母親に一言。
「いってきます、お母さん。」
学校についたら少し仮眠を取る。朝のチャイムとともに起きて、朝礼を受ける。その後午前の授業を終えたら、昼ご飯を食べ、その後午後の授業を受ける。学校の授業が終わったらいつも通りそのまま帰る。帰り道の公園を覗くと今日もミクがブランコを一人でこいでいた。
「ミク、今日も来てたの?」
「えぇ、暇なんで。、、、昨日は先輩があたしにたくさん質問してきましたよね?今日はあたしがしてもいいですか?」
「えっ、、、いいけど、、、」
隣のブランコに座りながらツバキは言う。
「じゃぁ先輩、質問1つ目。ちゃんと寝てますか?クマすごいですよ。」
「、、、」
ツバキは返答に困る。
「、、、大丈夫よ。たしかに最近寝不足だけど、、、」
「2つ目。」
遮るようにミクが喋る。
「先輩、無理してるでしょ。」
ツバキはその質問に答えるのに少し時間がかかる。どう答えようか迷っていると、ミクが口を開いた。
「ほら、やっぱり。先輩、能力を手に入れてから無理しすぎです。このままじゃいつか死にますよ?」
「大丈夫よ、、、私の能力はヒーラー系の能力だから、自分で自分を回復できるし、、、」
「先輩、もっと自分を大事にしてください。」
しばらくその後沈黙が続く。
「、、、ねぇ、ミクの入ってる組織って給料どれくらい?」
「結構高いですよ。普通のサラリーマンよりは多いです。」
「、、、そう。」
「先輩、入ってくれるんですか?!いやー、あたし、仲間探しに手間取っていて、、、」
「そうね、、、考えておく。」
「やったぁ!ノルマ達成までの第1歩!!」
「ノルマ?」
「あ、いやぁ、なんでもない。」
少し沈黙が流れた後、ツバキが口を開く。
「、、、あのさ、ミク、、、少し相談に乗ってくれない?」
「突然なんですか?!びっくりしますよ!話の流れ的に突然だったので!」
「ごめん、、、」
「まぁ、あたしが相談できることなら何なりと話してください!」
「あたし、お母さんに愛されてないの。」
ツバキが話し始めるとミクがそれを止めた。
「ちょっと待った!思ったより暗い話の流れだ!」
「ごめん、、、」
「いや、先輩、大丈夫ですけど、その話明日にできませんか?そういった相談するのに適任があたしの同居人にいるんですよ。そいつと明日いつも通りここに来るのでその時でお願いします!」
ミクの勢いに負けてツバキは頷いてしまった。ツバキは無意識に時計を見る。
「いけない!もうこんな時間!バイト行かなくちゃ!じゃぁね、ミク!私早く行かなきゃだから!」
ツバキはミクに手を降ると急いで走り出した。
「明日の3時頃、ここにいますからねー!」
ミクの声をバックにツバキは家に向かって走っていた。荷物をおいてバイトに、、、そう思って家の玄関の前に行くと、玄関が空いていた。嫌な予感がした。
「おい!早く借金耳揃えて払わんかい!」
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
泣いている母の声が聞こえてくる。
「ごめんなさいじゃないんだわ!早く払えって言っとるんや!」
ツバキはそっと部屋に入る。大柄な男たちが母親を囲んでいた。
「すみません、お金は今これだけしか無いんです。」
ツバキはそう言うと、5万円ほど入った封筒を男の一人に渡す。
「こんなんじゃ全然足りんわ!まぁ今日は見逃してやるが、今度耳揃えて払わんかったら身体でも売ってもらうからな!」
男たちはそう言うと部屋から出ていった。
「、、、ごめんね、、、駄目な母親で。」
ツバキに向かって男たちが出ていった後、母親がそう言った。
「もし、、、生き残っていたのがあの人だったら、、、アンタじゃなければ、、、どうしてもそう思ってしまうの。駄目な母親で、、、ごめんね、、、」
ツバキはそんな言葉聞きたくなかったが、正直聞き慣れていた。口を開けばいつもこうだ。
「、、、じゃぁ、行ってきます。」
ツバキはそう言うと、家を出ていった。ツバキからは涙が零れ落ちようとしていた。
帰ってきたのは12時頃だった。明日は休日だ。ツバキは帰って来るなりその場に倒れるように寝た。
次の日の昼、いつもの公園に行くとミクともう一人、少年がベンチに座っていた。今日はカードゲームを二人でしていた。
「クックックッ、、、ラクはやっぱり雑魚だな!」
「い、今のは無しだ!もう一回、次は勝てるから!」
「ミク、来たよ。」
ツバキが二人に話しかけると少年が立ち上がり礼をする。
「僕は真剣組、緋ノ宮 ラク。よろしくおねがいします。」
ラクという少年はきれいに一礼する。
「先輩、早速話してください。」
そう言われて、ツバキは話し始めた。
「私は、あの日に家族を失ったの。『閾の日』に。父と、兄と、弟は人々の混乱に巻き込まれて死んだ。その日から、お母さんは鬱になったの。そして、その時こう言われたの。『なんでアンタだけ生き残ったの?生き残ったのがアンタなの?』って。」
それを聞いてラクは頷いた。ミクはそのことはすでに知っていたので黙っていた。
「それで、私気付いたの。お母さんは私のこと愛してくれてないんだって。あれから一家の大黒柱を失った私の家は、私のバイトで生計を立てるようになったの。それでも、借金は膨らんでいって、、、」
「借金についての相談ですか?」
「違う!ただ私は、、、愛されたいの。お母さんは話しかけてくれないし、口を開いたら死んだ家族のことか自分を攻める内容か。私、一回だけでもいいから、、、お母さんからありがとうとか、愛してるって言われたいの。だけど、、、私、精神的にも肉体的にももう限界で、、、」
そう言うとラクが口を開いた。
「僕も、親から愛されてないと思ってました。僕の親は兄をよく褒め、弟はよく甘やかして、僕は特にこれと言ったことはされてきませんでした。幼稚園くらいのとき、構ってほしさに言うことを聞かずに家の外に出されて、鍵を閉められて、、、泣いて開けてほしいと2時間ほど騒いだこともありました。中学生の頃、ある日母親に言われたんです。愛せなくてごめんって。僕は衝撃を受けました。なんでいきなりそんなことを言ってくるのか分からなくて。いつかなんでいきなりそんなことを言ったのか聞いてみたかったけど、その前にあの日が訪れました。」
少し静かな時間が流れる。
「僕は親を愛していたかと言われたらはいと答えれるかどうかわかりません、ですが、失って気づくものもあるものです。僕が思うに、親が子供にどんなことをしようが関係ない。親は親です。子供にとって大切なものなのです。」
ラクの言葉を聞いてツバキは頷く。
「あたしは、親に良くしてもらっていた側の人間だからよくわからないけどさ、親を亡くすってやっぱり辛いよ。」
ミクなりに気を使ってくれているのだろう。
「ありがとう、ふたりとも。」
正直ツバキが聞きたかった答えはそんな回答ではなかった。そんな事は知っているからだ、だけど、二人が真剣に自分のために考えてくれて、相談に乗ってくれたことが嬉しかった。自分は一人じゃないと思えた。ツバキは立ち上がると家に向かった。
家に帰るとまた玄関が空いていた。そっと中に入る。母親の姿はない。おかしいと思いつつ、部屋に入るといきなり首元を叩かれてツバキは気絶した。
あれからどれだけの時間が立っただろうか。ツバキが目を開けると大きな倉庫のようなところにいた。なぜこんなところに?少し考えるがわからない。ネズミが足元を走っていくとともに大きなドアが空いた。
「約束通り身体で払ってもらうぜ、お嬢ちゃん。」
あの借金取りの男たちだ。
「勘違いするなよ?耳揃えて払われなかったあんたらが悪いんだ。こっちも商売にならんのよ。だが、今回は特別にアンタの身体でチャラにしてやろう。」
ツバキは首をブンブン振る。
「抵抗しても無駄やで。それにしてもいい身体してるなぁ。」
男たちがそう言って笑い合っていると突然倉庫の窓が割れ、2つの影が入ってくる。
「「真剣組だ!悪事はそこまで!」」
「なんだ?ガキが邪魔しに来たか。」
ラクとミクがそこに立っていた。
「いやー、コイツの能力マジで便利。こんな感じの追跡能力もあるなんてな。」
ミクがそう言うとラクめがけて数匹のネズミが走り出し、手の中に吸い込まれていく。
「おい、お前ら。が気が二人増えたそ。片方は女だ。そうだな。もう片方の男は殺しても構わない。」
「舐めんな!」
ラクがそう言うとラクの手がゴリラのものになり、男の一人を殴り飛ばした。
「なっ!お前ら!コイツラ強いぞ!あれ使え!」
「させるか!」
今度はミクがそう言うと手から火球を複数出して男たちに投げつける。
「うわっ!」
男たちがミクに集中している間にラクはツバキに駆け寄り、ツバキを縛っていたロープを切る。
「ありがとう。」
「ツバキさん、逃げますよ!」
ラクはそう言うとツバキの腕を掴み、走り出した。
「よし!あたしも行く!」
ミクがそういったとき、何か爆発音のようなものが鳴り響く。ミクの方を見ると、ミクが身体中から血を流し、血を吐いていた。男たちの一人が銃のようなものを持っていた。
「あはは!これはな、特殊なレールガンだ!なにせどこかの能力者が作った逸材品でな!これが当たると能力者に大ダメージを与えることができる!その女みたいにな!」
「ミク!」
ツバキはミクに駆け寄り、回復術をかけて治療を始める。当たる前に少し避けたようでミクの傷はツバキの治癒能力でなんとか治療できるレベルだ。ツバキがミクを治療し始めるのと同時にラクはレールガンの男に向かって走り出していた。
「おっと、お兄さん、警戒しないといけないのはレールガンだけじゃないぜ?」
男がそう言うと横から防具をつけた男がやってきてラクを殴り飛ばす。スピード、力が異様に早く、ラクですら反応できなかった。
「あははは!あの研究所には感謝しないとな!」
レールガンの男がそう笑う。
「おっと、トドメを刺さないとな。身体を使わせてくれないし、金も払えない女に要はない。」
男はそう言ってツバキに銃口を向ける。ツバキはそれに気づきつつ、治療を止めない。
「あばよ。」
そう言って男は引き金を引いた。レールガンの光線が誰かに当たった。ミクでも、ラクでも、ツバキでもない誰かに。
「ゴボッ!」
ツバキたちの前にはボロボロの服を着て、髪が乱れているツバキの母親が血を吐きながら立っていた。
「お母さん!」
ツバキがそう言うと、ツバキの母親は安心したように倒れた。
「チッ、馬鹿な女に邪魔された、、、しょうがねぇ、もう一発撃つか、、、」
「させねぇよ。」
男の隣からラクが現れ、レールガンを叩きつける。そのまま素早い動きでラクはレールガンの男を蹴り飛ばす。さっきまでラクと戦っていた男は離れたところで防具を壊され、気を失っていた。
「お母さん!まって!今すぐ治療するから!」
「ダメ。そっちの子を優先してあげて。」
「でも!」
「いいから。」
「でも、、、!」
「いいから!その子を見殺しにするの?」
「私はお母さんを見殺しにしたくない!」
「、、、ダメよ。私は、、、いいお母さんには、、、なれなかったから、、、最期に母親らしいことをやって、、、それで終わりたいの、、、私は、、、あなたのお母さんに、、、なれなくてごめんね、、、」
「そんな事言わないでよ!」
「ツバキさん!ミクの治療は僕が変わります!治療系能力者ほどではないですが、ここまでもうツバキさんが治療してくれてるなら後は僕でもできますから!」
そう言ってツバキはミクをラクに託し、母親の治療に専念する。
「私は、、、夫を失って、、、息子も二人失って、、、その後自暴自棄になった、、、私は、、、私がやらなければならないことは、、、死者を追いかけるんじゃなくて、、、今生きているあなたを大切にすることのはずだったのに、、、私はあなたを、、、ダメな母親で、、、ごめんなさい、、、、」
「そんな事言わないでって!」
ツバキは泣き叫ぶが母親は口を止めない。
「ツバキは、、、優しくて、、、ダメな母親の私を、、、それでも愛した、、、なのに、、、私はなくなったものをずっと追いかけて、、、、あなたを見なかった、、、でも、、、これだけは言わないと、、、、あなたが、、、優しい子に育って嬉しかったよ、、、愛してる、、、ツバキ、、、、ありがとう、、、ツバ、、、キ、、、、」
母親の声はどんどん小さくなり、やがて息の音すら聞こえなくなった。
「お母さん、お母さん?!お母さん!ねぇ、お母さん!返事してよ!私も愛してるから!私も伝えたいこといっぱいあるから!ねぇ、お母さん!」
治癒能力を使用し続けるツバキの腕をラクはそっと掴み、首を振る。
「もう死んでる。」
「そんなはずない!」
「死んでるよ。」
ツバキは首をブンブン振り、そして泣き喚いた。警察のサイレンの音が近づいてきていたが、サイレンの音よりも一人の少女の泣き叫ぶ声のほうが大きく響いた。
「死体解剖の結果、彼女の身体からは男の体液などが出てきたらしい。つまり、ツバキさんが連れ去られるより前に、、、お母さんはそういうことになる。」
病室でベッドで寝ているミクにラクが報告する。
「それ、絶対にツバキには言うなよ。」
ミクが天井を見ながらそう言う。
「僕もそこまで空気が読めないやつじゃない。それと、今回の事件の相手が使ってきた道具。」
「なにか分かったのか?」
「いや。どこで作られたかも、何を動力源に動いてるかもすべて謎だ。だから、もしかしたら闇の軍が関わってるかもしれないって話。」
「ふーん。それは厄介だな。」
「もしアイツラの仕業だったらボコボコにしてやる。」
少し焦げたような匂いが嫌でも臭う。ツバキは骨壺に丁寧に一つずつ骨を入れていく。その様子をラクとミクが見つめている。
「今日はありがとう。ミク、ラクくん。」
ツバキは火葬場の外でミクとラクにそう話す。
「で、これからどうするんですか?」
「そうだね、ミク、あなた達の組織に入ろうって決めたの。私、もう自分みたいな思いをする子はいないでほしいから、、、」
「ホントですか?!」
「こんな状況で嘘なんてつかないわよ。」
「ニヒヒ、、、」
ミクは笑い、ツバキに向かって手を伸ばす。ラクはそれを微笑みながら見る。
「真剣組へようこそ!ツバキ先輩!」
コメント募集してます!今登場しているキャラを確認してみたら少なくとも8人は今後死ぬ予定のキャラでびっくりした。
キャラ紹介
黒澤 ミク (くろさわ みく)
高校2年生。戦闘狂だが、常識はある。男勝りな性格。胸は貧乳で、結構気にしている。髪色は濃い朱色で、ショートカット。ツバキのことは同じ学校の先輩として慕っている。カグヤのことは命を削って戦うのを見て尊敬しており、さらに少し恋心のようなものもある。ラクとは同居人で、ゲームを二人でよくやっている。
能力:灼装。自身の体温を極限まで上昇させて自身の身に炎をまとう。その熱をエンジンのようにして高速移動をしたり、火球を作り上げてそれを投げたりできる。主に中距離だが、近距離攻撃もできる能力。
追記:このキャラは初期案では存在しなかったキャラ。全員男だと面白くないのでトーナメントのモブだったこのキャラをメインキャラまで引っ張ってきた。第8話の初登場と比べるとだいぶ丸くなったのはカグヤの命を削ってまで後輩を守る姿を見た影響。ちなみにツバキも後付けキャラ。




