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第8話「愛しすぎた男と、私こそが本命だった少女たち」

夢の中、加瀬透は3人の少女に告白されていた。


「ずっと、あなただけを想ってました……!」


「あなたがくれた、この髪飾り、今も持ってるのよ。」


「“また来世で”って、言ったのはあなただよ?」


加瀬透(※本物)はその光景を寝汗まみれで見届けながら、頭を抱えた。


「……いや、どれが本命だったんだよ!」


前世の記憶に登場したのは“恋多き貴族”ルイス・グラナート。


彼は誠実そうな顔をして、3人の女性と“それっぽい”会話をしていた。


だが、決定的なのは――「誰も選んでいない」ということ。


「全員に同じセリフ言ってたっぽいぞこれ……。」




翌日。学校で、奇妙な三人の女子が同時に相談に来た。


1人目は生徒会副会長の北条みさき。知的で控えめ、完璧主義。


2人目はテニス部のエース、藤田ことり。気が強く、勝ち気で情熱的。


3人目は文芸部所属の静かな少女、南野るか。詩的で幻想的、いつも窓辺で本を読んでいる。


それぞれこう言った。


「最近、昔“誰か”にプロポーズされた夢を見るの。金色の髪の人で、少しチャラくて、でも優しい……。」


「舞踏会の帰り道、あの人が私の手を取って『君を迎えに来る』って……!」


「“君の歌声だけが、僕の世界の光だ”って……あれ、嘘じゃなかったんだよね……?」


おい、全部ルイスの口癖だ。


「……つまり、お前ら全員、同じやつに口説かれてたわけだ。」


「え、ええっ!?」「ちょっと待って!?」「……そうか、やっぱり……!」




3人の記憶は部分的で、細部が一致しているが、どれも自分が“選ばれた女”だと信じている。


「ややこしいなこれ!」


加瀬透、夢探偵としての限界を感じつつも、ひとつの事実にたどり着いた。


――“ルイスが本当に好きだった女性”は、実は別にいた。


3人のうちの誰でもなかった。


ルイスの最期の夢。

彼は戦場で倒れながら、指輪を握って呟いた。


「……間に合わなかった……君のところに……。」


その“君”の名前は、最後まで言葉にならなかった。


でも、ルイスは“誰も傷つけたくなくて、誰も振らなかった”んだ。


彼の恋は不器用な優しさの塊だった。




透は3人にその夢を話した。


「誰かが選ばれたわけじゃない。全員に優しすぎたんだ、あいつは。」


それを聞いて、3人はしばらく黙って――そして、笑った。


「……ああ、最低だな、前世のあの男。」


「でも、ちょっと、嬉しい。」


「“誰かの特別”じゃなくても、“確かに愛された”って、思えたよ。」


そして不思議なことに、そのあと3人は、今のクラスの男子と少しずつ距離を縮めはじめた。


北条みさきは、眼鏡の地味男子と一緒に図書委員に。


ことりは、ライバル校の男子とSNSでやりとりを始め、


るかは、図書室で声をかけてきた後輩と、詩を交換するようになった。


“前世の恋”に縛られた3人は、今世で新しい恋に歩き出していた。


加瀬透、高校二年。今回の仕事は、“前世のモテ男の尻ぬぐい”でした。


でもたまには、こういうのも悪くない。

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