表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の前世はなんなんだ!?  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/61

第55話「孤独の先にある光」

夢の中。ランプの光が揺れる書斎。紙の束と錬金器具、数式が並ぶ黒板。

その中央で、ひとりの男が黙々と薬品を混ぜていた。


――孤独だった。


家族も友も去り、残ったのは得体の知れない“発見”だけ。


「人々のために研究した……つもりだったのに……なぜ、誰も……。」


指が震え、フラスコが割れた。

破片の中に映ったのは、自嘲するような科学者の顔だった。




「加瀬先輩って、文系ですよね?」


放課後、理科準備室で声をかけてきたのは、1年生の天才肌・比良坂ひらさか りょう

いつも静かで目立たないが、化学の分野では学年随一。

にもかかわらず、常にどこか怯えたような目をしていた。


「先生に“研究室推薦出してみないか”って言われて……。でも、僕が行っても、邪魔になるだけな気がして……。」


「なんでそう思うの?」


「知識をひけらかすって思われたくないし……。昔から、“なんか偉そう”って言われてばかりで。」


その言葉に、昨日の夢が胸をかすめた。


――あの科学者は、ただ真剣だっただけだ。

それなのに、“理解されなかった”だけで孤独になった。




夜、夢が続いた。


研究室の扉を誰かがノックした。だが、科学者はそれに気づかず、顔を上げもしなかった。


訪れた者は肩を落とし、扉を閉めて去っていく。


「……また、独りだ……。」

その呟きが、静かに空気を震わせた。




翌日、比良坂を校舎裏で見かけた。

彼は一人、ノートに化学式を書き殴っていた。

肩がこわばっていた。


「比良坂くん、俺さ。思うんだけど。」


「……なんですか?」


「前の時代なら、君みたいな人は、きっと理解されなかった。でも、今は違う。」


「違う……?」


「君の知識は、誰かの未来にちゃんとつながる。それを使う場所が、ちゃんと用意されてるんだ。」


「でも……僕がそこに行くことで、また一人になるのが怖いんです。研究に没頭すればするほど、人が離れてく気がして。」


「なら、離れない人を見つければいい。孤独じゃなくて、同じ熱を持った仲間を。」


その言葉に、比良坂は初めて、はにかむように笑った。


「……推薦、受けてみようかな。」


数週間後、彼は校内推薦を通過し、近隣大学の研究プログラムに参加が決まった。


「加瀬先輩。僕、行ってきます。」


「うん。たぶん、その先には、君の言葉を理解してくれる人がいるよ。」


比良坂は小さく、でも確かにうなずいた。


加瀬透、高校生。


今日は、孤独の中で報われなかった科学者の未練を、

今を生きる若き探究者の手で、未来へとつなぐことができた日だった。


知識は、今この時代では――孤独ではない。

感想、レビュー、ブクマ、評価、待ってます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ