第49話「モダモダ・ハート・シンドローム」
――春の陽が校庭をやわらかく包む午後。
「透くんって、最近、誰かと仲いいよね?」
クラスの窓際で、おしゃべり大好き・真白が小声でささやいた。
「え? 誰と?」
「ん~……レイナちゃんとか、春日さんとか?」
「いや、別に普通に話してるだけ……。」
「ふーん?」
真白の目がにやけている。どう考えても“普通”と思っていない顔だ。
その数日後、偶然にも、俺はそれぞれ彼女たちから、同じような相談を受けることになる。
放課後の音楽室で、詩はふとピアノの鍵を閉めたあと、小さく聞いてきた。
「ねぇ……透くんって、今、好きな人いる?」
不意を突かれて、俺は喉が詰まりそうになった。
「え、な、なんで?」
「ううん、なんとなく。……私は、まだ……だけど。」
その“まだ”に、どこか含みがあった。
別の日、屋上でレイナと並んで風にあたっていると、彼女が珍しくそわそわしていた。
「あなた、夢の中でも、私を守ってくれたでしょう?」
「え、うん……でもあれは前世で――。」
「でも、現世のあなたも、悪くない。ちょっと不器用だけど、誠実。」
「いやいやいやいや。」
「誠実だと思うわ、私は。」
こっちを真っすぐ見て言うな。心臓がもたない。
その翌日、図書室で真白に呼び出された。
「透くん、ちょっとこれ見て!」
差し出されたのは、恋占い特集の雑誌。
「なにこれ……?」
「最近気になる人ができちゃってさー、当たるって話なんだよね!」
「へ、へぇ」
「ねぇ、透くん。誕生日、教えてくれる?」
「それ、つまり……。」
「うん。相性、見てみたいから!」
俺は、これはもう確信犯だと悟った。
そうやって俺の周囲の彼女たちがそれぞれ“モダモダ”しながら、でも一歩を踏み出せずにいた頃――
俺はひとり、こう思っていた。
(これ、俺が何かしないと、ずっと続くぞ……?)
そのとき、ふと脳裏に浮かんだのは、
“誰かの未練は、今の誰かのためにある”
それなら――
“俺自身の答えだって、きっといつか、誰かのためになるはずだ”
加瀬透、高校生。
今日は、“誰かを好きになってしまった未練”が、今を揺らす日だった。
けれどその揺れは、きっと未来へと続く優しい風だと、そう思いたい。
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