第35話「大男と最後の宝物」
夢の中、背の高い大男が山の奥で何かを埋めている。
「これで、よし……誰か、いつか見つけてくれたら、俺は……。」
その手には、木箱と古びた布地。そして、寂しげな笑み。
目が覚めた瞬間、俺の心にはなぜか、ひとつの“約束”が浮かんでいた。
「透くん、班決まったー?」
修学旅行の朝、真白の声が弾んでいた。
「うん。俺はD班。真白は?」
「B班!残念〜!あ、でもレイナちゃんと一緒なんでしょ?」
「うん……あと、志野さんも一緒だって。」
その名前に、俺の脳裏にあの夢がよぎった。
――大男だった人の記憶。
昼食後、自由行動前にD班の面々が集まった。
背が高く、少しぶっきらぼうな雰囲気の志野 美里が、突然口を開いた。
「ねえ、ちょっとお願いがあるんだけど。」
「えっ、どうしたの?」
「今日さ、山の奥の展望台に寄らない?……どうしても、行ってみたい場所があるの。」
地図を広げ、指差す先は観光地の少し外れた自然公園。
「そこに、昔……誰かが宝物を埋めたって、夢で見たの。信じられないかもだけど、本気なの。」
「……行こう。俺も、見たい気がする。」
俺がそう言うと、班の他のメンバーも顔を見合わせて、次々に頷いた。
「面白そうだし、いいよ。」
「うん、冒険っぽい!」
志野は少しだけ驚いたように目を見開き、それから笑った。
「……ありがとう。」
展望台への道は想像以上に険しく、息を切らせながら進んだ。
ふと、道の脇に不自然に盛り上がった地面が見えた。
「ここ……夢で見たの、たぶんここ。」
志野が膝をつき、小枝で地面を掘り始める。
みんなで手伝うと、やがて土の中から木の箱が現れた。
「ほんとに……あったんだ。」
中には、古びた手紙と、小さな石のペンダント。
『俺の一番の宝物は、“誰かに何かを残せた”ってことだ。』
志野はそれを読みながら、そっとペンダントを胸元にかけた。
「私、前世では男だったみたい。体も大きくて、不器用で、でも……誰かのために何かをしたかった。」
「今、その気持ちを引き継げてるよ。」
俺がそう言うと、志野は少しだけ目を潤ませて笑った。
「……うん、ありがとう。加瀬くん。」
下山途中、志野がぽつりと呟いた。
「私、今のこの体で、あの宝を見つけたこと、ちょっと誇らしい。」
「前世に縛られるんじゃなくて、今の自分で完結させるって、すごく大事なことだと思う。」
志野は笑って、手を振った。
加瀬透、高校生。
今日は、ある“大男”の未練を、小さな手で掘り起こした日だった。
そして、確かにそれは今を生きる誰かの力になった。
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