第3話「俺の知らない前世で、誰が誰を好きだったのか教えてくれ」
「よし、ターゲットは一人。騎士だった前世を持つ、現代のレオンだ。」
放課後の教室で、俺は手帳を開いていた。傍らには水無瀬遥――エステル(仮)。
「……それ、何?」
「“可能性のある男リスト”。」
「地味に怖いなそれ。」
名簿を片手に、俺たちは該当する男子生徒の特徴を絞っていく。
――レオンは剣士だった。力強い性格。口数は少なかったが、正義感が強かった。
「現代で言えば、運動部系で無口、真面目でクラスでも浮きがちなタイプ……だな。」
「そんな人、いっぱいいるよ?」
「違う。問題は“火”だ。最後に彼は、火の中でエステルを助けようとして……。」
「……火にまつわるエピソードがある人?」
俺はぱんっと手を打った。
「いた。昨日、教室のストーブに手を突っ込んでヤケドした奴!」
「え、バカなの?」
翌日、俺はその“ヤケド男子”――陸上部の柏木蓮を廊下で捕まえた。
「なあ柏木、お前ってさ、最近……変な夢見たりしない?」
「……あ?」
鋭い目で睨まれる。こいつ、目つきがすでに騎士。
「お姫様が出てきたり、火の海の中を走ったりとか、しない?」
「……した。」
「やっぱりか!!」
「けど、夢の中の俺、王様に逆らって死刑になってた。」
「えっ、死んでたの!?」
「で、その姫様が俺をかばって泣くんだ。そんで最後に『また……生まれ変わっても』って――。」
「それだよ!!」
もう確定。レオン=柏木で間違いない。
俺は柏木と遥を引き合わせた。最初はお互い信じきれていなかったけど、夢の話を交わすうち、目の色が変わっていく。
「あの時、俺はお前を守れなかった。」
「でも、あなたが私の名前を呼んでくれたとき、私は……。」
気づけば二人の間に、なんとも言えない空気が流れていた。
俺はそっと後ずさる。よし、任務完了……って思ってたのに。
「……おい加瀬。」
柏木が呼び止めた。
「お前さ、何者だ? なんで俺たちの夢、知ってんだ?」
「え、ああ、それは……」
「まさか、加瀬くんも……私たちの前世の関係者だったの?」
「いや違う、俺はただの“夢を覗き見するやつ”だから!」
なんだこの構図。完全に三角関係の修羅場みたいじゃないか。
俺の体質の説明を二人に話すと、なぜか妙に納得された。
「占い師の息子って、そういう感じなんだ……。」
「いやちがう!占いは親の仕事!俺は一般人!」
……まぁ、正確には“ちょっとだけ特殊”な一般人だ。
その後、柏木と遥はちょっとずつ話すようになり、連絡先も交換していた。いい雰囲気だ。たぶん上手くいく。
でも。
その晩、俺はまた夢を見た。
今度は別の女の子だった。
燃える屋敷の中、逃げ遅れた彼女が、誰かに名前を叫んでいた。
「お願い……!また、あなたに……!」
目が覚めたとき、俺は呟いていた。
「……まだ、終わってないんだな」
次の“誰か”が、また俺の夢にやってくる。
加瀬透、高校生。前世恋愛再生請負人、ただいま依頼受付中です。
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