第23話「転生者同士のすれ違い」
「おい、また昼メシ一緒に食うぞ!」
大きな声と共に肩を組んできたのは、同じクラスの元気男子・矢吹 迅。
そして、それをうざそうにあしらいながらも笑っていたのが、無口な秀才タイプ・榊原 玲。
一見真逆なふたりだけど、俺のクラスでは「仲良しコンビ」として有名だった。
でも最近、どこかぎこちない。
玲がふとした瞬間、迅を避けるような目をする。
迅もまた、そんな玲の態度に気づいているのか、無理に明るく振る舞っている感じがする。
そして、ある日。
「透……お前って、夢とか見たりするだろ。」
昼休み、玲が唐突に俺にそう尋ねてきた。
「どうしてわかったの?」
「俺も最近……夢を見るんだ。剣と炎の中で、誰かを……殺してる。」
その言葉に、俺の背筋がすっと冷えた。
「それって……誰を?」
玲の声が震えた。
「……矢吹に、似てるんだ。」
その夜、夢を見た。
赤黒い空、瓦礫の山の上で、ふたりの剣士が向かい合っていた。
一方は、冷静な瞳の青年。もう一方は、炎を纏った獣のような剣士。
「貴様だけは、許さない!」
「お前こそ……!」
剣が交わるたびに火花が散り、叫びが響く。
やがて冷静な青年が剣を振り下ろした瞬間、相手の胸元に深々と刃が沈んだ。
「これで終わりだ……!」
その顔は、間違いなく玲だった。
そして、倒れた獣のような剣士は、迅。
翌日、俺は迅にも話を聞いた。
「玲のこと……なんか変に思ってない?」
「……あいつ、なんか避けてるよな。理由は分かんねぇけど……。」
「夢、見たりしてない?」
「夢? ああ、なんか戦ってる夢は見る。昔の戦争みたいな。」
「相手は……?」
「うーん、よくわかんねぇけど、いつも最後に刺されてるんだよな。そんで誰かが泣いてる。」
その“泣いてる誰か”が、玲だと気づいていない。
ふたりとも、前世の記憶を断片的に持ちつつ、それをどう処理すべきか悩んでいる。
俺は放課後、ふたりを屋上に呼び出した。
「ふたりとも、ちゃんと話した方がいい。」
「話って……。」
「夢のこと。前世のこと。」
玲が苦しげに顔をゆがめる。
「俺が……前世で迅を殺した。あの時の記憶が、どうしても消えなくて……今も、同じことをしてしまいそうで怖いんだ。」
「は? 殺した? 何の話だよ!」
「俺たち、前世で敵だったんだよ!」
沈黙。
その静寂を、風が吹き抜ける。
「でも、今は違う。今の迅は、玲のことを仲間だって思ってる。」
俺の言葉に、玲がゆっくりと顔を上げる。
「……俺、本当は……友達でいたい。怖いけど、それでも……。」
「バカだな、玲。お前がどんな夢見てても、今のお前が俺に剣向けないの、知ってるよ。」
そう言って、迅は笑った。
そして、玲の肩をバシンと叩く。
「だからよ、俺の分もメシ取ってこい!」
「……は?」
「いつも通りってことだよ。」
玲は呆れながらも、小さく笑った。
加瀬透、高校生。
過去の罪と赦しは、時にすれ違いを生む。
でも、今のふたりは――前世では得られなかった“友情”を、ようやく手にしていた。
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